※この作品はR-18です。

機械たるもの、従者たるもの   作:棒笹

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最終話 機械たるもの、従者たるもの

「プロトコル、最終段階に移行。」

 

散々にリーフを痛めつけたルシアは、先程アイラが大将にやったのと同じようにリーフの顔に両手を添えた。

 

ルシアは、ゆっくりと口を大きく開き、舌を出す。

 

舌からは、無数の機械虫がうごめいているのがわかった。

 

(・・・何度見ても、この光景には慣れませんね・・・。)

 

ルシアの呼気を浴びながら、リーフはおののく。

 

(でも、これはルシアがやりたくてやってるわけじゃない・・・。)

 

リーフは、自分が今のルシアの立場だったときの記憶を呼び起こした。

 

 

全身をゲシュタルトに支配されたリーフは、ルシアがプロトコルの実行に同意するやいなやその美しい顔面に拳を打ち付けた。

 

「がはぁっ!?」

 

ルシアは目を白黒させながらリーフを見上げる。

 

しかし、リーフはお構いなしに拳を何度も叩きつけ、ルシアを痛めつけていった。

 

異重合体の影響で、リーフの攻撃力は通常の10倍、対するルシアの防御力は1/4に調整されている。

 

ルシアの顔面はみるみる歪んでいった。

 

「・・・あ、が・・・」

 

顎の骨を砕いたところで、リーフは高速修復剤を射精し、ルシアを回復させる。

 

「が・・・あ・・・?喋れる・・・?」

 

「・・・リーフ、お願い・・・。」

 

開いた口に、リーフの白い拳が突っ込まれる。

 

その一撃にルシアは気を失うと、再び高速修復剤によって回復させられ、また殴られ続けた。

 

 

大体1時間ほどルシアを殴りつけ、痛めつけたところで、リーフは自らに巣食う機械虫を舌先に集めてルシアに狙いを定めた。

 

「・・・リーフ・・・。これ以上は・・・。」

 

舌の上で踊る機械虫に怯えるルシアの顔。

 

口元には、今のリーフと同じように循環液の跡がある。

 

胸元にはフロート銃で空いた風穴があり、片方の肺は使い物になっていない。

 

ゆっくりと、ルシアの顔が近づいていく。

 

「・・・どうして、わたしたちは・・・」

 

喋り続けるルシアの顎を強引にこじ開け、リーフの舌がルシアに入り込む。

 

「うぐ・・・」

 

・・・

 

 

「おい、リーフ!起きてくれ!いまなら、まだ・・・!」

 

甲高い悲鳴を上げるカレニーナ。

 

片側の逆元装置は欠損しており、おそらくリーフが撃ち抜いたと思われる。

 

「・・・なんでなんだよ、オレたちは、みんなのt・・・」

 

カレニーナが次の音を出す前に、リーフは素早く舌を差し込んだ。

 

「あぁ、あ・・・」

 

・・・

 

(・・・今、ルシアには私が見えているんでしょうか?)

 

気を取り直して、ルシアの方を向き直るリーフ。

 

ルシアの瞳は瞳孔が開ききっており、黒目はそれぞれあらぬ方向を向いていた。

 

(苦しむ私の姿を、見たくないんでしょうね・・・。)

 

勝手な妄想にすぎないが、リーフの心を落ち着かせるには、それで十分だった。

 

リーフはゆっくりと口を開け、喉の奥深くまでルシアに見せ始めた。

 

ルシアの舌に、リーフの熱い呼気が吹きかかる。

 

(・・・せめて、私のときくらいは、ルシアを苦しませないようにしたい。)

 

「・・・ほら、ここですよ。ルシア。」

 

舌を上下に動かし、ルシアを誘いこんだリーフ。

 

たちまち口内に舌が差し込まれ、無数の機械虫があのときと同じように移動を始める。

 

「あがぁ、あぁ・・・・!」

 

ガタガタと全身を震わせ、ルシアにすがりつくリーフ。

 

その動きは痛みによるものなのか、それとも機械虫の影響か。

 

リーフの指がルシアの背中をひっかき、循環液が流れる。

 

指が滑ってルシアから離れても、またすぐにリーフはルシアにすがる。

 

(意識海が・・・奪われる・・・!)

 

機体の制御を失いつつあるリーフは、まだ妊娠して間もないにも関わらず大量の母乳を流し始めた。

 

酸化して赤黒く変色した循環液が、母乳で洗い流される。

 

目からは涙、鼻からは鼻水、尿道からは潮・・・

 

あられもない、という一言で片付かないほど、今のリーフは見るに堪えない。

 

薄れゆく意識の中、リーフは最後の力を振り絞って大将を見た。

 

運が良かったのか、大将とちょうど目が合う。

 

(・・・大将、リーフもルシアも、待っていますからね・・・)

 

その言葉が終わると、リーフの黒目は天を仰いだ。

 

 

「プロトコルが正常に完了しました。」

 

リーフの両手足をそっと引き剥がし、ルシアは立ち上がった。

 

異重合体によりリーフにつけられた背中の傷は跡形もなく修復されているが、循環液の跡はしっかり残っている。

 

「WH-20110「リーフ・白夜」。起動せよ。」

 

ルシアの言葉に、リーフはピクリと体を震わせた。

 

そして、ゆっくりと起き上がり、直立する。

 

「受精卵保有構造体WH-20110「リーフ・白夜」。

 

ただ今起動しました。

 

受精卵管理番号はAX4758-BX9612、妊娠進行度は7%です。」

 

こちらにも先程までの痕跡が生々しく残っているが、今の彼女には至極どうでもいいようだ。

 

「交配試験に成功しました。

 

ゲシュタルト様の任務を無事遂行でき、大変光栄です。」

 

ルシアとリーフが同時に頭を下げた。

 

「交配試験の成功を確認。

 

構造体格納プロセスを実行。」

 

すると、二人の機体は太いチューブに拘束された。

 

ゆっくりと、それぞれが戻るべき場所へ引きずり込まれていく。

 

ルシアのペニスに搾精機が取り付けられた。

 

「精子保有構造体は、残存精液を排泄せよ。」

 

ゲシュタルトが指示を飛ばすと、小さくしぼんだルシアのペニスからそのまま精液が流れ出す。

 

すべての精液を排泄し終えると、いつの間にかペニスは消えていた。

 

リーフには、乳房に搾乳機がつけられた。

 

「受精卵保有構造体は、母乳排泄テストを実行せよ。」

 

ゲシュタルトの指示とともに、リーフは一定量の母乳を射乳した。

 

少しではあるが、腹部が膨らみつつあるのが見える。

 

「テスト成功。

 

成分分析結果:クラスS基準に適合」

 

搾乳機が外され、母乳はそのまま腹部にかけられた。

 

それからしばらくして、二人はここに来たときとほとんど同じように培養槽の中で眠りにつくと、部屋から出ていった。

 

数十秒後、大将の背後でモーターの駆動音が鳴り響き、リーフが眠る培養槽が廊下に並べられた。

 

 

重苦しい足取りでゲシュタルトをあとにした。

帰り際にも21号と蒲牢が射精を強いられている様子を目にしたが、立ち止まっていられる余裕はなかった。

顔つきがあまりにも異常だったのか、自室に戻るまでに何度も部下から心配された。

しかし、申し訳なかったが、それにも耳を貸してなどいられなかった。

 

(いつか絶対、ここから出して。絶対よ・・・!)

 

アイラの言葉が頭から離れない。

 

てっきり、ルシア達は私の記憶を失っているのだと思っていた。

 

・・・いや、あのとき確かに、ほとんどの記憶は奪われたのだろう。

 

そしてその後、彼女たちはそれを少しだけでも取り戻そうとした。

 

私がそこに来たときに、助けを求められるように。

 

・・・なんとしても、助け出してやらないと。

 

私は無意識で横の壁を殴った。

壁がへこみ、血がにじむ。

怪我を心配したスターオブライフが駆け寄ってくるのを見かけた私は、面倒事を避けるため、自室に急いで駆け込んだ。

自室のデスクに置かれていたのは、1通の封筒。

差出人はゲシュタルトだった。

 

―精液提供のお願い(管理番号:BX-P094)―

(前略)

〇〇様には人類の繁栄のため、その優れた精子を再び提供していただきたいと思い、連絡を差し上げました。

頂いた精液は丁寧に培養し、十分量が確保できたところで構造体による交配試験に使われます。

また、管理番号に”P”がついている精子あるいは卵子は、特に優秀な遺伝子を保有している可能性が高いため、同じく管理番号に”P”がついている卵子または精子と交配試験を実施します。

無事交配に成功した暁には、ご希望により交配担当構造体や卵子の提供元などの情報を提供いたします。

交配試験には、十分な経験を積んだ次の構造体が使われます(★がついているものは管理番号に”P”がついている場合にも対応いたします。)。

なお、構造体のラインナップは随時変化しますので、最新情報はデータベースを御覧ください。

(○月✕日時点)

・ルシア・黎明

・ルシア・鴉羽★

・ナナミ・遙星★

・リーフ・来光★

・リーフ・白夜★

・・・

(後略)

――

・・・あんな姿を見て、できるわけないじゃないか。

彼女たちは機械じゃない。

もとは、私と同じ人間だったんだ。

絶対に助け出す。

私は迷わず封筒をシュレッダーにかけると、アシモフにコンタクトを取った。

(完)




ここまでお読みいただいた皆様へ
この度は「機械たるもの、従者たるもの」をお読みいただき、ありがとうございました。
原作の設定上、かなりマニアックな作品となってしまいましたが、少しでも皆さんのお役に立てたのでしたら光栄でございます。

この物語は、ここで一区切りとなります。

しばらくは執筆することはないでしょうが、また何か興味深いアイディアが浮かんだときには筆をとると思います。
その話は、もしかするとこの物語の続きかもしれませんし、未完作の「極夜白染」の方かもしれませんし、もしかすると全然違う物語になるかもしれません。
本当はこの話のタイトルを「エピローグ」にするべきなのでしょうが、アイディアが浮かんだときのためにあえてそうしないことにしています。

また逢う日まで、皆様お健やかにお過ごしください。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

機械たるもの、従者たるもの 作者 棒笹
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