今回はお待たせして申し訳ありません。書いてるうちに内容がどんどん膨らんでいき、2万字近くなってしまい投稿も遅れてしまいました。
しかも前半部分はエロ無しという有様で、重ね重ね申し訳ないです。
今回はリクエストより「8号が瑠璃に敗北した後、鮫に食われず海都の青年に拾われる」と言う話になります。
純愛物ですが、オリキャラが登場するので気になる方はご注意ください。
瑠璃と8号、同じ1人の女性をベースに生み出された2人のクローンの戦いは、瑠璃が変身するテテュスの勝利により幕を閉じた。
「あ、う……ぐっ!?」
「ねぇ、もう止めよう? 私達が戦う必要なんて……」
肉親の居ない瑠璃にとって、8号は謂わば血を分けた双子の姉妹に等しい。そんな相手にトドメを刺す事は出来ず、手加減をした為8号は戦えないほどの怪我を負いはしたがそれでも命に係わると言うにはほど遠い程度のダメージで済んだ。
傷口を押さえつつ、瑠璃から距離を取る8号。彼女は恐れていた。瑠璃が自分の事を殺して唯一無二の存在になろうとしていると被害妄想に近い感覚に陥っていたのだ。
「く、来るなッ!? 来ないでッ!?」
8号は恭子の下で、数少ない成功体のクローンとして他のクローンとの殺し合いにも生き残って来た。彼女にとって、自分と同じクローンは姉妹ではなく生存権を争うライバル。勝った方が生き残れると言う半ば脅迫観念に近い印象から、彼女は自分を下した瑠璃がトドメを刺そうとしていると勘違いしたのだ。
これまで、自分を目の敵にして執拗に殺そうと迫ってきていた8号が恐怖に顔を歪めて後退るのを見て、瑠璃は咄嗟に彼女に手を伸ばしてしまった。それがいけなかった。瑠璃が手を伸ばした瞬間、8号は彼女から逃れようと大きく後ろに下がり、結果足を踏み外して海に落ちてしまったのだ。
「あ…………!?」
「待って、ダメぇッ!?」
海へと落ちていく8号の手を掴もうとする瑠璃だったが、8号の手は彼女の手をすり抜けて海へと落ちていく。
そして運が悪い事に、この日の海は荒れており8号は戦闘のダメージもあり満足に泳ぐことも出来ずそのまま波に攫われてしまった。瑠璃と同じくセラをベースにしている8号にとって海は味方の筈なのだが、この時ばかりは話が違った。思うように体は動かず、息を吸おうと口を開けば入って来るのは海水ばかり。
パニックを起こして暴れながら沈んでいく8号はそのまま流されていき、瑠璃は飛び込もうとするのを周りに抑えられていた。
「放してッ!? あの子が、あの子が……!?」
「無理だッ! この荒れ様じゃ、入っても助けられねえ」
「だったら私が……!」
「馬鹿言うんじゃねえッ! お前今の自分の状態分かってるのかッ!」
一見平然としているように見える瑠璃だが、彼女は彼女で8号との戦いに死力を尽くした結果満身創痍と言っても過言ではない状態となってしまっていた。こんな状態で荒れた海に入ろうものなら、波に翻弄されてあっという間に海の藻屑となってしまう。そんな事をネイトが許すはずもなく、彼はこの後彼女に恨まれる事を覚悟の上で暴れる彼女を押さえつけていた。
そうこうしている内に、8号の姿は波に流され海の中へと消えていった。それを見て瑠璃は、涙を流しながらその場に崩れ落ちた。
「あ、あぁ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
荒れた海を前に、瑠璃の慟哭が響き渡る。ネイトはそれを耳にして、何も出来ない無力な自分を悔やむように目を瞑るのだった。
***
翌日、海都の海辺を1人の青年が散歩していた。彼は海都の大学に通う大学生であり、この日は午前中の講義が無いので暇を潰す為にこうしてぶらりと海辺を散歩していたのだ。
海辺とは言うが、開発途上の部分も多く存在する海都では海辺と言えばコンクリートで覆われた海と陸地との境界線近く。港の縁がそのまま伸びたような感じなので、風情も何もなく見えるものと言えば何処までも続く水平線と時折飛んでいるのを見かけるカモメ位だった。
青年はぼんやりと海を眺めつつ、足を踏み外さないよう気を付けながら歩く。
その時、何気なく視線を下げると海面に何かが浮いているのが見えた。
「? 何だ…………!?」
よく目を凝らして驚いた。それは人だったのだ。顔に傷のある女性らしき人が、海の様な青い髪を揺らして生気を欠いた顔で海面を漂っている。目を閉じて波に揺られている姿は、土座衛門としか言い様のない姿であった。
「ちょ、おいっ! 大丈夫かッ!」
彼は慌てて周りを見渡し、少し離れた所に梯子の付いた桟橋があるのを見ると躊躇わずに海に飛び込んだ。先日は荒れていた海だが、この日は驚くほど静かで波の動きも穏やかだった。これなら人一人抱えて海から上がる事も容易だ。
海に飛び込んだ彼は海面を漂う女性……8号に近付き力無く波に揺られる彼女の体を支えた。流されてしまわないよう抱きしめ、首筋に手を当てて脈の有無を確認しようとする。
「大丈夫か? しっかり……ッ!!」
穏やかとは言え波に揺られる不安定な状態で、彼は8号の脈を取った。海水に体力を奪われたからか恐ろしい程に体は冷えているが、脈だけはしっかりと確認できる。その事に安堵してホッと一息つきながら、彼は近くの桟橋へと8号を抱えて泳ぎ梯子を上って桟橋の上に彼女を横たえた。
「これで……よしッ! ふぅ……君、大丈夫…………!!」
青年は一息ついてから8号の呼吸を確認しようとして、思わず息を呑んだ。さっきは海から引き上げるのに夢中で気付かなかったが、助けた8号は息を呑むほどの美人だったのだ。生気を欠いているし、顔には大きな傷が走っているがそれでも美人と断言できるほどの美貌を彼女は持っていた。
暫し8号の顔に見惚れていた青年だったが、不意に彼女が小さく呻き声を上げるとこんな事をしている場合ではないと我に返った。
「っとと、見惚れてる場合じゃなかった。えっと、取り合えず救急車を……」
青年がスマホを取り出し救急車を呼び彼女を病院に運び込もうとする。だがその直前、僅かながら意識を取り戻した8号は、青年が救急車を呼ぼうとしている事に気付くとその手を掴んで呼ぶのを止めさせた。
「うわっ!? お、起きたの?」
「だ……だめ……」
「え?」
「びょう、いんは……だめ……」
体力を大きく消耗し、朦朧とした意識の中でも状況だけは判断できたらしい。
尤も、被害妄想もそのままの様だが。
8号は未だに瑠璃が本当は自分の事を消そうとしていると考えていた。そんな状況で、病院なんて公共の場所に運び込まれたらS.B.C.T.経由で瑠璃に自分の生存がバレる。そうなれば今度こそ自分は殺されてしまうと、彼女はありもしない結末を恐れていた。
「だめ……だめ……!」
弱々しい声で、必死に懇願する様に病院へ行くことを拒絶する8号。その姿に、青年は事情は分からないながらも何かがある事を察し、今は彼女を安心させようと頷いた。
「分かった……病院へは連れて行かない。これでいい?」
青年がそう言うと、8号も漸く安心したのか顔から脅えが消え僅かながら笑みを浮かべた。心から安堵して自然と浮かんだ笑みは、それだけで彼の心を射止めた。
直後、とうとう体力に限界が来たのか8号は彼の腕の中で意識を失い、意図が切れた人形の様にガクリと全身から力が抜け手足をその場に投げ出す。いきなり脱力し、動かなくなった8号に青年は慌てて彼女を持ち上げてその場を離れた。
「あわわっ!? と、取り合えず家に……!」
8号を横抱きにしながら大急ぎで自宅のアパートへと引き返す青年。走る度に揺れる彼女の体を落とさないようにしっかりと抱きしめながら、彼はこの日の午後の講義は欠席せざるを得なくなることに内心で頭を抱えるのだった。
***
「ん…………ぅ……?」
微睡みの中、8号は体を包む温かさを感じながら目を覚ました。
身を包む温かさに8号は違和感を感じた。普段眠る時も、それなりに温かくして寝てはいる。だが普段の就寝が無機質な温かさなのに対し、今彼女の身を包んでいるのは人の営みを感じさせる温かさ。消毒薬を始めとした薬品の臭いの無い、心が和らぐ匂いを感じる温かさは、彼女にとっても初めての経験であった。
その温かさにこのまま身を委ねたくなるが、現状の確認をしなければと言う癖の様な物から8号は重い瞼を開きゆっくりと目を空ける。瞬間、目を指すのは室内を照らす照明の灯り。その眩しさに一瞬顔を顰めたが、直ぐに慣れて周囲を見渡した。
「ここ……は……?」
見覚えのない室内。あまり整理がされているとは言い難い室内は、先日まで拠点としていたシルバーレガシー号の船室ではない。彼女が滞在していたのは船内に誂えた恭子の部屋の一画だったので、こんなに雑然としてはいないのだ。
かと言って病院の一室とも違う。一瞬結局は捕まって怪我をしているからと病院に担ぎ込まれたのかとも思ったが、病室とは全然違うし何より拘束されていない。もしあの後S.B.C.T.に捕まっていたのなら、少なくとも両手に手錠の一つは掛けられていないとおかしかった。
そこまで考えて、彼女は思い出した。瑠璃に敗れて海に落ちた後、自分はそのまま海都の別の海辺に流されそこで誰かに助けられたのだと言う事を。
朧気にだが、自分を海から引き上げてくれた何者かが救急車を呼ぼうとしていたのでそれを必死に止めていた事を思い出す。
「じゃあ、ここって……?」
8号が見知らぬこの場所に予想が付きそうになった時、扉を開けて1人の青年が顔を覗かせてきた。どうやら8号が目覚めた気配に気付いたらしい。彼は自分の事をしっかりとした目で見返してくる8号の様子に、安堵し思わず笑みを浮かべながら近付いていった。
「あぁ、良かった! 目が覚めたんだね」
ホッと胸を撫で下ろしながらベッドに近付く青年だったが、8号は自分に近付いてくる彼に警戒して痛む体を無理矢理起き上がらせてベッドの端に逃げた。まだ完全に傷が癒えていない状態で激しく動こうとしたので、全身に痛みが走り体から力が抜けそうになるのを堪えて彼女は額に脂汗を浮かべながら彼に警戒した目を向けた。
その怯えすら感じさせる警戒に、青年は暫し唖然となった。
「あ、え~っと……」
「近付かないで……! ここは、何処? アンタ……誰?」
部屋の様子から病院とは無縁である事は分かったが、だからと言って瑠璃と無縁とは限らない。
警戒する8号に対して、青年はどうしたものかと悩む。確かに、何があったのかは分からないが傷付いた若い女性が気が付けば見知らぬ男の部屋に連れ込まれていた、なんて状況になれば不安にもなるし警戒もする。
青年は改めて、8号が体だけでなく心にも何か大きな傷を負ったのだと言う事を再認識した。
そして、この状況でどうすれば少しでも彼女の警戒心を解く事が出来るかと考え、まずは自己紹介するところから始める事にした。こちらの事を知ってもらえなければ、信用もへったくれもない。
「分かった。俺は君に近付かない。ここは俺の家だ。海都にある、ごく普通のアパートさ。で、俺の名前は……
これで満足かと両手を広げて首を傾げてみせれば、8号はまだ警戒を完全に解きはしないが僅かに困惑した様子で彼の顔を見返した。
「……何で、私を……」
「君をここに連れてきたかって?」
「……そう」
こんな素性の分からない傷だらけの女、厄介事の匂いしかしない筈だ。海の上を漂っていた段階ならまだ溺れた人と思って引き上げるのも分かるが、引き上げた女が傷だらけでしかも病院を拒否したとなれば何か危ない事に関わっているのは明白である。自分が彼の立場だったら、そんな奴相手にしないか然るべきところに引き渡す。
それをせず、剰え家に上げてベッドに寝かせるのが彼女には理解できなかった。
8号からの問い掛けに、彼は少し考える。が、実のところそんなに深い理由がある訳でもなかった。
彼が彼女を助けた理由は大きく分けて二つ。一つは放っておけなかったから。もう一つは、恥ずかしくて言えないが彼女に一目惚れしてしまったから。
大輝は二つ目の理由を考えて一瞬顔を赤くするが、こんな事を言ってしまえば途端に再び最大限に警戒されるのは目に見えているので、それは伏せて最初の理由だけを伝えた。
「放っておけなかったからだよ。だって君、怪我してたしさ」
「だからって……」
尚も納得いかない様子を見せる8号だったが、これ以上は平行線になる事を察し大輝は少々強引に話を切り上げ話題を変えた。
「それよりさ? 君の名前を聞いておきたいんだけど……」
大輝からの問い掛けに、8号はプイッとそっぽを向いた。その仕草に大輝はまだそこまで心を開いてくれてはいないのかと落胆するが、8号からすれば名乗るべき名前が無いが故の行動であった。
そんな彼女に、しかし大輝は少し肩を落としただけで気分を悪くしたりはしなかった。
「さて、取り合えずさ? お腹空いてない?」
「え?」
唐突な話題の切り替えに一瞬唖然となる8号だったが、空腹の事を考えると途端に腹が鳴り出した。現金な体に8号は思わず顔を赤くしてお腹を押さえる。
「いや、これは、その……」
咄嗟に何か言い訳をしようとする8号だったが、生憎といい言い訳が思い浮かばない。それどころか再び腹が鳴り、何も言い繕うことが出来なくなり沈黙するしかなくなってしまった。
大輝はそんな彼女の様子に笑みを浮かべつつ、キッチンから湯気を立てるスープを持ってやって来た。
「何はともあれ腹ごしらえってね。とは言え体力も落ちてるだろうし、今日の所はこれで我慢して」
彼がお盆に乗せて持ってきたのは、スーパーで買えるコンソメを使って簡単に作ったスープだった。具材は細かく切った野菜と溶いた卵のみとシンプルな出来栄え。常の状態ならこれだけでは物足りなく思うだろうが、しかし今まで味気ない固形食しか出された事のない8号からすればこれですらご馳走だった。何と言ってもこのスープには温かさと匂いがある。
湯気と共に立ち上る食欲を刺激する匂いに、8号は傷付いた体で引き寄せられるように器に手を伸ばして渡されたスプーンを使って温かなスープを掬って口に運ぶ。瞬間塩気の利いた旨味が口の中に広がり、今までに感じた事のない幸福感が全身に広がった。
「えっ!? ちょっ!? 大丈夫?」
「え……?」
突然慌てだした大輝にどうしたのかとそちらを見る8号。するとその時、何かがポタリと手の上に落ちたのを感じた。
何が落ちたのかと手を見れば、水滴の様な物がぽたぽたと降ってきている。だが上を見ても天井から雨漏りがしている様子はない。
じゃあこの水滴は何処から落ちてきたのかと考えていると、徐に大輝がハンカチを持ってきて彼女の頬を拭った。
「どうしたの、急に泣き出して? もしかして、口に合わなかった?」
大輝に言われて漸く8号は自分が泣いていた事を理解した。深海の様な海色の瞳を持つ両目から、涙が次から次へと流れ落ちてくる。
悲しくも苦しくも無い筈なのに、涙が止まらなくて、そして今まで感じた事のない温かくも切ない何かが胸の中に溢れてきて、自分でもどうすればいいのか分からなくなってしまった。
「う、んく……! うぅ、う……」
子供の様に涙を流しながら、8号は本能の赴くままにスープを掬っては口に運び、口の中に広がる味を噛みしめた。
泣きながら只管にスープを口に運ぶ8号の姿に、大輝は自分が思っている以上に彼女が抱えている過去が重い物である事を知った。
今彼が作ったスープは、平時では基本的に作らないレベルの物だ。それこそ本当に自分が風邪を引いて体力が落ちている時など、あまり凝った味付けの物が作れない時などに作る程度の代物である。それに対して彼女は涙を流しながら、心底美味そうにスプーンを動かしている。それはつまり、この程度の食事も満足にできない過酷な環境に居たと言う事を意味していた。
気付けば大輝は、そっと彼女の頭に手をやり優しく撫でていた。頭に触れる大輝の手に、普段であれば即行振り払ったであろう8号は、しかしその手から伝わる温もりを心地良く感じされるがままに彼に頭を撫でられていた。
それから暫く、看病と言う名目の2人の同居生活は続いていた。
生み出される過程で体を強化されている8号は傷の回復も早く、数日と経たずに動けるようになった。が、それまでの間は大輝の世話にならざるを得ず、食事は勿論風呂に入れない間は体を拭いてもらったりなどしてもらっていた。
「う、後ろだけで良いから……」
「分かってるよ」
借り物の衣服の上半身を脱ぎ、露わになった背中をお湯で濡らしたタオルで拭かれる。その際に8号は、奇妙な恥ずかしさを感じ乙女が着替えを除かれた時の様に両腕で自分の胸元を隠していた。セラと言う美女のクローンであり、瑠璃と同じ体型の彼女も当然胸は豊満だ。両手で押さえようとするが、その大きな胸は隠すのがなかなか難しい。
結果、胸を両腕で抱きしめた結果逆にその豊満さが強調され、後ろからチラリと見える巨乳に大輝は思わず生唾を飲み込まずにはいられなかった。彼女の背中を拭く時や、背中側が終わり彼女が自分で体の前を拭く時などに垣間見える胸元を見て理性を失いそうになった事も一度や二度ではない。
(って、ダメダメ! 心頭滅却心頭滅却……!)
煩悩に負けそうになる度に大輝は理性を総動員して胸の昂りを抑えるが、体は正直であり8号に知られていない所で彼の分身はその存在を度々主張していた。その度に彼は彼女に見つからないよう自分で自分を慰めるのに忙しかった。
そんな日々を送り、8号は驚異的な速度で回復し自力で歩けるようになった。この頃になると出会った当初の頑なさも大分なりを潜め、彼に対して柔らかな表情を向ける事も増えていた。
以前とは比べるべくもなく穏やかな日々。そんな日常を過ごしていたある日、8号は気分転換に散歩に出た。
今彼女が身に着けているのは、動けるようになってから購入した女物の衣服。Tシャツの上からジャケットを羽織り、下は膝辺りまでの丈のズボンを穿いている。
「ふぅ……」
静かな海辺を歩きながら、8号は小さく溜め息を吐いた。彼女が考えているのはこれからの身の振り方だった。
彼女が療養している間に、海都は大きな動きを見せていた。庁舎が恭子率いる傘木社残党に制圧され、かと思えば太平洋上に突如巨大な大陸が浮上し一日足らずで沈没するなど、目まぐるしく変化していた。
その中で8号が注目したのは庁舎襲撃事件。何でもこの時の戦いで恭子が死んだらしい。自分を切り捨てた相手の死に対し、悲しいとかそう言う気持ちは湧かなかった。だが同時に、これからどうすればいいのかという気持ちが抑えきれない。恭子の死によって、8号は帰る場所を失ったのである。
一瞬、瑠璃の元へ身を寄せようかとも考えた。落ち着いた今になれば、彼女が自分を始末しようとしないだろう事は想像に難くない。そもそも瑠璃は8号が経験してきた実験とは無縁だったのだ。自分を始末しようなどという発想に至る訳がない。
だがそれを理解できていながら、8号はどうにもその事に対して踏ん切りがつかないでいた。
「……帰ろう」
幾ら考えてもいい案は出ない。これ以上は時間の無駄だし、あまり長時間出歩いていると瑠璃に遭遇するリスクも高くなる。だからさっさと大輝の部屋へと戻ろうと踵を返した。
その際に彼女の口から「帰る」という言葉が出たのだが、彼女自身はそれに対して何の違和感も抱いていない。なので当然、それが全ての答えなのだと言う事にも気付いていなかった。
自覚無しに自分の居場所を見つけ、そこに帰ろうとしていた8号。その時彼女の直ぐ傍の海中から何かが飛び出した。
「キシャァァァァァッ!」
「なっ!?」
飛び出してきたのは複数体のディーパーだった。このディーパー達は、少し前に大陸が一日で浮上し沈没した後に街を襲った個体の生き残りだった。あの戦いでEXラフィが悪足掻きの様に街を襲わせた際、海中施設の外壁で休眠状態で生き延びた個体が残っていたのだ。
次々と海から上がり、8号を取り囲むディーパー達。幸いなことにどれも下級ディーパーだった為、能力的には恐れる程の事は無い。そう、本来であれば。
(マズイ、今は……!?)
今の8号は丸腰だった。リールドライバーは瑠璃に奪い返され、シードライバーも壊れて海の藻屑となっている。身体能力自体は常人に比べれば高い方だが、それでも下級とは言えディーパー相手には心許無いと言わざるを得なかった。
この場は逃げるのが最善なのだが、しかし周りを取り囲まれた今、逃げ場はとっくの昔に失われている。
袋の鼠と化した8号に、ディーパー達が四方八方から襲い掛かった。
「くっ!」
折角拾った命をむざむざ捨てるつもりのない彼女は当然対抗しようとした。過去の戦闘訓練で培った体術で応戦しつつ、何とか逃げる隙を伺おうとした。
だが瑠璃との戦いで負傷し、療養している間に体がすっかり鈍ってしまったのか、以前の様に動く事が出来ない。辛うじて相手の動きは目で負えるが、体の反応が付いてこず8号は徐々に傷だらけになり追い詰められていった。
「あぐっ!? くぅ、うあっ?!」
抵抗する8号を活きの良い獲物とでも思ったのだろうか。ディーパー達も直ぐに彼女を仕留めるような事はせず、徐々に甚振るように追い詰めていく。
そして遂に、度重なるダメージと病み上がりの体が災いして動けなくなってしまった。
「がはっ!? う、うぅ……」
傷だらけの体で地面に倒れる8号に、ディーパー達が近付いていく。このままコイツ等に食われて終わりかと思い、しかし自分はセラのクローンであり超万能細胞の持ち主である事を考え繁殖に使われるのだと理解してしまった。
見ると近付いてくるディーパー達の股間からは何時の間にかグロテスクな肉棒がそそり立っている。あれでこれから彼女を嬲り者にし、孕ませて新たなディーパーを産む母体にするつもりなのだろう。
正に絶体絶命の危機。なのに体が動かない事に、8号は今度こそ終わりかと諦め体から力を抜き目を瞑った。
(あ~ぁ……ここまで、か)
目を瞑れば、大輝に助けられてからこれまでの出来事が次々と浮かんでは消えていく。思い起こされる記憶の中で、その多くを占めていたのは大輝と過ごした思い出だった。彼女が生きてきた期間から考えれば、彼と過ごした時間はごく僅かでしかないにも拘らずである。
何故こんなに彼との想い出ばかりが頭に思い浮かぶのか? 自分でもこんな時に疑問に思い、よくよく考えてみて彼女は漸く気付いた。
(あぁ……そっか、私……)
気付けば8号は大輝に恋をしていたのだ。誰にも愛されず、ただ道具として、実験動物として存在し続けた彼女に初めて人間らしい接し方をして親身に接してくれた青年。その存在に気付けば彼女は惹かれ、恋をし愛していたのである。
今になってやっとその事に気付けた、自分の鈍感さに思わず笑いが込み上げてくる。
そして同時に彼女は理解した。瑠璃が何故あんなに強かったのか? それは彼女が誰かを愛し、そして誰かに愛されたからだ。誰かの為に戦えるからこそ、瑠璃はあそこまでの強さを手に入れる事が出来たのだ。そこに失敗作がどうとかは関係ない。
ディーパーの手がすぐそこまで迫って来た。体は相変わらず動かないので、逃げる事は叶わない。
8号はせめて苦痛が長続きしない事を祈りつつ目を閉じ…………間一髪と言うところで大輝が駆けつけ彼女に触れようとしていたディーパーの首を蹴りで撥ね飛ばした。
「この野郎ッ!」
「……え?」
突如聞こえてきた大輝の声に8号が目を空けると、そこには首を失ったディーパーと蹴りを放った体勢の大輝の姿があった。その光景に彼女は何が起きたのか理解できず暫し呆然となってしまう。
「は?」
「君、大丈夫ッ!?」
唖然とする8号だったが、一方の大輝は心中穏やかでは無かった。なかなか8号が散歩から帰ってこないので心配になって様子を見に来れば、無数のディーパーに囲まれて倒れた彼女の姿を見つけたのだ。遠目にも分かる程傷付いた様子の彼女に、彼は居ても立っても居られず飛び込み彼女に触れようとしていたディーパーを一撃で仕留めてしまった。
漸く再起動した8号は、色々と聞きたい事はあるもののとりあえず一番言うべき事を彼に向け言った。
「あ、アンタ何やって……!?」
「こんなに血が……!? 大丈夫? しっかりして!」
「だ、大丈夫ッ! 大丈夫、あちこち痛むけどこれくらいはへっちゃらだから」
そう言って8号が少し回復した体力で立ち上がると、大輝は一先ずほっと一安心する。しかしそれも束の間。彼の心は次の瞬間8号を痛めつけられた事に対する怒りで燃え上がった。
「お前ら、最近街を騒がせてた怪物共だな……容赦しないぞ!」
大輝は徐に眼鏡を外すと、拳を握り締めディーパーの群れに飛び込んでいった。止める間もなく突撃した彼に、お楽しみを邪魔されて怒り心頭といった様子のディーパー達が襲い掛かる光景に8号も思わず悲鳴を上げた。
「待って、ダメッ!?」
手を伸ばす8号。その視線の先で、彼が拳を振るうとディーパーが次々と粉砕されていった。
「…………は?」
これには8号も思わず呆けずにはいられない。何しろあまりにも常識外れ過ぎる。武装をした人間でやっと下級と対等に渡り合えるかどうかというディーパーを相手に、たった1人でしかも素手で立ち向かい圧倒しているのだからそれも仕方ない事だろう。
ディーパーがまるで紙屑の様に吹き飛ばされ、粉砕され、引き裂かれていく。
「……嘘でしょ?」
思わず口を突いて出てきた彼女の言葉を他所に、物の数分で彼は全てのディーパーを文字通り粉砕した。他に生き残りが居ない事を確認すると大きく息を吐き呼吸を整えるとメガネをかけ直して何時もの彼に戻った。
「お待たせ。さ、帰ろう」
「いや、いやいやいやっ! ちょっと待って! 今の何? アンタ本当に人間なの?」
これで彼が実は自分は改造人間だ等と言ってくれればまだ納得は出来たのだが、次に彼の口から出てきた答えは彼女の理解の範疇を超えていた。
「爺さん達程じゃないし、ウチの古武術に掛かればあれくらいどうってことないよ」
大輝からの答えに8号は乾いた笑い声を上げながら冷や汗を流した。そしてこれ以上この事を考えるのは止めようと思い直すと、彼に背負われてアパートへと帰っていくのだった。
***
自宅に帰り、大輝は早速彼女の傷の手当てをしていた。幸いなことに傷はどれも浅く、家にある救急キットだけで事足りる程度の怪我で済んでいた。
その治療を受ける最中、8号はそれまで彼に黙っていた自分の出生を始めとしたこれまでの経緯を語り始めた。
「実は、私ね……1人の女性のクローンなの」
「え?」
突然そんな事を言われて、思わずポカンと口を開ける大輝。呆けた彼の顔が何だか可愛くて、思わずクスリと笑みを浮かべてしまいながら彼女はそのまま話を続けた。
「傘木社でクローンとして生み出された私は、それから只管に生きる為に足掻き続けた。どんな実験にも耐えてきたし、自分が生き残るために他のクローンを蹴落とす事もしたわ」
それだけでなく、彼女は命令とあればどんな相手だろうと殺めてきた。正直これを話すのはかなり勇気が必要だった。何せ自分の手が既に血で汚れている事を彼に告げるのだ。愛してしまった男性に、自分の汚れた面を見せる事は途轍もない勇気を必要とした。もしかするとこれを聞いて彼は彼女の事を危険と判断し、家から追い出すかもしれなかった。
だがそれでも彼女はこの事を告げた。これまで自分を助けてくれた、彼に対してはそれが義理だと感じたからだ。
「――――それで、私は失敗作として捨てられた筈の瑠璃って女に負けて、海を漂ってたって訳」
全てを話し終えた8号は、思わず自嘲した。改めて見ると何ともまぁ酷い人生もあったものだ。愛ではなく好奇心・狂気で生み出され、モルモットとして生かされた挙句最後は切り捨てられる。死にたくないが為に必死に足掻いて来たが、愛してくれる相手も居ないのに何をこんなに必死になっていたのかと自分の愚かさに笑うしかない。
そして、こんな自分を大輝も見放すだろうと諦めに似た空虚な気持ちが心を占めていた。だってそうだろう。人の胎ではなく、シリンダーの中で生まれた歪な生命。そして幾人もの人を手に掛けてきたのだ。こんな歪で危険な存在、誰だって敬遠したいに決まっている。彼もそうに違いないと。
だが、彼の口から出てきたのは予想外の言葉だった。
「俺は、君が今までどんな思いで生きてきたのか、想像する事しか出来ない。でもこれだけは言える。例えどんな生まれでどんな人生を歩んできたとしても、それを背負って生きていくしかないんだ」
「背負って……」
「それに、君は自分の人生には価値が無いなんて思ってるみたいだけど、必ずしもそうじゃない。少なくとも俺は、君が居なくなるような事になってほしくはない」
それは遠回しな彼の告白だった。8号に居なくなってほしくない、ここにずっといて欲しいと言う願い。彼が8号の事を心から愛している事の証明だった。
大輝の胸の内を理解した8号は、自分にもちゃんとした居場所がある事を知り感極まり涙を零した。だが溢れ出たのは涙だけではなく、胸に秘めていた彼に対する愛しさも同様だった。彼を愛する気持ちが溢れて止まらず、それが彼女の中の雌を刺激しそれに突き動かされるように彼女は着ている衣服に手を掛け脱ぎ捨て生まれたままの姿になった。
「え、ちょ……」
突然裸になった彼女から思わず視線を逸らそうとするも、曝け出された美しい肢体に思わず目が釘付けになる。彼に注目され、8号は頬を紅潮させ下腹部に疼きを感じながら両手を広げた。
「ねぇ、お願い……私に、あなたを刻んで。実験動物としての番号じゃない、あなたの物としての証を」
「いいの?」
「うん……お願い」
そんな言い方をされて黙っていられるほど、大輝は枯れた人間では無かった。彼女を求める心が理性の鎖を引き千切り、自分も衣服を脱ぎ捨てると彼女をベッドの上に押し倒してそのままキスをした。
「んん♡ ん、ふぅ♡ じゅる、レロォ♡ んく、むぅ♡ んぁ♡ ふぅ♡ んんん♡」
互いの口の中を貪り合う様なキス。他人からこんなに求められる事が無かったからか、8号は夢中になって口の中に入り込んだ彼の舌を受け入れ、また逆に彼の口の中にも自分の舌を入れ彼の口内を堪能した。
そのまま溶け合う様に互いにキスをしていた2人は、暫くして大輝が体を持ち上げた事で離れた。大輝が顔を離すと、2人の口が唾液の線で一瞬繋がった。
「はぁ♡ はぁ♡ なに、これ♡ すごい、気持ちいい♡」
「まだまだ、こんなのじゃ終わらないよ」
「あぁぁ♡」
次に大輝が責めたのは、ずっと気になっていた彼女の豊満な乳房だった。彼女の体を拭いた時からずっと気になっていた巨乳。背中を拭く時チラチラと見えていた彼女の生乳の端に欲情していた日々が懐かしい。
掌に収まらない程の大きさの乳房を、彼はパン生地を捏ねる様に優しく丹念に揉みしだく。自分ですら満足に触った事のない乳房を揉まれて、迸る快楽に8号は思わず身悶えした。
「んぁ♡ あ♡ あはぁぁぁぁ♡ 胸、スゴ♡ なに、これぇ♡ こんな、知らないぃ♡」
今までに感じた事のない快楽に、8号は思わず翻弄された。大輝が巨乳を揉み、指が乳房に沈み込む度に彼女の腰は跳ねるように浮き上がり閉じられた膣口からは愛液が垂れ流される。
そこにさらに畳み掛けるように彼は乳房の先端で存在を主張する乳首にしゃぶりついた。片方の乳首を指で転がし弾く傍ら、口に含んだ方の乳首を飴玉を転がす様に舌で舐め回し乳輪に沿って舌を這わせ歯で優しく噛み吸い上げる。その快楽は先程乳房を揉まれていた時の比ではなく、8号は思わず甲高い声を上げて一際大きく体を跳ねさせた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡ あ、あぁぁぁぁぁ♡ そんな、胸、んんんんん♡」
乳首を責められ、軽く絶頂した8号。膣口からはプシッと潮が噴き出し、腰をビクビクと震わせていた。
決して大きな絶頂では無かったのもあってか、程なくして8号は脱力しベッドの上に四肢を投げ出し虚空を見つめていた。
「はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」
「大丈夫?」
生まれて初めての快楽で絶頂したからか、8号は放心状態で天井を見つめていた。流石に不安になった大輝が彼女の顔を覗き込むと、彼の顔が近付いて来たのを見た8号は彼の首に腕を回して引き寄せ彼の唇を貪った。
「あむ♡ じゅるる♡ んく、ぷはっ♡」
突然キスをされて驚く大輝だったが、対する8号は淫靡な笑みを浮かべた傷顔で彼の事を見ていた。
「ねぇ、もっと♡ もっと、私の事を求めて♡ 私に生きる事を実感させて♡ ほら、今度はここ……♡」
そう言って8号は既に愛液で濡れた膣口を自分で広げてみせた。本能で分かる、ここが今一番大輝を……牡を求めている事が。
濡れた膣から立ち上る女の匂いに、大輝の顔はフラフラと引き寄せられそのまま膣口に口付けした。するとそれが合図になっていたかのように、彼は無我夢中で彼女の膣にしゃぶりついた。開かれた膣口の中に舌を突っ込み、溢れ出る愛液を啜りながら嘗め回す。
膣内を舌で掻き回される感触に、先程以上の快楽を感じて8号の腰はビクビクと痙攣した。意図せず足には力が入り、まるで感電したかのように突っ張り結果彼女の腰が宙に浮いた。
「んいぃぃぃぃぃぃっ♡♡ は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡ あ♡ んん♡ あぁぁぁぁ♡ もっと♡ お願い、もっとぉぉぉ♡ こんな、あぁぁぁぁ♡」
気付けば8号の両手は彼の頭を掴み、自分から膣口に引き寄せるようにして彼の頭を押さえていた。この快楽をもっと感じようと、彼にもっと責めてもらおうと。
それに応えるように彼は無我夢中で彼女の膣を貪り続けた。泉が溢れ出るかのように次から次へと流れ出てくる愛液を飲み干し、膣内を解す様に指で穿って屹立したクリトリスを咥えて軽く噛みながら舌先で突いてやる。するとこれまでで一番大きな快楽の波が8号を襲い、彼女は目を見開いて絶頂した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡!! んぐ、ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ♡」
あまりにも激しすぎる快楽に、彼女は彼の頭を押さえつけながら絶頂し噴き出した愛液が彼の顔を濡らした。息する暇もない程の愛液の噴射に、危うく窒息の危機を感じながらも彼は彼女が悦んでいるのを見てなんだか嬉しさを感じずにはいられなかった。
「はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」
絶頂の余韻からか、口の端から涎を垂らして放心状態になる8号。そんな彼女の膣口に、大輝は勃起した己の分身を宛がった。
「あ……♡」
膣口に触れる熱く固い肉棒の先端の感触に、呆けていた8号が期待したような声を上げる。自身に覆い被さる形で今にも膣内に挿入しようとしている彼に向けて、彼女は一つ頷いた。
「いいよ……来て……♡」
それを合図に、大輝はゆっくりとペニスを彼女の膣内へと侵入させた。既に十分解した筈だが、それでも彼のペニスが膣肉をかき分けて奥へと進むと膣からミシミシと音が聞こえる様で、堪らず8号は顔の横のシーツを握り締めて体を強張らせた。
「んぐぅッ! う、いぃッ! くぅ……!」
「い、痛い?」
少し苦しそうな8号の様子に大輝が思わず腰を引こうとする。だが彼が躊躇した瞬間、8号は彼に抱き着きこのまま続けることを懇願した。
「お願い、このまま……行って! 私は、大丈夫だから……!」
「……分かった」
縋る様な彼女の言葉に、大輝も覚悟を決めさらに腰を前へと進めた。ペニスが膣内をかき分けていく毎に膣肉がざわつく様に蠢き、その快楽だけで思わず達してしまいそうになる。
それを堪えながら腰を進めていくと、ペニスの先端が膜の様な物に触れた。処女膜だ。彼女がまだ純潔を保っていた証の存在に、そしてこれからそれを破る事への確認に彼が8号の事を見れば、彼女は彼に小さくキスをする事で答えた。
覚悟を決め、大輝が腰を進めペニスの先端が処女膜を引き千切る。薄い膜が破れるプチプチとした感触が体を伝わって脳まで届く。8号は膣から身を引き裂かれる様な痛みと、それを上回る快楽に思わず彼の背に爪を立ててしまった。
「んぐぅぅぅぅぅぅっ!♡ んいぃぃぃぃぃぃっ!♡ あ、んんんんんん♡」
「だ、大丈夫?」
「ん、うん♡ 痛い、けど……それ以上に、嬉しい♡」
膣からは未だ痛みが響いているが、彼女の心を占めているのは苦痛ではなく快楽だった。愛する男が自分の純潔を奪い、求めてくれている事が彼女には堪らなく嬉しくそして気持ち良かった。今まで物として扱われ愛されなかった彼女が、生まれて初めて誰かに心から愛されたのだ。
だがそれでも、痛みからくる体の生理現象は抑えられず8号の目からは涙が零れ落ちる。大輝はそれを優しく舐め取り、そのままキスをして彼女に破瓜の痛みを忘れさせた。
「んむ♡ じゅるる♡ あ、はぁ♡ ピチャピチャ♡ あぁ、はぁぁぁぁ♡」
繋がった状態での貪り合う様なキス。暫く室内には2人が唇を貪り合う湿った音が響いていたが、程なくして8号の方から口を離すと彼に動くよう言った。
「もう、大丈夫。だから、動いて……あなたの好きな様に♡」
「分かったでも、辛かったら言って」
そう言うと彼は最初ゆっくりと腰を前後に動かした。奥まで挿入されていたペニスが抜ける寸前まで引かれ、結合部から愛液と破瓜の血が混じった液体が零れ落ちる。そしてカリが膣内を抉る感触に8号が快楽を感じて身を震わせていると、今度は一気に奥まで突き入れた。
「んぐっ♡ あ♡ あぁ♡ うぁ♡ ひぐ♡ んん♡ はぁぁ♡」
大輝が腰を前後に動かす度に、甘い快感が電流の様に8号の全身を駆け巡る。その快楽は先程までの比ではなく、同時に彼女に生きている事と愛されている事の実感を教えてくれていた。
彼から愛される快楽に、彼女は歓喜の声を嬌声と共に上げた。
「あん♡ あん♡ あん♡ あん♡ あぁぁ♡ これ、すごぉ♡ こんな、知らないぃ♡ こんな、気持ちいいなんてぇ♡」
実のところ、8号は男女の交わり自体は知っていた。だが彼女が知るのは、男が女を一方的に組み伏せ犯す凌辱のみ。
研究所で実験動物をしていた頃、自分と同じクローンの中で実験についてこられなくなったりした個体は廃棄処分を言い渡され、殺処分か性欲処理に回された。特に8号が蹴落とす形で処分行きになった個体の末路は悲惨で、泣き叫びながら何人もの男に凌辱され心が壊れた者も少なくない。
それを見てきた8号の中では、無意識の内に男女の交わりとはああいうものなのだと言う印象が根付いてしまっていた。男は女を無理矢理組み伏せ、女は男に犯される苦痛に泣き叫ぶ。
だが大輝との交わりは、同じセックスである筈なのに全然違った。8号は苦痛に泣き叫ぶどころか、快楽に喘ぎ悦びの声を上げている。
未知の快楽と幸福に、8号は溺れるようにさらに彼を求めていた。
「もっと♡ あぁぁ♡ もっと、もっとぉ♡」
両腕を彼の首に回し、自らも腰を振り膣肉を締め付けながら時に彼にキスをする。自分が彼に愛され、求められている事を実感し彼女は更に甲高い嬌声を上げた。
「あぁ♡ んあ♡ ひゃぁぁ♡」
「く、うぅ……! 俺、そろそろ……!」
膣肉を8号が締め付けた事で、大輝のペニスがうねる膣肉にしごかれ、何かが込み上げてくるのを感じた彼は腰を引いてペニスを引き抜こうとした。
だが8号がそれに待ったをかけた。彼女は彼に強くしがみ付き、両足も腰に回してそれ以上抜けないようにしたのだ。
「え!」
「出して♡ あぁ♡ このまま、出してぇ♡ もっと♡ 私に、あなたを刻んでぇ♡ あぁぁ♡」
腰を足でホールドするのみならず、自らも腰を振って彼に射精を促そうとする8号。その彼女の気持ちに応えるように、大輝のペニスはその欲望を彼女の胎内に解き放った。
「うぅ……!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡」
膣内に射精され、子宮の中に温かな精液が満ちていく。その感触に8号は、種付けされる女としての快感を感じ舌を突き出しながら絶頂した。絶頂した事で彼女の全身が痙攣し、膣肉は彼のペニスから精液を搾り取るように強く締め付ける。それが更に彼に射精を促し、彼は一滴も余す事無く精液を彼女の膣内に注ぎ込んだ。
「あ、はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡ あぁぁ♡」
まだ絶頂の余韻が残っている8号は、彼にしがみ付いたまま肩で大きく息をする。満ち足りた笑顔で、全身を汗やその他の体液で濡らしながら大きく呼吸する姿は、それだけで扇情的なものを感じさせそれを間近で見ている大輝は早くも性欲が再び昂るのを感じた。
その昂りが伝わったのか、8号の膣内でペニスが熱さと硬さを取り戻していく。膣内でムクムクと何かが膨れ上がる感触に、8号は目にハートマークを浮かべて淫靡に蕩けた笑みを浮かべた。
「あは♡ ねぇ、もっと、シて♡ もっと、私を満たして♡」
蕩けた顔の8号はそう言って啄む様に大輝にキスをした。ただでさえ彼女とのセックスで彼自身快楽に溺れそうになっていたのに、そんな事をされては理性を保つ事など不可能だった。
結果、己の欲望を解放したように2人はその後も獣の様に交わり続けた。
「あ♡ あぁぁ♡ あはぁぁぁ♡」
最初正常位だったからか、今度は後背位で交じり合う。俯せにした8号の尻だけを上げさせ、後ろから犬の様に大輝が覆い被さり腰を振る。先程と違い更に奥まで突き立てられるペニスの感触に、8号も快楽に喘ぎながら腰を振り膣肉を締め付ける。
「うぁ♡ あん♡ あん♡ あん♡ あ♡ ひぁぁぁ♡」
ベッドをギシギシと軋ませながら2人は交じり合う。何度も後ろから突いていた大輝は、徐に彼女に覆い被さると彼女の顔を後ろに向かせその唇を貪った。
「んむ♡ んん♡ じゅるる♡ はぁぁ♡ あむ♡ むぅぅ♡ んく、あはぁ♡」
唇を貪りながらも、彼女を後ろから突く事は止めない。そのまま彼は彼女の中で再び欲望を解き放った。
「んむぅぅぅぅぅぅぅぅ♡ んんんんんんんん♡♡ ぷはっ、あぁぁ♡ はぁぁぁぁぁ♡」
「んく♡ あぁぁ♡ これ、深いぃ♡」
寝そべった大輝の上に8号が跨り、自ら腰を振る騎乗位の体勢。この体勢だと彼女が腰を上下に動かす度にその巨乳が大きく揺れる為、視線でも彼を楽しませた。
「あ♡ あん♡ はぁぁ♡ 気持ちいい♡ 気持ちいい気持ちいい♡ あぁ♡ もっと♡ もっともっとぉ♡」
すっかり快楽の虜となった8号は、出会った頃の雰囲気が嘘の様に淫らに腰を振り続ける。快楽がそうさせるのかそれとも本能的に男を悦ばせる方法を知っているのか、8号は体をくねらせ腰を前後左右に動かしながら上下運動をした。その淫靡な踊りは大輝の獣欲を更に掻き立て、その手を大きく揺れる彼女の乳房に伸ばさせた。
「あぁ♡ んあぁ♡ もっと♡ もっとしてぇ♡ 私の胸、メチャメチャにしてぇ♡」
下から掬い上げるように乳房を持ち上げ、円を描く様に揉みしだきながら大輝自身下から腰を突き上げる。上から腰を落とす彼女の動きに合わせて下から突き上げる事で、ペニスは更に奥まで突き激しい快楽に8号は何度も絶頂した。
「ひぐぅぅぅぅ♡ また、イク♡ イクイクイク♡ イクゥゥゥゥゥ♡」
「あ♡ あぁ♡ あ、そこぉ♡ あん♡ だめぇ♡ あぁぁ♡」
ベッドの上に腰掛けた大輝に背を向ける形で挿入される背面座位で、8号は下から突き上げられながら後ろから片方の胸を揉まれ、大輝は空いた方の手でペニスにより抉られている彼女の膣を弄った。
「あん♡ あぁ♡ そ、そこぉ♡ んぁ♡ や♡ あぁ♡」
度重なる快楽でピンと勃ったクリトリスを、大輝の指が弄りながら下から突かれる。胸に膣内、そしてクリトリスという性感帯3か所を同時に責められて、8号はあまりの快楽に息も絶え絶えと言った様子だった。
それでも彼女の中に拒絶と言う選択肢はない。この甘美な快楽が、永遠に続けば良いとすら思っているから。
「あ♡ んぁぁ♡ だ、大輝……♡」
「!」
「大輝♡ あぁ♡ 大輝ぃ♡ しゅき♡ 大しゅき♡ あ♡ あぁ♡ もっと♡ もっとぉ♡」
徐に8号が大輝の名を呼んだ。思えばこれまで、彼女が彼の名を呼んだ事は無かった。彼に愛され、快楽に蕩ける事で彼女の中にあった最後の壁が無くなり本当の意味で心を開いたのだ。それを理解した瞬間、彼は歓喜と愛しさと共に彼女の中に精を放った。
「あは、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡」
熱い精液が子宮を満たしていく。それは、実験動物として空虚な日々を過ごしていた彼女に違う生き方があると言う事を報せるものであり、同時に大輝からの愛情の表れでもあった。
「はぁ♡……はぁ♡……はぁ♡」
満ち足りた表情で、淫らな笑みを浮かべる8号。大輝はそんな彼女を自分の方を向かせると、だらしなく開けられた口を貪った。
「あむ♡ むぅ♡ ん、んん♡ はぁ♡ あ、あぁ……♡」
その後も2人は、窓の外が白くなるまで交わり続け、部屋からは8号の嬌声が止まる事無く響き続けていた。
朝日が昇り、窓から差す光が2人を照らす。8号は散々に交わり濡れたベッドの中で、大輝の胸に額を押し付けるように寄り添っていた。
「大輝……私、今、幸せ……」
「俺もだよ……。ところでさ?」
「うん?」
「何時までも8号、なんて呼び方じゃダメだと思うんだ。だから、君に新しい名前を付けようと思うんだけど……」
「どんな?」
8号は内心でワクワクしながら、彼が自分にどんな名を付けるのかと耳を傾ける。彼女からの期待に、大輝は恥ずかしさを感じながらここ数日考えていた彼女の名前を口にした。
「
「大海 葵……?」
「君のその、海原みたいに青く綺麗な瞳と髪色を見ていると、そんな名前が浮かんだんだ。色で判断するなんて安直かと思ったけど、でも、綺麗な名前だと思ったから」
それは奇しくも、瑠璃につけられた名と同じ色を意味する名前だった。共に海の色である青を表現する、だが全く異なる名前。大輝が意図した訳ではないだろうが、しかし彼女にとって忌まわしい番号を連想させず、且つ彼女の美しさを表現するにはこれ以上ない名前だった。
何より、彼に新たな名を貰った事で8号……否、葵は本当の意味で実験動物としての人生に終止符を打てたのだ。その事を喜んだ葵は、与えられた新たな名を胸に刻み幸せそうに目を瞑りながら一筋の涙を零した。
「私は、葵……! 大輝、ありがとう……!」
「葵……愛してる」
「私も……」
葵は花が咲いた様な笑みを浮かべ、大輝はそんな彼女を優しく抱き寄せる。
身を寄せ合う2人を、窓から差し込む日の光が優しく照らすのだった。
***
あくる日、大輝は海都でも知る人ぞ知る人気のBARであるFUJINOを訪れていた。店内は多くの客で賑わい、そこかしこで楽しそうな談笑などが聞こえてくる。
「お待たせしました~! ごゆっくりどうぞ~!」
店の看板娘の片割れである海羽が持ってきたカクテルを飲みながら大輝は店内を見渡す。すると店の奥の方で人だかりが出来ているのが見えた。
行ってみるとそこにあったのはルーレット台で、そこではこの店のもう1人の看板娘である瑠璃と客によるルーレットでの対決が行われていた。客は手持ちのチップを大穴狙いで一点賭け。それに対し瑠璃は薄く笑みを浮かべると、ルーレットを回してボールを放り込んだ。
カラカラと音を立てながらボールが転がるのを誰もが固唾を飲んで見守っていると、ボールは客が賭けたのとは別のポケットに入った。敗北が決まった瞬間、挑戦者の客は頭を抱えて蹲る。
「うぐぁぁぁぁぁっ!? ま、また負けたぁ……」
「またの挑戦をお待ちしてます♪」
悔しそうに蹲る客に笑みを向ける瑠璃。その姿は大輝の愛しい人と瓜二つであり、それを見ていた彼はちょっとした悪戯を思い付き彼女に挑戦した。
「次、いいかな?」
「あ、はい! こちら初めてですね?」
「あぁ」
「では、最初の10枚はサービスとさせていただきます」
瑠璃が差し出した10枚のチップを大輝が受け取り、いざゲームスタート。
「
ルーレットのウィールが回され、瑠璃がボールを放り込む。ボールの動きを見ていた大輝は、先程彼女がボールを投げ入れる際の癖とウィールとボールの回転速度などから入るポケットを予測し、初っ端からの一点賭けで全てのコインを黒の8に賭けた。
出だしからいきなりストレートアップベットをする彼に、瑠璃を含め周囲の客は彼がルーレットの素人であると考えた。普通いきなり一点賭けなんて無謀な真似はしない。
だが次の瞬間、ボールが彼の賭けた黒の8に入ったのを見て、誰もが言葉を失った。
シンと静まり返った中で、大輝は静かに立ち上がると賭けに勝った場合どうなるのかを聞いた。
「それで? 俺が勝った場合どうなるのかな?」
「あ、え~っと……私が精一杯おもてなしさせていただきます」
まさかこんなあっさり負けるとは思っていなかったので、瑠璃もやや放心気味に答えた。すると大輝は、懐から封筒を取り出し彼女に渡した。
「おもてなしは次の機会に取っておくよ。その代わり、これ。俺からのラブレター。後で読んでおいて」
ここで漸く周囲の客は状況を理解した。あの瑠璃に初っ端から大勝ちする者など今まで誰も居なかったのだから。しかもその相手が彼女にラブレターを送ったと言うのだから、常連の客達が騒がない訳がない。
「あ、あの、実は私……」
この時点で瑠璃は既にネイトと結婚している。だからラブレターなど渡されても困ると言おうとしたのだが、彼は周囲に聞こえないようにこっそりと彼女に告げた。
「冗談さ。そいつは、アンタの姉妹からの手紙だよ」
「…………え?」
大輝の言葉の意味を最初瑠璃は理解できなかった。が、自分にとっての姉妹が誰かを考えその答えに行きついた時には彼は既に会計を終え店から出てしまった後だった。
慌てて後を追って店を出ると、彼は店に背を向けて離れていくところであった。詳しい話を聞きたい瑠璃は、離れていく彼の背に声を掛ける。
「ま、待って! 姉妹って……それって、もしかして……!」
飛び出してきた瑠璃の気配に気付きながら、彼は振り返ることなく歩き続ける。瑠璃が彼を呼び止めようと一歩踏み出すと、それを待っていたように彼は背を向けたまま口を開いた。
「今度は直接合わせに行くよ」
それだけ言って彼は人ごみの中へと消えて行き、残された瑠璃は渡された封筒を胸に抱く様にしてその場に崩れ落ち涙を零した。
「そっか……良かった……!」
1人涙を零す瑠璃に構わず、自宅に帰宅した大輝。すると彼の前にエプロンを着けた葵が出迎えた。
「ただいま」
「お帰りなさい!」
傷はある物の、すっかり人間らしい顔付になり幸せそうな笑みを浮かべる葵。
そこに嘗て8号と呼ばれた女の姿は無い。
今ここに居るのは、同じ境遇の姉妹と同様帰るべき場所と愛する人をようやく見つける事の出来た、1人の女性であった。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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次回の更新もお楽しみに!それでは。