次の波の戦いに備え、旅に出る事にした。
この王国付近でレベルアップをしても良いが、正直に言えば、あのまま王国に留まれば、何か危険があると感じ、そのまま旅立つ事にした。
旅立つ前に、岩谷が紹介してくれた武器屋の店主であるエルハルトさんから様々な防具を貰い、旅に出る。
お手頃な値段で手に入れたとは思えない程になかなかに良い装備もあり、旅の道中は苦労は少なかった。
そうして、辿り着いたのは、村だった。
周りを見ると、亜人の姿が見える。
だが、その村の様子は、王国で行われた奴隷のような扱いではなく、普通の村人と変わりない仕事だった。
確かにあまり裕福と言える環境ではなかったが、それでも奴隷の生活と比べれば、まだマシだった。
「なんというか、少しホッとしている」
「どういう事?」
「いや、そのな。
この世界に来てから、周りにいる人間が結構酷い奴らばかりだった。
それこそ、良い人はほんの僅かだけだった。
それでも、確かに誰かの為に頑張っている人がいるんだなと思って」
この村の人の様子を見れば、それが分かる。
この村の領主は良い人だと、この村の様子を見れば、すぐに分かる。
王国を出る前に、岩谷が紹介してくれたエルハルトさんを始めとした人々が良い人だと分かる。
「あぁいう人達の為だったら、俺も別に無茶をしても良い。
けど」
同時に理不尽な事を行う人物達もまた思い出し、腹が立つ。
「……んっ?」
そうしていると、シノンは何か気づく。
「どうしたんだ?」
「あれ」
そう、シノンが指を指した方向。
見ると、村人である亜人。
それも遊んでいる子供達が、攫われている。
周りの大人達に気づかれないように、子供達だけを連れていく。
そして、子供達を連れ去った亜人が乗った馬車は走り出す。
「ちょっと行ってくる!」
俺は慌てて追いかける。
シノンの身体能力は高く、同時にその弓矢は、馬車の動きを止めるように矢が放たれていた。
おかげで馬車は止まり、同時に飛び出す奴らを瞬時にシノンが撃ち抜く。
「よし! 捕まえてやるぞ!」
俺は剣を抜き、馬車へと近づく。
すると……
「お前達は何者だ!?」
御者が俺達の方を見て声を上げる。
「ただの通りすがりの冒険者だ。
それよりも、お前ら、なんでここにいる子供達を攫おうとした」
「それはっ」
「おい、なんだ、この騒ぎは?」
同時に、馬車が壊れた音に気づき、村人達が近づく。
「おいっ、こいつは隣村のっ」
「知っているのか?」
それを見て、亜人の男性が気づいたように、目を見開く。
「あぁ、こいつは隣の領主の兵士だ!
何度もここに来たのを見かけたけど、まさかまた人攫いをっ」
「何度もあったのか?」
「あぁ、あの領主は悪い噂しか聞かないからっ、けど」
「……その隣の村では、他にも奴隷が?」
「あぁ、けど証拠がなくて」
「証拠があれば、なんとかなるのか?」
「あっあぁ、けどそんな事は」
「なんとか、してみるよ」
そう言いながら、俺はそのまま村から出る。
本当だったら、レベルアップに専念したいが、こんな事を知って、放っておくのも気分が悪かった。
それと共に、この状況で最適な守護者の鍵を選ぶ。
「シノン、悪いけど、交代してくれるか」
「別に良いわよ。
まぁ、あの子だったら、大丈夫だと思うけど」
そう言いながら、シノンはそのまま消える。
同時に、代わりの鍵を取り出す。
「現れろ、乙女座の守護者! 2B」
その言葉と共に、現れた人物。
シルバーブロンドのショートボブにカチューシャ、黒いゴシックドレスやサイハイブーツというシックでありながらセクシーかつワイルドな外見をした女性。
その女性こそが、乙女座の守護者である2Bだった。
「任務か、マスター?」
そう俺に問いかける。
「隣の村で囚われている亜人達の救出と、領主の不正を暴く」
「了解した」
2Bは、そう冷静に呟く。
変わらず、無表情に近い。
彼女は、人間ではなく、人間に近い魔導ゴーレムである。
そして、彼女は様々な状況での隠密行動に長けている乙女である。
「それでは、参りましょう」
「えっと」
そのまま2Bは当然のように、俺を抱き抱える。
それは所詮、お姫様抱っこと言えるものだった。
2Bは、その能力のバランスは良く、近接戦闘にも長けているので、シノンの次に活躍する。
ただ、問題があるとすれば、彼女自身、真面目な性格もあってか、こういう行動を天然でしてしまうのだ。
そうして、辿り着いた屋敷。
そこは、領主が住んでいるという事で、警備はかなり厳重だった。
しかし、2Bからしたら、その警備はザルも良いところだ。
あっさりと門番を気絶させて侵入に成功する。
俺は2Bに抱き抱えられたまま、屋敷の中へと入っていく。
「……ここに、反応があります」
「本当か」
その言葉と共に2Bに案内されたのは、地下へと続く階段の前だった。
「この下に?」
「はい」
俺達はゆっくりと地下への階段を下る。
そこには鉄格子に囲まれた牢屋があった。
そしてその中には、ボロ布に身を包んだ亜人の姿があった。
酷い有様だ。髪もボサボサだし、手足には無数の傷跡がある。
しかも顔色が悪く、やせ細っている。明らかに栄養失調の状態だ。
亜人は怯えた目でこちらを見る。
『助けて』
そう言っているように聞こえた。
「あぁ、勿論だ」
既に、決まっている。
俺はその手に鍵を持つ。
もしも、この力が本当だったら、できるはずだ。
そのまま鍵を奴隷の子に向け、そっと置く。
すると、奴隷の子にある奴隷紋が解除される。
同時に、次々と行っていく。
「さて、あとは脱出だな。
2B、頼めるか」
「了解した」
その言葉と共に、2Bの案内と共に囚われていた奴隷の子達と脱出をした。
同時に、2Bが手に入れた不正の証拠と共に。