今回はリクエストより、「ディーパーではなくフランシス達に8号が回収されたら?」と言う話になります。
それは本当に偶然の産物であった。
恭子の悪事が暴露され、フランシス達との決別の果てに海都から逃げ出した。その最中、瑠璃と8号の戦いに決着がつき敗北した8号は海に落ちた。それだけならまだしも、その際に海中で鮫に襲われた。だが生に執着する8号はそのまま鮫の餌になる様な事はしない。食らい付かれながら、抵抗して体を食い千切られる前に脱出した。
しかし彼女に出来たことはそれが限界だった。元々鮫に食らい付かれた時点で体力が限界だったのだ。この上鮫に体を食い千切られそうになったのを防いだことで、彼女は力尽き海を漂いながら死を待つだけ…………その筈だった。
これが本来の物語であれば、彼女はシーラカンス・ディーパーに回収されラハブの細胞の一部とライフコインを植え付けられディープラビニとなって瑠璃の最後の敵として立ちはだかる運命であった。
だが…………この物語ではそうはならなかった。
「…………ん? あれは……?」
海都を去った後、恭子から報酬を貰えなかったフランシス達は新たな仕事を請け負い航海に励んでいた。
同業者からの妨害を防ぐ為、船の最上階のデッキで見張りをしていたバーツ。その彼の目に、海上を漂う8号の姿が映った。最初それが何なのかを理解できなかったバーツだが、近付くに従いそれが海上を漂う人であり更にそれが8号であると気付くと流石に慌てた。
「おいおい、マジかよ……!?」
一度は決別しいがみ合った間柄。そもそもそれ以前から決して良好と言える間柄ではなく、会話もろくにしなかった。だがだからと言って見捨てると言う選択肢を躊躇なく選べるほど彼は人でなしではない。
「兄貴、ちょっと船を左に寄せてくれ! あの8号って奴が漂流してやがる!」
海都での戦いの最中、海に落ちた8号が鮫に襲われたと言うのは知っている。正直彼も8号はそこで鮫の餌になり死んだと思っていた。
だが今ああして漂流している8号がまだ生きている保証もどこにもない。あれが鮫の食べ残しで、既に彼女が息絶えていないと言う保証はない。
しかし仮に死んでいるのだとしても、せめて弔い位はしてやりたかった。例え仲が悪かったとは言え、同じ船の上で過ごしたのであれば見捨てるのは忍びない。それは彼なりの矜持でもあった。例え悪党であっても、死者は冒涜しない。彼はアウトローであっても、仁義は重んじる人間なのだ。
海に入り8号を救助したバーツは、彼女が虫の息であるがまだ生きている事に一応の安堵をした。決して仲が良かった間柄とは言えないが、それはそれこれはこれだ。
とは言え繰り返すが虫の息である。このままではいつ死んでもおかしくないと、バーツ達は出来る限りの手当てを施した。その結果、8号は一命を取り留める事に成功した。
バーツにより救出されてから数時間後、8号は宛がわれた船室で目を覚ました。
「ぅ……? ここ、は……?」
最後の記憶に残っているのは、自分を敗北に追い込んだテテュスが伸ばした手を払いのけて海へと落ち、そこで鮫に襲われたところまで。そこから先にどうしたのかは覚えていない。ただ朧気ながら、体を食い千切られそうな激痛の中、鮫に対し抵抗したような気がする。もうその時点で体力も精神力も限界だったので何をしたのかも覚えていないが、兎に角ここがあの世には見えないところを見るに何とか生き延びて何処かの船に救助されたのだろう事は分かった。
「そう、か……私、生きてる……!」
自分がまだ死んでいない事を確認すると、涙が零れてくるのを感じた。今までも生にしがみ付き、時には姉妹と言える存在とも殺し合いをして来た。他のクローンを蹴散らして生き残ってきた時には、こんな感情を抱いた事など無かったのに…………
一頻り涙を流し、落ち着いた8号は今度は今自分が居る場所に疑問を抱いた。ここが船の中である事は間違いない。こうして横になって静かにしていても感じる波の動きによる揺れは、海都では感じる事のなかった船独自の感覚だ。同じ海上に浮かぶ人工物であっても、海都は人が生活しやすいようにと波の動きによる揺れすら制御している。
そうなると必然的に自分はどこかの船に拾われたと言う事になる。鮫に食われかけて海の上を漂流する自分を拾ったのは、一体どこの誰なのかと疑問を抱きベッドから起き上がろうとした。
だがその瞬間、8号の体に鋭い痛みが走った。
「ぐぅっ!?」
とても起き上がれる痛みではなく、8号は再びベッドの上に沈んだ。考えてみれば当然か。テテュスに敗北し、更には鮫に食われかけたのだ。生きているだけでも幸運、まして確認した限り四肢に欠損も見られない。あの状況で五体満足で居られたのだから、一生分の運を使い切ったと言っても過言ではないだろう。
ベッドの上で痛みと戦いながら、誰かが来ることを期待して待っているとドアノブが動くのを感じた。先程の苦悶の声を聞いたのか、それとも定期的に様子を見に来たのかは分からないが兎に角助けてくれた誰かが来てくれた。
一体どこの誰が自分を助けてくれたのかと8号がドアの方に目をやると、入って来たのは彼女にとって少々意外な人物であった。
「よぉ、起きたみたいだな?」
「えっ!? あ、アンタは……!?」
部屋に入って来たのはバーツだった。彼は8号が起きているのを確認すると、近くから椅子を持ってきて前後逆にして背凭れの上に腕を乗せその上に顎を乗せる形で座った。
その際手にはベクターリーダーを持つ事を忘れない。漂流していたところを拾ったとは言え、最後の記憶は互いにいがみ合い敵対したと言っても過言ではない状態。何時飛び掛かってきてもおかしくはない。
尤も今の8号は満身創痍、体力も意識を保つ事が出来る程度で、とてもではないが人一人を押し倒す事すら出来無い有様なので完全に杞憂だったが。
「まさか生きてたとは思わなかったぜ。鮫に食われて死んだと思ってたのによ?」
「フン……残念だったわね」
意外そうに告げるバーツに、8号は強がって嘲る様に返した。しかしバーツには通用せず、彼は軽く肩を竦めると通信機を取り出しフランシスに連絡を取った。
「フランシス兄貴、バーツだ。あの8号って呼ばれてた姉ちゃん似の奴が起きたぜ」
『分かった、ちょっと待ってろ』
瑠璃に似た女呼ばわりされたのが気に食わなかったが、実際その通りであり似ているも何もクローンなので何も言い返せない。だから8号はバーツを鋭く睨むだけでそれ以上は何も言わずに黙っていた。
そうして程無くしてフランシスとエドワードの2人も部屋に入って来た。バーツは2人が入って来ると、フランシスに椅子を譲り自分は壁際に寄った。一応はこの船の責任者と言う立場と言う事もあって、尊重しているらしい。間抜けな部分も目立つが。
「よっこいせっと。え~っと? 気分はどうだ?」
「さぁね」
「おいおい、自分の事だろう? 何処か痛むところとか無いのか?」
「逆に聞くけど、痛まない所があると思う?」
徹底して捻くれた返答ばかりを返す8号に、バーツは面白くなさそうに鼻を鳴らしエドワードは小さく溜め息を吐く。分かってはいたが物凄く警戒されている。最後の関係があんなだったから仕方ないか。彼女からすれば彼らは裏切り者だ。
しかしフランシスは気にしない。大物なのか、それとも頭が空っぽなのかは分からないが、8号の警戒心剥き出しの捻くれた回答にも気分を悪くした様子もなく話を続けた。
「まぁ、それもそうだな。何せ鮫に食われかけて死に掛けたんだ。これでもうへっちゃらだなんて言われたらその方が驚く」
「何で私を助けたの?」
「そりゃバーツに聞け。お前さんを見つけたのはバーツだし、助けたのもバーツなんだからな」
8号の視線がバーツに向く。自分に話題が向いた事に彼は小さく舌打ちすると、手の中のベクターリーダーを弄りながら答えた。
「別に大した理由なんてねぇよ。ただ放っておけなかった、それだけだ。恩を感じなくたっていい」
それだけ告げると、バーツは壁から離れて部屋から出て行ってしまった。不貞腐れたような顔で出て行く弟分に、フランシスは仕方がないと言う様に溜め息を吐いた。
「やれやれ、アイツも素直じゃない」
「一度は裏切った相手を助けちまってバツが悪かったんだろ。放っておけ」
「分かってるって」
出て行ったバーツの後ろ姿を見送る様に話す2人を交互に見て、8号は若干先程よりは警戒心を解いた。まだ完全に信用する訳では無いが、少なくとも今すぐ排除されたりする訳では無さそうだと言う事は理解できたらしい。
そうなると今度はこれからの自分の扱いが気になる。曲りなりにも恭子の補佐として海都に、S.B.C.T.に敵対していた。つまりは犯罪者に区分されて然るべき存在だ。このままお咎めなしで終わると思ってはいない。
「私は、これからどうなるの?」
僅かに不安を滲ませながら8号が問い掛けると、2人は互いに顔を見合わせ上を仰ぎ唸り声を上げて悩み始めた。その意外な反応に8号も目を瞬かせる。
「「ん~~……」」
「え? 何その反応?」
「どうすっかな、この姉ちゃん……」
「届け先何てねえからなぁ……」
「私の事、突き出さないの?」
てっきりさっさとS.B.C.T.に突き出されるなりするかと思っていたのだが、この反応は予想外だった。
それもその筈で、本来彼らとS.B.C.T.は相容れない間柄なのだ。S.B.C.T.は元はと言えば日本警察内の一組織から発展した存在。対してフランシス達は非合法の荷物運びを請け負うアウトロー。本来であれば両者は追う者と追われる者の間柄が一番相応しい。そうでなかったとしても互いに出来れば不干渉でいたいと言うのがフランシス達の意見だった。海都では已むに已まれぬ事情なんかもあって情報提供を行ったが、フランシス達3人がベクターリーダーを所持している事も合わせてあまりお近づきになりたくはない相手なのである。
何より、今彼らは海都から大分離れている上に、別の仕事を請け負っている真っ最中。悪戯に寄り道をする訳にはいかないと言うのが彼らの現状であった。
となると、至る結論は1つしかない。
「ま、ここで放り出す訳にもいかないし、姉ちゃんは暫く大人しくしてもらうか」
「は?」
「武器の類は持ってなかったし、アンタと俺らはもう敵対する理由が無いからな」
「ちょっと?」
「そんな訳だから、暫くは仲良くしようや」
フランシスは握手を求めるように手を差し出してくる。思っていたのとは違う展開に困惑した8号は、その手を取る事も忘れて差し出された手とフランシス、エドワードの顔を何度も見やった。
その時、不意に彼女の腹から空腹を知らせる音が鳴った。目が覚め、落ち着いたところで体が空腹を訴える余裕が生まれたらしい。
思わず腹を押さえて赤面する8号。見た目相応の反応を見せる彼女にフランシス達がちょっぴり微笑ましく思っていると、先程出て行ったバーツがトレーの上にスープとパンを乗せて戻って来た。
「兄貴、そいつ腹鳴らした?」
「あぁ、たった今な」
「んじゃ、これ」
バーツは8号の寝ているベッドのサイドテーブルにトレーを置いた。スープから立ち上る湯気と匂いに、知らず彼女は喉を鳴らす。
「暫くは面倒を見てやる。どうするかは回復してから考えな。安心しろ、大人しくしてる限りは放り出したりしねえよ」
それから暫くの間、8号はフランシス達の世話になった。
完全に警戒心が抜けていない彼女のことを考慮して、接触は極力最低限。毎食3度の食事を運ぶ時と、包帯の取り換え、更には体を拭いたりなどだ。
割と至れり尽くせりである。
とは言え相手は見た目年頃の女性と言う事もあって、包帯の取り換えや体を拭くのは彼女の手が届き辛い所のみ。そこら辺はちゃんと考慮されている。
彼らの看病の甲斐もあり、また生まれる過程で強化されていたのもあってあっという間に傷は癒え数日もしない内にベッドから出る事が出来るようになっていた。
その頃、この船に新たな同乗者が増えた。海羽である。
瑠璃の妹分である海羽が、乗っていた船が謎の沈没をして1人海上を漂流していたところをやはり見張りをしていたバーツにより助け出されたのだ。その様子を遠目に見ていた8号は、忘れていた警戒心を再び抱くようになる。
フランシス達と違い、海羽は……と言うより彼女と近しい瑠璃とは明確に敵対した。気不味いとかそんなレベルではない。
本当は顔も合わせたくなかったのだが、同じ船に乗っている以上そう言う訳にもいかず、意外とあっさり2人は顔を合わせてしまった。
「あ、え? 瑠璃、姉ぇ……?」
「……違う。私は……あんな失敗作じゃない」
最初瑠璃と8号を見間違えた海羽だったが、顔の傷とその言葉から直ぐに相手が瑠璃と何度も敵対した8号であると気付く。その事に海羽も最初は警戒していたが、しかし8号の様子から海羽は彼女が何処か不安と言うか寂しそうにしている事を察した。
海羽は知らぬ事だが、8号は実験体として今まで生きてきた。その結果、鎖で繋がれ飼われている状況が当たり前となってしまい、自由に外の世界で生きると言う事に無意識の内に不安と恐怖を抱く様になってしまっていたのだ。帰るべき場所、頼るべき存在を失ってしまった8号の姿は、海都に流れ着いて直ぐの頃の瑠璃の姿とどこか似ていた。
そう思うと、海羽の中から8号への警戒心は自然と無くなり逆に彼女と積極的に接しようと言う気になっていた。この男所帯の船の中で、唯一の同性と言う事も手伝ったのだろう。気付けば海羽は彼女と共に居る事も多くなっていった。
「はい、じゃあ次はこれ。皮むきお願いね?」
「う、うん……」
何もする事が無いと言う彼女を、自分が担当している料理や洗濯に付き合わせる。最初はかなり警戒していた8号も、笑顔で接して時に他愛のない話をしてくる海羽を相手に心を開いていった。
そんな日々を送っていたある日、夜中に喉の渇きを感じ8号は自分に割り振られた部屋から出てキッチンで水を一杯飲んだ。
その帰りに静かな船内の廊下を歩いている時、不意に彼女の耳におかしな声が聞こえてきた。
『――ッ ――ぁッ ――――!!』
「……?」
声の感じからして海羽の物だと言う事は分かったが、彼女の部屋がある場所とは声の聞こえてきた方角が違う。何かおかしいと感じ8号が声のする方に向かうと、段々とその声がはっきり聞こえるようになってきた。
『―んっ! く――ッ! も――♡ んぁ――』
(海羽? あそこは……バーツの?)
どうやら声の出所はバーツの部屋らしい事に気付く。部屋に近付くにつれ、鮮明に聞こえてくる海羽の声。その声は何処か苦しそうでもあり、だが同時に悦んでいるようにも聞こえる。
一体バーツの部屋で何が行われているのかと部屋に近付き、扉の窓からこっそりと中を覗いた。
そこで行われていた光景に、8号は思わず言葉を失った。
『あぁっ!♡ んあっ!♡ んぃ、ひゃんっ!♡』
室内では、ベッドの上で海羽とバーツが裸で抱き合い互いに愛し合っていた。健康的な肌をさらけ出した海羽の上に、日に焼けて浅黒い肌のバーツが覆い被さり互いに向き合う様にしてバーツが海羽の膣にペニスを挿入し一心不乱に腰を振っている。バーツの腰が叩き付けられる度に、海羽の口からは嬌声が飛び出しさらに激しく彼を求めていた。
『あぁっ!♡ いいっ!♡ バーツ、もっと!♡ もっとぉ!♡ そこ、気持ちいいよぉッ!♡』
(わ……うわぁ……!)
普段の、明るく活発な海羽とは違う蕩けた顔。目尻が下がり、口の端からは涎を垂らして舌を突き出しながら喘ぐ彼女は、普段の姿からは想像もできない。
淫靡な海羽の姿にあてられたのか、バーツの腰の動きが激しくなりそれに合わせて海羽の口から甲高い声が上がった。
『んぎぃっ!♡ あはぁっ!♡ も、もうらめっ!♡ イクッ!♡ わたし、イっちゃうぅっ!♡』
『海羽、俺も……!』
『一緒にッ! バーツ、一緒にぃっ!』
『うぅぅっ!』
一際強くバーツが腰を叩き付けると、そのまま腰を押し付けながら体を震わせる。それと同時に海羽も彼に絡ませていた足をピンと伸ばして体を震わせ、一際高い歓喜を感じさせる嬌声を上げた。
『んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!♡♡ あ、あぁぁ……♡ バーツ……♡ しゅきぃ、大好きぃ……♡』
『海羽……』
『ん、ふぅっ♡ ん、れろ……じゅるる♡』
絶頂の余韻を味わいながら、2人は深く口付け体を密着させる。
それだけでは飽き足らず、互いにまだ満足できないのか2人は上下を入れ替え再び行為を開始した。バーツの上に跨った海羽が自分から腰を振り、たわわに実った双丘が大きく揺れる。
『んあっ♡ あんっ♡ あぁっ♡ バーツ♡ 愛してる♡ バーツ♡』
「ッ!!」
尚も愛し合う2人の姿に、堪らず8号は逃げるようにその場を離れた。
8号は困惑していた。男女のまぐわい自体は彼女も知っていた。と言うより、間近で見たこともある。
彼女の前後に作り出されたセラシリーズとも言うべきクローン達。その中で、不要・廃棄と断ぜられた個体の中には研究施設の男達の性処理に回された者も少なくない。
それらは大きく二つに分けられ、一つは人形の様にただされるがままに蹂躙され、もう一つは泣き叫びながら無理矢理蹂躙されていた。
どちらにしても楽しんでいるのは男の方のみで、女である彼女の姉妹達は苦しんでいた。
男女のまぐわいとはああいうものなのだと、8号の中には無意識の内に刷り込まれていた。故に、今し方見た海羽とバーツのまぐわい……セックスは衝撃的だった。互いに愛し合い、求め合う姿。自分の姉妹達と同じように男が覆い被さっているのに、あんなに気持ち良さそうにしているのが信じられない。
(私……あんなの、知らない……!)
そのまま当てもなく船内を彷徨う8号は、自分の体が火照っている事に気付いた。頬は熱く、下腹部が疼き股間には妙な湿り気を感じる。何事かと衣服の中に手を突っ込んで股間に触れてみると、粘つく液体が指先に触れるのを感じ慌てて手を引っ張り上げたらそこには尿とは違う液体が指先に付着しているのを見た。
「何……これ……!?」
訳が分からず、そのまま気付けば甲板に出ていた8号。海風で火照ったからだが冷めないかと期待したが、体はともかく胸の内に渦巻く昂りはなかなか収まらない。
どうすればいいのかと悩んでいたその時、不意に背後から声を掛けられた。
「んぉ? 姉ちゃん、こんな所で何してんだ?」
そこに居たのはフランシスであった。月見酒でもしようと言うのか、手にはラム酒の瓶を持っている。
何やら様子がおかしな8号を心配して近付いてきたフランシスだったが、彼の姿を見た彼女は急激に胸の鼓動が激しくなるのを感じた。そして同時に、何故だか分からないが激しく彼を……牡を求めたくてたまらなくなった。
気付けば8号はフランシスに飛び掛かり、彼を甲板の上に押し倒していた。
「イデッ!? な、何だぁ……!?」
突然押し倒されて困惑するフランシスに構わず、8号は先程見た光景を再現する様に彼の唇を自分の唇で塞いだ。
「んむぐっ!」
「んんっ♡ ん、むぅ♡ じゅるる♡」
訳も分からずキスをされて目を白黒させるフランシスだったが、口内を舌で蹂躙されると同時に鼻腔を刺激する牝の匂いに彼の分身が嫌でも反応を示す。あっという間に血が集まり硬く勃起し始めたペニスがズボン越しに8号の尻を突く。
それに気付いた8号は、唇を離すと震える手で衣服の脱ぎ捨て彼のズボンも脱がして勃起したペニスを外気に晒させた。解放されたペニスが天を衝く様に屹立する。
「あはぁ……♡」
「えっ!? ちょ、まっ――――」
その姿に8号は顔を蕩けさせると、居ても立っても居られないと言う様に跨りペニスの先端を愛液を滴らせる膣にあてがい腰を下ろした。フランシスが止める間もなく8号が腰を下ろし、膣肉が押し広げられその途中にあった処女膜が引き裂かれる。
「んぎぃっ!? んあ、あぁ…………あはぁ♡」
最初は破弧の痛みに驚いた。海羽とバーツがあれだけ気持ち良さそうにしていたのだからもっと気持ちいかと思っていたら、まさか痛みが走り血が出るだなんて思ってもみなかった。だがその痛みもすぐに消え、次の瞬間言葉では言い表せない快楽が彼女を満たした。
もっとこの快楽を感じたい。もっと気持ち良くなりたい。そう思った時には、8号は自分から腰を振っていた。
「あっ♡ んあぁっ♡ んいぃっ♡ あはぁぁっ♡」
「うぉっ! ちょ、まっ! 姉ちゃ、んおぉっ!」
一心不乱に腰を振る8号を宥めようとするフランシスだったが、快楽の虜になった8号は止まらない。それどころか、彼女が腰を動かす度に全身を駆け抜ける快楽に次第に抵抗しようと言う気も薄れていった。
彼らは知らぬ事だが、8号と同じ遺伝子から生まれた瑠璃は名器の持ち主。恋仲となったネイトをベッドの上で楽しませている。同じ遺伝子を持つ8号も当然名器の持ち主であり、それを味わえば止めようなどと言う気にならないのは当然の事であった。
されるがままに8号に跨られるフランシスだったが、対する彼女も膣から伝わる快楽にすっかり思考を支配されていた。
「んぁっ♡ これ、しゅごぉっ!♡ こんな♡ 気持ち、良い……♡ らめぇ、こんなぁ♡♡」
「ね、姉ちゃん……! そ、そろそろ……!」
快楽を貪る様に腰を振り続け、互いに絶頂が近付くのを感じる。流石に膣内射精は不味いかと、理性を総動員して8号を宥めようとするフランシス。
しかし8号は止まらないし離れない。寧ろそのまま彼の体に抱き着き、さらに激しく腰を振った。
「待った待った!? 姉ちゃん、もうマズイって……ぁ」
必死に止めようとするが手遅れだった。次の瞬間フランシスは8号の膣内で射精し、吐き出された精液が膣を通り抜け子宮内を満たす快楽に彼女は今まで感じたことのない絶頂に体を弓なりに反らせた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!♡♡」
膣内を満たす精液の温かさ。それと同時に全身を満たす快楽と、心を満たす充実感。
(こ、これ……♡ だめぇ……♡ 気持ち、良すぎるぅ♡♡)
研究所に居た頃は得る事のなかった充実感に、8号は幸福を感じ頬を上気させてフランシスの上に倒れ込んだ。
やっと落ち着いてくれた彼女に安堵すると同時に、フランシスはどうしたものかと頭を悩ませた。
「あ~……俺も気持ち良かったけど、どうしたもんか……」
だが彼が本当に頭を悩ませることになるのはこの後からであった。
「あっ!♡ あぁっ♡ んあぁっ!♡」
それからと言うもの、8号は手の空いている船員を見つけては昼夜問わず適当な所でセックスに明け暮れていた。
時には空いてる船室、時には倉庫、時にはシャワー室。流石に昼間から甲板で行為に及ぶことは相手の船員が嫌がるので、少なくとも日中はそこまで目立つところでやる様な事はしない。
それでも空間が限定される船内では、派手にセックスしたりすれば他の船員にバレる。海羽とバーツの逢瀬でさえ、本人達はこっそりやっているようでも他の船員にはバレているのだ。隠す気のない8号と他の船員達とのセックスはバレバレとかそう言うレベルではない。
「あぁぁっ!♡ あひゃぁぁぁっ♡! んあぁぁぁぁぁっ♡♡!!」
船内に響く8号の嬌声。酷い時には複数人の船員を纏めて相手にしているのだから、それを偶々目撃してしまったり聞いてしまった者達には堪らない。
しかも8号は、海都で人気の美女である瑠璃と顔の傷の有無を覗けば瓜二つなのだ。男として、そんな美女が淫らに求めてきて拒める訳もなくあっという間に船員達は彼女の虜となっていた。
「あ、姐さん! ホントに良いんスか!」
「俺達、もう出ちまうっス!」
「んぶっ♡! んんっ♡! じゅるる、ぷはぁっ♡! イイ! イイよぉ! らして! 私の中、一杯出してぇ♡♡」
彼女がここまで快楽の虜になったのは、偏に研究所時代のイヤな思い出を忘れる意味もあった。硬く狭い寝床に味気ない食事。向けられる冷たい視線に、何時捨てられるか分からない恐怖。
だがこうしてこの時だけのものであっても、愛されて快楽に溺れている間はその事を忘れる事が出来る。ある意味で彼女がセックスに依存するのも仕方がないと言えた。
しかしそれを何時までも許容するかと言えば話は別。ある日8号が遂にバーツにまで手を出そうとした瞬間、海羽の堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしなさぁぁぁぁぁぁぁいッ!?!?」
バーツを誘おうとしていた8号の手を払い、2人の間に入った海羽は船中に響き渡るほどの怒声を上げその場に8号を正座させた。
海羽はそのままバーツを他所へ行かせ、入れ替わるようにやって来たフランシスと共に8号が如何に非常識かを説いた。
「あのね、あなたが誰と付き合おうと私は構わない。だけど誰彼構わず声を掛けたりするのは止めなさいッ!」
大体にして瑠璃と同じ顔でそんな事をされると、別人と分かっていても海羽の中での瑠璃のイメージが崩れる。
ほんのちょっぴり、もしかして瑠璃も実は……何て事まで考えてしまうのだ。それは困る。
「でも、気持ちいいし……皆も……」
「そう言う問題じゃないのッ!!」
「そうだぞ。何時でも何処でも、ってのはマズイ。せめてヤル時と場所は考えるべきだ」
「うんうん…………ん? そっち!?」
フランシスの言葉に一瞬頷きかけた海羽だが、方向性がズレている事に思わずツッコミを入れた。8号の行動は、時と場所を選べばいいと言うレベルではない。常識的に考えれば、彼女の行動はビッチと蔑まれても仕方がないものである。
しかしフランシスの考えは至ってドライなものであった。
「いやでもな、嬢ちゃん? 漁船ならともかくこの船だと荷物運んでる最中は娯楽も何も無いから案外退屈なんだ。その退屈でフラストレーションを溜めるくらいなら、別に姉ちゃんが何人と付き合おうと別に構いやしねえ」
勿論裏切るような真似をすれば話は別だが、捨てられた彼女が今更彼らを裏切る様な事はしないだろう。そんな気配も無いし、裏切った後に彼女が身を寄せる場所も無い。
所構わずヤルのは問題だが、ストレス発散と言う意味も考えれば船員同士で肉体関係を持つ事自体は別に止める道理はなかった。アウトローの彼ららしい考えである。
「そんな事言って……本当は自分も楽しみたいからなんじゃないですか?」
「い、いやぁ? そ、そんな事無いぞ?」
そうは言うが、彼もあれ以来時々8号と夜を共にしている。因みにエドワードは最初にフランシスが8号に襲われた次の日に餌食となっていた。
兎に角8号がバーツを除く船員達と肉体関係を持つ事にはフランシスに否は無いらしいことに、海羽はもう何も言うまいと肩を落とす。バーツの安全が確保されるならもう何でも良かった。
「分かった、分かりました。ただし、適度に節度は持つ事。良いわね?」
「うん……」
結局、8号はそのままバーツを除く一味全員との関係をそのまま維持。なし崩し的にそのまま一員となり、船の雑用を片付ける傍ら船員達との爛れた一時を楽しんでいた。
尚節度を持つようにと言う海羽の言葉に従い、8号の希望からシフト制で誰と寝るかを決める事になる。これにはフランシス達もどうなのだろうかと首を傾げずにはいられないのだが、そこに態々意見するのは野暮と言うものなのだろう。
海羽はそう思う事にしつつ、今宵も何処からか聞こえてくる8号の嬌声をBGMにバーツとの熱い夜を過ごすのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
8号は一応生み出されたクローンとしては上質な部類に入るので、一見扱いは粗末でも大事に扱われてきました。だから男の相手なんてした事無いし、それに関する知識もありません。ただ研究所では作中でも述べた様に失敗作や脱落したクローンが慰み者にされているのを見ているので、偏った印象はあると言った感じです。
この世界線では8号がディーパーに回収されていないので、テテュスの物語もムー大陸編で終わることになりそうです。その場合も瑠璃はなんやかんやでネイトと共に冒険に出かけ、8号はカリビアンダイナーの一員として働く事になるでしょう。
執筆の糧となりますので感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。