※この作品はR-18です。

シュマゴラスのかわいさのあまり死ぬかもしれない   作:きー子

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その1

 ぬめぬめとした何かが首筋を這いまわる感触で、目が覚めた。何事かと慌てて起き上がってみれば、視界にゆらゆらと揺れる触手が映る。くねりくねりと生々しくたなびく、いかにも有機的な緑色の触肢だった。

「遅いでシュ。いつまで寝てるでシュ!」

 

 すっかり聞きなれた愛らしい声色が、ベッドの下から聞こえた。俺はぐしぐしと目を擦って速やかに眠気を晴らす。自身を咎める言葉に果たして今は何時なのかと枕元の時計をたぐり寄せれば、時刻はいまだ昼前にすらも届いていなかった。

 

「まだ早い時間じゃないか。もちっと寝かせてくれ」

「時間よりもシュマが優先されるべきでシュ」

 

 大きなあくびをする俺に向かって堂々と、シュマゴラスは言い切った。

 振り返ってみれば翡翠色の球形から等間隔で伸びた触手が、彼女の情動に応じて激しく宙を泳ぐ。彼女は自らの眼前で腕を組む姿勢を取り、いかにも不満気に伏目がちな眼をぱちぱちと瞬かせていた。球状の胴に据え付けられた、大きな単眼。その中心に座する紅玉のようにつぶらな瞳が、俺をまっすぐと見つめた。

 睨みつけているつもりなのだろう。そう察しつつも、思わず笑みが零れてしまう。溢れんばかりの愛嬌が、凄みを見事に打ち消してしまっていたからだ。その愛らしさの余り、庇護欲さえもが沸々と煮え立ちそうになる。

 

「わかったわかった。で、どしたんシュマちゃん」

 

 俺はベッドから下りてシュマゴラスを見下ろす。彼女の背丈は触手の全長を含めても、せいぜいが一五〇センチ程度でしか無い。なんでも当人曰く、"本来の二十分の一"の大きさに縮んでしまっているのだという。

 

「……朝食を要求するでシュ」

 

 そんな彼女の言葉の歯切れは悪い。威勢よく起こしにきたくせに、とも思うが彼女の心情を思えば無理もなかった。シュマゴラスは今、俺の家に居候している身の上なのだ。もっとも、俺からすれば俄然として望むところなのだが。

 単眼の周縁をいささか紅潮させ、シュマゴラスはもじもじと触手の先端を擦り合わせる。「ダメでシュか」そう言いたげにシュマゴラスは上目遣いに俺を見上げた。

 

「いや、調度良かった。ご飯にするか」

 

 彼女の落ち着きない理由がひとつだけではないことを、俺は知っていた。悪戯心の誘うままに笑みを浮かべて、俺はシュマゴラスのもとへ歩み寄る。そして迷うことなく、寝間着のズボンと肌着を下ろした。自然、朝勃ちで半ばほどにまで昂っていた雄の滾りが彼女へと突きつけられる。そのあまりにも性急な勃起に、シュマゴラスを染めていく紅の色彩はひときわ深淵なものとなる。

 

「そういや、夕べは抜きになっちゃったもんな。腹空いたろ」

「肉体など無意味でシュ。まずは魔力でシュ」

「そういうもんか」

 

 ふたつめの、理由。

 人間の様に肉体を重視するならば、人間と同様の食事を摂取するはずだ。何もこんな"食事"を行う必要は無いだろう。ところが、魔神であるシュマゴラスが欲するのは、熱量ではなく魔力。加えて魔力という栄養を確実に取り入れるために最適な、シュマゴラスにとっての栄養源、すなわち──

 

「……でわ」

 

 精液、であった。

 ゆっくりと肉棒に向けて差し伸べられた触手が、先端からしゅるりと亀頭に巻き付いてくる。半ば以上に剥けかけであった包皮を手早く捲り上げ、雁首までをもそつがない手つきで露出させていく。敏感な性感覚に絡み付くぬるりとした感触に、思わずくぅと呻くような声を漏らしてしまった。

 シュマゴラスは直視に耐えかねるかのように彼方を向きながら、俺の姿ばかりは逃すことなく流し目に視線を投げかける。くすぐったさに身をよじらせれば手を緩め、快楽に背筋を震わせれば寄りすがる触肢を早め。彼女の観察眼は俺の性感を余すところなく汲みとって、その成果をすぐさまに奉仕の手管へと反映させた。

 

「──は、くぅ……っ」

 

 半勃ちだった男根は瞬く間に腫れ上がり、腹に付きそうなまでにいきり立ってしまう。幹はますます硬くなり、蒸しあがった淫らな熱が肉竿の全貌から白い湯気と化して立ち上りそうなほど。立派に出来上がった怒張へ粛々と縋りつく触手は、しかし昂奮に抗えぬかのように絡みつかせる本数を増した。

 一本、二本、三本。それぞれが隙間なくまとわりついては、まるで肉筒に包み込まれるかのごとく。粘っこく吸い付くような感触は、誇張なしに動かないままでも肉棒が跳ね上がりかねない快感を生み出した。

 

「……もう震えてるでシュ」

 

 目の周りに朱が差したまま、妖しく微笑するシュマゴラス。男を誘うかのごとく妖艶な媚態に、ぞくりと背筋が震える。刹那、彼女はにゅるにゅると触手を使い出した。恥垢を穿り返すかのように亀頭溝をなぞり、肉幹を懸命に扱きたて、鈴口を先端でくすぐる。溢れ出す先走り汁さえすくい取られ、ぬめりは丹念に亀頭へと塗りつけられていく。その都度に、快楽のあまり膝がガクガクと震えた。腰回りから射精欲求が続々と湧き上がり、根本に性欲の蟠りが掻き集められていくのを感じる。

 

「出そうでシュか。早漏、でシュ」

「……よ、よすぎ、るっ」

「オマエの力に合わせてやってるでシュ。──シュマの心遣いに震えるでシュ」

 

 すでに彼女の巧みな腰使い、ならぬ触手使いに震わされているわけだが。

 などと余計な思考をする暇さえなく、欲望が止めどなく先汁となってわき上がる。にわかに白っぽいものが混ざり始めた粘液は、すぐさま触肢に巻き込まれて泡立ちそうな粘っこい手触りの慰撫をもたらす。

 限界を訴えるかのように膨れた亀頭が、次第に鈴口を開かせ始めた。それに応じてあてがわれた触手の先端が、ぴったりと噴出口に張りつく。吐精への期待にか、触肢が小刻みにうごめいた。絶頂の予兆に痙攣する肉棒を、触手が容赦なく追い立てるように擦り上げていく。

 

「で……射精(で)、そッ」

「……こらえるなでシュ」

 

 瞬きも控えたシュマゴラスの瞳が、俺の様子をつぶさに注視する。一段と早められた手扱きにも、いよいよ本格的な熱がこもった。支えるように根本へと触手を巻きつかせたまま、雁首から幹に掛けての過敏な部位を重点的に扱きはじめる。それは男を昂らせるためでも、あるいはもてなすためでもない。まがうことなき、雄から精を抜く──搾り出すための手技であった。

 その嬉戯に、俺は呆気無く屈服する。ぞわぞわと下肢を包み込む甘い痺れが、腰を貫くような鋭い悦楽となって怒張からほとばしった。

「出、るっ……!!」

 びゅく、びゅる、どぷっ──どぷんっ。

 それこそ音が立ちそうなほど濃厚な白濁を重く吐き出しながら、俺はぶるぶると全身を貫く快感に痙攣する。精をぶちまける肉棒は言わずもがな。激しい脈動をともなって吐き出される子種が、あてがわれた触肢にたっぷりとぶちまけられていった。──その途端であった。

 

「──いただきまあシュ」

 

 媚態じみた声音と共に、鈴口へと押し当てられていた触手が口を開いて肉棒を銜え込む。ぬめつく熱でいっぱいの口腔が、粘膜のふれあう快楽を伝達する。ねとねとと吸い付く淫襞が、男根へ揉みほぐして更なる吐精をうながすのだ。

 涎さえ零してしまいそうになる法悦を、なんとか歯を食いしばってやり過ごす。暴れまわる肉幹の敏感さを気取ってか、内側の締め付けは次第に緩やかに雄の欲望を誘い出すような甘ったるい刺激となる。存分に吸精の快感を味わいながら、未練がましく脈打つ肉棒が終いのザーメンを吐き出してにわかに萎びた。

 ちゅる、ちゅる、じゅるっ──精を吸い上げる淫らな、そしてはしたない音が響き渡る。花も恥じらう乙女ならば聞くに堪えない淫奏だが、シュマゴラスは視線を伏せて瞳を蕩けさせていた。紅眼はかすかに濡れて、見るからに交情に昂ぶっているのだと知れる有様だ。緩やかに白濁を己が身へと染み込ませていく彼女の様子を茫洋とした意識のまま眺める──と、不意に下肢を嬲る甘ったるい快感。

 触肢の肉穴が、口付けるかのごとく肉棒を締め上げていたのだ。

 

「しゅ、シュマ、すぐは……ッ」

「今に寄越すでシュ。二食分でシュ」

「ひどい」

「オマエはシュマの物でシュ。オマエのちんぽもシュマの物でシュ」

「なおひどい!」

 

 またぞろむくむくと肉欲を煮えたぎらせ始めた怒張、シュマゴラスはそれをちゅぽんと吐き出して外気に晒す。間断を与えぬよう、触肢は張り詰めた亀頭にすかさず巻き付いてこすぐるような刺激を加えてきた。

 包皮を被せ直し、あるいは再び捲り上げて。綺麗に仕立て直すかのごとく亀頭冠を這いまわり。触れるか触れないかの淡さで、ツゥと裏筋を辿り伝わせ──絶頂直後の過敏な陽根に、強すぎず弱すぎず弄ばれるような奉仕は実に具合が良い。男の性感を完璧に理解した娼妓顔負けの戯れに、否が応でも肉の疼きはやわやわと高められていく。

 果たして出来上がった肉棒は、まるで熱した鉄棒のような硬度と熱を誇っていた。

 それを見止めたシュマゴラスは、俺の逸物に絡みつかせていた触肢を引き上げ、昂ぶりを早々と置き去りにする。

 

「もう飽きたでシュ」

「無体な!」

「イヤでシュか。なら──」

 

 彼女は床に横臥するかのごとく自身の身体をくるりと丸めると、いくつもの触手を重ねた縒(こより)を練りこみ、俺に向かって突きつける。その先端には小さな肉門が据え付けられ、呼吸するかのごとく断続的な収縮を繰り返している。唇にも見えたその艶姿は、名状しがたいほどに淫靡な肢体であった。

 

「ココに、ケダモノみたいに腰を振りたくるでシュ」

 

 シュマゴラスもまた、興奮を隠しきれないように目元を火照らせていた。紅玉の瞳を目縁に寄せ、情欲に濡れた視線を送ってくる。男を誘うかのような仕草で、丸っこい身体をしなやかにくねらせた。彼女の陰門が、自然とほのかに綻んでいく。

 

「シュマ、入れるぞっ、挿入(いれ)るからなッ!」

 

 その一瞬で理性の全容を吹き散らされる。次の瞬間、俺は思う様に淫欲滾る肉の楔をシュマゴラスの淫門へと突き入れていた。呆気無く開門を許した彼女の内壁は、男を拒むどころかむしろ迎え入れるかのように雄の幹へと吸い付いてくる。のみならず、もはや逃さぬとばかりに根本まで打ち込まれた陰茎をその根本から食いしめるのだ。

 並々ならぬ、目も眩むほどの淫楽──俺はその感覚に足腰を震わせながらも、しっかりとシュマゴラスの触手塊を手に抱える。

 

「く、ぅああっ……!」

「止まってるヒマはないでシュ」

 

 残る彼女の触手が俺の腰の後ろへと回る。まるで支えるかのような所作だ。しかし俺はその気遣いをお構いなしに、容赦なく腰を振りたくってしまう。押し入れるように腰を前に突き出すと、深く咥え込むかのように淫襞が穏やかに蠕動する。腰を後ろに引けば、決して肉棒を抜き去られないよう貪欲に締め付けて離そうとしない。

 抽送を幾度となく繰り返すたび、肉壷が竿を舐めつくす。際限なく積み重なっていく快楽に、俺は堪えがたく身をよじった。常ならばとうに吐精を迎えているだろうほどの快感を味わっているにも関わらず、絶頂が訪れないのだ。腰を引っ切り無しに振りたくる様は、きっと獣欲に支配されきっているに違いない。

 

「……浅ましい、ナマモノでシュ」

 

 ぱちゅ、ぱちゅ──ぬじゅ、ぬち、ぬちゅり。恥知らずに響き渡る音色に入り交じり、からかうような嬌声が囁かれる。しかしそれすらも、今の俺には快楽のスパイスに足る代物であった。ぞくぞくと肌を泡立たせる肉の疼きに任せて腰を突き入れ、互いの敏感な粘膜を存分に擦り合わせる。体液を交わらせる。

 

「──シュマが抱いてやるでシュよ」

 

 ぬるる、と肉襞にまとわりつかれながらも腰を引いた瞬間だった。シュマゴラスの触手がぐいと俺の身体を腰から引き寄せ、そのまま目の前に押し出させたのだ。しっかりと肉棒をほおばった肉壁は当然のように俺のモノを抱き寄せ、淫らな肉の壷で間近に掻き抱く。

 さながら、それが引き金になったかのようだった。

 股ぐらの奥底から、射精への衝動が沸々と吹きこぼれるかのように沸き立った。甘く痺れるような鋭い快感が、加速度的に増していく。

 寄り縋られ、招かれているにも関わらず俺の腰はとどまることを知らない。肉襞を引き剥がすかのように退かせ、性懲りもなく淫楽を味わうために肉棒を繰り込む。

 シュマゴラスは俺の耳元付近で、まるで息をひそめるかのごとく小さな笑い声を漏らした。甘い誘いにも似た音に衝き動かされ、俺は一等深々と腰を突き込んだ。

 

「──シュマッ、シュマの中(カオスディメンション)にだすからなッ……!」

「射精すでシュ、シュマの一部になるでシュ……ッ!」

 

 鮮烈な脈動をともない、シュマゴラスの奥底に向けて精を吐き出す。その白濁の夥しい分量たるや、先刻の射精の比ではない。断続的に全身が不随意に跳ね、痙攣し、そのたびに延々と噴出する。真っ白な汚濁が彼女の内側を染め上げるように汚していく様は、外側からでは観測することも出来ない。

 それでもシュマゴラスは、深々と精を受け入れる毎にか弱く俺の肉棒を吸い立てていた。搾り上げる類の激しさではなく、むしろ巧緻に揉みほぐすかのごとく繊細に。心地よさのあまり、自然と腰をゆっくり前後させてしまう始末だった。そのまま緩やかに吐精を促されて、最後の一滴までをも余すことなく彼女の内側に出し尽くしていく。

 

「美味しい、でシュ……濃厚、でシュ……」

 

 シュマゴラスはどこかうっとりと蕩けた声で、精を最後まで取り込んでいく。目元を赤らめる紅の深みは、まぎれもない恍惚の証だった。触手も発情したかのように薄っすらと上気して、言い知れぬ妖しげな魅力を演出している。邪淫に溺れた痕跡のごとく身体をはみ出し床を這いずりまわる触手が、淫らがましいイメージを否が応でも想起させた。

 くなり、くなりと身悶えして触手をよじらせるシュマゴラス。その愛くるしい様に目を細め、俺はようようの気持ちで話しかけた。

 時間にしては一瞬だったのかもしれない。しかし感覚としては、ようやっとの思いで絶頂から下りてこられたような心地である。

 

「……シュマちゃん──満足、した……?」

「許す、でシュ──」

 

 俺はその言葉を聞いて溜息を吐く。

 

「──朝のところは」

 

 俺は死ぬかもしれない。

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