奴らの企みによって、追われる身となり、女王がいるという場所へと向かう。
その道中、俺達の追っ手の警備はかなり厳重であった。
これまで、国の駄目な所ばかり見ていた事もあり、このような所で力を発揮するのならば、問題を解決して欲しい。
その思いを抱きながらも、やはりこういう時にはすぐに動き出していた。
「居ました! そこの藁の荷車です!」
嫌な予感がした直後の事だ。
「見つけましたよ! メルティ王女を解放しなさい!」
そう我こそは正義の使者であるとでも言うかのような腹立たしい顔で俺達を指差していた。
「解放も何も、第二王女は別に拘束していないぞ」
「白々しい、証拠はあがっているんだぞ!」
「そうだ。お前に正義はない」
「正義……ねぇ?」
その言葉に、岩谷は明らかに不機嫌な様子だった。
波では基本的に人命は騎士団任せの連中が正義を言い放つ。
それは、空も同じだった。
それと同時だった。
「剣の勇者様、槍の勇者様、弓の勇者様。盾の勇者様は無実です。むしろわたしの命を守ってくれています」
その言葉と共にメルティちゃんが前に出る。
メルティちゃんは普段の様な子供っぽい言葉使いでは無く、王女然とした口調で話す。
その言葉に三人から動揺の表情が読み取れる。
「どうか信じてください。此度の騒動は大きな陰謀が隠されています」
「しかし、メルティ王女はその男に連れ回されているではありませんか」
「それこそ、私の命を守ってもらう為に、わたしからお願いしています」
そう説明されて動揺する様子が見える。
「不自然ではありませんか。盾の勇者様がわたしを誘拐する事に何の得があるのですか?」
「そ、それは……」
その言葉に対して、3人は考えている様子だ。
これならば、上手くいくのか。
そう考えていた時だった。
「盾の悪魔の言葉を聞いてはなりません!
今回の事件が明るみになった時に説明されたではありませんか! 盾の悪魔は洗脳の力を持っていると!」
「……やはり言ったか」
岩谷の予想通りと言うべきか。
あいつが、それを言い出した。
「ああ……メルティ……盾の悪魔にもう洗脳されてしまったのね……」
「姉上!?」
明らかに演技だ。
それが丸見えと言える程の様子に、俺は思わず呆れてしまう。
「洗脳の盾、という邪悪な力を持った盾の話か。眉唾だったんだが……」
「いつ覚醒したかは解りませんが、教会の推測では一月程前からだそうです」
その推測は果たして当たっているのか?
というよりも、むしろ都合の悪い事を洗脳で片付けようとしていないか?
「状況が証明しているじゃないですか。行く先々で情報が混濁していて、まるで彼に力を貸している様な行動をしているじゃないですか。一般人の彼等が犯罪者相手に、こんな一致団結したりするものですか?」
「国中の奴等がおかしい。盾の勇者がそんな事をするはずがないなんて言うし、元気なお婆さんまで盾の勇者を崇拝の如く絶賛してたもんな……」
くだらない言葉が並べられ、ため息を吐きそうになる。
まぁ、お婆さんに関しては、洗脳ではなく、薬で元気になったという言葉で言っても信じられるかどうか分からないが。
「おそらく、近くに居て話をするだけで自らの思うように相手を洗脳する力を持っています。現在、国の教会関係者が力を合わせて洗脳を解く準備を進めております」
「んな力あるかボケ!」
そう思わず、岩谷が呟く。
にしても、この話、あまりにも穴がありすぎる。
「ラフタリアちゃんやフィーロちゃんもアイツの力で洗脳されているって事だよな!」
「違います! 私達は洗脳なんてされていません!」
「俺達が君達を救い出してあげるからね」
「フィーロはごしゅじんさまと居たくているんだもん!」
話を聞かない。
都合の良い事だけを頭に入る。
それに頭を痛めると共に。
『へぇ、そうやって、正義の味方のつもりでやるんだねぇ』
「っ」
聞こえた声と共に、身体の力が入らない。
それが何を意味をするのか理解できると共に、俺はそのまま倒れる。
だが、地面には倒れず、後ろから誰かに支えられる。
「そいつはっ」
同時に岩谷は、構える。
俺を支えるのが、何者かを確かめるように。
「えっと、あの子は」
「あぁ、おそらくはあいつの守護者だろう」
そう、天木と川澄が首を傾げてるけど、こいつはマジでヤバいっ!
「あの君は」
「僕に話しているのかい、無責任勇者君」
「なっ、貴様っ元康様に向かって「誰が喋って良いと言ったの、嘘つき女」なっ」
北村が何か言おうとした瞬間、それを遮るような罵倒。
同時に、それについて文句を言おうとした奴にもさらには追い打ちをかけるように言う。
「空、そいつは誰なんだ?」
「んっ、僕の事が気になるのかい、復讐鬼君?」
そう、岩谷の言葉に対して、すぐに聞いてくる。
「復讐鬼ねぇ、まぁ間違っていないな」
「おっ偉い偉い、君はあそこにいる奴らよりもマシだね。
それに、その周囲の子達もね。
お利口さんで何よりだ」
「空様、彼女は一体」
「こいつは「あぁ、そこは駄目だよ、僕がちゃんと自己紹介しないとね」ぐっ」
そのまま俺の言葉を遮るように、強く抱き締める。
「僕は蠍座の守護者、ウルティマ」
肩にもつかない短めの髪を、サイドテールにしているのが特徴的な少女。
「ウルティマ?
聞いた事のない名前ですね?」
そう言っている。
「にしてもねぇ、君達って、本当に救いようのない馬鹿だよねぇ」
「「「なっ」」」
そう、ウルティマの一言に対して、3人はそのまま目を見開く。
「おい、空」
「無理、おそらく、守護者の中で、一番の問題児だから」
ウルティマは、守護者の中で、最も敵に回したくない守護者だ。
「俺達のどこが馬鹿だと言うんだっ」
「勇者の自覚もなし、計画性もなし、相互理解もしない、後始末もしない。
そんな君達を馬鹿と言わずに、どう言うんだい?」
そう挑発するように、笑みを浮かべる。
「だが、尚史は洗脳の盾で」
「それじゃ、使用条件は?」
「えっ?」
「盾の見た目は? 能力の発動条件は? そもそも、どれぐらいに対応できるんだい?」
「そんなのっ、伝承で、そう伝わっていただけで」
「教会の推測では一月程前から」
「推測でしょ。
僕はね、証拠を出せと言っているんだよ。
それだけ堂々と言うんだから、勿論、伝承とだけ言うんだったら、それがどのような内容か、言えるよね」
そう、ウルティマは言う。
「だが、実際に「何よりさぁ」またっ」
「そんな便利な物があるんだったら、この状況で使わない訳ないでしょ。
君達の言う、正義も何もない、盾の悪魔ならばさぁ」
それはもぅ、凄く悪そうな笑みで言う。
ウルティマが指を指した方向。
それは、彼らが引き連れている騎士団。
「洗脳なんて、便利な物。
ここで君達を道連れにすれば良いんだからね」
同時にウルティマは、岩谷へと目を向ける。
それに合わせるように、岩谷は盾の種類を変える。
「なっ、盾の悪魔が洗脳の盾をっ」
「まさかっ」
それに対して、驚きの顔をしているようだが。
「これはロープシールド。
盾からロープを出す事ができる盾だ」
「えっ?」
「あれれっ、可笑しいなぁ、洗脳の盾の事を知っているんだったら、すぐに判断できるのに。
それができないの?」
「だとしても」
「そもそも、そんな代物があるんだったら、対策をしろと言っているんだよ。
だから、君達は馬鹿なんだよ。
何よりも僕の仕込みに気づいていない時点でね」
その言葉と共にウルティマは、そのまま俺達を吹き飛ばした。
「なっ、何を」
ウルティマによって、吹き飛ばされた俺達は、そのまま崖の向こうへと飛ばされる。
「なっ、追いなっ」
そう言おうとしたが、全員が身体を動けない様子。
「さぁてっと、フィーロちゃんだっけ?
急いで、ここから離れようか」
「えっうっうん」
そのまま困惑するフィーロを指示して、そのまま離れる。
「あの、今は一体」
「あぁ、彼らに毒を仕掛けた」
「どっ毒っ」
「そう、ゆっくりと染みるような痺れ毒をね」
その答えに、全員が顔を青くする。
同時にメルティちゃんが目を見開く。
「紫色の髪に、毒。
まさか、あなたっ」
「んっ、気づいたのかい?」
その反応を見て、ウルティマはさらに笑みを浮かべる。
「一体誰なんだ?
獅子王の一件もあったから、こいつが過去の奴だとは思うけど」
「……伝承程度で、私も実在しているとは思いませんでした。
死した対象の魂を汚染し、苦しみを与え続ける猛毒を持つとされている、紫色の悪魔」
「その通り、正解だよ、拍手をしようか」
そう笑みを浮かべるウルティマ。
「守護者というのに、随分と物騒な奴だな」
「守護者は世界を守る為の存在。
だからこそ、その守護者の善悪や過去なんて関係ないの。
何よりも、僕、基本的に人間って、嫌いなんだよねぇ」
そう言った岩谷達は警戒を強める。
「あぁ、別に警戒しなくては、無理だねぇ。
まぁ、君達を殺す気はないよ。
なんだって、ボクの大親友である空君が気に入っている子達だからね」
「……空、はっきり言うぞ。
俺はこいつを味方だとは認識しないぞ」
そう岩谷はウルティマを睨む。
「あぁ、ウルティマには悪いけど、俺がウルティマを頼りにする事は、ほとんどない」
「良いよ、ボクはね、悪魔だから、そういうの関係なく出る事ができる。
何よりもねぇ」
同時にウルティマが耳元で呟く。
「君がボクの事を頼らないといけない程の状況になった時。君から、また搾り取るのを、楽しみにしているから」
ウルティマの言葉と共に、俺は思わず頭が痛くなってくる。