五つ子が全員オレの肉便器www #悪魔のアプリ#洗脳ハーレム 作:a-su
二〇二三年、五月五日。午前十時半。
(フータローと四葉、チャペルを出た頃かな)
花嫁の控え室でウエディングドレスを身につけ、三玖は最終確認を行っていた。風太郎の愛が変わりない事を確かめるために、姉妹揃って最後の五つ子ゲームを仕掛けようとしているのである。
「わー……ママ、きれい……」
「ありがとう、七海」
空色の瞳を輝かせる娘の賛辞に、照れ笑いを返す。ドレスはウエストから直線的に裾が広がったシンプルなものだが、引き締まった体の四葉と同じサイズが着られたのは素直に嬉しい。
「七海も可愛いよ。お姫様みたい」
「えへへ……」
フリルいっぱいのワンピースを着せられた七海は、さらに褒めてもらおうとしてか、こめかみに指をあてて考える仕草をする。
「えっと……うーんと……えーっと……」
「ふふ…………」
「えっと、お目々の横にピンク色、可愛い!」
「ふふっ、アイシャドウって言うんだよ」
「お腹が……ハチさんみたいに細くって」
「ダイエット、頑張っちゃった」
「お胸はメロンみたいに丸くて大きい!」
「……こらっ」
誰に教わったのか明け透けな褒め言葉を使う幼稚園児のおでこを、三玖は軽くつついた。
きゃあっと嬉しそうに悲鳴を上げる娘の前に、一花が歩み出た。自分と同じドレス姿である。
「ねえナナちゃん、一花お姉さんはキレイ?」
さすが元女優と言うべきか、ポーズといい表情の作り方といい完璧な女ぶりだ。いつもの自堕落な姿はどこへやら、実に様になっている。
「うん、きれいだよ、一花ちゃん」
「わ~っ、いい子だねぇ♡ ぎゅ~~っ♡」
「ちょっと七海、アタシも褒めて欲しいわ」
「五月おばさんのドレスも見てくれませんか?」
「二乃ちゃん、五月ちゃん、すっごくキレイ!」
「あら~♪ いい子ね~」
「とっても嬉しいです♪」
二乃と五月まで加わって、三人の花嫁が七海をかまい始めた。頭を撫でてやったり、ほっぺをツンツンしたりして可愛がる。
彼女らにとって、七海は我が子も同然だ。遺伝子的にはもちろん、生まれたときから世話をしてきたという意味でもそうである。そして、自分自身の子供は諦めているという意味でも……。
(せめて四葉だけは、子供がいる幸せを味わって欲しい。ちゃんと父親がいる、普通の家庭がある幸せを)
あの男の種から生まれた子供は、七海だけだ。特別な理由がある訳ではない。アフターピルの効果は絶対ではなく、たまたま自分には効かなかったというだけ。彼が衰弱する以前に、受精してしまっていたというだけだ。
そこに奇跡や愛は介在していない。きっと、そうだ。
「ママ~♡」
姉妹の手を逃れた七海が、一目散に駆けてくる。両手を広げた胸に飛び込み、頬をすり寄せてきた。
子供特有の甘い香りに癒されながら三玖はそっと抱きしめ返す。
正直に言えば、妊娠中は運命を呪っていた。つわりの辛い時期は特にだ。どうして自分だけがこんな苦しみを、と思わずにはいられなかった。でも、堕胎しなかった事を後悔はしていない。
(あんな父親なんかいなくても、この子を立派に育ててみせる)
胸の中から、愛しい我が子が見上げてくる。
「ママ、結婚おめでとう!」
「もう、結婚するのはママじゃないよ?」
「パパと結婚するんでしょ?」
「………………エッ?」
「ナナ、パパとママには仲良くして欲しい!」
その時、控え室の扉が開いて四葉が戻ってきた。慌てて七海を離し、慌ただしくウィッグをつけて準備を始める。
係員に手を引かれて託児室に向かう七海を見送りながら、三玖は冷や汗を流していた。
(パパ……さっき確かに、パパって……)
◆◆◆
「…………まだ俺は、夢を見てるのか?」
「五つ子ゲーム」
「ファイナルだよ」
風太郎の目前に、同じ髪型と体型、そしてドレスも同じ五人の花嫁が並ぶ。五つ子だけに顔はうり二つで、メイクやアクセサリーまで完璧に揃えている。とても視覚的に区別のつくレベルではない。
「愛があれば」
「見分けられるよね」
自分たち五つ子を見分けられる事は、愛情の証。そう信じている彼女らは、愛しているなら四葉だけを見分けられるよね、と挑戦状を叩きつけてきたのだ。
「何してるか分かってんのか、馬鹿野郎……」
「「「「「………………………………」」」」」
彼女たちは、固唾を飲んで答えを待っていた。風太郎をじっと見守っている。青い瞳は期待と不安が入り混じって揺れていた。
馬鹿とは思うが、気持ちは分かる。辛い性体験をしたせいで、彼女たちはみな男性恐怖症に陥っていた。だから嫁いでいく四葉のために、風太郎の愛情を確認したいのだろう。でなければ、ここまでの事をするはずがない。多分。
だが、タイミングが最悪だった。
『自信持てよ。お前ならできるぜ、兄弟』
そもそもの元凶が、頭の中でうそぶいた。声が反響するたびに、脳みそがかき回されるようだ。
だが確かに、誰が誰なのかが何となく分かる。風太郎から見て、
(左から一花、二乃、中央に四葉、三玖、一番右が五月だ)
『ええと、右から五月、三玖、真ん中が四葉で、二乃、で一番左が一花か』
だが確信が持てない。思考にノイズが混じって、それが自分の考えなのかどうかが分からない。
(ダメだ……この状態で誰か一人なんて選べるはずがない……!)
「風太郎?」
頭をおさえる風太郎を、四葉が心配そうに覗き込んでくる。彼女の顔をまともに見れないまま、沈黙が続く。他の四人の視線が痛いくらいに突き刺さるのが分かった。
「何でも無い……気にするな」
言えない。頭の中で、お前をレイプした男が喋っているなんて。
『ああ……キレイだなあ』
「……」
『みんな、天使みてえだ……』
「……ああ」
否定のしようがなかった。純白のドレスに身を包んだ五人の天使がそこにいる。圧倒的な美しさを目の当たりにして、風太郎の中で渦巻いていた不安が薄れていく。
『そうさ。男にとって、女は救いなんだ』
「……」
『全員を、自分のものにしたいよなぁ』
「……それは」
それは、許されない事だ。たとえ、どんなに美しくとも。
『おっと、急ぎすぎたか』
「お前は」
『しーっ……バレたくないだろ?』
「…………」
そう、バレたら彼女たちを傷つける。だから風太郎は黙っているしかない。しかし、このまま何もしなければ……。
『見ろよ、あいつらのアクセサリー。ぜんぶ自分たちで選んだもんなんだぜ。お前のためにな』
「俺の、ために…………」
『そうさ。うらやましいねぇ』
耳飾りからネックレスに至るまで、ドレスと調和するようにコーディネートされているようだ。にぶく光って、彼女たちの美しさを際立たせていた。
その輝きに目を奪われていると、また声が響いてくる。
『肌もいいよな。それに、プロポーションもいい。肩から二の腕にかけて、キュッと引き締まって……触ってると、肌が汗ばんで……』
「ぐっ……!」
『汗の粒が、鎖骨の方に流れ落ちていってさ……そうして、胸の谷間へと伝っていくワケだ』
ゴクリと喉が鳴った。
いつか触りたいと思っていて、まだ叶わない新妻の聖域……それがドレスの胸元から覗いている。
『なあ、お前の手で確かめてやれよ』
「なっ……」
『こいつらも望んでるはずだぜ、ほら』
「っ……!」
促されて見た先では、花嫁たちが黙って待っていた。ゲームを仕掛けた側だからか、風太郎の様子を
『すげえんだぜ、マジで。指がどこまでも沈んでいってさ、もう最高でよ。 柔っこいんだけどしっかり張りがあって、指に吸い付いてくるみたいな感触でさぁ……』
「っぐ……うぅっ!」
風太郎の脳内に、四葉の胸の感触が流れ込んできた。『彼』の記憶を、脳内に投影されているのだ。
体が熱くなる。息が荒くなる。
『押せば押した分だけ沈み込む。だけど、指を離すと弾かれるみたいに元に戻る。プルンと揺れて、さぁ……』
「……」
風太郎は、歯を食いしばって沈黙を守った。頭の中に流れる映像はあまりにも甘美で、それだけに恐ろしい。一歩まちがえば奈落へと墜ちる崖、一口食べれば楽園から追放される禁断の果実だ。
『けけっ、流石にしぶとい────』
頭の中の声が、露骨な害意を滲ませ始めた。そして風太郎を挑発してくる。
「いつも元気な四葉ちゃんは、意外とあえぎ声がエロくてよぉ。そしたらもう、オレもガマンできなくて……押し倒しちまうんだよな』
「てめ…………!」
『早く抱きしめたいなあ……全身くまなく舐め回してやりたいぜ……』
「……うぅっ!」
『そしたらさ、アイツが耳元で囁くんだよ……お願い、ってな』
「あぁああっ!」
妻を好き放題犯されていた事実を持ち出され、風太郎はぶんぶんと頭を振った。めまいを覚え、その場に膝をつく。
「ふ、風太郎!?」「フー君!?」「フータロー君っ」「フータロー!」「う、上杉君!?」
黙って見守っていた五つ子たちが、さすがに声を上げる。だが、一歩たりとも動かない……いや、動けないようだった。まるで金縛りにあったかのように、苦しげに身をよじるのが精一杯だ。
「くそっ、何なんだよ……!」
毒づく間にも、精神を蝕む『彼』の声に苛まれ続けている。ついに耐えられなくなり、風太郎は大声で叫んだ。
「お前、いい加減にしろ! 俺に何させたいんだ!? 何させたくてこんな事やってんだ!!」
五つ子がビクッと身をすくませるのが見えた。怯えた様子で見つめてくる瞳の中に、恐怖が入り混じっている。
「まさか……幻聴じゃ、なかった……?」
左端の、おそらくは一花が、呻くように言った。
「そこに、いるの……?」
「え?」「なに?」「どういう事?」
「うそ……!」
右から二番目の一人だけが何かに気づいたようで、ハッとして凝視してくる。
それは三玖のはずだ。五人の中でただ一人、いま風太郎に取り憑いている男の赤ん坊を産んだ女。
風太郎の体が、勝手に動いた。
『ああ──久しぶりだなあ、三玖』
右手がひとりでに持ち上がり、三玖の乳房を鷲掴みにした。
「──────!!!」
皮膚と皮膚が触れあった瞬間、三玖の表情が一変した。愕然としていた顔が歪み、今にも泣き出しそうになる。
柔らかく、きめ細かい肌の感触が風太郎の脳に伝わってきた。
『懐かしいなあ。相変わらず、いい乳だ』
「……や、やめてっ」
「ち、違うんだ三玖っ、くそっ、やめろっ」
消え入りそうな声で懇願する三玖を無視して、風太郎の手が勝手に乳房をこね回す。
他の四人から悲鳴じみた制止の声が飛ぶが、手は全く言う事を聞かない。
「ぐっ、くそっ……三玖は、男性恐怖症なんだぞっ」
『け、けけっ! そんな話、信じてたのかよ!』
「な……」
『三玖は病気で男に怯えてるんじゃねえ。
「なん、だと……うぁっ」
胸を弄ぶ手つきが激しくなると、三玖ははっきりと頬に朱を浮かべ始めた。唇を噛み、必死に声を漏らさないよう我慢している。
風太郎の官能も刺激され、下腹部に血流が集まり始めた。
「うぁ……あぅ……んっ」
『お前に殺されて、空気に溶けて────それから
分かるも分からないもない。現に今こうして、体を乗っ取られつつあるのだから。
『だけど、ちょっぴりずつ、こいつらの中にもいた。他の男に、指一本触れさせない為にな』
風太郎は奥歯を噛みしめた。そうでもしないと、情けない声が出てしまいそうだ。三玖の柔肌が信じられないほど心地よいのである。
自分の指に弄ばれて、ドレスの下で乳房が形を変えるたび、半開きの唇から漏れる声に艶めかしさが混じっていく。
それは風太郎の官能を刺激するだけでなく、四葉や五月、二乃、一花にも伝わっているようだ。
みな、顔を真っ赤にして震えている。
『なぁ、気持ちいいだろ?
「おま、お前は黙れっ!」
「やめっ、て……んぅっ♡」
抗議の声は、くぐもった鼻声に変わった。風太郎の唇が、三玖のそれを塞いでしまったからだ。他の四人から悲鳴が上がるが、風太郎の体は止まらない。
柔らかい唇の感触を確かめながら、強引に舌をねじ込む。逃げようとする三玖の舌を追いかけ回し、唾液をすすり上げる。
風太郎の意識が、衝撃でブラックアウトした。
◆
三玖が、かつて夢にまで見た風太郎とのディープキス。それが実現している。唇が触れ、舌を絡め合い、唾液を啜られている。
だが、
(違う。これはフータローじゃない)
そのキスは、三玖の性感を知り尽くしたものだった。決して風太郎がするはずのない、こちらの反応を楽しむような余裕に満ち溢れた動きだ。
だが憎らしい事に、『彼』は頭の中で三玖の事ばかり考えているらしい。
(三玖、三玖……オレ、お前が好きだ。お前の唇も、この柔らかさも、全部オレのもんだ……誰にも渡さねえ……絶対に、手放したりしねえ……)
(……っ! ……ん♡ ……ゃん……)
どうしてかは分からないが、熱烈な愛の告白が言葉ではない言葉となって伝わってくる。思考が混ざっているような、不思議な感覚だった。
(三玖、オレの三玖……)
(あなたの三玖は私じゃない。あんなの私じゃない……)
(いいや、あれはお前だ、オレが恋した女はここにいる)
思考のどこからどこまでが自分で、どこから先が『彼』なのか分からなくなる。
恐怖がまずあって、だけれど同時に興奮も愛おしさも感じる。それに抗おうとする心が芽生えて──結局、負けるのだけれど。
(だめ……これ、すごい……)
(そうだ、いい子だな。もっとよくしてやるよ)
(ん……♡)
ちゅるちゅるといやらしい音を立てながら、『彼』の舌が口内を這い回る。歯列をなぞり、口蓋をくすぐり、頬の内側をくすぐってくる。大好きだったキスを、五年の時を経て三玖は再び捧げられていた。
(だ、め……これ以上は、もう……)
(オレ、地獄に墜ちて初めて知ったんだ。人間は人間を命がけで愛する事ができるって)
(あんな、に、否定してたのに……?)
(反省したんだ。お袋が、オレに魂を捧げてくれたから。お前が、オレに夢を見せてくれたから)
(夢……)
(七海だよ。お前が七海を産んでくれて、嬉しかった。住む世界が違っても、オレとお前には子供が生まれたんだ)
抱きしめられると、それだけで三玖は、彼の子を育んだ子宮に暗い血潮が充ちてくるような、おぞましい熱感を覚えた。
(七海が教えてくれた。オレの中にも、命をかけられる愛があるって事を)
うっとりと潤む瞳が交錯する。どす黒い炎が『彼』の中に燃えていて、そこに映る自分を焼いてしまいそうだ。
その熱に浮かされたように、三玖は呟いた。
「カ────」
『彼』はニヤリと笑うと唇を離し、強く三玖を抱きしめる。
(呼んでくれ、オレの名前……これからお前と一緒に、七海を幸せにしていく男の名前を)
「う、だめ、だめ……」
言ったら終わりだ。もはや人間とは言えない『彼』の名前を呼んだら、自分も風太郎も戻れなくなってしまう。
理性ではそう分かっていても、『彼』の熱愛に焼かれた頭では上手く考えられない。ただ求められるままに名前を口にした。
「──────カミナ、様」
その瞬間、姉妹たちから絶叫が上がった。三玖からもだ。
(あ──あぁ───!!)
不思議な力に支配されていく実感があった。憎悪と絶望と愛情と悦楽がごちゃ混ぜになった激情を、ただ吐き出すために五つ子たちは叫んでいた。
「ああ、やっと会えた……愛してるぜ、お前ら」
『彼』───カミナはもう一度、三玖に口づけをする。
その瞬間、金縛りが消えた。代わりに、目まいのような陶酔感が襲いかかってくる。
立っていられず崩れ落ちて四つん這いになった三玖の頭を、頭上から誰かが撫でてくれる。
「偉いぞ、よく言えたな」
風太郎の声だが、違う。カミナ様だ。三玖を支配し、そして愛しても下さる、この世に二人といない御方。
「かはっ……はぁ……あぁ……」
全身に広がる息苦しいほど甘美な多幸感に呆然としながら、三玖は顔をあげた。かつて恋した人の顔が、 憎んで 愛して子を産んだ人の笑みを浮かべてそこにある。
思わず胸が高鳴り、自然と三玖は彼の足に口づけた。
「んっ……」
「良い子だ」
「うん、だって……世界で一番大切な人だから」
頭を撫でられる感触が心地よかった。気の遠くなるような恍惚感の中で、三玖は周りを見る。
姉妹たちが、自分と同じようにへたり込んでいた。全員、同じ顔をしている。夢の世界に遊ぶような、エクスタシーの余韻に浸っている顔。
「カミナ君……♡」「カミナ……♡」「カミナさん……♡」「カミナ先生……♡」
「ああ……みんな、元に戻れたんだ……♡」
自分たち五つ子は、戻る事ができたのだ。カミナに服従し、彼の精液を受け止める事を幸福と感じる、彼だけの肉便器に。
◆◆◆
結婚式場の、花嫁の控え室で、同じ髪型に顔をした五人の花嫁が上杉風太郎とキスしていた。仁王立ちする彼に群がり、入れ替わり立ち替わり唇を奪い合う。
「ちゅっ……っ」「んむっ……」「んっ……んんっ」「んっ……♡」「んっ……ふぁっ……」
傍目には、そう見えた。だが実際は違う。風太郎の肉体は、今や彼一人のものではなくなっていた。
「ぷはぁ……へへへ……あーたまんね、好きだぜ、お前ら」
風太郎の体を操るカミナが、喜びに打ち震えながら唇を離す。五人は名残惜しそうに舌を突き出し、銀の糸を滴らせた。
それを見た風太郎の脳にも、しびれるような甘い疼きが走る。
「なに、一花ってばキスだけでイッちゃったの」
「そういう二乃こそ、足ガクガクじゃない」
「三玖ったら、もう汗でびっしょりだよー」
「四葉もでしょ。もう、後でシャワーしなきゃ」
ウエディングドレスを汗で湿らせながら、二乃、一花、四葉、三玖が互いを揶揄している。
ぷんぷんと怒りながら額をこすりつけあい、くすくす笑いあう彼女たちを尻目に五月が顔を寄せてきた。
「カミナ先生……♡」
風太郎の人生を狂わせた諸悪の根源、妖怪カレー喰い女。まさかこいつが自分を好きになったりはしないだろうと思っていた真面目系バカ女が、自分には見せたことのない蕩けた眼差しを向けながら再びのキスを求めてくる。
「んふっ……ちゅぷ、れるるぅ……」
「ぷは……♡ せんせぇ、もっろ……もっとぉ♡」
「分かってる……お前は欲張りだからな、五月」
「はい……そうですぅ……らいすき、です……♡」
そう言って再び唇を重ねてくる五月を、
(どうだ、上杉風太郎。最高だろ、こいつら全員とキスできるなんてよ)
(うるせえ……俺は、四葉だけを命がけで愛するって……)
そう心に決め、とうとう結婚もした。だがその四葉がカミナとのキスにうっとりしている姿を自分の感覚で体験し、さらには五月とキスしている。風太郎の良識は、あまりの負荷に火花を上げていた。
(お前さあ、愛するとか愛さねえとか、もうそれがダメなんだよ。ありがたく、愛させてもらうんだ)
五月と交代で、今度は二乃が寄ってきた。
「会いたかった……アタシのカミナ……♡」
「オレもだぜ、二乃。愛してる」
そう口にした瞬間、唇が塞がれた。向こうから積極的に舌を絡めてきて、口内を蹂躙してくる。
「んふ……んっ……んんぅ♡」
二乃の体は熱く火照り、全身が性感帯になったかのようにびくびくと震えている。口内も熱いくらいに温度が上がっていて、呼吸さえも甘く感じられた。
家族想いで、恋をしても愛情の深い女。それだけに向こう見ずな暴走をしたり、苛烈な言動を取ることもある。人一倍弱くて、そこが愛らしい。
うなじをくすぐってやると、それだけで軽く達してしまったようだ。目尻から涙をこぼし、うめき声を上げる。
(いいか? 一生懸命、愛させてもらうんだ。こいつらの悦びと幸せが、オレたちの喜びになる)
(うるせぇ……)
その次は一花だ。挑発するように流し目をくれながら舌なめずりをして寄ってくる。
「うふふ、久しぶりだねカミナ君……♡」
「そうだな、一花ちゃん」
「勝手に死んじゃうの、サイアクだから。もう逃がさないからね?」
囁きながら、そっと口づけてくる。二乃とは違って、感触を確かめるように唇の肉ひだを
自堕落で怠惰で、しかし自分を強く装う事に長けた彼女らしい、巧妙な誘惑の仕方だ。
「どう……? 気持ちいい……?」
「ああ、すごくいいぜ……」
答えると、彼女はニヤリと笑って抱きついてきた。耳元に唇を寄せ、何度もリップ音を鳴らすように口づける。
「好き……♡ 大好きだよカミナ君……♡♡」
声を乗せた甘い吐息が耳の穴に流れ込み、背筋を震わせる快楽に変わる。
同時に彼女の胸を押しつけられ、柔らかさを堪能した。布越しというのもかえっていやらしい気がして、直接触りたくなる。
だが今は我慢だ。味わう機会はすぐに来る。
(お前の言う事にも一理あるぜ、兄弟)
(何がだよ……)
(けけ、うっとりしてんなよ気色悪い。愛だよ、愛の話だ)
一花の口づけを受けながら、風太郎は自分がどこにいるのか分からなくなっている。フワフワと空に浮く雲の上にいるかのような、とても心地よく、幸せな気分だった。
(愛は無敵だが、無限じゃあねえ。一人で五人を愛するなんて、命がいくつあっても足りやしねえ)
(体験談か)
(ったりめえだ。オレが地獄でどんだけ苦労したと思ってやがる)
(知るか)
(ま、帰ってきた甲斐があった。五年たっても、オレ好みのいい女たちで……子供まで生まれてた)
(……だったら、三玖だけを愛してやれよ。心を操ったりせずに)
(お断りだ、諦められるもんか。五月に二乃、一花……それに四葉もな)
(…………)
そして最後のひとり、四葉ともキスをする。風太郎の妻であるはずの女は、幸せいっぱいという顔で体をすり寄せてきていた。
「カミナさん……わたし、嬉しいです……大好きなカミナさんと、また会えて」
「ああ、俺もだ」
「ごめんなさい、一緒に死ねなくて」
「バカ言うな。お前に会いたい一心で、地獄でも耐えられたんだ」
「えへへ……♡ あ、でも……」
そこで何かに気づいたような顔をする四葉。そして悪戯っぽく笑うと、耳元で囁いた。
「待たせるから、私、風太郎と結婚しちゃいましたよ?」
「ああ、知ってる」
「嫉妬しちゃいますか?」
「いいや? お前はオレたちのものってだけさ」
そう答えてやると、四葉は嬉しそうな顔をして唇を近づけてきた。それを受け入れると、一花とは打って変わって貪るような激しいキスが始まる。まるで今までの分を取り戻すかのように激しく、情熱的だ。
「んちゅ♡ んむっ♡ ちゅうう~っ♡ んっ♡ んふっ♡」
(四葉…………)
風太郎の妻は、口周りの皮膚全てを押しつけるようにして、
きっと風太郎一人では見る事のできなかった、妻の淫らな姿。他の男を愛している新妻の表情を、風太郎はしっかりと目に焼き付ける。
(四葉はお前に恋して可愛くなったし、オレに抱かれてエロくなった。すげえいい女じゃねえか、なあ?)
(ああ、いい女だ…………)
(今日から、オレとお前は一心同体だ。カミナも風太郎もいなくなって、ひとりの悪魔になるのさ)
(誰が、悪魔なんかに)
(一つになろうぜ、兄弟。一人じゃ五人を愛せないなら、二人がかりで────)
──五月を。一花を。二乃を。三玖を。四葉を。五人を、愛する。
確かにそれは、とても魅力的な提案だった。
(魂も、頭脳も、セックスも、愛する心も二人分の、ただ好きな女を愛させてもらうためだけに、存在する悪魔に────)
四葉はひとしきり
「ふう……ごちそうさまでした♡」
「満足したか」
「はい♡ それで、ですね……」
彼女は再び、
「まだ、披露宴が残ってるんですけどぉ…………カミナさんも、私と結婚してみますか?」
「そうだなぁ」
「もちろんだ。やろうぜ、結婚式」
(続く)