五つ子が全員オレの肉便器www #悪魔のアプリ#洗脳ハーレム 作:a-su
闇の中で、三玖は目を覚ました。シルクの肌触りを持ったシーツが裸の体を包んでいる。ホテルの洋室は夜明け前の静けさに包まれ、男の静かな寝息だけが聞こえた。
(また、起きちゃった……)
寝返りをうって左を見ると、ベッド脇に置かれたデジタル時計は午前四時を示している。窓にかかった遮光カーテンの向こうは、まだ闇色なのだろう。
もう眠れそうにない。睡眠薬を飲もうかとも思ったが、今はそれよりも──
(カミナ様)
また寝返りをして、右隣に眠るカミナの方を向く。仰向けのまま静かに寝息を立てる男の横顔をじっと見守る。
「ぐぅ……ぐぅ……」
カミナは目を覚まさない。ここしばらくは眠りの浅かった彼だが、今日は穏やかに眠れているようだ。それだけでも旅行に来た甲斐がある。
(……寝顔、かわいい)
自分の心臓がうるさい。
そのまま十分ほどしてから、そっと彼の左腕を抱きしめる。肩に顔を寄せ、脚を絡めた。彼の頬に唇をあてた後、そのまま自分の頬も擦りつける。おヒゲが少し痛いけれど、その感触も好きだ。
まさぐったペニスは朝勃ちしていなかったが、それも当然と三玖には思える。昨夜、隣にある和室で自分たち姉妹と彼はさんざん肌を交えたのだから。夕食はルームサービスの
(すごかった)
布団の上で組みしかれて前から、壁に手をつかされて後ろから、あるいは彼にまたがって自分から腰を振って……。様々な体位で彼と交わった記憶がある。最後に全員でテラスの露天風呂に入って、そこでも一度ずつセックスをした。
(カミナ様、とっても素敵だった……)
彼は王様のように振る舞った。
もちろん三玖も例外ではない。姉妹を犯す彼の背中にすがりついてイヤらしい言葉をささやき、ペニスに付着した女の液を見せつけるように舐め取って、自分から脚を開くことで彼に犯される権利を獲得した。一度や二度ではなく、何度も。
(あの感覚……)
女としての尊厳を踏みにじられながら、自分は喜びの涙を流していた。横暴さに怯えながらもひどくドキドキする、あの感覚。自分たち姉妹が生まれてきたのは、この人に支配されるため……そんな感覚が、オンナの芯をキュンと疼かせる。
そして三玖は、洋室の天蓋付きベッドで添い寝することを許された。それは「色々な勝負」で姉妹たちに勝利した結果である。
(このまま、時が止まってしまえばいいのに)
自ら勝ち取った、自分だけの時間だ。誰にも邪魔されず、ラグジュアリーな空間に二人きり、カミナと過ごす至福の時間────。
「……でも、はぁ……カミナ様……」
思わず、ため息混じりの小さな声で名前を呼んでしまう。もし彼が起きていたら怒られるだろうけど、それでも我慢できなかった。
あと何年かで彼は死ぬ。自分たちに子供を産ませることもできない。
そして三玖たちには、虚無だけが残るだろう。
(寒い)
ふかふかのマットレスに大きな天蓋付きのベッド、なめらかな肌触りのシーツ、真っ白な枕、心地よい空調に包まれて、何よりオンナを捧げた大切な人の温もりと匂いを感じながら、それでもなお、寒くて寂しくてたまらない。
だから、ギュッとカミナに抱きついた。温かい体にすがりつき、心臓の鼓動を感じる。少しでも彼の命を近くに感じたかったのだ。
そうしていると、不意にカミナが身動ぎした。小さく唸ってから目を開け、ぼんやりとした眼差しをこちらに投げかけてくる。
「ぅ……なんだよ、まだ四時半じゃねえか……」
「ぁ……ごめんなさい」
カミナの目は、わずかに充血している。唇は少し荒れて、細かな皮が剥がれてカサついていた。セックスの疲れが出ているのだろう。
「……お前、眠れないのか?」
「ううん……目が覚めちゃって」
「そうかい……」
それだけ言うと、カミナはあくびをして目を閉じた。しかしすぐに目を開けると、こちらに体を向けて背中に腕を回してくる。
「さみぃから、もうちょっと寄れよ」
「うん……」
言われるままに身を寄せると、ぎゅっと抱きしめられた。互いの素肌が密着し、体温が混ざり合う。
三玖は目を閉じた。とくん、とくんという心臓の音を聞きながら、彼が見せてくれた優しさに身を任せる。
「あったかいか?」
「うん……はぁ……♡」
甘いため息がこぼれた。ほんのちょっぴり、気遣われているというだけで幸せを感じてしまう。弱った心が、安らぎという薬で癒されていくのがわかる。だから、
「睡眠薬、増えてるんだってな」
「……うん」
出し抜けにされた質問にも、素直に答えられた。
カミナは少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。三玖を抱く腕に少しだけ力がこもる。
「怖いのか?」
「うん……」
「何が……」
「いなくなるのが……」
カミナの胸に顔を埋め、くぐもった声で答える。
「……そうか」
短い返答の後、カミナは三玖を解き放った。ぱっと腕を開き、優しく突き放す。
「ご主人様?」
「タバコ、吸ってくる」
床に落ちていた浴衣を羽織り、それだけ言って彼は寝室を出ていってしまった。
三玖は、一人残されたベッドの上で枕に顔をうずめる。涙が溢れそうになるが、グッと我慢した。
(…………変わりたい)
時は止まらない。ずっとこのままなんて、あるわけがない。
シーツから抜け出て、しゃっとカーテンを開く。黒く染まる太平洋に、夜明け前の薄明かりが徐々に差し込んできていた。
「変わらなくちゃ」
肉便器三番なんて呼ばれている体たらくで、美女になりたいとかノンキな事を言ってる場合じゃない。せめて名前ぐらい、取り戻さないと。
「よし……!」
ギュッと拳を握り、中野三玖は気合いを入れる。
「
気分は風林火山だ。頭の中で武田信玄にお礼を言ってから、三玖はいそいそと下着を身につけ始めた。
◆◆◆
値の張りそうな銅板に、『廊下でのおタバコはご遠慮願います』という注意書きが彫られていた。高級ホテルだけに、廊下には足音を吸うような分厚い
そんな広い廊下を歩きながら、浴衣姿のカミナは紫煙をくゆらせていた。朝の四時半とは言え、これほどのホテルなら従業員が飛んできてもおかしくはないが、
(知ったこっちゃねえや)
どこか捨て鉢な気分で、屋上テラスにつながるドアを勢いよく開く。『一般開放は七時半より』という看板を横目に、屋外に足を踏み出した。
屋根のないテラスに吹き付ける冬の風が、カミナの頭をひんやりと冷やして……。
「……寒く、ねえな」
カミナは浴衣一枚である。それなのに寒くない。むしろ爽やかな暖かさすら感じるほどだ。
冬の悪魔モリゾラとカミナが契約したせいで、今は冬になっているはずなのだが────
「おや? お客様」
「あ? ……何でいんだよ、じいさん」
「ホ、ホ、ホ、従業員の特権でございます」
先客がいた。送迎バスの運転手をしている、サンタクロースみたいなヒゲの老人だ。
彼は白いブレザー姿でベンチに腰掛けている。夜明け前のほのかな光に照らされながら、缶コーヒー片手に煙草を吸っていた。
カミナは歩み寄って、隣に座った。くんくんと臭いを嗅ぐと、深みのある甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「いいタバコ吸ってんな。オレにも一本くれよ」
「ホ、ホ、年金受給者にタカるので?」
「寿命が延びると思って寄越せ」
「これが最後の一本でしてな」
「ちっ、老い先短けえくせに」
舌打ちして、カミナは自前のメンソールたばこを取り出した。先に火をつけると、安っぽくて慣れた味が広がる。
老人は何も言わない。ただ、視線の先にある景色を眺めている。
「なに見てんだ?」
「ホホ、『ゴジラの山』です」
「あ? ゴジラ? 怪獣のか?」
カミナも目をこらすが、暗くてよく見えない。なんの変哲もない小山の向こうに、小さな漁港らしき場所が見えるだけだ。動いている光は出漁する船だろうか。
「ホッホッホッ……あのへんでね、『ゴジラが出たぞーっ』ってシーンを撮ったんですよ」
「なんだ、映画の撮影かよ」
「かれこれ六十年以上前になりますかな」
「ふーん……ま、どうでもいいや」
カミナは興味を失って、手すりの向こうに吸い殻を投げ捨てた。ジジ臭い咳をしながら、肺に残った煙を吐き出す。
それを気にした様子もなく、懐かしそうに目を細めて老人は語りだした。
「当時私は五歳か六歳でしたが、エキストラで参加させてもらってね」
「地元民かよ」
「もちろん。そのあと、船と汽車で都会の映画館に連れて行ってもらいまして」
「言い方がもう歴史だよな」
「歴史ですなぁ。……初めて見たゴジラは、それはもう恐ろしくて。眠れなくなったものです」
「そりゃ可哀想に」
適当にあいづちを打っていると、老人は嬉しそうに話し続ける。どうやら本当に好きらしい。カミナは耳を傾けつつ、ぼうっと『ゴジラの山』のほうを眺めていた。
そのまま五分ほど経過した後──
「オレ、ゴジラはあんまり好きじゃねえな」
止せば良いのに、カミナはぼそっと呟いた。隣あう老人の肩がピクリと動く。だが彼は怒り出すこともなく、穏やかな口調で尋ねてきた。
「ほう、それはまたどうしてですかな?」
「いやさ、ガキのころ一回見ただけだけど、ゴジラってさ」
カミナは空を見上げた。星が、だんだんと見えにくくなりつつある。夜明けが近づいているのだ。
「強すぎんだよな。怪獣も宇宙人も、空飛ぶ船も、『このザコが!』って感じで次から次にぶっ倒しちまうんだぜ?」
「……ああ、『ゴジラ・ファイナルウォーズ』の事ですな」
「なんで分かんだよ」
「それはですな」
「いいって、聞くのが怖い」
「ホッホッホッ……」
老人は真っ白なあごひげを撫でながら、カミナの横顔を見つめている。そして、
「弱者を踏みにじりそうで、怖かったのですな」
「む────」
「自分が踏み潰されそうで、怖かったのですな」
「……」
カミナは黙り込んだ。そうかも、と思ったからだ。
弱くてちっぽけな自分を踏みつぶして、ぺしゃんこにして、無敵のゴジラはどう思うのだろう。嘲笑うのか、何も思わないのか、それとも気づきもしないのか……。
老人は楽しそうに笑っている。カミナの肩にぽんと手を置いて、囁くように言った。
「怖がることはありません」
「そんなんじゃねー」
「ゴジラも最初から強かったわけではない」
「はあ? でもよ……」
「人間の武器に負けて、一度は死んだのです」
「死……」
「だが帰ってきた。逆襲するために」
「帰って…………」
「そして多くの怪獣とも戦った」
「勝ったんだろ?」
「いいや、何度も負けました」
「そんな」
「だが何度でも立ち上がり、勝利をもぎ取って、怪獣の王様になったのです」
「……」
「誰もが弱者であり、誰もが王様になれる。その可能性こそ、強さというものの正体です」
「……そりゃ、映画の話だろ」
「そう、ゴジラは人間の
「ペラペラペラペラ……説教か?」
「いいえ、年寄りの独り言ですよ」
「……フン」
黙り込んだカミナに、サンタクロースみたいな爺さんが語りかける。手でつかめそうなほど、はっきりとした声で。
「いま、あなたに
「……あん?」
「ホッホッホッ……聖書の一節です」
「神様にご縁はねぇよ」
「神は、いつもあなたを見守っていますよ」
「なわけあるか!」
カミナは叫んだ。神は自分を、父と母を助けてくれなかった。だから信じない。
しかし老人は微笑んで、煙草の赤い箱を差し出した。
「ホ、ホ、ホ。よく見ればもう一本ありました」
「…………!」
カミナは、彼を殺してやろうかと思った。悪魔のアプリを使うまでもない、この屋上から突き落とすだけで十分だろう。
『カミナ様』
そうしなかったのは、部屋で自分を待っている三玖の顔がちらついたからだ。
代わりに、箱を奪い取った。最後の一本を抜き取って口にくわえると、老人がライターを近付けてくる。
「メリークリスマス」
「気が早すぎるぜ」
火をもらって深々と吸い込むと、吸い口はマイルドだった。最初だけ少し甘く、次第に苦味が増してくるのだが、それが心地よい。
煙が鼻をくすぐり、ニコチンが血管を流れていって、頭の中がクリアになっていく。
「ふぅ~っ。いいタバコだな──じいさん?」
老人の姿は、どこにもなかった。
『ゴジラの山』の方角で、かすかなオレンジ色が闇をはぎ取り始めている。徐々に海の色を変え、朝の光に染めていく。
タバコがすっかり短くなった頃、カミナは立ち上がった。
◆◆◆
(……天使だ)
部屋に戻ったカミナは、開け放たれたテラスに立つ三玖の姿に目を奪われた。
白いバスローブ姿の少女は、朝の穏やかな光を一身に受けながらセミロングの髪をなびかせている。光に照らされて柔らかな輝きをまとう姿は、まるで背中に羽が生えたようだ。
「あ……ご主人様」
振り返った少女は、わずかに陰りのある笑顔をこちらに向けた。朝日に照らされた白い肌に陰影が生まれ、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「お、おう」
カミナは思わずたじろいだ。こんなに美しい存在と、自分は本当に肌を重ねたのだろうか。
「何してたんだ?」
「日の出を見て、お祈りしてたの」
「お日さん拝んで、何を願うんだ」
三玖は答えずに近づいてきた。手を伸ばして、カミナの髪に手をやる。寝癖と屋上の風でぐしゃぐしゃになった前髪を
「えへへ、ひどい頭」
「ほっとけ」
カミナは顔をそむけた。気恥ずかしくて、まともに顔が見られない。
「お風呂、入る? キレイにしてあげる」
「いや……いい」
そう言って首を振ると、三玖の手が頬に当てられる。
彼女はカミナの顔をのぞき込んで、ふふっと笑った。朝の光が輪郭をなぞって、その表情は妙に大人びて見える。
「どうして?」
「別に」
「教えて。どうして、いいの?」
「…………」
「私じゃ、イヤ?」
「イヤとかじゃなくて……オレなんかが」
カミナは口ごもった。自分でも信じがたいことに、後ろめたさを感じているのだ。
(オレがやった事を知ったら、こいつは……)
三玖は何も知らない。自分みたいな底辺のカスに洗脳され、言われるままに抱かれて、ひたむきに尽くしてくれる。
それでもアプリさえあれば、もしアプリがなかったら、いまアプリが失われたら……。
カミナは目をそらして言った。
「オレなんかが、キレイになるもんか。汚くて、ちっぽけな、お前に比べりゃゴミみたいな人間なんだ」
三玖は美しい。ひっそりと咲く花のように、しんしんと降り積もる雪のように、汚れなく純粋で、可憐な美少女だ。
だからこそ、触れれば高ぶる。汚れた手で触れて、おとしめる事に悦びを感じるのだ。
「風呂なんかいいから、脱げ。肉便器にチンポぶちこんで……う、あ、あれ?」
何度も口にした、言い慣れた言葉──だが、チンポが勃起しない。キンタマが縮み上がっている。
(オレ、びびってんのか?)
そう思った。自分は、恐怖を感じている。こんな自分が、清らかな少女に欲望をぶつけるなど許されないのではないか、と。
(許されない? 誰に?)
だが三玖は、カミナの混乱に気づいていないようだ。一度視線をそらし、それからまたこちらを見つめた。青い瞳をキラキラ輝かせ、わななく唇から震える声を漏らす。
「笑わないでね……」
そう言うと、自らバスローブに手をかけて裸身をさらす。豊満な乳房にくびれた腰回り、広がったヒップラインとほっそりした太もも──そして、それらに黒いインキで書き込まれた、いくつもの文字。
「──あ?」
「見て───新しい『私』を、ちゃんと、全部」
カミナの視線を受けた三玖は、羞恥で全身を染めた。
薄いピンクのキレイな肌に、無数のキタナイ言葉が並んでいる。『肉便器三番』に『精液便所』、『メス豚』『マゾ』『変態』『ちんぽ大好き』『ザーメンタンク』『性奴隷』『好き者』『淫乱』、etc……。
「お前」
「誤解しないで。全部、自分で書いたの」
字の形はガタガタに崩れている。鏡を見ながら自分の手で書き込んだのだろうか。カミナがタバコを吸いに行った、この短い時間で?
「一番時間をかけたのはね、これとコレ……」
三玖が指さしたのは、他よりも一回り大きい文字で書かれた二つの文章だった。乳房の下から陰部にかけて縦書きにされている。
『ここが三玖のオマンコ♡』
『カミナ様専用のおちんぽケースです♡』
文末から矢印が伸び、それは陰毛の上くらいで止まっていた。矢印と矢印の間には、『中出し専用穴♡』という直球の下品極まりない煽り文句も小さな字で書き込まれている。
「え、エッチ……でしょ?」
「あ、あ、うう」
カミナは目眩を覚えた。あまりにも下品な単語の羅列に頭がぐらつく。
だが、同時に興奮もしていた。あの清楚で可愛らしい少女が、これほどまでに淫猥な言葉を自らの身体に刻んでいる。
浴衣の裾を割って、そそり立つペニスが現れた。ギンギンに膨れ上がり、先走りまで垂らしている。
「もう……!」
三玖は耳まで真っ赤にして、両手で顔を覆う。しかし指の隙間からちらりとカミナの顔をうかがい、消え入りそうな声で言った。
「ねえ……どう? やっぱり変……?」
「……いや、すげェ……エロすぎ……」
思わず本音がこぼれ出ると、三玖は目を見開いて口元をもにゅもにゅさせる。そのままうつむいてしまった。
肩が小さく震えているのを見て、泣いているのかとカミナは慌てる。
「オレのせいか? オレのせいでお前は……」
「違うよ。私がしたかったの。私のためだよ」
顔を上げた三玖は、泣きそうな顔をしていた。だが、笑ってもいる。無理に笑おうとしているのではなく、心からあふれ出る微笑みだ。
「うふっ、ふ……あはは……やった♡」
「バカ、お前……」
「バカだけど、ちゃんと考えたよ」
「お前はキレイなのに」
「キレイじゃなくていいの」
「オレは、汚いのに」
「汚くてもいいの。一緒なら」
「お前を、こんなに汚しちまって……!」
「どんなに汚れても、いいよ」
天使が、朝日に照らされている。大空と大海原をバックに、カミナに向かって微笑んでいた。
「私は、あなたのために汚れたい」
それはあまりに眩しく、美しく、神々しい。
カミナはその眩しさを直視できず、
「オレは、人殺しなんだぞ!」
叫んだ。今まで五つ子の誰にも言わなかった、決して明かせなかった秘密を、打ち明けていた。
「ただムカついただけで、それだけで命綱を切ったんだ! そしたらアイツ、落ちて、つぶれたトマトみたいになって……!」
しばらくの間、三玖は黙って聞いていた。そして不意に、カミナの手を取る。白く細い指をからめて、まるで恋人のように手をつなぐ。
「あ……」
「後悔してる?」
「……あ?」
「悪いことしちゃって、後悔してるの?」
「……いや」
カミナは否定した。
普通は、後悔するだろうとは思う。三玖はもちろん、カミナの父や中野マルオ、あるいは上杉風太郎もだ。自分の行いを恥じ、自責の念に駆られ、苦しんだに違いない。
だがカミナは、まったく悔いていない。ただ恥ずかしくて、そして恐ろしい──人を死なせて悔いもしない自分を三玖に見られるのが、怖かった。
「そっか」
それだけ言って、三玖は目を伏せた。長い前髪がその下に目を覆い隠してしまう。彼女が今どんな表情をしているのか分からなくする。
「……カミナ様は」
「……おう」
名前を呼ばれるが、とがめようとは思えなかった。
「悪い人なんだね」
「ああ」
「他人を傷つけても、なんとも思わないんだ」
「ああ」
「汚いね。とっても汚い」
「ああ」
「じゃあ」
三玖は、キッと顔を上げた。青い瞳は潤んでいたが、表情には力がある。カミナの目をまっすぐに見つめて、問うた。
「どうして、私たちには隠してたの?」
「……言う機会が」
「自慢もしなかったよね」
「できるわけ……」
「どうして?」
「……恥ずかしくて」
「それから?」
「怖くて……」
「どうして?」
質問攻めだ。三玖にこんな強気な顔があるなど、今の今まで知らなかった。
カミナはたじろぎながら、答えようとして口を開いた。
「お、れは」
だが、声が震えて言葉が出ない。心に抱いた真実の、その裏面を口から出そうとして、あまりの大きさに体を引き裂かれそうな気分なのだ。
(いや違うこれは真実なんかじゃないこんなの嘘だだって恥ずかしすぎ──)
死にそうなほどの恥ずかしさ、とはこの事か。
言えば死ぬ。今までのカミナは──『悪魔のアプリ』で五つ子達を踏みにじってきたカミナは、死ぬのだ。
そして生まれ変わり、別の何かになる。
「ねえ、どうして?」
三玖が美しい瞳で見つめてくる。初めて抱いた五つ子が、これ以上の女に出会えるはずがないと本気で思った美少女が、自分の答えを待っている。
(いいじゃねえか)
(三玖になら、いいだろ)
(こいつにだったら、殺されても)
カミナは観念した。腹をくくって息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「お……前が、可愛いから」
「え?」
三玖は呆気にとられている。そんな顔さえ、愛らしい。
「ああ、クソ! お前が可愛いから、嫌われたくなくて隠してたんだ!」
そして一度言葉にしてしまえば、止まらない。カミナは顔を真っ赤にしてまくし立てた。
「オレだってお前みたいに綺麗で可愛くて優しくておっぱいデカくていい匂いの女の子に生まれたかったよ! そうすりゃこんな汚ねえ生き方しなくて済んだんだ!! ────マジかよ、オレ! 正気か!?」
カミナは絶叫した。自分でも何を言っているのか分からないが、腹からどんどん真実が湧き出てくる。それが口から飛び出してくるのだ。もはや止めることなどできない。
「お前が天使みたいに可愛いから、オレみたいなカスと釣り合わないと思って隠したんだよ! きっと言い訳しちまうって思ったから、だからずっと黙ってたんだ! そうさ、バレんのが恥ずかしかったんだ! お前を好きって!!」
カミナは、ついに告白してしまった。
その相手は、目をまん丸に見開いて、呆然としている。朝日に照らされた少女は、まさに天使のように美しく輝いていた。
「う、う、うそ……」
「嘘じゃねえよ、バカ女! 好きなんだよ!」
「あ……あ……」
三玖は口をパクパクさせている。頬は真っ赤に染まり、目には涙の膜が張っていた。だんだんと青くなっていく空よりも、キラキラ輝く太平洋よりも、ずっとずっとキレイな瞳だ。
「クズが天使を好きになって悪いか!? 汚ねえオレが綺麗なお前に惚れたらいけねえのか!? ああ、イヤだ、言いたくないのに、こんな事!」
三玖の手を引いて、思い切り抱き寄せる。
「好きだ!!」
彼女の体臭を嗅ぐと、いよいよカミナの口は止まらなかった。もう止められない。これまで溜め込んでいたものが爆発する。
「三玖!」
「カミナ様……!!」
お互いの名前を呼んで、抱きしめ合う。二人の身体が密着して、溶け合ってしまいそうだ。
そのまま、少しの時間が過ぎる。
「あ、ああ……言った、オレ、言っちまった……なんて事を……」
腰から力が抜け、その場にカミナは崩れ落ちる。どんな激しいセックスのあとにも感じなかった、体の芯が燃え尽きたような虚脱感。
しかし、不快ではない。むしろ心地よかった。このまま倒れて、どこまでも沈んでいきたい。そんな気分だった。
「好き、好き……カミナ様が……?」
同じようにへたりこんだ三玖が、うわごとのように繰り返す。呆けたような、欲望の表情を浮かべている。カミナの醜い恋心を受け取って、少しずつ壊れていくような──あるいは目覚めていくような表情だった。
「カミナ様が……私を好き……」
三玖は噛みしめるように呟き、うっとりと微笑んだ。はるか遠く、自らの描く夢の果てを見つめるかのような眼差しで虚空を見上げて目を閉じる。
しばらくそのままでいたかと思うと、不意にパチリと目を開いた。そして勢いよく立ち上がり、大声で叫ぶ。
「やったぁあああああ~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
(続く)