五つ子が全員オレの肉便器www #悪魔のアプリ#洗脳ハーレム 作:a-su
午前八時。
高級ホテルの洗面室は贅沢なつくりだった。洗面台は天然石の削り出し、大きな鏡の周囲は細かく彫刻された木製フレームで縁取られている。
もっとも、そこかしこに化粧品が散らかっているのはご愛敬だが……。
(金持ちの女子高生が五人も泊まってんだから、そらそうなるわな)
カミナはヒゲを剃っていた。
高級ホテルだけあって、アメニティグッズも豊富だ。T字カミソリもクリームも、以前使っていた安物とは段違いの性能をしている。
(オレのヒゲ、色が抜けてきてやがる)
この半月、カミナの外見はほとんど変化していない。低い背丈も筋肉質な肉体も、前のままだ。
だが、老化は確実に起きている。病院の検査結果と体毛の変色、肌質の変化など、数々の兆候があった。
「ふー……」
顔を洗い、ふかふかのタオルで水気を拭う。ふと視線を落とすと、洗面台に鼻血が落ちていた。
「……」
蛇口をひねって血を洗い流し、柔らかいティッシュで鼻をぬぐう。カミナは鏡に映る自分の顔を見ながら、小さく呟いた。
「あいつらを抱けるのも、あと少しだろうな」
生きられるのがあと十年と言うだけで、思い通りに動ける時間はもうほとんど無いだろう。
だからここに来た。日本有数の観光地が、少しでも
「カミナ様、大丈夫……?」
背後から声がかかる。引き戸の向こうに誰かいるらしい。
「ああ、
「どうしたの? 何かできる事があったら……」
カミナは目を閉じ、心配げな声に意識を集中させた。三玖の振りをした声の主が誰なのか、慎重に考える。
「心配すんな、二乃」
「あ……」
扉の向こうで、嬉しそうな吐息が聞こえた。
「……なんで、分かったの?」
「まあ……」
頭をぼりぼりと掻きながら、言葉を探す。あの時はすまなかったとか、オレも反省したんだとか……。
だが、口をついて出たのは別の言葉だった。
「お前が好きだって自覚したら、なんか、分かっちまったっていうか……」
「っ……」
息を飲む気配がした。ややあって、ゆっくりとドアが開く。そこには果たして、二乃がいた。
可愛い。素直にそう思える。
バラ色のタートルネックセーターに、黒のパンツ姿。朝からメイクもばっちりだ。輝いた頬に朱が差し、口元は緩みかけている。今にも笑いだしそうな顔を、両手で必死に隠していた。
「まぁその、なんだ。オレ……」
「は、早く言いなさいよ」
「お前が、スゲー好きみたいなんだわ」
「そ、そう……い、今さらねっ」
「イヤか? オレの大事な、二乃」
「……嬉しい。アタシの大事な、カミナ」
「お前はオレのものだ」
「アンタはアタシのもの……♡」
始めは強気に、そして次第に甘くなっていく口調も魅力的だ。
カミナは一歩二歩と進み出て、正面から向き合う。左手を肩に、右手を首筋から顎へと優しく添えて上向かせる。
朝露を帯びた花びらのような唇がかすかに震えた。
「こんな感じのキス、初めてだな」
「うん……ドキドキする」
互いに抱き合い、唇を少しずつ近づけていく。彼女がつけている香水だろうか、チョコのような甘い香りがふわりと漂った。
◆◆◆
「おい、ねぼすけ」
「んあ……?」
和室で眠りこけている一花の布団を剥ぎ取る。黒のショーツ一枚しか身につけていない彼女は、寒いのか体を丸めた。ミルクを煮詰めたような白い背中と肩が露わになる。
「起きろ。朝メシ食いに行こうぜ」
「ん……ぅ……」
むにゃむにゃと何事かを呟きながら、一花は寝返りを打つ。すると、たっぷりした乳房がゆさっ♡ と揺れ、先端の桜色が一瞬見えた。裸の背中はしっとりと汗ばんでいる。
「おい、寝るな」
「うぅ~ん……じゃあキスしてぇ……そしたら起きるかもぉ~」
「ああ、いいぜ」
「へ?」
こちらを向かせて覆い被さり、驚きで半開きになった唇にキスをした。寝起きの肉ひだは
「ど、どうしちゃったの?」
「オレもキスしたかったんだ」
「う、嬉しいけど……」
もじもじしている一花を抱き起こし、布団の上に座らせる。
恥じいって乳房を隠そうとする少女の仕草は、なんともいじらしい。
彼女の手を取り、指に口づけしながらカミナは言う。
「お前が好きだ、一花」
「わ、私も好き……え、ええっ?!」
驚く顔も可愛い。肌を流れる水滴が宝石のように輝いている。一花は動揺しているのか、しきりに瞬きを繰り返していた。
「なんだよ、悪いか」
「え、いや、だって……嘘でしょ……?」
「オレはお前ほど嘘つきじゃねえんだ」
「う、うー、その言い方はズルくないかな……」
一花は顔を真っ赤にして俯く。それからおずおずと顔を上げ、潤んだ瞳でカミナを見つめた。
「ほんと? 本当に私の事が好きなの?」
「ああ。好きだぞ」
「カ……あの……」
「ああ、オレはお前のカミナ君だ」
そんな台詞を言いながら、カミナは再びキスをする。今度はさっきより長く、深く。
舌を入れると、一花もそれに応えてくれた。二人の唾液と舌が絡み合う。
「はぁ、んっ……♡」
一花がうっとりと目を細める。
「カミナくん……カミナちゃん……」
「どうした?」
「もう一回言ってほしいな……昔、結婚の約束をした時みたいに……♡」
それは、洗脳で植え付けた記憶のことだろう。
カミナは一瞬考えを巡らせ、意識して笑顔を作る。ちゅっと再び軽く音を立ててから唇を離し、至近距離で囁いた。
「好きだよ、一花ちゃん」
◆◆◆
午前八時半。
ホテルの朝食は、ダイニングルームでのバイキング形式だった。
黒地に赤い牡丹を散らした浴衣姿の五月は、窓際のテーブルに座った。朝日が海面を照らし、キラキラと光っているのが見える。舞い上がる海鳥の群れが、静かな朝の風景に生命感を与えていた。
ぼんやりとした目をこすりながら、眠気を覚まそうとオレンジジュースを手に取る。一口飲むと、酸っぱさと甘さが舌先をくすぐり、さっぱりとした香りが鼻腔を抜けていく。酸味と甘みがちょうどよいバランスで喉に染み込む。
「……ぷはっ」
美味しい。とても美味しいけれど、今の五月は一口飲むので精一杯だった。ここ数日ろくに食べられないし、無理にお腹に入れると吐いてしまう。
原因は単純にストレスだ。イヤでイヤで仕方の無い事があって、それがずっと頭の中を渦巻いているのだ。
(今日もまたイヤな思いをするんでしょうか……それとも……)
そこまで考えて頭を振る。余計な事を考えていてはいけない。今は目の前のジュースに集中しなければ……。そう思い直した矢先の事だった。
「お前、なに一人で食ってんだ」
「あ……はい、すみません」
後ろから肩を叩いたカミナに、五月は頭を下げた。レストランでご主人様などと言うことはできない。
カミナは呆れたように溜息を吐くと、五月の腕を取って立ち上がらせようとする。
「朝からジュースだけかよ。ほら、来い」
「あ……ちょっと……」
有無を言わさず立たされてしまった。そのまま引きずられるようにしてビュッフェ台まで連れてこられる。
ふわっとした小麦の香りが漂う。焼き立てのパンはその香りを放ち、新鮮なフルーツは色鮮やかに並べられ、さらには半熟の目玉焼きが湯気を上げているではないか。
(うう……美味しそう……な、はずなのに)
「どれが食いたい?」
「えっ、でも……」
「あーいい、オレが勝手に選ぶ」
カミナは手に取ったプレートに料理を盛っていく。それはいいのだが、一つ、また一つと、気に入ったパンをプレートに積み上げていくのは止めてほしい。なんというか、初めてバイキングに来た小学生みたいだ。いや、それ以下かもしれない。
(そうだ、この人、生活が苦しかったんでした)
家族もおらず、ずっと借金に苦しめられていたカミナが、こんな場所でマナーを守れるはずがない。案の定、近くにいた年配の夫婦客が彼を嗤った。
「若い子にはもの足りないだろうね」
「まったく最近の若者ときたら……」
侮蔑の視線に、五月は……はっきりと、怒りを覚えた。
そして、カミナへの慈しみも膨らんでいく。彼を守らねばという強い使命感が湧き上がってきた。
「か、貸してください」
「あ、おい」
プレートを取り上げ、山になったパンの半分を自分のプレートに移動させる。それから、目の前でシェフが焼き上げるベーコンと卵、新鮮な魚介のサラダを取り分けた。
「バイキングって、少しずつ取って食べるものなんです。欲張って一つだけ取りすぎちゃうと全種類を食べられませんし、何より周りの人に迷惑なんです」
「お、おお……」
呆気にとられたような様子のカミナをよそに、栄養バランスや見た目を考えながら手際よく盛り付けていく。
色とりどりの個性豊かな料理たちを丁寧に配置して、最高の一皿を作り上げるのだ。
「どうぞ、見てください」
「……おお~」
カミナが、ズビッとよだれをすすった。
五月は笑って、ハンカチで口元を拭ってあげる。
「ね、この方が美味しそうでしょう?」
「ああ、すげえ……」
カミナの賛辞に、五月はドヤ顔で胸を張った。我ながら完璧だ。
焼き立てのローストビーフは柔らかさとジューシーさを感じさせる。隣には、鶏のコンフィとラムのローストが並んでいた。
その隣には、色とりどりの野菜料理。赤いトマト、緑のブロッコリー、黄色のパプリカ、紫のエンドウ豆。それらが彩り豊かに皿の上を飾っている。
魚料理もある。エビとカニのクリームグラタンや、ハーブとレモンを効かせたベイクドフィッシュ、アジアン風にアレンジしたスパイシーな魚のカレーソース掛け……。
「後でデザートを取りましょうね。ケーキやアイスクリームに、温かいスコーンやマフィン、特にあの、タルトタタンはおすすめですよ」
「……そっか」
カミナは目を細めていた。だけれど視線は料理よりも、五月の目を見つめている。その瞳の奥に、不思議な光が見え隠れしている気がした。
「あの……?」
「お前はすごいな、五月」
「っ!」
出し抜けに名前を呼ばれ、心臓が止まりそうになる。
カミナの目は真っ直ぐにこちらを見つめ、その強さが五月の心の奥深くにまで突き刺さるようだった。
「あ……ご、あ、あの」
「カミナでいい。……こっち、来い」
五月の手を引いて、カミナは海が見えるテラスに出る。
人の姿はなく、二人きりだ。
「あ─────」
ギュッと、抱きしめられた。カミナのたくましい腕が背中に回ってくる。暖かくて心地よかった。
「ありがとうな、五月。オレのために怒ってくれて……お前みたいな良い女と一緒にいられて嬉しいぜ」
「え? あ……そんな……名前……私の名前……」
「何度でも呼んでやるよ。好きだ、五月」
五月は、どっと涙をあふれさせた。止めることができない。次から次へと熱いしずくが頬を伝って落ちていった。
心の中のカチコチになった部分が溶け出して暖かな液体となり、瞳から流れ落ちていく……。
「うれ……しい……嬉しいです……! カ、カ、カミナ先生……!」
五月からも名前を呼ぶ。彼の首筋に顔をうずめ、大好きな匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。カミナの汗と海の匂いが入り交じって、鼻を通って脳天まで突き抜けていく。
「好き、好きなんです、五月も! カミナ先生のことが大好きで、もうどうしようもないんです!」
「うん」
「もう五月はダメです。もう無理です。もう限界です。もういっぱいです。もうがんばれません」
「わかった」
「だから、もう番号で呼ばないでっ……! 『私』を見てください……! 『五番』じゃなくて、『五月』を見てください!」
五月の瞳から大粒の涙がこぼれた。それは悲しみの涙ではなく、喜びの涙だった。
目は涙いっぱいで役に立たないから、指の感触だけでカミナの唇を探す。それはすぐに見つかった。涙で濡れた唇を、そっと触れ合わせる。
「んむ……!」
しょっぱくて甘いキスの味に、意識が飛びそうになった。カミナも同じ気持ちなのだろうか、苦しそうに呻いて舌を差し込んでくる。唾液を絡ませながら互いの口内を舐めあった。
やがて口を離すと、銀の糸を引いた。名残惜しくて、それをチュウゥと吸う。カミナの体から出るものなら、なんだって欲しかった。
「んっ……はあ……カミナ先生……五月に、先生を……愛させてください……」
「ああ……オレもお前をめちゃくちゃにしてやりたい……」
浴衣の裾に手を入れて太ももを撫でられる。ぞわっとした快感が走った。そのまま下着に手をかけられ……ようとしたところで手が止まる。
五月のお腹から、ぐぅ~と音がしたのだ。
カミナがキョトンとした顔で見つめてくる。
五月は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……くっ。くはっ、あははははははは!!」
カミナは大声で笑いだした。
恥ずかしさで顔が熱くなっていく。五月は真っ赤になって叫んだ。
「笑わないでくださぁいっ!」
「だってお前、あははは!」
「ううう~!」
ストレスが涙になって放出されたことで、神経の乱れが元に戻ったのだろうか。お腹が減って、頭がおかしくなりそうだ。
高級ホテルの朝食ビュッフェを端から端まで全部食べ尽くしてやりたい衝動に駆られて、恥ずかしいやら情けないやら……。
「はは……よし、戻って食うか」
「はい……」
手を引かれて歩き出す。今度は、自然に手を握ることができた。
なお、食べ過ぎてしばらくセックスができなくなってしまったので、カミナからこっぴどく叱られたのは別の話である。
◆◆◆
午前十時。
ホテルの中層階。ダイニングや宴会場が集められたフロアにあるテラスは、トンビの餌付けを楽しめる場所だ。
とは言え冬だから、客の姿はまばらだった。
「そーれ!」
元気よく叫んで、四葉が餌のマグロを投げ上げる。薄緑の地に花柄の浴衣をまとった彼女は、まさに天真爛漫といった様子で微笑んでいた。
マグロの切り身が太陽光を受け、空中で赤くきらめいた。トンビはすぐさま反応し、急降下して見事に捕らえる。大きな翼を広げ、再び空高く舞い上がった。
「投げんの、上手えな」
「ししし、唯一の取り柄ですから」
四葉は白い歯を見せて笑う。その笑顔が眩しい。
自然と、ベンチに座るカミナの口が動く。
「……好きだぞ、四葉」
「え、知ってますよ?」
「なんで知ってんだよ」
「それを本人が分かってないのが、むしろ私は不思議です」
腰に両手を当て、眉を寄せる四葉。だが、その表情はすぐ笑みに変わった。照れくさそうに頬を染めながら、腰を折って顔を近づけてくる。
「へへ……私も好きですよ、カミナさん♡」
「お、おう……」
真正面から好意をぶつけられ、思わずたじろぐ。強くなってきた日差しの中で、四葉の髪がオレンジ色に輝いた気がした。
(やっべ……マジでカワイイ)
カミナはベンチに座ったまま身を乗り出すようにして、四葉の右手を取った。スポーツなら何でもござれの、引き締まった筋肉のついた腕だ。しかし、それでもやはり女性らしくほっそりとしていて、柔らかかった。
掌を重ねて指を絡めると、四葉も応えてくれる。いわゆる恋人つなぎをして、カミナは立ち上がった。
「キスしていいか?」
「んー、その前に……」
つないでいない左手の指で、四葉はテラスの手すりを指さす。
そこには、白い鐘楼に小さな鐘が下がっていた。看板にはこう書いてある。
「あー、なに、『絆の鐘』?」
「幸せを呼ぶ鐘らしいですよ。最愛の人と鳴らしたカップルは、一生結ばれるっていう」
「……へー」
気のない返事をするカミナを見て、四葉はくすくすと笑った。
「あれ? 興味ないですか?」
「おまじないは信じてねえよ」
「悪魔はいるじゃないですか」
「まあ、そりゃそうなんだが」
苦笑いをしながら、カミナは改めて鐘楼を見やる。その向こうには、海と空がブルーのグラデーションを作っていた。もう夜はどこにも見当たらない。
「ま、せっかくだし鳴らすか」
「やったぁ!」
手をつないだまま、紐を引いて鐘を鳴らした。後ろから少女の体を抱きながら、耳元で囁く。
「死ぬまで一緒にいてくれるか?」
「死んでも一緒にいてあげます♡」
強く抱きしめると、四葉は首を後ろに曲げてキスをしてくれた。
◆◆◆
午後三時。半島の先端にある、カーフェリー・ターミナル。
上杉風太郎は、飲み終わったコーヒーの缶をぐしゃりと握り潰した。
「ごちそうさまでした」
「……君、本当に大丈夫か?」
「はい」
「目つきが尋常じゃないが」
「大丈夫です」
傍らに立つ、くたびれたスーツの刑事が心配そうに顔を覗き込んでくる。
(うるせえんだよ)
風太郎は、内心をなんとか押し込めると、精一杯穏やかな顔を作って微笑んだ。
「いつごろ、あいつを逮捕できますか」
「向こうに着くまで一時間、現地の県警と合流するのに一時間、犯人がいるらしいホテルまでまた一時間……」
「暗くなりますね」
「フェリーの中で仮眠するといい。君は高校生なんだ、しっかり寝ておかないと体ももたないぞ」
「ありがとうございます、そうします」
刑事は、何か聞きたそうにしながらも去って行く。
その背中が見えなくなると、風太郎は再び歯を食いしばった。ギリギリと歯ぎしりしながら、頭の中で繰り返す。
(待ってろ、カミナ……! 今日、お前を殺しに行くからな……!)
(続く)