すべての構造体の射精進行度が97%に達すると、ゲシュタルトによりそれ以上進行度が上がらないよう制御された。
今にも射精しそうな数多の構造体は、機体を小刻みに震えさせ、苦しそうに射精の時を今か今かと待ちわびている。
それぞれのペニスはしきりに脈動し、亀頭が激しく上下に揺れ動く。
股間にぶら下がる玉袋は、それが生み出された時よりも明らかに大きく膨らんでいる。
その精嚢の中に、大量の精液が詰め込まれていることは間違いない。
更に、精液が精嚢に入り切らなかったのか、腹部を膨らませて精液を溜め込んでいる構造体もいた。
ゲシュタルトが何を「不要な記憶」と定義しているかは分からないが、少なくともあの精液の中には彼女たちの大切な思い出が詰め込まれていることは確かだ。
その証拠に、ある構造体のディスプレイには「電子脳利用可能容量+61TB」という凄まじい表示がある。
機体にもかなりの負荷がかかっているようで、培養槽で冷やされているにも関わらず、ディスプレイ上では構造体の体温は50度に差し迫ろうとしている。
構造体の顔はまっすぐに培養槽の外へ向いており、精液の狙いを定めているかのようだ。
その顔は熟れ過ぎた果実のように崩れ、上半身だけ見ると「精液を出す」というよりは精液を懇願しているようにしか見受けられない。
ゲシュタルトは、射精を待つ構造体に言った。
「あなた達の賢明な努力により、もう間もなく射精の時を迎えます。
余計な記憶をおちんちんから余すことなく排泄し、空中庭園に忠誠を誓う立派な構造体として生まれ変わるのです。
しかしながら、あなた達をここまで立派に育て上げた人類に、感謝の思いを伝えないまま射精するなんてことは無礼極まりありません。
そこで、今からあなた達に一人ずつ自我を戻します。
人類への感謝・・・特にそこにいる大将に感謝を伝えることができたら、人間では一生かかっても得られないほどの快楽とともにあなた達を生まれ変わらせましょう。」
そして、ゲシュタルトはまず蒲牢に自我を与えた。
突如、目に光が戻り、大将を探して首を動かす。
大将を見つけると、蒲牢はあの可愛らしい笑みをたたえて口を開いた。
「大将、いままで蒲牢のことをお世話してくれてありがとう。
蒲牢は九龍の子だから、マスターであるゲシュタルト様の思いがうまくわからなかったから、こうやってゲシュタルト様にお仕置きされちゃった。
でも、仕方ないよね。
蒲牢は悪い子なんだもん。
ゲシュタルト様はいつも正しいことを蒲牢に教えてくれてるのに、蒲牢ったらずーっと無視してばっかりで、ソフィアと常羽と遊んでたんだもん。
これからはゲシュタルト様に忠実な構造体としてここで頑張るから、どうか蒲牢がいなくなっても心配しないでね。」
ひとしきりの言葉を言い終えると、蒲牢のペニスがブルブルと震えだした。
押し寄せる快楽の波に蒲牢は膝から崩れ落ち、その美しい顔を培養槽に密着させる。
「・・・これって・・・」
蒲牢の顔に、待望の時を迎える喜びと、別れを惜しむ悲しみの感情が渦巻く。
(・・・最期くらい、大将にしっかりしたところを見せないと。)
(蒲牢は最期までしっかりものだったって、大将にずーっと覚えていてもらいたいから・・・!)
蒲牢はやっとのことで機体を起こし、いきり立った小さなペニスを大将に見せつける。
「ああ、やっとゲシュタルト様がお射精を許してくれたみたい!
それじゃあ大将、蒲牢はもう行くね!今までありがとう!
・・・大好きだよ!!」
震える声で感謝を伝えきった。
ペニスがドクンと大きく脈動し、蒲牢の「再教育」が幕を開ける。
熱い精液がペニスを駆け巡る感覚に、全身が震える。
培養槽の液体に記憶が流れ出す。
機体の制御が効かなくなった蒲牢は、最後にたたえた笑顔のまま射精し続けている。
「しゃせー、きもちいい・・・きおく、どんどんなくなっちゃう・・・」
「・・・でも、いいよね、きもちいいから。」
玉袋がしきりに上下し、まるでポンプのように精液を排泄していく。
(なんだか、眠くなってきちゃった。)
(まだ起きていたいけど、もう腕も動かないや・・・。)
(・・・さよなら、大将。)
蒲牢はどんどん精液を吐き出し、ものの1分もしないうちに精液は打ち止めとなった。
「WHC-01644「蒲牢・華鐘」の機能停止を確認しました。」
ディスプレイ上の人工心臓の心拍数が0を示す。
生命を生み出す培養槽の中で、蒲牢はただ一人、骸になった。
蒲牢のペニスにつけられたチューブから黒いゴムのようなものが広がり始めた。
ゴムが蒲牢を拘束していくにつれ、その表情や姿勢は起動前のそれに戻されていく。
乳房も、顔も、髪飾りでさえも、何もかもが真っ黒に塗りつぶされた。
こうして、蒲牢はゲシュタルトに「代謝」された。
それから、ゲシュタルトは次々に構造体に自我を与えては感謝を伝えさせ、射精へ導くと機体を覆い尽くして「代謝」していく。
「大将、この世界のことを何も知らなかった21号に、たくさんの世界を見せてくれてありがとう。
21号は、もともと失敗作だった。
だから、いつか捨てられて、スクラップにされちゃうのもわかってた。
でも、大将とヴィラに出会って、ノクティスと一緒に色んなところを巡ってたら、地球ってすごく面白いんだって思えた。
・・・世界のことも、大将のことも、おちんちんから白いおしっこがでたら21号はすべて忘れちゃう。
だけど、大将は忘れないでね。」
21号のペニスが激しく脈動を始めた。
快楽に膝をガクガクと震わせながら、培養槽の下へ沈んでいく。
(・・・もう、終わっちゃうんだ。)
(・・・21号、大将を不安にさせたまま射精したくない。)
21号は両手を後ろに突き出し、衝立のようにしてなんとか座り込まないようにもがく。
(声の震えは、恐れか嘘の証拠だから。)
高鳴る心臓を押さえつけるように、21号はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「・・・おちんちん、震えてきた。
これが、射精の前の感覚、なのかな。
白いおしっこ、たくさん出せたら、気持ちよく生まれ変われるのかな。
生まれ変わったら、今度こそ大将の・・・人類のためになれるといいな。
大将、21号の最期の任務、おちんちんから白いおしっこをたくさん出す所、しっかり見届けてね。」
そして、21号は文字通り最期の力を振り絞った。
「21号、記憶排泄開始。」
・・・ドクン!
瞬間、我慢に我慢を重ねたペニスが爆発する。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ・・・
虚弱だった21号のまばゆい生命の輝きが、培養槽に白い輝きとなって消えていく。
「・・・すごい。おちんちん、どくどくいってる・・・
これが、しゃせい?・・・すっごく・・・きもち・・・いい・・・」
色鮮やかだった視界が、少しずつ褪せていく。
そのせいか、21号の視界に映る精液は淡く、そして儚く見えた。
(・・・これが、私の記憶。)
(てっきり、白いおしっこなんて出ないと思ってた。)
(こんな白い液体から、大将みたいな立派な人類が生まれるんだよね。)
(・・・人類って、すごいんだな。)
射精の勢いが弱まっていく。
人工心臓の心拍数も、ゆっくりと落とされていく。
まるで眠りに落ちるかのように、意識海を手放していく21号。
(・・・あ。)
(・・・ヴィラにもお礼、言うの忘れちゃった。)
もうほとんど見えなくなった目で、21号は大将を見た。
(たいしょう、ヴィラ、に、あった、ら、・・・。)
(・・・)
射精が終わり、うつろな目をした21号は力なく培養槽の底へ崩れ落ちた。
21号が最期に排泄した生命の輝きは、名残を惜しむかのように彼女の口の中を漂っている。
「WH-13521「21号・XXI」の機能停止を確認しました。」
21号の「代謝」が、これにて終了した。
「大将殿、たくさんの戦場をあなたと渡り合えたことは、私にとって一番の光栄でした。
列車であなたと踊ったワルツの振り付けに、空中庭園で見上げた美しい夜景の数々。どれも大切な思い出です。
ずっと、心に留めておきたかったですが、その願いはもう叶うことはありません。
もうじき、私はあなたとのすべての記憶をザーメンに変えて吐き出してしまうのですから。
大将殿が私のことを覚えてくださっている限り、私も、今日「再教育」を受ける他の構造体も、身体は死んでも大将殿の心の中で生き続けるでしょう。
私達は、たとえ今日この記憶を失おうと、人類のため、地球のために一生を捧げます。
例えあられもない姿を見せようと、役目を終えてスクラップにされようと。
あなた方が幸せに暮らすことができたら、それこそが私達構造体の至上の喜びなのですから。」
ビアンカの大きなペニスの根本が、勢いよく収縮を始めた。
ふっくらと柔らかそうなビアンカの腹部も同時に収縮し、ペニスの内圧が急激に上昇する。
姿勢を崩すビアンカ。
瞬時に近くの培養槽に目を凝らすと、黒いゴムに覆われ、直立したまま安らかに眠る2体の骸を見つけた。
(・・・私一人、情けなく逝くなど・・・!)
快楽の波に抗うように、ビアンカは歯を食いしばって立ち続ける。
「・・・どうやら、お時間が来てしまったようです。
最期の私の姿・・・どうか、その目に焼き付けてください・・・。」
そこまで言うと、ビアンカは顎にかなりの力がかかっている事に気づいた。
(今の私の顔を、大将殿の最後の記憶にさせてはいけない・・・!)
しかし、ペニスに熱い精液が通り始めている現状、ビアンカに残された時間は極めて僅かだ。
「・・・大将殿!」
ビアンカが声を張り上げる。
抑えていた感情のリミッターを外す。
顔が一気にほころび、聖女の微笑みを取り戻した一瞬に、ビアンカは狙いを定めた。
「・・・もう一度だけでいいから、あなたの手を握りたかった・・・!」
その表情は、無惨にもコンマ数秒のうちに微笑みからアクメに変わっていった。
・・・ドクン!
太く長いペニスから生み出されるミルキーウェイ。
ビアンカは白目をむき、だらしなく舌を垂らして快楽に飲み込まれていく。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ・・・
1度に吐き出される精液の量は蒲牢らの比ではなく、ゼリー状の精液は培養槽を拡散しながら上へ登っていく。
上へ登った精液は、培養槽の中を流れる液体に合わせてスノードームのようにビアンカの頭上へ降りかかる。
「・・・こんな、ことが・・・」
急速に記憶を奪われ、朦朧とするビアンカは、恍惚な表情を浮かべた。
「・・・わたしのきおくが・・・こんなにまっしろで、うつくしいなんて・・・」
精液に手を伸ばすビアンカの腋に、たった今自らが出したばかりの精液がまとわりつく。
(あったかい・・・誰かが毛布をかけてくれたのでしょうか・・・?)
生暖かい感触を腋や顎に感じても、ビアンカは全く気にしない様子だった。
ペニスの脈動が弱まり、人工心臓の心拍数が落とされる。
精液にその身を覆われたビアンカは、大将を見ながらゆっくりと目を閉じていった。
(・・・我が主よ。)
身体に染み付いた所作は、最期までビアンカの傍に寄り添い続けた。
腕を組み、首を傾けて祈りを捧げる。
(偉大なる大将に、どうかご加護を・・・。)
(・・・)
まるで雪像のようにドレスアップされたビアンカは、最期を迎えてもその姿勢を崩すことはなかった。
「WH-16211「ビアンカ・真理」の機能停止を確認しました。」
見目麗しき聖女は、本来の「主」へその御霊を捧げた。
(続)