あの時、姉の提案を断らなかったら。おれが……俺がもっと強かったら惨めな思いはしなかったのだろうか。スグリはそんな思いを抱きながら、少しだけ開いた扉の隙間を覗く。中には自分と同じ年頃の男の子──ハルトがまさしくメロメロ状態な女達に囲まれていた。彼女達の誰もが見覚えのある顔ぶれでありながら、自分の前では見せたことのない顔をしていた。
(──ああ、やっぱり俺はハルトには敵わないんだ……)
再三思い知らされていたこと。だがここにきてスグリははっきりと目の前の惨状から理解させられる。横暴で気分屋だが、彼女なりに自分を導いてくれた姉が年下の彼にいいように弄ばれ。無理をしていた自分を何かと気遣ってくれたしっかり者の彼女が、他者を気にせず快楽に耽ける。そして、ずっと前から自分を見ていてくれていた鋼のような彼女がハルトだけを見つめ頬を朱に染める。
姉と二人の学友──ゼイユとタロが己自身の濡れ濡つ秘裂を慰めながら見守る中、ハルトは“メガホーン”もかくやな巨チンでネリネを突き上げていた。乱れに乱れたネリネの眼鏡は曇りきっており、めったに乱れない彼女が声を大にしてハルトを求める。そしてハルトは一際大きく腰を突き出しネリネの急所を捉えた。瞬間、ネリネが声にならない声を上げ絶頂へと至るのが外野のスグリからもはっきりと視認出来た。
「ん゛っ゛❤️ ん゛ぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛❤️❤️ ね、ネリネはっ❤️ 絶頂を確認しましたっ❤️ ハルト❤️ ネリネに射精、おめでとうございます❤️」
「はぁはぁ……射精を褒められるのって変な感じ。ネリネも、お疲れ様」
そう言うハルトにネリネは彼の射精を称えるようにハルトを抱きしめ、
(ネリネがあんなに乱れるなんて……!! うっ、ぁああ……ネリネ、ネリネ!!)
スグリがハルトとは比べ物にならない小さな肉棒を擦っていると、ハルトの側で待機していた二人の女子が彼に抱きついた。姉のゼイユと先輩であり同じ部活仲間のタロだ。
「次っ、次はわたしよねハルト❤️ あんたのやらしい目、わたしの方に向いてるもん❤️」
「ゼイユさんっ! そういう横入り、よくないです! ハルトさん、次はわたしですよね❤️ ほらハルトさんの可愛いおちんちんも、わたしに触れられて喜んでます❤️」
二人は取り合うようにハルトの肉棒に手を添える。当人であるハルトは二人まとめて相手をすると言わんばかりに二人の秘所、秘裂を愛撫する。
「二人とも慌てなくていいよ。みんな満足するまで相手するからさ。二人でも三人でも、何十人でもね」
そうハルトの相手はここにいる彼女達だけではない。姉の担任である優秀な女研究者。気さくなカメラ好きのお姉さん。そして何より、スグリの憧れである鬼さまがハルトの虜になっていたのだ。数多の女性を惹きつけ、トレーナーとしても常勝無敗。寝る間も惜しんで特訓しても敵わない男。それがハルトという少年だった。改めて思い知る届かない高みを前に、スグリは興奮のあまり──目の前が真っ暗になった。
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夏真っ盛り。スグリは姉であるゼイユと共に林間学校をするためキタカミの里に帰郷していた。今回の林間学校は姉妹提携を結んでいるグレープアカデミーと一緒であった。本当は他校との交流など気乗りはしなかったが、久しぶりに人工的じゃない里の自然を感じたくスグリは林間学校に参加することにしたのである。以前と変わらない穏やかな空気が漂う中、変化の兆しをスグリは感じた。
「おや? その格好、もしや噂になっている林間学校の生徒クンかな? 写真、いいかな?」
「え、だ、ダメ……! 恥ずかしい……」
「そっかぁ、残念。ふむ、村の噂で聞いたより来るのが早い気がするね……あ、自己紹介がまだだったね。ワタシはサザレ。見ての通り、カメラ好きな旅の者さ!」
「あ、おれはスグリ……おれとねーちゃんは、ここが地元だから。他の林間学校の生徒より早く来てる……」
スグリが村を散歩していると、カメラを構えた見知らぬ女性に声を掛けられる。彼女はサザレと名乗り、引っ込み思案なスグリにもぐいぐいと迫る。スグリは姉や学園の先輩、教師とも違うサザレの雰囲気に少々物怖じしてしまう。けれど彼女の朗らかな満面の笑み、胸は大きくお尻は引き締まったプロポーション、それらは多感な少年には効果抜群であった。
「そっか! 地元の子だったんだね! ならちょうどいいかも……ねえねえ、とこしえの森ってどこか分かるかな?」
「ええっと……それなら、鬼が山の北東さだべ。で、でも、一人で行くのはあぶねーと思うんけど……」
「うんうん。ワタシもポケモン勝負はそんなに自信ないからなー。誰か腕の立つトレーナーと一緒に行くべきかな……ありがとう学生クン! 今度会ったら、写真撮らせてね!」
「あ、う、うん……わや綺麗な人じゃったな……」
サザレはスグリに大きく手を振って去っていった。大人のお姉さんと至近距離で話すことなど、スグリはほとんど経験したことがなかった。スグリの胸は彼女が去ってからもドキドキとしており、再会したら恥ずかしがらずにもっと喋りたいと思ったのであった。それから暫くの間、スグリはサザレと会うとこの辺りのことを話すようになった。この時点でスグリは林間学校に来て良かったかもっと思っている中、彼の人生において大きな転機をもたらす男の子──ハルトと出会う日がやってきた。
スグリは彼を一目見て時から同じ学校の生徒や自分とは違うオーラを感じた。牧歌的な田舎を楽しみ姿からすら冒険譚の主人公のような陽の気質を漂わせていた。一人でもへっちゃらっていう感じの鬼さまとも違う、自然と人が集まる主役のオーラを。
「かっこいい……」
「スグリ、黙って」
そうして意気揚々とスイリョクタウンに踏み込もうとするハルトに、ゼイユはよそ者が来たと当初は邪険に扱った。そして難癖をつけて始まったハルトとゼイユのバトル。このバトルから、スグリはハルトに溢れんばかりの憧れを抱くキッカケになるのであった。
「ようこそキタカミへ。まずは土の味、噛みしめなさい! いきなさいポチエナ!」
「土の味はお断り! そっちこそ、犬らしく地面に伏せしてもらうよ! いけ、マスカーニャ!」
ハルトの出すポケモンはブルーベリー学園では見たことのないポケモンで、これだけでもスグリの目を惹きつけてやまなかった。加えて育成途中のポケモンでありとはいえ、ブルベリでも実力者の部類であるゼイユをハルトが手玉に取っていたことだった。変幻自在に立ち回るマスカーニャは抜群や急所を支配し、次々とゼイユのポケモンを瀕死状態にする。
「ま、まあタイプ相性くらいは熟知してるわよね……」
「きゅ、急所!!? こんなのマグレでしょ!!」
「そういう技だよ! それじゃ、ラストいくよ!」
そうしてハルトとマスカーニャは無傷で圧倒し、ゼイユを打ち負かしたのであった。見たことのないポケモンを巧みに指示し、スグリにとって強者の象徴である姉を完膚なきまでに勝利したハルト。スグリの中でハルトは孤高の強者であろう鬼さまと並ぶくらいの憧れになった。
「わやじゃ! ねーちゃんに、勝っちまったー!」
「ま、まあ合格点かな。わたしの舎弟にしてもいいけど?」
ゼイユも口では強がりを言うもののハルトの強さは本物だと認めており、ハルトを舎弟にしようとしていた。スグリも内向的な自分に反してハルトと話したいことがたくさんあったが、管理人のお爺さんが騒ぎを聞きつけて出てきたことでその日は退散することになってしまった。
(わやかっこよかったべ。お、おれもいつかはあんな風に……!)
そんな思いを心に浮かべながら迎えた次の日。管理人主導の元、林間学校の課題として里の各地にある三つの看板を見つけるキタカミオリエンテーリングをこなすことに。そこでハルトは先日出会ったスグリとゼイユに駆け寄った。
「ゼイユとスグリっていうんだ、ボクはハルト! 林間学校では仲良くしようね!」
「あ、う、ん……よろしく」
「ふーん。あたしらとこ・う・りゅ・うしにきてくれたんだ? ならちょうどいいわね。昨日からスグがあんたに夢中なのよ。バトルの相手、してやってよ」
「バカ!! ね、ねーちゃんなんで言うの!!」
「誰がバカだ! 手ぇ出るよ!!」
スグリとしてはまだ心の準備が出来ていなかったというのに姉の余計な気遣いのせいでハルトの注目が一気にスグリに向けられた。彼の陽のようの眼差しに見つめられただけでスグリとしては眩しくて敵わなかったが、それ以上に彼に挑戦できるかもという期待もあった。
「夢中か〜〜! ちょっとくすぐったいけど嬉しいよ! スグリがよかったら、バトルしない?」
「え、い、いいの!?」
「もち! ボクの友達曰く、トレーナー同士目と目があったらポケモン勝負らしいよ!」
「へぇパルデアでもそういうのあるんだ。ふふ、それじゃ二人とも位置につきなよ。みんなも場所空けてやってー!」
思わぬ形だが絶賛夢中の相手とのバトル出来ることにスグリは嬉しくてしかたなかった。まるで夢のようだと思ってしまうが、真正面に対峙するハルトの眼光、体中の血が沸騰するような感覚が夢じゃないことを証明していた。
「いくべ、オタチ!」
「ハッサム、君に決めた!」
(ハッサム……! ネリネも手持ちにしてるけど、ブルーベリー学園でも珍しいポケモン。やっぱりハルトはすごいトレーナーなんだ!)
ハルトは昨日見た二足歩行の猫ポケモンではなく、赤鋼のハサミを構える勇ましい虫ポケモンが場に出た。姉の友人で学園でもトップたる四天王が手持ちにするポケモンに興奮冷めやらぬスグリ。だが今はバトルに集中と意識を切り替える。オタチはスグリとは長い付き合いで、そろそろ進化も目前という絶好調なコンディション。ハッサムの弾丸の如き襲撃に、初手は回避するも続く反撃は軽々と受け止められる。そして返しの拳を直に受けてしまう。ハッサムもまたハルトと長い付き合いなのか、彼の期待に応えるべく“バレットパンチ”でオタチの急所を捉えたのだ。オタチは瀕死状態になってしまう。
「わやじゃ……! お疲れ様、オタチ。運も実力、けっぱらないと!」
「オタチ、スグリと仲良しなんだね! 初手回避されたのは驚いたよ!」
「んだ。手持ちのみんなとは長い付き合いだべ。オタチのリベンジだ、オニヤンマ!」
そして続いて出したオニヤンマ。ハッサムの“バレットパンチ”を越えるべく“でんこうせっか”で突撃するも、鍛えられたハッサムの防御を超えることは出来ず、返しの“ダブルウイング”でオニヤンマは沈んでしまう。飛行タイプの弱点を的確に狙われスグリは敗北の悔しさ以上にハルトの強さを称える気持ちになった。
「わやじゃ……! わや強かった! ハルトはすごいべ!」
「ありがとう! スグリもね。オタチとオニヤンマ、トレーナーと息のあった連携でとても参考になったよ! また手強い
「
「もちろん! あ、勝負以外でもスグリにはポケモンの毛づくろいとか、いっぱい聞きたいことあるから今度ピクニックしようね!」
二人は互いの言葉に深く頷きあう。ライバルと認定されたことで、次バトルする時はもっとハルトに迫りたいとスグリは思った。彼とその手持ちはまだまだ余力を残していた。なら次こそはハルトの全力を引き出したいとスグリは強く思うようになっていた。ライバルと言われたことで、スグリは友達ではなくライバルとしてハルトを強く意識していた。そんな風に思っているとゼイユやブライア、管理人やパルデアの他生徒が二人の健闘を称えていた。
「昨日のはマグレじゃなかったわね。スグだって私の次くらいには強いんだけど……まあ、あたしに勝ったあんたにはこれくらいしてくれないとね!」
「パルデアでも数少ないチャンピオンランクのトレーナーと聞いていたが、称号に恥じない素晴らしいバトルだった! 林間学校の交流として、これ以上ない始まりだね!」
「流石パルデアの新しいチャンピオン!」
「すごかったー!!」
「スグリもよくやったー!!」
拍手と共に言われてスグリは恥ずかしさから下を向いてしまう。そんな中、勝負が終わり近くにきていたゼイユは林間学校と聞いて何か思いついたようだった。
「林間学校……そうだあんたスグとオリエンテーリング組んであげてよ」
「え……! だ、ダメ!」
スグリは咄嗟にそんなことを言ってしまう。もちろん嫌なはずがない。夢中になっている相手と組むかもとなって、拒絶から入ってしまったのだ。だがそれとは別にスグリはふとある考えが浮かんだ。ハルトと次勝負する時は、あっと言わせるくらい成長していたい。なら秘密の特訓をするのにハルトと組むのは避けた方がいいのではと。
「なにがダメよ。あんたハルトと組まないで、他のよそ者と組むって言うの?」
「う……そ、そう。ハルトとはライバルだから……必要以上に馴れ合わない!」
「はぁ? なにそれ、また漫画の影響でも受けたの? ……まあそうしたいならそうすれば? じゃあ、あんたとは私が組んであげる。嬉しいでしょハルト?」
「スグリとも組んでみたかったけど、ゼイユと回るのも楽しそう! よろしくね!」
こうしてスグリはハルトではなく、パルデアから来た別の男子生徒と組むことにしたのであった。ハルトほどではないが彼もまた気さくな性格のようで、内向的なスグリでも何とか会話をすることくらいは可能であった。だがスグリの当面の目標は、ハルトがキタカミから帰るまでに全力で勝負して彼に勝つことであった。故にオリエンテーリングはさっさと終わらせて、ポケモンの特訓を始めたかった。
スグリは男子生徒に三つの看板を一気にクリアしようと提案した。男子生徒は今日から始まるオモテ祭りに行きたがっていたが、お祭りは数日続くこと、課題を一気に終わらせた方がゆっくりと出来ることを説明した。拙い喋りだがそうやって説得をしたところ、ペアの男子生徒も納得を示してくれてどうにか夜中まで歩き回り一日で課題をクリアしたのであった。
(ふぅー……これで特訓に集中できる。オモテお祭り、ねーちゃんとハルトは一緒に行ったんだべか。もう夜も遅いけど、まだいるかな……?)
ライバルとして相応しい強さを身につけてようとしつつも、同年代の子とお祭りに行きたい心を完全に押し止めることは難しくスグリはお祭りの方に足を動かしてしまう。だがやはり時間が遅いこともあり、お祭りには殆ど人がおらず二人の姿はどこにも見当たらなかった。スグリは肩を落とし渋々家に帰ろうとした所、お祭りの近くに生えた林の方からくぐもった鳴き声を聞く。
(ポケモン? にしては変な鳴き声。……もしかして新種のポケモン!?)
スグリは聞いたことのない、新しいポケモンの鳴き声かと意気揚々音のする方に近付いてしまう。林を進むにつれて、ポケモンどころか人気すら感じない場所にスグリは入り込む。脅かさないように身をかがめてゆっくりと音のする方に近付くと、スグリはその音を発生させている正体を垣間見る。新しいポケモンと思っていたのは人の話し合う声であったのだ。それも一人がもう一人に跨っている状態だと影から見て取れた。まさか喧嘩かとスグリは身構えてしまう。
(……ポケモンじゃなくて人だったべ。紛らわしいけど、こんな所で喧嘩──あのじんべえ、どこかで……?)
月が雲に隠れて薄い明かりの夜半に、どこか見覚えのある姿にスグリは目を凝らす。暫く観察をしていると雲間が晴れ、月明かりが目の先にいる二人を照らし始めた。群青色のじんべえ姿の少女は、スグリの記憶に深く刻み込まれている人であった──。
「──っ❤️ んっ❤️ あ──❤️ はぁ──ぁっ❤️」
「え。あ。ね、ねーちゃん……?」
月光がじんべえ姿の女性を輝かせる。忘れようもない、幼い頃から共に育ったゼイユがそこにいたのだ。ゼイユはじんべえ姿をはだけさせ、肌に浮かんだ玉汗を上下に動いて飛ばす。全力で走った後のような、リンゴ飴のように顔を真っ赤にさせて彼女はそこにいた。スグリは思わず声を出してしまうが、彼女と跨っている人には聞こえなかったようで彼等の動きは止まらなかった。スグリは目の前の二人に意識を集中させたからか、彼等の声がよく聞こえるようになっていた。
「んっ❤️ ど、どうよっ❤️ わたしだってっ❤️ うっ❤️ んぐっ❤️ やられっぱなしじゃっ❤️ おわらないんだからぁ❤️」
「ん、ふっ、すごいよ、ゼイユの騎乗位っ。もう何回もしてるのに止まらない……っ!」
「あ──」
スグリは男の方にも覚えたがあった。自身と同じくらいの年なのに、自年上の姉よりずっと強い、新たらしい憧れの人。スグリに改めて強くなることを決意させた異国の男の子──ハルトに他ならなかった。二人はこんな所で何をしているんだ、スグリがそう思うのも束の間。バトル専門とはいえ最低限の教育を行う授業と、クラスメイトがそれについて話していたのをスグリは陰で聞いていたことがあったので分かってしまう。二人は性交しているのだと。
(な、なんで……? ねーちゃんとハルトって今日会ったばかりじゃ……? よそ者だとか言って邪険にしていたのに、そんな簡単にしちゃうの?)
少なくとも二人の顔から嫌悪感のようなものは感じられず、むしろ姉であるゼイユの方がうっとりとした顔でハルトを見つめていた。そんな姉の顔も彼女やハルトが動く度に如何様にも歪み、唾をだらしなく垂らしていた。ハルトはゼイユを下から“ダブルニードル”の要領で突き上げながら、器用に胸を揉みしだく。彼もまた頬を蒸気させ興奮している様子がスグリには見えた。それは覗き見ていたスグリも同様で──。
(わ、わわっ……!! おれのも大きく……!)
スグリの肉棒も姉と憧れの男の子の情交を目の当たりにして、大きく膨らみパンツを押し上げようともがいていた。スグリ、初めての勃起であった。
スグリは見つかるかもしれないと思いつつも、衝動には抗えず小枝のような肉棒を露出させる。そして恐る恐る己の小枝に手を掴み、二人の性交を真似するように上下に動かし始める。姉が腰を上げる度に指で作った輪っかを上げ、再び姉が腰を下げたのを見て指の輪っかを根本に下ろす。“かみなり”に打たれたような甘い衝撃がスグリを襲う。快感の嗚咽を漏らしながら、数回ほどこの繰り返しを行う。するとスグリは尿を出す時のような感覚が込み上げていた。
「あっ……! だ、ダメっ!!」
自制しようとするももう止まらず、スグリは肉棒から溢れる液を迸らせた。スグリが想像していたものとは違うもの、放出された白い液体は彼の眼前の土を濡らした。張りつめていたものを解放した時のような、達成感、心地よさがスグリの全身を支配していた。深く深く息を吐き出しながら、スグリは絶頂の極みで全身を震わせていた。
「はぁ、はぁ……」(こ、これが射精!! すごい、ポケモン勝負さで勝った時みたいな、すごい気持ちいいべ……)
スグリが初めて行った射精の余韻に浸かるなか、ゼリユとハルトの二人も絶頂を迎えようとしていた。二人の上下運動が激しさを増し、林の中を肌と肌がぶつるかる音が響き、二人の荒い息遣いだけだ空間を支配していた。絶頂の余韻から現実に引き戻されたスグリは二人をじっと凝視する。そしてハルトの突き上げと共にゼリユが吼えた。
「ん゛ん゛ッッ❤️ ひっ❤️ ぁぁああぁぁっ❤️ イクッ❤️ イっちゃうッッッ~~❤️❤️❤️」
咆哮と共にゼイユの全身は震え、目の焦点はあらぬ方向を向き、舌を宙に大きく突き出していた。ハルトもゼイユの腰を強く掴んでおり、彼女最奥に向けて腰を深かく深かく貫いていた。スグリはこれが本物の性交なんだと目に焼き付けていた。姉の乱れた姿はスグリにとって衝撃的で生涯忘れることはないだろうと思ってしまうほどであった。
ゼイユは絶頂を迎え力なく倒れるとハルトがそれを受け止め、二人は体をぴたりと合わせて息を整えあう。そしてじゃれるように口をくっつけあう、キスを何度も何度も繰り返す。端から見ても愛し合っているのだと分かる光景に、スグリは何故か痛む胸を押さえながらも凝視する。そしてゆっくりとゼイユはハルトの上から横にずれると、ハルトの肉棒が露わになる。ゼイユの蜜液でテカテカと濡れるピンク色のゴム。それに包まれた肉棒はスグリの知るものとはかけ離れていた。
「え、デカ……」
スグリは自分のものと見比べてぽつりと呟いてしまう。りゅうのキバのように鋭く、ふといホネのように厚いそれは到底自分のものと同じだとは思えなかった。スグリのそれは本来年齢を考えれば十二分以上にあるのだが、ハルトのは文字通り桁が違ったのだ。そもそもスグリが自慰をしていた時の腰遣いからも違っていた。スグリのが“えだづき”だとすれば、ハルトのは“ウッドハンマー”のような打ち込みであった。スグリとハルトの差がこれでもかとあったのをスグリは理解する。
スグリが茫然自失で二人を眺めていると、ゼイユはハルトの肉棒にぶら下がっていたゴムを脱がす。そして何度もしたのか慣れた手つきで結ぶとその辺に捨て置いた。よくよくそちらを見ると同じように精液の詰まったゴムが散乱しており、それだけハルトが射精したのだと理解させられる。スグリは再び自分の肉棒を見る。射精をして元の大きさに戻ったそれはもう役目を果たしたと言わんばかりに反応しなかった。けれどハルトのゴムを脱ぎ去ったアーボックのような肉棒はいまだ天を貫かんばかりに勃起していた。
(あ、あぁぁ……)
スグリは思わず彼等のいる場所から逃げ出してしまう。それは怖れからであった。些細なことではあったが、もしかしたら自分はハルトに一生勝てないのではないか。そんな思いが大きさの違い、持続力の違いから過ってしまったのである。走り出す最中、後ろから聞こえてきた姉の嬌声を聞かないように耳を塞ぎならスグリは全速力で家に向かった。
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翌朝、スグリは部屋でぼーっとしていた。昨日見た光景が衝撃すぎて朝から特訓どころではなかったのだ。あの後、家に帰ったスグリはお祭りの日だというに夜遅くまで帰ってこなかったことを心配され怒られてしまった。そしてその後に帰ってきたゼイユはやはり様子が違っていた。どこかぎこちない動きをしており、スグリとゼイユのお婆さんは何かに気付いたのかゼイユとコソコソと話をしていた。あれは夢だったと思いたかったが、朝起きて居間に降りた時にあれは現実だったと突きつけられた。ハルトのあれやこれやを楽しそうに、愛おしそうにころころと顔を変えて話す姉がいたからだ。
「スグおはよう! あんた寝すぎじゃない? あ、そうそう。ねえ聞いてよ、ハルトがさぁ!」
「あ……うん」
「スグリも起きたばかりなんだから、いっぺん喋るのはよくないぞ。スグリ顔を洗ってきなさい」
「うん。ありがとうじーちゃん」
スグリはゼイユをインターセプトしてくれたお爺さんに感謝しつつ顔を洗いに洗面所に移動した。鏡に映る自分の顔は酷い顔であった。いかにも弱々しそうな顔を見て、スグリは頬を叩き気合を入れ直す。もっと強くならないとハルトには勝てない、憧れである鬼さまと友達になるため強くなる決意をする。
「ハルトに勝って、鬼さまと友達になる。今日から頑張るべ……」
スグリが改めて気合を入れ直し居間に戻るとインターフォンが鳴った。その音を聞いた瞬間、ゼイユはいの一番に駆け出した。まさかとスグリが思い、彼女の後に続いた。ゼイユが扉を開けるとそこにはハルトと青い稲妻が身体中に奔る菫色の怪獣がいたのだ。
「どひゃっ!! か、怪物……!!?」
「早かったじゃない、ハルト❤️ ミライドンも昨日ぶりね」
「アギャス!」
「おはようゼイユ! あ、スグリもおはよう! 昨日ぶりだね、オリエンテーリングは順調?」
「あ、う、うん。もう終わったべ……」
スグリは朗らかなに挨拶をしてくれるハルトにおずおずと挨拶を返す。昨晩ゼイユと乱れに乱れていた男と同一人物とはとても思えなかった。スグリは姉との関係に一言では言い表せないわだかまりを感じてしまうが、二人が納得していることなら部外者が言うことはないだろうと一人で納得し飲み込んだ。そしてもう一つ気になること、ハルトの隣にいる怪獣のことを尋ねた。
「……それ、ポケモンっこさ?」
「ミライドンって言うんだ。嚙まないから撫でたりしても大丈夫だよ!」
ハルトの言葉に釣られてスグリはミライドンと呼ばれた大蛇のような怪獣に手をそっと近づける。ミライドンは人懐っこいのかすりすりと手に顔を寄せる。今までに触ったことのあるポケモンとは違う感触に自然とスグリも顔を綻ばらせる。
「わやじゃ……! こんなポケモンっこ初めてだ」
「ボクが知っている限り二匹しかいないポケモンだからね。まあそんなことはどうでもよくて、ミライドンはかっこよくていつも頼らせてもらってる自慢の仲間だよ!」
「二匹しか……」
これまでにもハルトはスグリの知らないポケモンを手持ちにしていたが、ミライドンはより一段と特別なオーラを感じるポケモンだった。二匹しかいないと聞いて、スグリはやはりハルトは特別なトレーナーなんだと感じてしまう。まるで物語の主人公のような──と考えているとゼイユとハルトが話を始めていた。
「お爺ちゃんに
「うん、お願い。スグリも一緒に聞いてくれる? キタカミの里に伝わる鬼についてのことなんだ」
「え? 鬼さまが? どういうこと?」
「簡単に話すと、昨日ボクとゼイユはオモテ祭りに行ったんだけど、そこでゼイユも知らない子と出会ったんだ。その子は
スグリはハルトの口から鬼さまが出てくるとは思っておらず間の抜けた返事をしてしまう。ハルトは話をしながら、カバンから件のお面を取り出しスグリに手渡す。スグリの家系は代々お面職人のため、お爺さんの作る面をいくつか見て触れたことがあった。そのスグリからしてもこのお面がたいそう丁寧に作られたことが感じ取れた。お祭りで出しているちゃちな作りとは違う伝統職人の技が為せる作りで、特に散りばめられた宝石がそのお面の価値を引き立てていた。
「これ、鬼さまのお面に似てるべ! 山の中に入っていった子って本物の鬼さまなの!?」
「かもしれない。だから鬼さまが好きなスグリも話聞きたいかなって」
「うん! おれも話、聞きたい! 本物だったら、やっと鬼さまに会えるかも……あれ?」
ふとスグリは思う。何故、今になって鬼さまは現れたのだろうと。
(本当に鬼さまがいるなら、なんで。なんでおれが捜してる時に出てきてくれなかったの……?)
幼い頃はお爺さんやお婆さん、村の大人達にかんかんに怒られても山の中を彷徨ったり、鬼さまが住まうとされる恐れ穴で待っていたこともあった。けれど鬼さまは一度も自分の前には現れなかったのだ。今更鬼さまが現れた理由に、スグリは薄々と思い当たるフシがあった。鬼さまが現れたのは彼が──ハルトが来たからだと。自分やゼイユはもちろん、村の人間にはない強い輝きを持つ彼が来たからこそ、鬼さまも惹かれてお祭りに来たんだとスグリは思った。
(おれが弱いから、鬼さまは現れなかった……? じゃ、じゃあもし鬼さまが本当にいたらハルトに──!!)
スグリはそこまで考えて最悪の未来を振り払うように首を振った。それだけは断じて受け入れられないと。幼い頃から憧れ続けた鬼さまが突然現れた彼に奪われるなど、想像しただけでスグリの視界は歪み、吐き気や体の震えが止まらなかった。そんな体の震えを止めるかのようにハルトがスグリの肩に手を置いていた。
「スグリ大丈夫? どこか具合悪い? 風邪はなそうだけど……」
「っ……!! だい、大丈夫だから! おれのことは心配しないで。このくらい平気だから……」
スグリはハルトの手を振り解くように気丈に振る舞った。ハルトは本当に心配そうな顔でスグリの身を案じていたのに。けれど今のスグリはそれを受け入れられなかった。ライバルという対等な関係を目指しているのに、心配をかけてその位置から降りてしまうんじゃないかとスグリは恐怖してしまい彼を拒絶したのだ。スグリが背を向ける中、ゼイユはお爺さんを連れて戻ってきた。
「呼んで来たわよ。スグ? あんた大丈夫なの……?」
「大丈夫……おれはいいから。鬼さまの話、聞こう」
スグリやハルトの様子にゼイユは訝しむも、スグリは話をすぐに切り上げ鬼さまの話をお爺さんさせたがった。そうして皆は話しやすいように庭先に集まると、鬼さまだと思われる子が落とした仮面をお爺さんに見せた。そしてお爺さんにより、仮面がやはり鬼さまの物らしいことが判明。それに伴いお爺さんから口外してはならない村の伝承の真実を聞かされる。
今まで聞いてきた伝承では山から村を荒らしに来た一匹の鬼を、ともっこと呼ばれる三匹のポケモンが命をかけて追い払ったというお話だった。その話しを聞いたスグリは、一匹でも複数の相手に立ち向かった鬼に憧れを抱いたのだ。だが真実はそうでなかったのだ。
鬼さま──オーガポンは異国の地から男と迷い込んだ存在で、二人は裏山で慎ましく暮らしていた。村は自分達とは違う異国の男を歓迎せずのけ者にしていたが、それを見たスグリの先祖は不憫に思い彼等の素性を隠せるお面を四つ作った。異国の男が持っていた宝石を使った素晴らしいお面で、彼等は仮面を被ることで顔を隠し村のお祭り来れるようになり、人々と交流することが出来るようになった。
だがあまりにも見事なお面の話題は村の外にまで伝わってしまい、欲深い数匹のポケモンがキタカミの里にやってきたのだと。そして欲深いポケモン達は、異国の男とオーガポンの住処に忍び込みお面を盗もうとした。その時オーガポンは外に出ていたため、男はたった一人で必死に抵抗した。けれども力及ばず、お面を三つ奪われてしまう。
オーガポンが帰ってくると住処には争った形跡と一つのお面だけ残っていた。オーガポンは男を探すため、仮面を被り山を下りた。その矢先にお面を掲げて喜ぶ三匹のポケモンを見つけ、オーガポンは怒りのまま彼等を叩きのめしたのだ。事情を知らない村の人々は怒り狂うオーガポンを怖れた。やがてオーガポンが山に帰ると、村の人々は三匹のポケモンが身を挺して村を守ったのだと勘違いしてしまい、三匹をともっことして奉り始めたのであった。お爺さんの長い話しを聞き、いの一番にゼイユが口火を切った。
「何、それ。オーガポンかわいそう!! ともっこ最悪じゃん!! 伝わってる話と全然違うし!! ちょっとこのこと村の皆に伝えないと!」
「コラ、待ちなさい! 口外してはいかんというに! ともっこさまを信じている村の人々が、今までとは逆のことを伝えられてどう思う?」
「嘘だと思ったり、怒るんじゃないかな。お面職人のご先祖もきっと最初は真実を伝えたんだろうけど……」
「ハルトさんの考えている通り。ご先祖様は真実を話したが、受け入れられず逆に迫害を受けた。それからご先祖様は口を噤み、子孫にだけ真実を伝えるようになったのだ」
口を尖らせイライラを隠さないゼイユの声が響く中、スグリはオーガポンに抱いていた憧れが同族意識だったんじゃないかと感じていた。オーガポンと異国の男は村の人々にのけ者にされており、スグリ自身のけ者にされる寂しい感覚は痛いほどよく分かるからだ。
(鬼さま──オーガポンものけ者にされていたんだ。おれとおんなじ。だから好きになったのかな……?)
「さて。さっきのお面のことだが宝石が少し欠けているところがあった。直せるかもしれんから暫く預かっても良いかな?」
「折角なんだから、綺麗にして返したいわよね?」
「だね! 修復、是非お願いします。そうだ、修復に使う宝石ですけど足りますか?」
「ううむ……家にも多少はあるが、てらす池に取りに行った方がいいかもしれんな」
「ちょうどブライア先生とサザレさんと一緒にそのてらす池に行く予定だったんでボクが取りに行きますよ。……スグリも一緒に行かない?」
「……おれも?」
仮面の修復の話が進む中、突然自分の名前が出されて驚いてしまうスグリ。いつの間に仲良くなったのか、ゼイユの担任で林間学校の引率であるブライアと知り合いになったサザレとてらす池に行くので一緒に来ないかと。悩ましい提案だとスグリは思う。ハルトと一緒に行くのはきっと楽しいのは間違いなく、彼のポケモン勝負を間近で見られるのは得難い経験になると容易に想像できた。けれど──。
「……ごめん。おれやることあるから」
「そっか。ううん、こっちこそ無理に誘ってごめん。スグリとピクニックしたかったけどまた今度しようか」
「うん……」
「わたしは──「ゼイユは
スグリは次こそハルトに勝つ秘策を用意するため、ハルトからのお誘いを断った。断った時の心底残念そうな顔にスグリもずきずきと心が痛むのを感じるが、彼に勝って対等な関係になるためぐっと我慢した。その後に聞こえた姉の甘ったるい声を無視しながら。
対等な関係になれれば──友達にもなれるかもしれない。だからその時のためにスグリは力を磨こうとその場を後にした。
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────
──
「やった……! 皆、よく頑張ったべ!」
「メガガガガッ!」
「オォ〜!」
「ニョロ!」
スグリは進化の光の中から現れた屈強なオニトンボポケモン──メガヤンマを前に喜びを露にしていた。スグリのそばにはつい先程進化したオオタチとニョロボンもおり、二匹のポケモンもスグリの笑顔に反応して嬉しそうにしていた。今朝オーガポンの真実を伝えられてから、スグリはキタカミの里北部にある楽土の荒地でポケモンの特訓をしていたのだ。
「オオタチ、ニョロボン、メガヤンマ。これでハルトのポケモンに当たり負けはしないはず。けんど、油断は出来ねぇ。次、育成するポケモンっこはどうすんべかな……」
進化した皆を前にはしゃぐ気持ちも一瞬のこと。ハルトに勝つにはまだ足りないだろうと考えるスグリ。スグリは捕まえたはいいものの、まだ育成に手をつけていなかったポケモンを見る。カミッチュ、ウッウ、グライガー、コノハナ、ノズパス、どのポケモンもスグリにとって大切な存在だが、勝負──特にハルトとの対決を踏まえてスグリは情を捨てて手持ちを構築しようとしていた。
(ハルトの今見えている手持ちはマスカーニャ、ハッサム……そしてミライドン。めっちゃ強力な電気のポケモンっこに見えた。なら地面タイプのグライガーを入れるべき? けどそうするとメガヤンマと弱点が一貫する……難しいべ)
スグリがうんうん頭を捻っているとあることを思い出す。てらす池にじめん/みずのタイプのナマズンがいたことを。草が4倍以上でマスカーニャに相性不利なのは気になるが、それなら後続から飛行タイプのメガヤンマで倒しにいけるかもと。
(マスカーニャの素早さは気になるけど……悪くない案かも。一先ず今もてらす池にナマズンがいるか見に行くべ)
こうしてスグリは今朝ついていなかった、てらす池に何の因果か行くことにしたのであった。流石にあれから時間も経ち、夕方に迫るこの時にもうハルト達はいないだろうとスグリは思っていた。てらす池は鬼が山の頂上に位置しており、その道中にオーガポンが住むとされる小さな洞窟──恐れ穴があった。だが今のスグリはそこに立ち寄ることはしなかった。否、出来なかったと言うべきか。ハルトの前には現れて、また自分の前には現れなかったらと思うと立ち寄れなかったのだ。
そんなこんなで頂上についたスグリ。てらす池は池の底にある結晶によって淡く発光しており神秘的な様相であった。スグリはナマズンがいないか辺りを見渡していると、岩陰に動く影を見つけた。
(ん? 今のって人影だべか? ヨマワルにしては大きすぎるような。……いやまさか)
岩陰でモゾモゾと動く影にスグリは昨晩目にした衝撃的な光景がフラッシュバックする。けどそれはあり得ないとスグリは断定する。そもそもまだハルト達がいるとは限らない。もしいたとしてハルトはゼイユとそういうことをしていたのであるなら、彼等は恋人関係になったのだろう。恋人以外とそんな不純な行為する等、スグリの常識には存在しないことだった。
故に姉の担任であるブライアや写真好きのお姉さんとハルトがそんなことをする筈がない。スグリはそう信じきっていた。スグリがバレないよう岩陰の反対側に回り込むと、そこには服を乱雑に脱ぎ捨てたブライアとサザレがいた。そして二人の中心には彼が、ハルトがそこにいたのだ。
「ふっ、ふっ、 どうかな、ハルトくん❤️ 二人の女性からのサンドイッチは❤️」
「言葉も出ないって感じ❤️ あーその顔も良いよ、ハルトクン❤️ カーッ、たまんねぇな❤️」
(──なんで。ハルトはねーちゃんと付き合ってるんじゃ……)
ブライアとサザレは実りに実った豊満な乳房でハルトの肉棒を両脇からプレスしていた。彼女等の全身はテカテカと白濁液で汚れており、今日一日晴天だったというのに雨に濡れた後のような様子であった。だと言うのに二人の顔は興奮冷めやらぬという表情で、スグリはその顔色を昨晩も見た覚えがあった。
(うっ、あぁぁ……! おれのも、また……!)
むちむち、ずりずり。どぷん、たぷん、ぶるん。そんな音すら聞こえそうな美女の巨乳に挟まれたハルトの“おおきなキノコ”。スグリのモノなら巨乳に押し潰されて見えなくなっていそうだが、彼の肉傘は胸からはみ出て快感に打ち震えていた。それを覗き見ているだけで、スグリのモノもズボンの下でムズムズと勃起していた。他者の性行為をダシに自慰をする己に惨めさを感じながらも、スグリは手を止めることが出来なかった。
「うっ、おぉっ、ブライア先生とサザレさんのパイズリやばぁ……!! ま、また出ちゃいそう……っ!!」
「いいとも、存分に出したまえ❤️ 最上級の美酒にも劣らない、君の子種を❤️」
「ふっ、ふっ❤️ 今度は熱中して撮るのを忘れないようにしないとね……キミのかっこいい射精❤️ またワタシ達にいっぱい見せて❤️」
ハルトの声を引き金に、ブライアとサザレは胸圧を強め彼を射精させようと胸を器用に動かしていた。その姿は己の肉体を道具かのように扱い、男にただ気持ちよくなってほしいと全霊で奉仕しているようにスグリは見えた。心身共に捧げられた至上の性技にハルトは二人に向けて精を解放し、一方のスグリはまた一人で解放する。スグリの射精が“みずでっぽう”だとするなら、ハルトのそれは“ハイドロポンプ”の如き勇ましい射精で、ブライアとサザレの全身に降り注いでいた。
ブライアは両手でハルトの精を受け止め、湧水を飲むように精を口にしていた。そしてサザレはというと、カメラが汚れることも厭わずハルトの射精やブライアの飲精を撮っていた。その顔は真剣さを感じさるも、どこか淫猥を感じさせる発情顔であった。
(うぇっ……! あんなネバネバしたもん飲むなんて、ブライア先生は何考えて……! でも。自分の出したもんああやって飲んでくれるってなんか良いな……)
「んっ、んんっ、んぐっ❤️ いつ飲んでも苦いね……❤️ けど君が喜んでくれるなら、飲むかいもあるかな……❤️ ん! あまりこういう所を撮られるのは困るなぁ、サザレくん」
「写真家として、絶好のフォトジェニックを前に撮らない選択肢はないですよ、ブライア先生❤️ ハルトクンのかっこ可愛いハイドロポンプ級射精も、容姿端麗なブライアン先生が、ハルトクンのドギツイ精液を必死に飲む顔も最高に映えますから!! 先生も研究で体が勝手に動く覚えありますよね?」
「……確かにその通りだ! 私も研究が関係すると好奇心を抑えられない性だからその気持ちは良く分かる。ふむ、なら仕方ないか」
そう言ってまた写真を撮り始めるサザレ。言いくるめられたブライアはハルトの射精をして落ち着いた肉棒を咥え始めた。そして舌で肉棒を舐め回しながら、まるで出しきれなかった精を吸い出そうとしているかのように吸い付いていた。暫くしてブライアが肉棒から口を離すと、テカテカと唾液で光沢を放つ巨根がそそり立っていた。
「じゅぽ、じゅぽ❤️ れろれろ──ぁっ❤️ まったく君の体力はハピナス以上かな? 昨日だってゼイユくんとした後で私としたというのに……❤️ メスをハメ殺す災いの珍宝だね❤️」
「そんな物騒なモノじゃないですけど! こんなんに大きくなったのはブライア先生のせいなんですから責任取ってくださいね! もちろんそこでケタケタ笑ってるサザレさんにも!」
「ふふ、いいとも❤️ いずれ君との間に作る
「まさか出会って数日の少年とこうなるなんてね……まあタイム・イズ・マネーと言うしね❤️ いいよ、サザレさんに任せなさい❤️」
(ッッ〜〜!! ハルトには、もうねーちゃんがいるのになんで他の人も捕まえて……!! あの二人もなんでハルトに……!!)
スグリはハルトが姉と関係を持っているというのに他の女性と関係を持つことに憤る。それは姉であるゼイユにとって不義理だと感じたからだ。しかし、スグリはそれ以上にブライアとサザレがハルトと関係を持ったことが許せなかった。否、受け入れられなかったのだ。
ブライアは学園でも有名な研究者の教師だった。悪く言えば研究第一の先生、だがよく言えば他に区別をしない先生とも言える。ブライアは話すのが苦手なスグリでも対応を変えず、彼が話しきるまで待ってくれる人でもあった。凛々しく妖艶な表情と、まつ毛の長いぱっちりとした目。パンツスーツに収まりきらない豊満な胸と尻。そのどれもが魅力的な大人の女性という感じで多くの生徒やスグリから密かに慕われていた。
そしてサザレに関しては村に帰ってきてから出会い、時折スグリとはよく話す間柄になっていた。彼女は赫月のガチグマというポケモンを探しており、スグリが強くなったら彼女がガチグマの写真を撮る手伝いを約束していた。ブライアに勝るとも劣らない抜群のプロポーションのお姉さん。スグリはそんな彼女の笑顔に惹かれており力になりたかった。だがそんな二人を捕まえたのはスグリではなくハルトだった。
(また、またおれは……ハルトに負けた。いや勝負にすらなっていなかった……!)
スグリが脳に強い敗北感を感じると、またも逃げるようにその場から立ち去った。元よりブライアはスグリのことを生徒としか見ておらず、サザレも里に住んでいる大人しい少年としか見ていなかった。スグリも二人にアプローチは掛けていなかったので、取られた、負けたというのもおかしな話であった。だがスグリにとってはハルトが彼女達を射止めたこと、自分には出来ないことをしたこと、それらが合わさり彼に敗北したと思ってしまったのだ。
スグリはハルトに出会ってライバルになろうとしてから、何度も敗北したと感じていた。あまつさえその相手の性交をおかずに自慰をしてしまっていた。その悔しさや惨めさはスグリの中に積み重なっており、彼の中である
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二度目の逃走。スグリは家につくと出迎えたゼイユに心配されるも、何も言わずに部屋へと引き篭もった。ハルトがブライアやサザレとそういう関係だったのを暴露したら彼女がどう反応するか、考えなかったわけではない。それでも、姉がハルトと離れることはないだろうとスグリは察していた。もはや姉は以前の彼女とは全くの別人で、一匹のメスとして
(はぁはぁ……なんで、さっきしたばっかなのにっ)
スグリが昨晩や先程の光景を思い起こすほど、脳に“スパーク“が迸るように、興奮が昂ってやまなかったのだ。ハルトが自分の親しい女性と致している場面で抜きたくない、惨めな思いはしたくないという思いからブルーベリー学園の女子で抜こうと試みた。姉とは違う学園のアイドル的なフェアリー使いの先輩や、姉の友人で本当に自分のことを見てくれている聡明な女性。両者共に可愛く魅力的な娘なのに、スグリはいくら彼女達を思ってシゴいても、まったく絶頂に辿り着けなかった。もうあの光景でしかイけなくなっていたのだ。スグリの脳は壊れかけていた。
「くっ、うっ、うぅぅぅ……!! このままじゃダメだ……このままじゃ……!!」
スグリはこのままでは、自分が取り返しのつかない進化をし、デメリットしかない
「鬼さまのお面。今のままだとハルトが渡すこと に……嫌だ。ハルトじゃなく、おれが渡したい……!」
ハルトがお面を渡したら、きっとオーガポンもハルトを好きになってしまう。そんな妄想をスグリは否定できず、真実だと思い込んでしまっていた。夢にまで見た憧れのオーガポンをハルトに取られるなど、スグリは絶対に阻止したいと考えある方法を思いついた。それは皆に対する裏切りになったとしても、スグリは止まることが出来なかった。
次の日の早朝。スグリはお爺さんの部屋に忍び込み、お面を持ち去った。お面の代わりにスグリはスイリョクタウン北東にある、ともっこプラザで待つ旨を書いた手紙を残して。スグリがともっこの像の前で待つこと一時間、困惑したハルトと苛立ちを隠さないゼイユがやってきた。
「スグ! あんたね、何してるのよ! 泥棒みたいに忍び込んでお面持って行くなんて、どういう──」
「ねーちゃんは黙ってて。ハルト、おれとポケモン勝負してよ。ハルトが勝ったら、お面は返す。おれが勝ったら、おれが鬼さまにお面を渡す。おれが渡すんだ……!」
「……スグリから渡したいんなら、ボクはいい──「譲ってもらっちゃダメなんだよ!!」──!!」
「ハルトよりおれが強くないとダメなんだ! そうじゃなきゃ、鬼さまはハルトの方を好きになっちゃう……! ねーちゃんやブライア先生やサザレさんみたいに、鬼さまもハルトに取られちゃうんだ……!!」
スグリの悲憤が込められた叫びにハルトとゼイユは息を飲む。スグリ自身、こんなに大声を出したのは初めてのことだった。肩で息をしてハルトの返事を待つスグリ。ハルトは心配そうに二人を交互に見るゼイユの肩をポンと叩いから前に出た。
「分かった。ポケモン勝負、やろうか」
「……ありがとう。おれ、全力でぶつかるからハルトも全力できて!!」
「もちろん。こっちも全力でやるよ……!」
スグリとハルトは互いに見合ったまま距離を取る。手には信頼する仲間の入ったモンスターボールを手に。両者に開始の合図は不要であった。一陣の風の後、二人はそれが決まっていたことのように同時にポケモンを繰り出した。
「勝って! メガヤンマ!」
「ミライドン、君に決めた!」
スグリの鬼蜻蛉に立ち塞がるは紫電の大蛇──ミライドン。電気タイプの強力な技を扱うドラゴンはスグリにも覚えがあり、ブルーベリー学園のチャンピオンが手持ちたるブリジュラスがそれだった。だが目の前にいるミライドンの圧は比べ物にならなかった。ブリジュラスは電気を使えるだけの紛い物だと言わんばかりに、ミライドンは咆哮と共に稲妻の領域を展開した。
「なっ……! 場に出ただけで、エレキフィールドっ!? いや、押されるな……けっぱれメガヤンマ! エアスラッシュ!」
「いつも通り行こう。ミライドン、こうそくいどう!」
メガヤンマは翅を震わし、“エアスラッシュ”を行う。だがミライドンは“こうそくいどう”で不可視の刃を回避する。その勢いのままミライドンの全身を迸る紫電が勢いを増す。それは電気タイプが攻撃を行う予兆。そのまま受ければ、メガヤンマが一撃で落とされるのは自明だった。だがスグリはある持ち物をメガヤンマに持たせていた。
(メガヤンマにはソクノの実がある! 抜群の電気技を半減する持ち物。コライドンを想定して防御を固める育成をしたべ! これなら、耐えられる!)
スグリは次手を想定する。ミライドンの動き方からおそらくは自らの体ごと突撃するタイプの技だろうと。ならば至近距離の“むしのさざめき”で、音の衝撃によって体内にまでダメージを通す。と、スグリが思考を巡らす刹那にミライドンが吼える。
「ミライドン、イナズマドライブ!」
「アギャギャギャッス!!!」
「メガヤンマ、迎撃してむしのさざ──!?」
ミライドンの瞳が血色に染まり、稲妻を纏った次の瞬間。スグリは赤い残光と眩い雷光の後、轟音が耳をつんざいた。その衝撃音がメガヤンマを吹き飛ばした音だと気付くのにスグリは数瞬必要だった。スグリは慌てて後ろを振り向く。車輪の如き姿をしていたミライドンのすぐ側で、メガヤンマは地に落ち瀕死になっていた。
「メガヤンマ……? な、なんで。ソクノの実を持たせていたのに……!!」
「イナズマドライブは抜群の相手に更に威力を高める技だよ。エレキフィールドの強化と特性ハドロンエンジンの強化があれば、きのみの軽減は突発できる」
「ッ──!! い、行ってグライオン!」
耐えられると思っていたのに耐えられなかった事実はスグリの心を軋ませる。マスカーニャやハッサムにも負けないくらい強くなった筈だったのだ。それこそ、ハルトが女にかまけている間に自分達は辛い特訓をこなしたのだからと。夜遅くまでの特訓でグライガーはグライオンにもなったのだ。だから負ける筈がないとスグリは思っていた。だが現実はそうはならなかった。ハルトの特別なポケモンがスグリのポケモンを一撃で戦闘不能のしたうえ、ハルトはスグリに技の効果をわざわざ教えたのだ。まるで本気の真剣勝負じゃなかった。
「グライオン!! じし──「こおりのキバ!!」ェッ……!?」
「アギャッス!!」
電気タイプの効かない地面タイプ。更にタイプ一致の“じしん”なら落とせる筈。そんなスグリの淡い希望は、高速で突き進むミライドンの“こおりのキバ”に急所ごと噛み砕かれる。氷タイプは地面タイプに効果抜群──グライガーは一撃で瀕死になってしまう。
続いてスグリはウッウ、ニョロボンを繰り出した。だがどちらも水タイプと飛タイプという電気タイプが弱点のポケモン。ウッウは鎧袖一触、後続のニョロボンはガッツを見せミライドンを“くろいきり”で妨害したものの、返しの“イナズマドライブ”で吹き飛ばされてしまう。
「また、また一撃……? こんなの……」
「……スグリ」
「あ……くっ!! まだポケモンっこさは残ってる! けっぱれ、けっぱれカミッチュ!!」
スグリは兼ねてより育てていた隠し玉のポケモンを繰り出した。どこかリンゴ飴に似たドラゴンポケモンはこれからの可能性に満ちており、スグリとしても今後が楽しみなポケモンである。だが今この場では、完全に力を発揮しているとは言い難く──。
「ミライドン、りゅうせいぐん!!」
「か、カミッチュ! りゅうのはどう!!」
天空から降り注ぐ隕石の雨。カミッチュは龍属性の波動を吹き上げて迎撃する。だが数多の隕石群を一頭の息吹で防ぐことは容易ではなく、撃ち漏らした隕石がカミッチュに着弾してしまう。ドラゴンタイプにドラゴンの技は効果抜群──惜しむらくはスグリとはまだ付き合いが浅かったこと。もしオオタチやメガヤンマのように付き合いが長ければ、一発は耐えられたかもしれない。そんな交戦であった。スグリは尻餅をつき、天に舞う大蛇怪獣を見上げる──何かが壊れる音をスグリは聞いた。
「届かない……なんで……なんで、そんなに強いの? まだおれの育成が、特訓が足りない……?」
「スグ、あんたも強くなってるわよ。そんな焦らなくてもいいじゃん。強くなければオーガポンと仲良くなれないなんて、そんなことないわよ」
肩を落とし、髪をかきむしるスグリにゼイユは駆け寄る。ゼイユはスグリが地道にポケモンやトレーナーの特訓に励んでいるのをよく知っていた。またオーガポンが強いから懐くとは決まったわけではない、そうスグリを励ました。けれど幾度目の敗北を刻まれたスグリに姉の言葉は届かなかった。スグリは行き場のない感情を発散するかのように、拳を何度も地面に叩きつけた。
「うあぁぁぁッ!!」
「スグリ!」
「ちょ、スグ! やめなよ、手ぇ痛めるよ!」
「痛っ……うっ、はぁはぁ……ハルト。約束、だから」
スグリが拳を叩きつけ始めたのを見てハルトもスグリの元に。ハルトとゼイユがスグリの自暴自棄を止めると、スグリはハルトを方に顔を向け懐から仮面を取り出した。約束を思い出したのだ。その手は微かに震えており、渡したくないというスグリの葛藤が見て取れた。なかなか受け取れないハルトにスグリは押し付けるように仮面を差し出す。そして言い捨てるようにハルトに喋り出す。
「……ハルトはすごいね。おれにないものをいっぱい持っていて恵まれている。珍しくて強いポケモン。綺麗な彼女。なんでも上手くいく、物語の主人公みたいだな」
「それは……スグリ。ボクにだって失敗や取りこぼしたことはあるよ。ボクとミライドンを導いてくれた、博士を助けれなかったし……」
「……帰る。鬼さまによろしくな」
スグリは少し前から思っていたことを口にしてしまう。神話に出てくる英雄のように特別なポケモンを従え、美女に囲まれるハルトが物語の主人公のようだと。だがハルトの曇った顔を見て、失言だったとスグリは察する。最後の方の言葉は聞こえなかったが、ハルトだって人なのだ上手くいかないことだってあるのだと。けれども今のスグリにハルトの顔を見て謝ることは出来ず、彼に背を向け走り去ってしまう。ゼイユの制止を振り切ってスグリはまたハルトから逃走したのであった。
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ハルトの勝負から少しして。スグリは自室でふて寝していた。理由は様々、ハルトに勝てなかったこと、彼を傷つけるようなことを言ってしまったこと、そしてオーガポンをハルトに捕まるだろうことを考えるとスグリはどうしようもなく情けなく思い疲れてしまったのだ。そんなスグリを叩き起こしたのは他ならない彼女だった。
「お爺ちゃ──!! お面──早く!!」
「んんぅ……? ねーちゃん? また騒いでる……」
スグリはのそのそと起き上がると部屋を出て居間に向かった。居間には仮面を直すのを急かしているゼイユとテキパキと手を動かしながらもゼイユの話を信じられないと言う二人のお爺さんがいた。
「しかし、本当かいゼイユ? 三匹のともっこが復活したなんて」
「本当よ!! しかもそいつらキタカミセンターにあったお面を持ってただけじゃ飽き足らず、もてなされておモチも大量に食べてんだから!!」
「ともっこが復活……!? ねーちゃんそれ本当なの!?」
スグリは姉の言葉に耳を疑い問いただす。もし本当だとしたらともっこ達はオーガポンと因縁があった。オーガポンの強さに憧れているものの、もし三匹に不意打ちをされたらと思うとスグリは不安に駆られていた。
「スグ……! 本当よ。ちょうどいいわ、あんたも一緒に来なさい。ともっこからオーガポンを守るわよ」
「あ……う、うん! おれも鬼さまを守るよ!」
スグリとゼイユはそうこう話ししているとお爺さんは最後の仕上げを済ませた。二人はお面を受け取ると急いで鬼が山に向かった。道中、ハルトが先に鬼が山に向かっていることを聞きスグリもより一層加速する。それはハルトの身を心配してか、或いはオーガポンを取られまいとする想いか、スグリにも判別つかなかった。
鬼が山は恐れ穴前。スグリとゼイユがたどり着くとハルトは3対2で攻防を繰り広げていた。どうやらともっこはハルトの強さを本能的に悟ったのか、容赦なく三匹全員で襲い掛かっていた。ハルトもポケモンを二匹繰り出し応戦しているものの、マークのあいたもう一匹のともっこの攻撃が鬼門だった。ハルトはオーガポンを背に庇いながら、指示を出すため後手に回っていた。だが綱渡りの指示は限界を迎え、黒緑の犬ポケモンがハルトに殴りかかる。
「ッ──ハルト!!」
「スグリ!?」
ともっこ達に襲われるハルトを見てスグリは一、二もなくポケモンを繰り出していた。メガヤンマの“エアスラッシュ”が毒々しいマフラーをした犬ポケモンに命中する。突然の乱入者に三匹のともっこは鳴き声を上げながら後退する。
「ぬんだふる!?」
「キチキチ!!」
「シラ、ッシラ!」
「待たせたわね、ハルト!! さあ今度は私達も相手するわよ! どいつから躾けてやろうかしら。蘇ったこと後悔させてやるわ!!」
ゼイユの勇ましい啖呵に三匹のともっこは怯んだように後退り、まるで作戦会議をするかのように円陣を組み始めた。ハルトとスグリもゼイユに続いて三匹のともっこに迫ると、ともっこの一匹である雉が眩い光──“マジカルシャイン”を放つ。目潰しともに三匹のともっこは一斉に方々へと散ってしまった。追撃しようにも目が潰された状態で攻撃して、もしともっこ以外に当たったら大惨事である。故に見逃すしか取れる手段はなく、ともっこ達を取り逃がしてしまう。
「くっ、猪口才な真似してくれるじゃない! お面泥棒したり、三匹で襲ったり卑怯極まりないわねムカつく!!」
「はぁはぁ、でも助かったよ。正直、連戦だったらギリギリだったからさ。ゼイユ、スグリ、助けにきてくれてありがとう! メガヤンマで加勢してくれなかったら、ボクもオーガポンも危なかったよ」
「うん……ハルト、さっきは……ごめん。おれハルトにどうしても勝ちたくて、そんで負けちゃってカッとなって酷いこと言って、ハルトを傷付けちゃった……本当にごめん」
「いいよ、ボクも周囲には恵まれているとは思うこともあるから。スグリの言ったこと、全部が間違ってるってわけじゃないし。気にしないで!」
スグリはハルトに心ないことを言ってしまったと謝ると、ハルトは謝罪を受け入れ、スグリの言うことも全部が間違ってはいないことを口にする。どんなに辛い時でも相手を気遣う彼の性根にスグリはますます自分の情けなさを自覚し、顔を曇らせる。それを見てハルトは再度口を開く。
「スグリがまたボクと関わろうとしてくれて、すごく嬉しいよ! だから、また勝負したり今度こそピクニック一緒にしたいな。パルデアに遊びに来てほしいし、その時はボクが案内するからさ!」
「──ん! また勝負するべ! ピクニックは、ハルトに勝ってライバルから友達になってから……あ」
ハルトはまた自分のような人に関わってくれることへの喜びを口にする。スグリは今度こそ勝ってライバルから友達になる旨を口に出してしまう。思わず声にしてしまった目標にスグリは慌てて口を手で塞ぐも、ハルトにはしっかりと聞こえており彼はポカンと口を空けていた。
「え。もしかして、友達だと思ってたのボクだけだった? 勝敗なんて関係ないよ。同じトレーナー同士、みんなライバルで友達だよ! 特にスグリみたいなポケモンを大事にする人ならもう親友だよ!」
「え、えぇぇ!!? そ、そうなの!? 友達ってそんな簡単になれるの!?」
「なれるよ! あ、スグリはボクみたいに色んな女の子大好きな人って不潔で友達になるのは嫌かな……?」
「う、うーん。それについてはおれはどうとも言えねーべ。でも……ハルトと友達になるのは嫌じゃない。うん」
ハルトのライバル発言に引きずられていたスグリは、まさか彼があの時点で自分を友達だと思っているとは思ってもみないことだった。普段のスグリは大人しい性格で、よく姉の陰に隠れていた。それ故に学園で話す相手は少なく、胸を張って友達と呼べる人間は少なかった。故にトレーナー同士は友達と言う極陽キャのハルトの主張は全く通じていなかったのだ。
ハルトはスグリの態度にもしや自分の女好きがダメで渋い反応をしていると勘違いして気を落とす。複数の女性と付き合うのは、当事者同士の問題だとスグリは思っていたのでノーコメントを貫き、彼と友達になるのは全く持って嫌ではないと漸く口にした。
「なら、ボク達は今日から改めて親友だ! スグリ、これからも仲良くしてね!」
「う、うん!! 親友、か。にへへ、こそばゆいけどすんげぇ嬉しいべ」
「……ふふ。はいはい、二人ともそろそろこっち来てくれる? オーガポンの回復終わったわよ」
恋人と弟の微笑ましい触れ合いを微笑ましく見ていたゼイユ。だがそう言う交流は後からでも出来ると二人をここに来た本題に戻す。ゼイユは二人が会話している間にオーガポンの治療を行っており、オーガポンは回復の薬ですっかり元気になっていた。
「ぽにぽに!」
「これが鬼さま……わやめんこいな!」
「ね! 鬼って聞いてたからもっと大きくてイカついと思ってた。カワイイね……うちのマスカーニャも負けてないけどね!」
「おれのオオタチもカジッチュも負けてねーべ!」
「はいはい……あ、そうだお面。ねえ、やっぱりスグから渡してみたら? きっとあんたの好きって気持ち、分かってくれるわよ」
スグリとハルトがオーガポンの愛らしい姿に癒されつつ、自分の手持ちも負けていないと何故か張り合い笑い合う。そんな二人を横目にゼイユはお爺さんが修復したお面を取り出す。そしてスグリから渡してみたらどうかと提案したのだ。スグリは手渡されたお面をハルトに横流ししようとするが、今回のハルトは頑なに受け取らなかった。
「え、でも、約束だし。ハルトから……」
「ううん。ボクもスグリから渡す方が良いって思う。スグリの思ってること、きちんと口に出したらさっきみたいに上手くいくよ」
そう言ってハルトはスグリを後押しした。オーガポンは近付いてくるスグリを、星のようにキラキラとした瞳で見上げる。幼い頃に思い描いた鬼さまとは違う、可愛いらしい姿にスグリは思う。自分が今まで思っていた鬼さまはいなかったのだろうということを。
「鬼さま……えっとこれ鬼さまのお面」
「ぽ、が、がお……」
「会ったばかりだからか怖がってる? それとも村の匂いがして、嫌だとかあるのかしら……?」
「あ……や、やっぱりおれじゃダメみたい。ハルトから……」
「スグリ、もっとオーガポンに話しかけてみなよ! スグリが村の人とは違うって分かればきっと……」
「ハルト……! ん、分かった。もう一度やってみる」
ハルトの言葉にスグリは改めて向き合う。鬼さまは昔の村の人々に追われて傷付いているのだ。なら自分がまずやるべきことは、オーガポンを傷付けないということを示すこと。スグリはゆっくり膝を突いて、オーガポンと目線を合わせる。怖がらせないように顔を務めてにこやかにする。
「鬼さま……いや違うべな。オーガポン、ずっと会いたかったべ。おれ鬼さまに憧れてたんだ。でもおれが憧れてたのは、一人でへっちゃらって感じの鬼さまで、きっと本当のオーガポンはきっと違うんだべな。恐れ穴も、おれは暗くてゴツゴツで可哀想だと思ってた。でもここってオーガポンの大事な人と一緒に暮らしていた思い出の場所なんだよな? じーちゃんに聞いたべ」
「がおー……ぽに? ぽに、ぽにぽに!!」
「へへ。本当に好きだったんだべな、その人。このお面も大事な人との思い出の物なんだよな? このお面を作った人の子孫、おれのじーちゃんに直してもらったんだ。オーガポン、受け取ってほしい」
スグリは真っ直ぐオーガポンだけを見て語る。鬼さまに憧れていたこと。けど本当のオーガポンは昔一緒にいた大事な人との思い出の場所にずっといたり、昔を懐かしみ村のお祭りに来たりと“さみしがり”な性格の子だとスグリは感じていた。そんな大事な人の形見のお面を直してきたから、受け取ってほしいとスグリは心から語る。
オーガポンはこれまで村の人に追われ、ともっこ達に突然襲われ酷く警戒していた。けれどスグリの心からの声を聞き、少しづくゆっくりとスグリに近寄った。スグリはもちろんハルトやゼイユが固唾を飲んで見守る中、ついにオーガポンはスグリの持つ仮面に手を伸ばした。そしてスグリからお面を受け取り、オーガポンはお面を付けてはしゃぎ回る。
「受け取ってくれた! わや、わや嬉しい……!」
「ぽにー!! ぽにお、ぽにおー!!」
「スグ! 受け取ってもらえて本当に良かったわね」
「スグリの想いが伝わったんだ。幼い頃から憧れてたスグリの想いが、オーガポンの警戒を解いたんだ!」
スグリは受け取ってもらえたことに心から歓喜を露わにし、ハルトとゼイユも我がことのように喜んでいた。暫くして、三人は喜んでばかりはいられないと気を引き締める。野に放たれたともっこ達を放って置くわけにはいかなかったからだ。
「またオーガポンが襲われたり、そもそもお面を取り返さないといけないし、ともっこ達を成敗するわよ! わたし達三人で『お面取り戻し隊』を結成するわ!」
「名前が……ユニークだね! よし一緒に頑張ろうね、スグリ!」
「おれも……うん! オーガポンのためにもけっぱる!」
「ぽに? ぽにおー!」
三人はお面取り戻し隊を結成すると、スイリョクタウンに戻り情報を集めることに。自称リーダーのゼイユは話を聞こうにも圧が強すぎるためが聞き込みは上手くいかないなか、ハルトとスグリがいくつかの情報を聞くことが出来た。人見知りの激しい弟が積極的に行動するのを見て、人知れず微笑んでいた姉がいたのを弟は知らなかったが。三人は集めた情報を整理するため、オーガポンが待機していた町外れに集合するのであった。
「ふんふんなるほどね。二人の情報でイイネイヌ、キチキギス、マシマシラ。三匹のともっこの居場所はだいたい把握出来たわね!」
「……ん? もしかしてねーちゃん、何にも情報得られなかったの?」
「わたしはリーダーだから地味な作業はしなくていいのよ! 話を聞こうにもキョドったり、逃げられたのよ……美しいのは罪ね」
「実際ゼイユは美人だから仕方ないね。それじゃともっこ達の居場所も掴んだことだし、今から成敗しに行こうか!」
ゼイユの自賛を受け流しつつ、ハルトはともっこ達にリベンジをしようと張り切っていた。ゼイユも乗り気な中、スグリはあることを考えていた。お面を取り戻した後のことについてだ。
(鬼さ……オーガポンはお面を取り戻したらまた恐れ穴で暮らすのかな? もしくは……ハルトが捕まえるんだろうな。お面は受け取ってもらえたけど、やっぱしおれとハルトじゃ懐き方は違うし。捕まえたとしても村じゃ出せね……)
スグリはハルトの足元で駆け回るオーガポンを一瞥する。迫害を受けた名残からか、オーガポンは村に入るのを怖れて村の人が近寄ればすぐに隠れていた。スグリとゼイユはその限りではなかったが、もし自分が捕まえたとしても学園ではいいかもしれないが、村では怖がってのびのび出来ないだろうと。
(でも。思っていた鬼さまと違っても、おれはオーガポンの相棒になりたい……なら村の皆に真実を伝えてオーガポンを受け入れてもらわないと!)
「スグ……スグ!? あんた話、聞いてた? ボーッとしてたけど……何かあったの?」
「あ、ごめんねーちゃん。その、おれやりたいことあって。お面を取り戻すのは二人で行ってきて……」
「やりたいこと? スグリ、聞かせてほしいな。もしかしたら手伝えるかもしれないし、一人でやる必要があることだとしても応援は出来るからさ」
「ん……実は──」
スグリはハルトよりオーガポンに相応しい相棒になるための行動を、彼自身に話すのはどうかとも思った。だが自分を案じてくれている友達に隠し事をするのは嫌だという気持ちも確かにあった。結局、スグリは二人の心配を受けて、オーガポンの相棒になりためという話は除いてやりたいことを話すことにした。
「あーなるほどね。確かにわたしもオーガポンの誤解は解きたいわ。お爺ちゃんはダメって言ってたけど、案外今の村の人ってそこらへん緩いからいけるとは思うのよね」
「オーガポンが昔みたいにお祭りに来られるように出来るようにする。良い案だと思うよ、スグリ!」
「……うん、決めたわ。ハルトとスグリは、オーガポンと一緒にお面を取り戻しに行ってきてくれる? 村の人の説得はわたしがやるわ」
「ねーちゃんが? 村の人への説得は言い出しっぺのおれがやったほうがいいんじゃ? それに……ねーちゃん説得出来るの? 皆にキョドって避けられてるのに?」
「避けられてないわよ!! わたしの美しさに圧倒されて戸惑ってるだけだから! 大丈夫よ、首根っこ捕まえてでもお話するから……オーガポンに良い所見せてあげなよ」
スグリの遠慮のない指摘にゼイユはブチギレつつ、彼の側に近寄るとオーガポンにアピールしてみたらと小声で呟いた。スグリは本心がバレていたことを知り、姉を見上げてしまう。ゼイユは分かっていたのだ、スグリがオーガポンに良い所を見せたいことを。
「ねーちゃん……ありがとう。おれ、お面取り戻してくるよ! ハルト、おれ足引っ張らないようにけっぱるから!」
「頼りにしてるよ、スグリ! それじゃ行こうか、お面取り戻し隊・実働部隊!」
「ぽにお──!!」
こうしてスグリとハルトは、お面を取り戻すべくオーガポンと共にともっこ退治に向かった。スグリは姉のアシストは無駄にはしないと、手持ちの状態を入念にチェックする。しかしてスグリは忘れてしまっていた。脳破壊によって芽生えた、自分の
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スグリとハルトはまずは近場の池に目撃情報があったマシマシラの退治に赴いた。栄養満点のお餅の効果か、マシマシラは恐れ穴で見た時より大きくなっていた。ハルトはその大きくなる現象に見覚えがあった。
「でっけぇ……お餅の効能だべか?」
「パルデアで特別なスパイスを摂取して、でっかくなって強くなったヌシと戦ったことがあるよ。あの時と同じなら油断ならない相手だ。スグリ、協力して戦おう!」
「んだ。オーガポン、あぶねーから離れててな」
「ぽにぽに!」
ハルトとスグリはオーガポンが離れたのを見てからマシマシラに接近する。奇襲しようにも、マシマシラは見晴らしのよい場所に陣取っておりそれは不可能だった。目敏くマシマシラは二人とオーガポンの姿を目視すると威嚇するように立ち上がった。
「マ? マッシャー!!」
「気付かれたか。なら正々堂々正面から成敗しようか。ハッサム、君に決めた!」
「行って、グライオン!」
マシマシラに向かってハッサムとグライガーが低空飛行で接近する。マシマシラが臨戦体制に入るとその身にオーラに纏った。これまでの勝負からスグリ達はマシマシラが特防を固めたことを察する。並々なる体躯、驚異的な能力上昇。じわじわと相手を追い詰める毒の鎖。そのどれもが並のポケモンを凌駕するが、今タッグを組んだ将来有望のトレーナー達はこの程度では屈しなかった。
「ハッサム、はたきとす!!」
「マ、マ!!?」
「青い顔が、更に青ざめたべ! グライガー、じしん!!」
初手はハッサムの“はたきとす”で相手の隠し玉を封じる。シュカのみ──地面タイプの抜群を一度だけ半減にするきのみを隠し持っていたマシマシラ。抜群を狙ってきた相手を返り討ちにしようと、画策していたのが見て取れた。が、ハルトとスグリはそこまで読んでいたのだ。
悪技と地面技はどちらもマシマシラに効果抜群。加えて固めた特防ではなく薄い防御を狙った物理の二連撃は致命傷だったが、マシマシラは力を振り絞り技を繰り出す。“ヘドロウェーブ”が大地を飲み込み。二人は毒無効のハッサムと耐性のあるグライガーだから問題ないと考えていた。だがマシマシラの狙いはその二匹ではなく、木の陰に隠れていたオーガポン目掛けてだった。それを察したハルトは咄嗟に動き出す。
「ッッ──!! スグリ、マシマシラにトドメを!」
「ハルト──いやグライオン、もう一発じしん!!」
スグリはハルトが何をしようとしているのか察する。ならば自分に出来るのは、彼に任された役目を果たすことだと再びグライオンに指示を出すスグリ。追撃の地震に堪らずマシマシラは地に沈み瀕死状態に陥るが、マシマシラの放った毒の津波は止まらずオーガポンに迫った。逃げるオーガポンを毒の津波が飲み込む寸前、ミライドンに騎乗したハルトはオーガポンをすれ違いざまに抱えた。ミライドンは大きく跳躍し、毒の波を越えてスグリの所に降り立った。
「すげ……ミライドンは戦闘だけじゃなく、移動も得意なんだな! わやかっこいいべ!」
「ミライドンには勝負より、日常で助けてもらってるよ! オーガポン、大丈夫? 毒には触れてないと思うけど……」
「ぽに! ぽ、ぽに……❤️」
「──」
スグリは目にする。ハルトに抱えられるオーガポンがすりすりと体を擦り付けている姿を。そして知覚する。スグリはその光景に途方もない興奮を覚えていることに。
(あっ、な、なんで……ハルトのエッチを見た時みたいにムズムズする……!)
思わずうずくまってしまうスグリ。ハルトはオーガポンをゆっくりと下ろすと、スグリの方を見て慌てる。急に友達がうずくまっていればそうなるもので、ハルトはスグリに駆け寄り体調を気遣う。
「え、スグリどうしたの!? どこか具合悪い? 色々、薬持ってるけど使う?」
「ぽに?」
「いや、あ、大丈夫だから……あ、マシマシラが小さくなってる!」
スグリは異常な状態に自分を見られるのが恥ずかしく、ハルトの意識を逸らそうとして辺りを見渡す。その時、倒れていたマシマシラはどんどん小さくなり元のサイズに戻り始めた。そして息も絶え絶えに、マシマシラはどこかに逃走する。ハルトはスグリのことも心配だがお面のこともあり躊躇していると、マシマシラはお面を落としていったのを目にする。
「あれオーガポンのお面だ。きっと、いどのお面だと思う。ハルト、取ってきてオーガポンに渡して」
「う、うん。スグリはここで待ってる?」
「……そうする。大丈夫だから先に行ってて」
そう言ってハルトとオーガポンはお面を取りに行った。スグリは息を整えて、興奮を抑えようとする。昨日のスグリの懸念は当たってしまったのだ。スグリはハルトに徹底的に負かされ、ずっと憧れていた鬼さまことオーガポンが彼を好きになるのを目の当たりにした。これが決定打となり、スグリの脳は完全に破壊されたのだ。今までのスグリから進化を遂げ、新たな
(ダメだ、こんなの普通じゃないっ……! 好きな人が取られるのに興奮するなんて! ふぅ、ふぅ……!!)
スグリは自覚した自分の特殊性癖を押し殺そうとした。そうしてなんとかスグリはハルトとオーガポンが戻ってくるまでに興奮を抑制することに成功した。だが一度自覚してしまったものを完全に封じ込めることは難しく、スグリはハルトとオーガポンをよくない目で見てしまっていた。
「スグリ、いどのお面取ってきたよ! ほんとうに、大丈夫? なんていうか、その。ちょっと様子がいつもと違う感じだよ?」
「……大丈夫だから。ハルトはいつも通りにしててな。お面はあと二つ。油断するわけじゃねぇけど、正直ハルトと一緒なら負ける気がしない」
「う、うん。ボクも、そう思ってた! この調子で、キチキギスとイヌヌワンも退治しに行こうか!」
「ぽにお!」
スグリのどこかじっとりした眼差しにハルトは訝しむも、スグリの大丈夫だという言葉を信じ少しでも明るく振る舞おうとする。ハルトの声にオーガポンが跳ね回って応える姿をスグリはじっと見つめる。スグリの特性は止まることなく継続していた。
その後。スグリとハルトは難なくともっこを倒し二つのお面を取り返した。恐れ穴での戦闘で相手のタイプに毒が入っていることを看破していたのがやはり大きく、スグリのグライガーやハルトのハッサムの活躍でキチキギスとイヌヌワンは封殺された。先のマシマシラ戦の時みたいにオーガポンに攻撃されないよう、徹底して包囲して攻撃する暇を与えず戦ったことで事故もなかった。それからスグリとハルト、そしてオーガポンは意気揚々と村の近くまで戻りゼイユと合流する。スグリとハルトは村人への説得が上手くいったのか心配だったが、無事(?)に成功したようで村人達からオーガポンは謝罪を受けたのであった。
「誠に、申し訳ありませんでした……はぁはぁ」
「お、鬼さまごめんよー!」
「オーガポンちゃん可愛い!」
「これでオーガポンは顔隠さなくても村さ遊びに来れるべ……なんかみんな疲れてるように見えるけど」
「だね。もしかして、ゼイユに追いかけられたとか?」
「あー。ねーちゃんのことだからあり得そう……」
ハルトの予想は当たっており、村の何人かはゼイユに追いかけ回され説得されたということを後に二人は知ることになる。だがこれにより、オーガポンはいつでも村に遊びに来ていいことになったのであった。またともっこ達が持っていたお面も元々はオーガポンの持ち物ということで、これからもオーガポンが持っていていいと管理人から告げられた。これにてともっこ達の騒動は幕を閉じ、三人と一匹は帰路につく。
「それじゃ、取り敢えずオーガポンを家まで送っていこうか。ハルト、スグリ行くわよ!」
「りょーかい! 恐れ穴に出発ー!」
「わかった。オーガポン──」
「ぽにぽに!」
「オーガポンは元気いっぱいだね、ボクの周りを走り回られると歩きにくいよ〜!」
スグリがオーガポンに寄ろうとした時、オーガポンはハルトに引っ付くようにして移動を始める。スグリは差し出し掛けていた手を下ろし、彼と彼女を見つめる。以前の自分なら嫉妬していたであろう場面だったが、今のスグリはそれとは別の感情が芽生えていた。じっとり先に行くハルトに視線を向けていると、ゼイユがスグリに声を掛ける。
「あいつらますます仲良くなってるわね。あんたはいいの? 折角、ついて行かせてやったのに」
「いい。分かったんだ、オーガポンはハルトと一緒にいるのがいいんだって。それが一番なんだって」
「……そっか。あんたちょっと見ない間に変わったね」
ゼイユはスグリの髪をちょっと乱暴に掻いた。スグリはくすぐったかったが、素直にされるがままに受け入れた。もし彼が変わる前ならわがままを言って、ハルトとスグリはオーガポンを懸けて戦ったかもしれなかった。だがスグリの特性が変わった今、彼に戦う意志はなかった。ゼイユはそれを大人っぽくなったと見ていたが、真相がまた違うことを知るのは今からずっと後のことだった。スグリにとってオーガポンが大事な存在であることは変わっていない。ただそんな存在が別の誰かに奪われること、取られることに無上の快感を感じるようになっただけなのだった。
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恐れ穴についたハルト達はオーガポンを見送ろうとするも、オーガポンはハルトに大層懐いており離れようとしなかった。そこでゼイユはハルトが連れて行くことを提案した所、オーガポンは力比べだと言わんばかりに勝負を挑む。三つのお面をテラスタル──属性を変化させる力を操る姿は力強く、スグリが幼き頃に思い憧れた鬼さまに似ていた。
「すごい……これがオーガポンの本当の姿。それに立ち向かうハルトもわやすごい……やっぱし、敵わないな」
オーガポンはハルト達との冒険の思い出、昔日共に歩んだ男との思い出を胸にハルトの手持ちと接戦を繰り広げる。その激闘を前にスグリはもし今の自分がオーガポンに挑んだとて勝てるのか分からない、自分の力はまだ彼等には及ばないとは思ってしまう。羨望と己の無力を感じながらもスグリは力比べを見守る。やがて最後のお面が砕けオーガポンの素顔が露わになる。
「ハルト! オーガポン、力を出し切ったみたいよ! 今なら捕まえられるわ!」
「うん! オーガポン、これからも一緒に旅をしよう──ねっ!」
「あ、あぁ……」
スグリはオーガポンに目掛けて飛ぶモンスターボールを、目で追って手を伸ばしてしまう。まるで止めようとしているかのように。オーガポンの相棒になりたい気持ちが完全には消えていなかったから、スグリは手を伸ばしてしまったのだ。だが既に選択の時は過ぎ
さっており、ハルトの投げたボールにオーガポンはすんなりと収まったのだった。
それからのことをスグリはあまり覚えていなかった。ハルトがオーガポンを捕まえたのを祝い、捕まったオーガポンをボールから出し力比べの感想をゼイユと共に言ったような覚えが薄らとあった。憧れだった存在が他の人、とりわけハルトに捕獲されたのはスグリにとって強い衝撃だったのだ。スグリは内から溢れ出しそうな思いを必死に堪えて帰宅した。道中ゼイユに心配された覚えもあったが、スグリは上の空でとにかく一人になりたかったのだ。そして家に帰宅したスグリは部屋に篭ると、己の内で暴れる衝動を自慰でもって解放した。食事や眠ることすら放棄した全力のシゴキ。姉の情事、大人の女性の情事、そして憧れを奪われた光景で虚空に射精を行う。惨めで憐れだと自嘲してしまうそれでも何度も何度もスグリは自慰を繰り返した。
「はぁはぁ、ねーちゃん……ブライア先生……鬼さま、オーガポン……うぅぅっ!!」
精液が床に落ちないよう僅かに残った理性が働いて、出した精液をティッシュで包みゴミ箱に捨てては自慰を再開する。視界が”スパーク”するような眩暈、マーイーカのような独特な臭いに思考が澱むのを感じる中でもスグリは止まらなかった。途中、お爺さんやお婆さん、ゼイユがスグリの体調を気にして扉の前まで来たが、スグリは三人を決して中には入れず追い払ってしまう。スグリの寝取らせ癖の特性により増強された衝動は彼自身にも止められず、その日のスグリは絶頂の快感で気絶するように眠りについた。
そして翌日。スグリは体育の体力測定をした後のような全身の疲労感を感じていた。それに伴い途方もない喉の渇きとお腹が空いた感覚から、スグリは命の危機をようやく感じる。こんなことで死ぬわけにはと、這うようにして居間に行くとお爺さんやお婆さんに大層心配されスグリは平謝りするしかなかった。スグリはゆっくりと食事と水分を補給し、一息ついた所でお爺さんから話を切り出した。
「スグリよ。なんでもブライア先生の研究が進んだそうで、明日にでもブルーベリー学園に戻らないといけないそうだ」
「え、そうだったの? じゃあ、ねーちゃんがいないのは……」
「うむ。他の林間学校の生徒への説明とお別れを伝えにな。本当なら今日にでも戻るそうだったらしいが、スグリの様子が気掛かりだったそうで一日延期したそうじゃ。スグリや、色々悩むこともある時期なのは分かる。だがわしやばーさん、ゼイユはスグリの味方だ。何かあったら言うんだよ」
「……うん。分かった。今度は、心配掛けないようにする」
スグリはそう言うしかなかった。しかしまたあのような場面に遭遇したとしたら、スグリは自分を制御することが出来ないようにも思えた。それだけスグリの特性は根深かったのである。暫くして、落ち着いたのもありスグリは林間学校の生徒、一応自分のパートナーだった人に挨拶をするため家を出た。キタカミセンター近くにいたパートナーだった男の子は、寝込んでいたと聞いたスグリが元気そうで良かったと言い、続けて一日で終わらせたオリエンテーリングも辛かったが楽しい思い出だった語った。スグリは心優しい少年に深く感謝をし、今度会ったらポケモン勝負をする約束をしてから彼と別れた。いつかパルデアに行った時は彼に会いに行こうとスグリは心に刻んだ。
それからスグリは林間学校を経て避けては通れない彼──ハルトに別れの挨拶をするべく探すことに。パッと見は普通の少年に見える彼だがやはりその存在感は大きく、そこらにいる住人に話し掛ければ彼が何処に向かったというのはすぐに分かった。恐れ穴──かつてのオーガポンの住処の方に向かった聞き、スグリは再び恐れ穴に歩き出した。
恐れ穴前にスグリは音もなく忍び寄った。予想通りなら、彼等の邪魔をするわけにはいかないと思ったからだ。そしてスグリは自分の先読みが当たっていたことに、ここ最近よく聞く肌と肌がぶつかり合う音で確信する。
「フッー! フッー!! ゼイユッ、ゼイユッ!!」
「ン゛ッ゛❤️ ア゛ァ゛ッ゛❤️ ハル、トッ゛❤️ まッ゛❤️ ちょっとッ゛❤️ ま゛ちなさ──ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛❤️」
「ぽにお❤️ ぽにお❤️」
まるで犬ポケモンのように地面に両手を付き尻を振り回すゼイユ、そんな彼女にこれまた犬のように覆い被さり腰を振るハルト。最早二人ではなく犬ポケモンとかした二匹の交尾がそこでは行われていた。今まで見たハルトとは打って変わった性交にスグリは唖然とする。だがそれも束の間、スグリは先程のお爺さんの話を忘れたかのように自慰を始めてしまう。
ゼイユはそのスラリとした長身を地に伏せ、後背から突き上げられる快楽に身をよじる。だがそれを許さないとでも言うように、彼女より頭一つ分は小さいハルトが彼女の腰にしがみ付き”がむしゃら”に腰を振っていた。その理性をかなぐり捨てた性交に至った理由をスグリは考察し、そして二人の近くにいるオーガポンの影響だと推測する。オーガポンの動きにスグリは見覚えがあり、ダブルバトルが盛んなブルーベリー学園で稀に見る技を使っていたのだ。”てだすけ”と”アンコール”、この二つの技でオーガポンは二人の性交を盛り上げていたのだ。
「ごめんゼイユっ、腰止まんない……っ! オーガポン、そろそろ止めっ──!」
「ぽーにー❤️」
「イクッ、またイッちゃうッ゛❤️ いァ──あ゛ぁ゛ぁ゛ア゛ァ゛ッ゛ッ゛ッ゛❤️❤️❤️」
ゼイユの全身が震え、彼女は秘所から最大威力の”しおふき”を上げる。同時にハルトも射精をしたようで、彼女に全身で抱き着き射精を行っていた。入りきらない精液がゼイユの潮吹きと混じり、オーガポンの住処をマーキングする。それだけ終わればはまだ良かったが、スグリは見てしまう。ゼイユの潮吹きに混ざる薄黄色い液体を。そのまま倒れたゼイユは全身を震わせながら、汗やら唾液やらを流しながら恍惚とした表情を浮かべていた。そのことをスグリは墓まで持っていこうと固く誓った。見ていたことがバレたらなら何をされるか分かったものではないからだ。
スグリが姉に同情をしていると、ハルトのそそり立つ肉棒をオーガポンがお掃除するかのように咥えていた。1.2mほどの小さな体、小さな口だというのに慣れたようにオーガポンはハルトの肉棒をしゃぶっていた。その事実にスグリの肉棒も否が応でも反応してしまう。スグリはこの光景を決して忘れないと目を見開き凝視する。
(っ~~!! オーガポンに口でしてもらうなんてっ……! オーガポン、オーガポン!! うっ、うぅぅぅ~~!!)
「う、ぁぁぁっ! オーガポンのフェラ、やばっ……!」
そしてオーガポンは一しきり舐め終わると、ハルトに肉棒から口を離す。だがその星のような瞳は期待するような、”あまえた”目でハルトを見る。男を誘う女のそれはスグリの思い描く鬼さまとは懸け離れており、その事実すら今のスグリの興奮を加速させる秘伝スパイスとなっていた。スグリは昨晩から何度目か分からない射精を岩肌に飛ばす。普段なら”じゅうでん”が必要だが、憧れだった鬼さまならぬオーガポンの痴態を前にスグリの肉棒は即復活していた。その間にハルトはオーガポンを抱えるように引き寄せていた。
「オーガポンがこんなに悪戯っ子だったとは思わなかったよ。ならボクもちょっとワルくなろうかな。覚悟してね、オーガポン!」
「ぽに~❤️」
それからの出来事はスグリにとって未知の光景であり、これ以上はないというくらい感情を掻き立てる情交だった。人とポケモン。種族の差など関係ないというように互いの愛を交わすそれは、忌避するべき蛮行と言われてもおかしくない所業なのだろう。それこそかつてイッシュ地方で活動していた、プラズマ団やアローラ地方に拠点を構えるエーテル財団等は認めないだろう。だが、今のスグリにとってはハルトとオーガポンの交わりは、これまでにない最高の快感を齎していた。スグリはハルト、ゼイユ、オーガポンの三匹の獣が交わるのを覗き、彼等が帰るまでその場で自慰をしていた。スハルトに別れを言いに来たというのに、彼に合わせる顔がなくスグリは岩を背に座り込んでいた。
(はぁ、はぁ……なに、やってるんだろうおれ)
心配掛けないようにすると言ったというのに、スグリは友達、姉、憧れの存在が交わるのを覗き見てシコり疲れていた。スグリは今の自分がとても情けなく惨めに思えた。ハルトや鬼さまのように強くなりたい、そう思っていたのに今のスグリは思い描く強さとは真逆のことをしていた。スグリは思う。このままでいいのかと。
(心配掛けないように、強く、ならないと……ハルトみたいにはなれないとしても、こんな陰でコソコソしないでいられるくらい強く……!)
スグリは当初の目的を思い出す。鬼さま──オーガポンではなく一人でもへっちゃらな理想の存在みたいに強くなるのだと。ハルトと友達になったが、それとは別に彼に勝ちたい思いは消えていない。彼に一生負け続けるなんて嫌だった。スグリはべたついた手で髪をかき上げる。今までの自分と決別するために。
「待っててな、ハルト。おれは、俺はもっと強くなる。ハルトに勝って、惨めな自分を変えてやる……!」
こうしてスグリはブルーベリー学園に戻ることになる。学園に戻ったスグリは今までの自分から変わろうと自分もポケモンを追い込み、ただひたすら強さを追い求めた。己の目覚めた特性を忘れようと、変えようと必死にもがいたのだ。その成果が実を結んだのかどうか、その結果は──
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スグリは目を覚ます。どうやらあの後、気絶してしまったのだろう。皆が心配そうに自分を見ていた。そこでスグリは気絶していた間、彼女に膝枕をしてもらっていたのだと気が付いた。最愛の彼女が自分をじっと見ていた。
「こんばんは、スグリ。よく眠れましたか?」
「ああ、うん。よく眠れた、ネリネの膝枕のおかげかも。ありがと」
「スグリにならいつでもします。その、恋人、ですから……」
そういって彼女は眼鏡を曇らせながら呟いた。鉄仮面というほど無表情な彼女が、自分に時折見せる赤裸々顔を心の底から愛おしくスグリは思う。そうして見つめ合っているとネリネは思い出したようにスマホロトムを取り出す。
「……それと。スグリが気絶してからも撮影は続き、時間にして37分の動画があります。ネリネの”ねとれせ”、ご覧になりますか?」
「──うん。ネリネがハルトにめちゃくちゃにされるの見たい」
進化する前なら変われたかもしれない。だがスグリの脳は破壊され、進化してしまった。これによりスグリの特性は寝取らせ癖で完全に固定されてしまった。カプセルやパッチでも変えることの出来ない、愛おしい人が他人にめちゃくちゃにされることで悦ぶデメリット特性に。たった一つの選択肢を違えただけでスグリの運命は大きく変わってしまった。
スグリの受難はまだまだ続く……?