俺達は、案内されるがままに、王座へと入った。
そこで待ち構えていたのは、一人の青年であった。
その格好は、現代でも見かけるような格好だった。
この世界においては、あまり似合わない格好であり、その意味が、俺達の警戒心を跳ね上がるには十分過ぎる。
「これは鞭の勇者であるタクト様ではありませんか? 国王はどうしました?」
女王の言葉から考えれば、おそらくは奴が例の勇者で間違いないだろう。
そして。
「国王? ああ、奴なら俺が殺したよ」
さも当然と言うかのように鞭の勇者はそう告げる。
さすがの女王も、いつもの澄ました顔に疑問の色が浮かぶ。
「聞き間違いでしょうか? もう一度お願いします」
「あんなクズは生きている資格は無い。この世から消えて貰った。悪知恵だけはあったからな。処分するのに苦労したぜ」
その言葉に俺も含め全員が警戒態勢を取った。
「……内乱でしょうか? そのような話は初耳ですが?」
「そりゃあそうさ、俺が城の連中に命じて口止めしてたしな。そしてメルロマルクの女狐。アンタも世界には不必要な奴なんだよ!」
その一言と共に、奴は既に構えていた。
あれは、まさかっ!
「ヴァーンズィンクロー!」
「爪っまさか」
そう、タクトの手には、禍々しい黒い爪が収まっている。
そして、見覚えのある、あの閃光が射出され、尚文の盾とぶつかり、盾を貫いた。
「な――」
同時に左肩を貫き、延長線上に居た女王さえも貫いていった。
直後、穿たれた体から、血飛沫が上がる。
この状況が罠である事は既に悟った。
同時に、不味い事になった。
「お前もなっ」
そう、こちらの方に向けて、仕掛けようとした。
だが。
「何をしている、お前」
聞こえて来た声と共に、俺達を襲おうとした攻撃を全て吹き飛ばした。
同時に、俺達の中央に立っていたのはティアマトだった。
「これが噂の鍵の勇者の守護者か、まだまだ子供じゃないか」
「・・・お前、敵だな、ならば容赦はしない」
「今は、逃げる事を先決しようっ」
俺の一言に対して、ティアマトはすぐに振り返ると共に、そこには肩を怪我している女王を見る。
「分かった」
それに対してティアマトは頷く。
「それを許すとでもっ」
奴らは、それを許さないように突っ込むがティアマトは口を大きく開け、そのまま周囲に向けて、青い光線を放つ。
「なっなんだっそれはっ」
困惑を隠せない奴らを無視し、ティアマトが睨む。
「来たら、殺す」
それは完全なる殺気。
奴らは、それに動く事が出来ない。
そうしている間にも転移する準備は出来、すぐに転移する。
同時に、俺は僅かに見えた。
そいつの姿を。
「あぁ、なるほど、どうやら、今度もてめぇが裏で手を引いたのか」
そこにいたヴィッチを睨みながら、確かな決意をする。
「女王はっ」
「これは、呪いですがっどうすれば」
そう、困惑を余所に、俺は瞬時に切り替える。
「さやか、頼めるか」
「うわっと、いきなり呼び出して何かと思ったら、なにこれ!」
「頼む」
「分かった、とりあえず横にして」
現状、俺が打てる手を打つしかない。
その悔しさと共に、俺は見つめるしかなかった。
敵が、何なのか分かっていたはずなのに、止められなかった。
最悪な事に、尚文の盾が奪われてしまった。