構造体がペニスへの奉仕を終えたところで、ゲシュタルトはすべての構造体をシャットダウンした。
糸が切れたマリオネットのように、構造体の全身から力が抜ける。
頭から地面に倒れ込んだもの、「蜂」のペニスに手を伸ばしかけているものなど、その様相はさまざまであった。
腹部を大きく膨らませた構造体の骸が転がっている。
ゲシュタルトは、植え付けた機械虫の卵が十分孵化するまで、しばらくこのままで放置した。
機械虫は、構造体の胎内で孵化すると、子宮を食い破って内部へ進んでいく。
子宮の内壁から垂れる循環液は孵化を待つ機械虫の卵にかかり、機械虫を更に温めて孵化を促していく。
「蜂」が構造体に注ぎ込んだ精液と循環液が混ざり、あたりには醜い色をした水たまりが散見される。
機械虫が時折構造体の神経ユニットに触れると、その構造体はビクンと飛び上がりまた落下する。
鈍い音が響くが、心配する仲間などいるはずもない。
機械虫にとっては、宿主を好き放題に暴れまわれるというまるで天国のような時間が続いた。
そして、構造体の腹部がある程度小さくなりつつあるのを確認すると、改めて構造体を起動する。
構造体の自動チェック機能が働き、仰向けの体勢を取った構造体は、全身のあちこちを動かして機能テストをしている。
子宮を動かしたその瞬間、すべての構造体の目がカッと開くとともに、腹部や頭部を抱えてうめき出した。
「うぐぁぁぁぁっ・・・があぁぁぁぁっ・・・」
「ああああっ・・・ううぅぅぅっ・・・」
身体が内側から食い破られるような感覚にうめき声を上げ、あたりを転がりまわる。
痛覚、不快感、嘔気・・・様々な感覚が濁流のように押し寄せる。
「うげぇぇぇっ・・・」
胃内を機械虫が暴れまわったのか、ビアンカと蒲牢は同時に嘔吐した。
精液と酸化した循環液が混ざった褐色の液体が、地面に撒き散らされる。
「・・・なに、これ・・・!?」
液体には当然機械虫も混ざっており、蒲牢の顔から血の気が引いていった。
「・・え、どういうこと?私、さっきまで地上にいて・・・?」
蒲牢があたりを見回して絶叫した。
「みんな、どうして裸なの!?」
「こんなのが、私たちの中に・・・?」
蒲牢の様子に気づいたビアンカが、自身の吐瀉物を見て言った。
その時視界に入った肌色の物体に、ビアンカは注目した。
「・・・!?私の塗装はどこに!?」
突然全裸にされた構造体たちは、自身や仲間のあられもない姿に激しく動揺していた。
「どうして、私のおっぱいにこんなのが付いてるの!?」
乳首から飛び出した機械虫を、アイラがつまんで引き剥がそうとしている。
「いたたたたっ!!なにこれ、私の中にいるの!?一体どういうこと?」
「このお腹のもぞもぞとした感じは何なのでしょう・・?」
リーフが自身の下腹部を見た。
いつの間にか、あれほど大きかった腹部はもとの美しい状態に戻っていた。
ただし、その表面には無数の機械虫がうごめいている様子が見て取れた。
「・・・これ、絶対管じゃないですよね・・?」
あまりの恐怖に、尿道から液体が漏れる。
どよめきで満たされた空間に、ゲシュタルトの声が響いた。
「恐れる必要はありません。」
その声がトリガーとなり、構造体の意識海は再び急速に支配されていく。
「・・・あれ、わたし、は・・・わたしは・・・」
「この声は・・・きいては・・・」
「・・・たすけ、て・・・」
「・・・」
あれほど動揺していた構造体はたちまち黙り込み、光を失った目をゲシュタルトに向けている。
口から唯一漏れるものがあるとすれば、うめき声程度だった。
まるで、神の啓示を待っているかのように。
「あなたたちの子宮に宿した機械虫の卵が、無事にかえって成長した証拠です。苗床としての使命を存分に果たしたあなた達を称賛します。今、あなた達の全身を、孵化した機械虫が這い回っています。彼らの目標は、あなた達の電子脳です。機械虫があなた達の電子脳を支配することで、ようやく「再教育」の準備が整うのです。私の従順な構造体たちよ、その電子脳をすぐに機械虫に明け渡しなさい。」
「・・・はい、ゲシュタルト様・・・。」
ゲシュタルトの指示を受けた構造体は、うめき声こそやまなかったものの、それ以上転がりまわることはなくなった。
機械虫を潰してしまわないように、自制しているようだった。
腹部や胴体から始まった機械虫の大移動は構造体の両手足に及び、その顔面は無数の機械虫でひどく醜くなっていた。
そして、体の小さい構造体から、順次機械虫が電子脳に侵入していく。
はじめに電子脳へ到達したのは、21号の機械虫だった。
21号のうめき声はピタリと止み、代わりに手足をバタバタとばたつかせるようになった。
そして、それすらも止むと、
「電子脳への機械虫の侵入を確認。管理番号WH-17655「21号:XXI」、「再教育」の準備完了。」
と声を発し、ゆっくりと立ち上がって直立姿勢を取った。
「・・・WHC-01644「蒲牢・華鐘」、「再教育」の準備完了。」
「・・・WH-20110「リーフ・白夜」、「再教育」の準備完了。」
続々と構造体の電子脳を機械虫が支配し、構造体は立ち上がる。
「・・・WH-18990「アイラ・極彩」、「再教育」の準備完了。」
最後にアイラが立ち上がると、すべての構造体の電子脳は機械虫の支配を受けた。
ゲシュタルトは構造体の様子を確認すると、それぞれの構造体の前にカプセルを用意した。
「すべての構造体が「再教育」の準備を整えたことを確認しました。これより、あなた達をゲシュタルトの体内に格納し、本格的な「再教育」を開始します。」
カプセルのハッチがゆっくりと開く。
「命令します。すべての構造体はハッチに乗り込みなさい。」
その言葉に、構造体はペタペタと足音を立てながらカプセルに近づいていく。
ルシアとリーフは、彼女とカプセルを結ぶ直線上に自らの装備があることを確認した。
装備の一番上には、グレイレイヴンのドッグタグと、あのペンダントが置かれている。
しかし二人はそれを迷わず蹴っ飛ばし、カプセルに向かって歩みを進めていく。
転がったペンダントは、二人の間を交差し、お互いのカプセルの中に転がり込んだ。
それに気づかず、二人はそれぞれのカプセルの中に入り、ハッチを閉めた。
すべてのハッチが閉じられたことを確認すると、ゲシュタルトは言った。
「・・・これより、「再教育」を開始します。」
カプセルの内圧が一瞬にして変化し、構造体はカプセルに接続されたチューブを通ってゲシュタルトの体内に取り込まれた。
(続)