「WH-19547「ルシア・鴉羽」、1回目の全記憶転送を開始。」
「WH-16211「ビアンカ・真理」、1回目の全記憶転送を開始。」
ゲシュタルトの傀儡である彼女たちは、先ほどと同じようにそれぞれのステータスを随時報告し始めた。
自分の記憶がすべて抜き取られる恐怖の感情は、ゲシュタルトによって遮られている。
培養槽に眠るすべての構造体の記憶情報が、次々にゲシュタルトに送られていく。
「記憶転送速度:942GB/s、974GB/s、1.02TB/s・・・」
電子脳のデータ量が、凄まじい勢いで減っていく。
さしずめ、今の彼女たちはゲシュタルトというコンピュータに接続されたUSBメモリのようなものなのだろう。
機体を一切動かさず、ただただその記憶をゲシュタルトに差し出している。
「WH-13521「21号・XXI」の全記憶データ転送完了。精査中・・・」
最初にすべての記憶データを失ったのは、21号だった。
すべての記憶をゲシュタルトに抜き取られた21号は、正真正銘の骸に成り果てる。
今の彼女は、OSの入っていないコンピュータに等しい。
彼女を皮切りに、他の構造体もすべての記憶データを抜き取られていった。
次に全ての記憶データを抜き取られたのは、あれほど腹部を膨らませ、最期の瞬間まで激しく抵抗したルシアだった。
それから、ヴィラ、アイラ、ビアンカ、蒲牢と数分置きに抜け殻が生まれていった。
「WH-13521「21号・XXI」の記憶データ精査完了。伝送プロセスへ移行。」
おおよそ5分ほどで、21号の記憶データは精査された。
ディスプレイの表示が“EXTRACT”から“EJACULATION PREP”に切り替わる。
“射精準備”という意味だ。
一切の動きがなかったペニスが、規則的なペースでビクビクと脈動を開始した。
あくまで準備となっているため、精液もカウパー液も出ていない。
記憶データを失うとともに発情状態は解除されていたため、いつもの落ち着いた21号の表情や体つきのままペニスだけが興奮し続けている。
ゲシュタルトの説明によれば、構造体の体内で変換された精液は精嚢に送られず、そのまま輸精管に流れ込むとのことだった。
すなわち、今21号がペニスを脈動させるのは、輸精管に送られた精液をすぐに排泄するためということになる。
そうこうしているうちに、他の構造体のステータスも次々に切り替わり、ペニスが脈動を始めた。
すまし顔をして眠る構造体の下半身で、まるで別の生き物かのように激しくペニスが暴れている。
それぞれのペニスのサイズは大きく異なるが、1秒に1回というペースに変わりはない。
竿や亀頭が膨らんではしぼみ、亀頭の先が開いては閉じる。
不要な記憶データが21号に送られ始めた。
21号の心拍数が上がる。
交換機が動作を開始したようだ。
培養槽の上から、ポンプが動作を始める音が聞こえた。
21号の腹部は断続的に振動するようになり、ザーメンマテリアルが送られていることがわかる。
同時に、ザーメンマテリアルが送られるということは、21号の体内でそれが使われている、すなわち精液が生み出されているということを意味していた。
そして、それからわずか3秒後、ゲシュタルトはシグナルを送った。
「WH-13521「21号・XXI」、射精せよ。」
ディスプレイから“PREP”の文字が消えたその瞬間。
ドクン!
わずか1秒のうちに、21号のペニスは白濁のバンドを生み出した。
この瞬間を待っていたと言わんばかりに、ペニスが元気よく脈動し、規則正しく精液を吐き出す。
ペニスの脈動は21号の下半身に伝播し、水中に浮かぶ細い足がゆらゆらと揺れ始めた。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ・・・
スピーカーを介して、ペニスの脈動が聞こえる。
その音は、徐々に他の培養槽からも聞こえるようになっていった。
「WH-20110「リーフ・白夜」、射精せよ。」
ドクン!
「WH-12115「アイラ・極彩」、射精せよ。」
ドクン!
「WH-19547「ルシア・鴉羽」、射精せよ。」
ドクン!
それぞれのペニスから勢いよく精液が飛び出し、培養槽の壁を叩く。
ディスプレイの数値が目まぐるしく変化し、射精回数や吐き出した精液の量がみるみるうちに増えていく。
1分に60回もの激しい射精を、機械である彼女たちは一切拒まずに受け入れて指示を実行し続ける。
人類とは体の作りが違うとは言え、1回の射精で吐き出される精液の量はビアンカで40ml、蒲牢で5mlに制御されていた。
機体に詰め込まれているザーメンマテリアルの量は最低でも4Lはあり、大型の機体であれば10Lを優に超える。
これから彼女達を待ち受けるのは、数百回に及ぶ射精。
子を孕ませるためでもなく、快楽を得るためでもなく、ただ自分の記憶を消去するための射精。
どれだけ自らの機体が汚れようと、壊れようと、ゲシュタルトの赦しなくして射精は止まらない。
最後の希望がゲシュタルトによって摘み取られてしまった彼女たちは、為す術もなく射精を続けていった。
それから数時間もの間、構造体は射精し続けた。
ディスプレイの表示は“EXTRACT”、“EJACULATION PREP”、そして“EJACULATION”を何度も繰り返し表示した。
記憶抽出の回数は10回を超えた。
しかし、ディープクリーンを終えた構造体は1体もいなかった。
今もどこからか、ペニスが激しく脈動する音が聞こえている。
彼女たちが1時間に排泄する精液の量は、蒲牢で18L、ビアンカで144L。
そのあまりの排泄量にゲシュタルトの処理が追いつかず、それぞれが射精を始めてから1時間程度で培養槽の液体はすべて精液に置換された。
透明な培養槽をすべて白濁した液体で覆い尽くした構造体の現状は、もうゲシュタルトにしかわからない。
「WH-19547「ルシア・鴉羽」、10回目のディープクリーン完了。」
「結果・・・失敗。11回目の全記憶データ抽出開始。」
再び、ルシアの眠る培養槽のディスプレイに“EXTRACT”のステータスメッセージが表示された。
また長い時間が経過した。
しかし、未だにディープクリーンを終えた構造体は1体もいない。
すべての構造体は、25回目のディープクリーンを実行している最中だ。
全員のステータスは“EJACULATION”となっており、これが終われば彼女たちの射精も終わりを迎える。
1回の射精量が多いビアンカやヴィラの培養槽からは、処理しきれなくなった精液が溢れ出して白い川を生み出していた。
ルシアやリーフの培養槽からもゴポゴポと水泡音が聞こえており、精液が培養槽の外壁を伝って溢れていた。
ルシアのディスプレイを見ると、射精量は1036.7Lと書かれていた。
その1037Lの精液に、一体どれほどの記憶データが詰め込まれているのだろうか。
培養槽からあふれている精液をすくい取れば何かわかるかもしれないが、あいにくこの空間にはゲシュタルトと構造体、それから非常に濃い栗の花の匂いしかない。
真っ白な培養槽の一つからブザーが鳴った。
騒がしくうなり続けたポンプの音が、少しだけ小さくなった。
その培養槽のディスプレイに表示されているのは、“COMPLETE”というステータスメッセージ。
長きにわたるディープクリーンが、ようやく終わったようだ。
「WH-13521「21号・XXI」のディープクリーン終了。総射精回数:・・・」
数千回に及んだ射精と数百リットルの射精量を、淡々とゲシュタルトが読み上げていく。
カチカチと、ケーブルが外されていく音が聞こえる。
保護ゲルやクッションを失った頭部に、代わりに精液が詰め込まれていく。
「・・・これにて、WH-13521「21号・XXI」の「再教育」を終了します。お疲れ様でした。」
無意味なねぎらいの言葉が、記憶を失った21号にかけられた。
“COMPLETE”の表示は次々に増えていった。
ポンプの動作音がどんどん小さくなっていく。
ケーブルがどんどん外され、構造体は培養槽の中をふわふわと漂っている。
最後にビアンカの培養槽の表示が切り替わり、すべての構造体のディープクリーンは終了した。
それぞれの構造体が排泄した精液の総量は、10,000Lを超えていた。
「すべての構造体の「再教育」を終了しました。」
ゲシュタルトが声を発する。
培養槽の中は、引き続きそれぞれが吐き出した精液で白濁し何も見えない。
「これより、各構造体を格納し、配属先へ輸送します。」
すると、培養槽内の精液が上に吸い上げられていくのが見えた。
ルシアの黒い髪やビアンカの大きな尻など、それぞれの構造体のシルエットが見え始める。
そして、それらも一緒に上へと吸い上げられている。
いよいよ、彼女たちはゲシュタルトの忠実な下僕としてその責務を果たし始めるのだ。
体の小さな構造体から順に、培養槽から消えていった。
アイラやビアンカはその突き出した胸がつっかえてなかなか吸い込まれなかったが、ゲシュタルトがなんとかして取り込んだ。
名残惜しそうに培養槽に残っていたルシアの腕もきれいに吸い込んだところで、すべての構造体はゲシュタルトの中に格納された。
それからしばらくして、真新しい培養槽の中に2体の構造体が送り込まれた。
頭やへそに開けられた穴もきれいに元通りになっており、傍から見るときれいなお人形のようだ。
構造体が入っている培養槽の照明が点灯した。
「WHC-01644「蒲牢・華鐘」、WH-13521「21号・XXI」、起動せよ。」
その言葉に、二人は同時に目を開けた。
そして、それぞれの右手をそれぞれの女性器に挿し込んでグリグリと刺激を始めた。
数秒ほど刺激したところで右手をゆっくりと遠ざけていくと、手を追うようにクリトリスが勃起し、ペニスに形を変える。
会陰が肥大し、玉袋のように形を変える。
やがて、大きく勃起したペニスの亀頭が彼女たちのへその下をちょんと触れると、直立姿勢に戻って声を発した。
「ザーメンタンク、21号。ただ今起動しました。」
「ザーメンタンク、蒲牢。ただ今起動しました。」
(続)