岩谷からの情報によって、新たに波から来るだろう存在に備えて、既に準備が行われていた。
既に戦闘は主に海中戦を想定している。
その中で、水中戦というよりも、被害を最も少なくする事ができる守護者を俺は選んだ。
「それで、私が選ばれた訳」
その言葉と共に、俺に問いかけるのは蟹座の守護者であるガハラさんだ。
身に纏っているのは学生服。
戦闘能力に関しては、守護者はおそらくはライザと同じぐらいだろう。
ただし。
「まったく、こういう時には水着を用意するべきでしょ。
とてもじゃないけど、こんな所で、学生服で呼び出すあなたは馬鹿なのかしら」
「申し訳ございません」
その毒舌は、守護者の中でもトップレベルにやばい。
シノンのようなクールさとウルティマの危険性が合わさっている人物。
「まぁ良いわ、それにしても」
そう言いながら、船から見る。
そこには既に波が発生し、魔物が現れている。
巨大な魚型であり、海中で姿を見せない。
そして、その巨体から出る津波によって、その攻撃は遮られる。
「なるほどね、確かに納得ね。
そして、この状況で私がやるべき事もね」
「だったら、頼めるか?」
「分かっているわ」
それと共に、ガハラさんは、そのまま海の上に立つ。
いや、立つという表現は間違っている。
彼女は、まさしく浮いている。
海の上を、走っている。
走って、向かう先は、まさしく、岩谷が空まで引き寄せた魔物。
その魔物に向けて、手に持っていた鋏を投げる。
突き刺さった鋏は、ダメージはほとんどない。
しかし、ダメージを与える事は問題ではなかった。
その証拠に、海へとまさに戻ろうとした魔物。
だが、魔物はまるで海の中に入る事はなかった。
「へぇ、あれは一体何をしたんだ」
そう、俺の隣にいたのは見た事のない人物だ。
赤髪の巨大な鎌を持っている人物。
「ガハラさんは、体重を操る事ができる。
その能力を使って、あの魔物の体重を軽くしたんだ」
「軽くする事が、なんで水に入れなくするんだ?」
「それは水よりも軽くなっているから。
まぁ、俺もあんまり詳しくないけど、ようするに今のあの魔物は巨大な浮き輪と同じ状態になっているんだ」
「そうか、なるほどね。
確かに、色々ととんでもない能力を持っているようだな。
それじゃっ」
その言葉と共に、その青年は真っ直ぐと魔物へと向かって行く。
「浮遊鎌・一式 一ノ型・風薙ぎ」
同時に、雄叫びと共に放たれた旋風。
それは宙を舞い上がった魔物に対して、大きなダメージを与えた。
海中に逃げる事はできず、嵐の中では体重が軽くなった魔物にとっては逃げる術などなかった。
それによって、決着はあっさりと終わりを告げる。
戦いが終わり、そのまま魔物の死体が海に浮かぶ。
「・・・にしても、本当にとんでもないな。
そういう奴らで、知らない奴があと10人もいるんだから」
「それは、まぁ」
そう、彼は言う。
しかし、その言葉で、俺は止まる。
「なぁ、知らないって、誰を知っているんだ」
俺は、そう問いかける。
「・・・牡牛座の守護者、ユウナ」
「っ」
同時に俺は構える。
それを見ると、岩谷がすぐに近づく。
「どうしたんだ、空。
それにラルクも」
どうやら、岩谷は向こうの青年の事を知っている様子だった。
「・・・岩谷、俺は守護者に関しては、主にシノンを中心に行動を共にしていた。
だから、多くの守護者は噂程度で、ほとんど知られてない事も多い」
「それが、どうしたんだ?」
「その中で、あの男はユウナの事を知っていた。
あの、波の戦いの時しか出していないはずのユウナを」
「なに?
それって、どういう事なんだ、ラルク」
俺の言葉を聞き、ラルクに問いかける。
岩谷にとっては、頼りになる仲間だろう。
あの強さもそうだが、人格面でも、他の勇者達よりも頼りになる。
だからこそ、俺は構える。
「悪いが、お前達には恨みはないが、ここで殺す」
「なっ」
それには、岩谷は驚いた様子だった。
「勇者がいないと、波には対処ができないんだぞ!!」
「だから、それが狙いなんだよ」
そう言ったラルクの目は悲しそうだった。
その後ろにいる仲間である女性も。
「世界を破滅へ誘う元凶である「波」を食い止めるべく、異世界の四聖勇者を倒す事で波を止められる。
私達は、その為にここに来たのです」
「異世界の、岩谷達を」
しかしラルクは最初から殺すことに戸惑っている様子だ。
「・・・どうしても、なのか」
「あぁ、俺達は、俺達自身の世界の為に戦う。
それが、業でもな」
その言葉は真実だろう。
ゲーム感覚ではなく、本当に自分の世界の為に、手が汚れても構わない。
「あぁもぅ、まったく。
原因は目の前にあるのに、それが何なのか、分からないのかよ」
そう言いながら、俺は目の前にある波へと目を向ける。
ラルク達が、岩谷達を殺そうとしているのは、そもそも世界を滅ぼす波が原因だ。
「まったく、甘ちゃんだねぇ、鍵の勇者様は。
まぁ、分からなくもないけどな」
そうしている間にも、向こうには増員が現れる。
それは、グラス。
まさに、ユウナが現れた敵だ。
「油断は禁物です。
あの時よりも強くなり、厄介な能力を持っている可能性があります」
「こんな時に」
そう言いながら、俺は、すぐに別の守護者を召喚しようとした。
「鍵が?」
その言葉と共に、俺は手に持った鍵に変化しているのが見える。
これまでの反応とは違う。
12個の鍵は、そのまま一つに変わる。
「空、それは」
「分からない、けど」
同時に両手に構えた鍵。
スケルトンキーを大きくしたような非常にシンプルなデザインで、鍵のブレード部分は銀色の棒状の剣身の先に鍵山の凹部が王冠を象った鍵の歯がついており、鍵の持ち手に当たる頭部は四角い金色の護拳の中央を黒い柄が通っている。
「剣なのか」
「いや、鍵だ。
そして、もしかしたら」
同時に、俺は構える。
それと共に、空に現れたのは鍵穴。
「なんだ、あれは」
それにはラルクも疑問に思った。
しかし、俺はそんな事を無視し、そのまま鍵を閉めるような動作で行う。
それと同時だった。
「なっ、まさかっ!」「波を」
それと共に、目の前にあった不気味な光景は消えて無くなる。
それは、波を閉じた事を意味する。
「・・・鍵はどんな物でも開けられ、閉められる。
もしかして、この鍵って」
「波さえも、封印する事ができる」
それには岩谷も驚きを隠せなかった。
しかし、同時に先程までの一本だった巨大な鍵は、再び12本の鍵へと変わる。
「これは一体っ」
俺はそのままシノンを召喚する。
先程の封印で、未だに力が入らないが、すぐにでも聞かないと。
「空、その疲労は」
「シノン、聞きたいけど、この鍵は、波をっ閉じる事はできるのか」
「それは、つまりできたという事」
「あぁ」
それには、シノンは目を見開く。
「そう、ならば、もしかしたらあなたならば辿り着けるかもしれないわ」
「辿り着くって」
「波を。その元凶を倒す為の領域に」
それには、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。
「元凶だと、そんな奴がいたのか!」
「いるわ。
けど、それ以上は、今は話せないわ。
奴は、どこで聞いているか分からないから」
それと共にシノンもまた消える。
「・・・波をなんとかすればと考えていたけど、まさか」