「へぇ、別の異世界では、そういう感じなのかぁ」
「それで、お前は、なんだ、陰の実力者になりたい訳なんだな」
「まぁね」
残り1週間。
本格的に鳳凰を倒す為に元の世界に戻る事になった。
その際に、リリムをこのシャドウガーデンに預ける前に、シャドウこと、シド・カゲノーがどのような人物なのか確かめる為に話している。
「それで、転生前は高校生で、魔力を求めたら死んだと」
「まぁ、僕としては魔力がこの世界にあった事には驚きを隠せなかったね」
これまでは、シャドウガーデンにて、リリムが過ごしやすいように行動してみたが、シドと会話して分かった事としては、ある意味、純粋と言うべきだろう。
本来ならば、子供の夢だと笑ってしまうような、それも変わり種としか言えない陰の実力者になる為に努力をしていた。
おそらくは、元々生まれてからの才能、そして努力を行い続けたんだろう。
こちらの世界においても、それらの知識を使って、さらに発展した。
中でも驚いたのはスライムスーツだ。
普通ならば、倒してしまうスライムを武器として使えるように改造しており、その方法も普通の人間では考えられない。
「ある意味、狂人だな」
「うぅむ、まぁ、実際にそうかもしれないけど、もう少し言い方、どうにかならない?」
「そう言われてもなぁ、お前の言う具体的な陰の実力者って、どんな感じなんだ?」
「おぉ、それを聞いてくれるのか、僕が思うに陰の実力者とは」
そう、シドは言おうとした瞬間、そこで止まった。
「・・・いや、止めておこう。今更だけどね」
「というと」
「僕は本当に大切な事は言葉にしないんだ」
「・・・そうか」
「それにしても、本当にアルファ達はアカデミー級の演技だよね、こうやって付き合ってくれるから」
「うぅ~ん」
そこまで話して、俺は思わず腕を組んでしまう。
これは、どれが正解なんだ。
下手に真実を話して、果たして、こいつはどんな行動を取るのか。
ガチになる為に行動をするのか。
それとも、諦めるのか。
急な倫理観に襲われるのか。
何よりも、シドをここまで強くしたのは、皮肉にも、この『陰の実力者』への憧れだ。
事実、それによってシャドウガーデンの面々は助けられたのを考えれば、否定するのはどうか。
思い込みの激しさ。
ある意味、それが、シドにおける人間の限界を超えるだろう。
「・・・とりあえず、聞くが俺に対する印象は?」
「んっ、他の世界の住人でしょ、まぁ、僕の知識とかも合わさっているし、ある程度は納得出来るからね」
理解はきちんとしているだろう。
ならば、これ以上は止そう。
「それじゃ、とりあえずはリリムを任せても良いか?俺が戻ってくるまでの間だけでも」
「まぁ、それは構わないけど、どれぐらいで戻ってくるの?」
「分からない、鳳凰の奴はかなり面倒くさいからな」
「面倒ねぇ、それはそれで、戦ってみたいけど」
「世界と世界を渡り歩けば、レベルリセットをさせられるから止めておけ」
どんなにこの世界で鍛錬しても、元の世界では関係ない。
それこそ、波が起きない限りではな。
「まぁ、僕としては異世界の話を色々と聞けたから、良いよ。
あっあと、もしもこっちの世界に戻ってきた時にはお土産をお願い出来るかなぁ」
「いや、陰の実力者に合うお土産って、何?何でも黒にしておけば良い訳じゃないだろ」
「それは確かに」
とりあえず、祈るとしたら、こいつの行動がとんでもない方向に進まない事を祈るばかりだ。
「そう言えば、うっかりと忘れていたけど、どうやって帰るの?」
「んっ、鍵でドアを開ける」
「なんだか、見てみたいかも」
「別に見ても面白くないけど」
「いやぁ、直に見てみたいから、良い?」
「まぁ、別に良いけど」