シャドウガーデンにて、本格的にリリムを任せるかどうか迷っている最中だった。
元の世界で行われる鳳凰の戦いにおいて、彼女を連れて行くのは危険だと考えているからだ。
彼女も、俺についていくつもりらしいが、それは無理だと考えている。
それは世界を移動した際のレベルリセットである。
以前、絆の世界に移動した際にも、この世界でも起きた現象。
それを考えれば、現状強くなっているリリムでも、今からたった一ヶ月程度で鳳凰戦で生き残れるだけのレベルを上げられるかどうか分からない。
その為にもシャドウガーデンに預けるつもりだった。
その最中で、シャドウとアルファ以外のメンバーとの対話を試みた。
互いに腹を探り合いであるが、それでもディアボロ教団という敵に対しての共闘に関しては信用しても良いと考えている。
そして、同じ悪魔憑きであった事で、リリムに関しても受け入れても良いと考えている。
「本当に生意気な雌猫だなぁ」「馬鹿なワンちゃんには丁度良いでしょう」
「「はぁ」」
そのリリムは、シャドウガーデンのメンバーの1人であるデルタという子とはかなり犬猿の仲である。
デルタという子は、どうやらリリムと同じ獣人らしいが、見る限りでは犬。
それが理由だけで、かなり仲の悪い理由になるが、リリムがさらに許さないのは、もう一つ理由がある。
それが。
「そもそも、なんでボスよりも弱い奴に従っているのか、意味が分からないです!」「それは空様への侮辱だと思っても良いなぁ!」
彼女の倫理観が原因でもある。
彼女はいわゆる弱肉強食、「力と強さこそ正義」という考えを持っている。
「ごめんなさいね、この子が無礼な事を」
「別に気にしなくても良いよ、俺自身、弱い事は自覚しているから」
そう、アルファからの言葉に対して、俺は特に気にせずに答える。
すると、デルタは、まるで勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。
「ほら、あいつも自覚しているぞ!」
「別に、弱いから従わない理由にはならないからな」
「いい加減にしなさいデルタ。それ以上は、シャドウの考えに背く事になるわよ」
「うっ」
アルファからの言葉に対して、デルタはしゅんとしたように顔を俯いていた。
だが、これはいずれ解決しなければならない。
でなければ、安心して、戦いに行けない。
「アァァァァもぅ、嫌なのです!」
「うわっと」
それと共に、デルタはそのまま勢い良く出て行ってしまった。
「ちっ、なんだよ」
「・・・まぁ、少しは分かるかもね」
「空様?」
少し前まで見ていたが、どんなに強くても、彼女はまだ子供。
それはこの場にいる全員が同じである事は変わりない。
そう考えれば、おそらくはこの場にいるメンバーの中で一番、年相応なのかもしれない。
自分の居場所に突然現れたよく分からない奴。
それが、俺にたいする印象だろう。
「少しついていくよ、リリム、ごめんだけど待っていてくれる?」
「でも、あいつは「大丈夫だから」うっ」
俺はそのままリリムの頭を撫でて、そのままデルタが出て行った方向へと向かう。
かなり速く、追いかけるのは最初は難しいと思った。
だけど、証拠はかなり残っていたので、見つけるのは簡単であった。
すると、そこには巨大な猪を目の前にして、涎を垂らしているデルタがいた。
「美味しそうです!「おぉ、確かに大きい」うわぁ!?」
俺の言葉を聞いて、デルタは思わず後ろへと跳ぶ。
「お前、どうしてここに!」
「んっ、散歩かな」
「散歩で、ここまで歩きますか?」
「こう見えて、色んな所を旅していたからね、それにしても、大きい猪だなぁ」
「これはデルタの物ですから、よわっちいお前にはあげないですよ」
そう、デルタはこちらを睨んでいる。
「そうか、それは残念だ、せっかくお肉を美味しくする方法を知っていたのになぁ」
「えっ?」
すると、デルタは俺の言葉に反応した。
「おっ美味しい」
「おぉ、絶品かもしれないけど、仕方ないかぁ、それじゃ「まっ待って」んっ?」
すると、涎を溢れているデルタがこちらを見る。
「すっ少しならば、分けても良いから、作ってほしいです!」
「それじゃ、ちょっと待ってろよ」
そう言いながら、俺は少しだけ準備をする。
この手の料理は、かなり作り慣れており、向こうでは尚文や絆と料理をしていた。
そうして、料理を作り終えると、デルタは目を輝かせていた。
「うわぁ、なんですか、これ!猪がこんなに美味しく!」
「喜んで何よりだ」
そうしながらも、俺はその光景を見る。
「・・・お前は、食べないのですか?」
「そうだねぇ、今はお腹は空いていないからね」
「・・・変わった奴です」
それと共にデルタは料理を食べ続ける。
「・・・なんで、お前は弱いのに、そんなに戦うんですか?」
「うぅん、そうだねぇ、別に戦いたい訳じゃないけどねぇ」
「だったら、なんで?」
それに対してならば、俺は既に答えは決まっている。
「帰る家を守る為かな?」
「家?」
「あぁ」
世界は違う。
それでも、俺は守りたい場所がある。
「デルタは、なんで強くなりたいんだ?」
「勿論、力が正義だからですよ!」
「それじゃ、それで何をしたい?」
「何をって、うぅん」
それにはデルタは思わず首を傾げる。
「分からないです!だって、デルタは、その」
それと共に、こちらを見ようとしなかった。
「俺も分からないかな」
「えっ、でもさっきは」
「あぁ、帰る家を守りたい。けど、その先を、俺はまだ見つけていない、だから、色々としたいかな」
「色々」
そう言ったデルタに対して、俺は頷く。
「お前、変な奴ですね」
「うん」
その印象は変わらない様子だ。
「それに弱い」
「えっと、そうだね」
そう言ったが、デルタは笑顔の様子だった。
「だけど、美味しい物を作れるし、悪い奴じゃない!」
「あははぁ、それはどうも」
「だから」
そのままデルタは、俺の肩の上に乗る。
「デルタの下で一緒にいるのです!」
「えぇ、まぁ、良いけど、帰る?」
「はいです!!」
そのまま、俺はデルタを肩車をしながら、そのまま帰る事になった。
だけど、問題は。
「おい、お前、なに空様の上に乗っているんだぁ!」
「空はデルタの下にいる!だから、これは当然の権利なんです!!」
喧嘩は、未だに絶えない様子だった。
「・・・なんだか、余計に不安になったわ」
「ごめん」