元の世界へと戻るまで残り2週間。
その間までに、俺は、これまで以上に多くの事を知る為に行動をしなければならないはず。
そのはずなんだけど。
「ソラはデルタと遊ぶんですぅ!!」「空様は忙しいんだから、離せ」「んんんんっっ!!」
絶賛、育児を行っています。
具体的には、俺の肩に乗っているデルタが、リリムと喧嘩をしている。
前回の1件もあってか、デルタが懐いてくれたのは良かったのだが、それがどうやら彼女の中では俺が手下となっているらしい。
そういう事もあって、何かと連れて行かれそうになっている。
それに対して、リリムは納得がいかない様子で、日々喧嘩を行っている。
「はぁ、二人共、いい加減にしなさい」
「あなたに従う義理はないわ」「アルファ様、ソラはデルタの手下なのだから、デルタの相手をすべきなんですよ!」
「リリム、ここにいる以上は、ここのルールには従って貰うわ、デルタもやる事があるはずよ」
「うぅ」「分かりました」
それと共になんとか離してくれた。
「はぁ、はぁ、助かったぁ」
「なんというか、勇者とは聞いていたけど、甘いわね」
「別になりたくてなった訳じゃないからな、いきなり呼ばれていきなり世界を救えと言われたからな」
「そう、あなたはあなたで、事情はあるのね」
「まぁな、にしても影の英知ねぇ」
デルタとリリムが離れ、アルファもまた離れた後。
そのまま、俺は、これまでシャドウが言っていた資料を見る。
見る限りでも、現代知識であるのは間違いない。
だけど、その知識量としては、かなり凄まじいのは一目で分かる。
文学や音楽、多種多様な知識。
それらは、転生者が持っているのかと言われたら、違うだろう。
実際に、俺が対峙したキョウと比べても凄まじいの一言だ。
「そして、ステータスを見る限りでもチートを使ったと思われる形跡もない。奴らとは違う部類と考えても良いだろう」
「・・・奴らって、誰の事」
「うわっと!?」
俺がそう、悩んでいると、後ろから接近した子がいた。
振り向くと、そこにはこれまであまり会話しなかった子だ。
「えっと、確か君は」
「イータ」
「そうか、それでどうしたの?」
「さっき、奴らと言った?それは一体、誰の事?」
そう、イータは俺の言葉を聞いていたようだ。
「うぅん、俺自身もあまり確信を持っていないし、まだ仮定の部類だけど」
「良いから、早く早く」
イータは、そのまま俺を急かすように言う。
何やら、最初の印象とは、どこか違うようだけど、まぁ良いか。
「それじゃ、仮定として、イータは死んだらどうなると思う」
「死んだら、そのままじゃないの?」
「まぁね、それが普通だ。俺もそう思うし、世の中はだいたいがそう。だけど例外がいたとしたら」
「例外?」
そう俺がいたらイータは首を傾げる。
「どうやら、別の世界で死んだ奴がそのまま別の世界へと転生する。その際に、何かの事故か策略なのか、特別な能力を得る奴がいる」
「転生、この場合は転生者?」
「まぁ、そうかな」
「その話を聞くと、マスターは転生者という事になる?」
「それは、俺には分からない、けど、俺はその可能性は高いと思う」
それに対して、イータもまたどこか納得している様子だった。
「そちらも、似た感じ?」
「俺の場合は転移かな。けど、シャドウは俺が見る限りではそんな特別な能力を持っているようには見えない」
「それは、侮辱という事?」
「逆だ」
それに対して、俺は正直な話を言う。
「そちらの話を聞く限り、スライムスーツや装備、それらの類いは造りだしてはいるが、彼自身が造りだした。
そして、そういう知識方面の力を得た奴は少なくとも身体は弱い。けど、シャドウを見る限りだと、それはあり得ない」
ステータスを急激に上げれば、身体は追いつかない。
鍛錬しなければ、どんなに高くても役に立たない。
実際に、その例が、俺達の世界で見てきたから、確信を持てる。
「つまりは?」
「はっきり言えば、天才の部類だろうね。少なくとも、俺の世界にいる勇者では対抗できないかもしれないね」
岩谷ならば、何かしらの策があるかもしれないが、それでもあの3人相手だったら、ほとんど無傷で倒せるのは間違いない。
「やはり、マスターは凄い」
「あぁ、誇っても良いよ、本当に」
そして、中二病では間違いないだろう。
だが、それは極めた感じであり、それを目指す為に努力を惜しまないのは、目に見えて分かる。
「・・・なかなかに話が分かる、ガンマが気に入るのも分かる」
「はぁ、そうなのか」
「所で聞きたい事がある」
「なんだ?」
そのままイータはこちらを見る。
「改造されるとしたら、どんな感じが良い」
「・・・えぇ」
まさかの質問に、俺は困惑を隠せない。
この子は、あれだ、マッドサイエンティストになりそうだ。
「いや、なんで」
「その鍵というアーティファクトも気になるし、様々な知識を持つ。マスターはマスターで興味深いが、ソラはソラで興味深い」
「あはははぁ、いやぁ、そういうのは遠慮しておこうかなぁ」
「ちゃんと殺さずにできるのに」
「そういう問題じゃないんだよなぁ」
この子、どこか似ていると思っていたけど、ある意味、ウルティマとどこか似ているような。
「・・・だめ」
「いや、そんな言い方しても、駄目な物は駄目だからな」
思った以上に、厄介なような。
「好きな改造をするから」
「いや、俺も一応は結婚しているから、そういうのは」
「結婚、ふむ」
すると、俺の言葉を聞いて、イータは腕を組む。
「・・・側室だったら、解剖しても良い」
「いや、なんで、そんな発想に!」
「だって、マスターが言っていた。愛し合う事でより分かり合える。愛し合う関係だったら、解剖しても良いと思ったから、ソラの事は嫌いじゃないし」
「そんな事で、決めちゃ駄目だからね!」
果たして、俺は元の世界に帰るまでは人間のまま帰れるのか。
「もしも、改造されるならば、どんなのが良い」
「・・・飛蝗の改造人間で」
「・・・ソラは変わっている」
ここで答えないと駄目と思ったけど、まさかこの子に変わっていると言われるとは。