「また、寝ていたのか」
俺は、ようやく目覚める事が出来た。
それと同時に疲労感はあまり残っていない事で心配しながらも、立ち上がる。
「ようやく起きたか」
「尚文、その今の状況は」
「もうすぐ、奴らとの戦争が始まる」
「そうなのか」
それに対して、俺は何も言えなかった。
「結局、俺はまた」
「いいや、お前のおかげで、こちらの犠牲者は今の所はほとんどいない」
「えっ」
それには、驚きを隠せなかった。
すると、尚文の隣には、クズが立っていた。
その手には杖を持っており、俺を見ていた。
「ソラ殿、この度は感謝します」
「えっと、えぇ?」
その謝る姿を見て、俺が始めに思ったのは、誰だという疑問だった。
姿や声こそ、確かに俺をこの世界に呼び出したあのクズで間違いないだろう。
だが、そこから出る気配も、威厳もまるで違う。
「これは一体?」
「お前が女王の治療に専念してくれたおかげで、女王は今も生きている」
「生きているのか」
それには一つの安堵があった。
しかし。
「だけど、まだ目覚めていません」
「えっ」
その報告に、俺は思わず手を握り締める。
「奴が放った呪いによって、女王は昏睡状態だ。今は呪いによる死を回避する為になんとかしているが、それでも解除するには」
「タクトを、奴をなんとかしなければならないのか」
それに対して、尚文は頷く。
同時に、クズはそのまま頭を下げる。
「ソラ殿、どうか、私に力を貸して下さい!」
「お前」
「ワシの目が曇っていた。悲しみに、大切な者を守ると言う名の腐敗に身を任せ、過去の憎しみを押し付けてしまった。
今度こそ、大切な者を守る為に、力を貸して欲しい」
「・・・」
その言葉に、嘘はなかった。
同時に俺もまた頷く。
「力は貸さない」
「・・・」
その言葉に対して、クズは震えているのを感じた。
だけど。
「俺1人の力なんて、大した事ない。
例え勇者だろうとな。
何よりも、力って貸したり与えたりする物じゃない、合わせるものだ」
誰よりも非力な鍵の勇者だからこそ、分かる。
「そうじゃな、知恵だけでは無理だ。力だけでも無理。
だからこそ、合わせる物ですな」
「あぁ、だからこそ、改めて、俺の力も一緒に使ってくれ」
それに対して、クズもまた頷いた。
「お前は本当にとことん変わっているな」
「そう言われてもな」
そう、俺は頭を掻くしかない。
「それで、勝算は」
「既に、何よりも鍵の勇者殿の守護者達の力があれば、作戦は幾らでも立てられる。
何よりも、シノン殿がいればな」
「シノンが?」
それには尚文もまた首を傾げた。
「鍵の勇者、その名はこれまで聞いた事はなかった。
だけど、それらは当たり前だった、それは勇者の武器ではなかったのだから」
「どういう事なんだ?」
尚文が続ける最中、シノンが現れた。
「・・・曇っていた目、少しは晴れた様子ね」
「えぇ、しっかりと、そして、この事は」
「話さないでくれるとありがたいわ、なんだって、波の向こうにいる奴にバレたくないから」
「了解しました」
それと共にクズは理解したように頷く。
「クズ、一つ聞く」
「なんでしょうか」
「シノンは、敵じゃないんだな、確実に」
「えぇ、この方は間違いなく、我らの味方である事を」
「・・・ならば良い、今はあいつらを叩く」
同時に尚文も頷く。
シノンの、この事は俺もまた今は聞かないべきだろう。
「聞かないのね」
「あぁ、シノンを信じる事にしたからな」
俺はそれだけ言い、すぐに向かう。
「ありがとう」
そう言ったシノンの声に、俺もまた頷く。