※この作品はR-18です。

原作崩壊のNTR小説   作:pace

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刻まれる慕情、変わらぬ愛情

 藤丸立香は、自身の机に向かって静かに息を整えていた。手元には鋭い彫刻刀と、滑らかな樹脂の塊がある。彼はカルデアでの余暇を利用して、小さな人形——いわゆるフィギュアの原型を削り出していた。室内には、刃先が素材を削る微かな音だけが響いている。その背後では、白銀の髪を揺らした少女、ガラテアがじっとその手元を見つめていた。彼女は彫像から命を得た存在であり、その瞳は造形の本質を見抜く力が備わっていると立香は感じていた。

 

「ふぅー……」

 

 立香が小さく息を吐き、細かな凹凸を整えるために指先を動かした。首筋を伝う汗を拭うことも忘れ、彼は無機質な塊の中に命の形を見出そうとする。カルデアに来た当初は素人同然だった彼の手つきも、今では迷いが消え、確かな意図を持って素材を御していた。ふと。背後から凛とした、しかし温かみのある声がかけられた。

 

「ふむ。素晴らしい集中ぶりです、マスター」

 

「はふー……ガラテアやメディアさん、二人から受けた指導のお蔭かな。まだ途中だけど、ちょっと見てもらってもいいかな?」

 

「構いません。失礼しますマスター……ん」

 

 立香はガラテアの率直な感想に感謝し、二人の師のお蔭だと伝える。ガラテアは少しだけ身を乗り出し、立香が作り上げた造形物の曲線を確かめるように目を細める。彼女のアクアマリンのような瞳が爛々と輝くさまに、立香もまた期待を裏切らなかったかと、固唾を飲んで見つめていた。

 

「この繊細な表情、そして重心の捉え方……。我が友人であるメディアは、今のあなた様より優れた技量を持っています。ですが。あなた様の作品には、彼女の愛でる熱とは違う、本物に近付けたいという猛る熱が宿っているのが伝わってきます。瑕疵もない最高のものでなくてはという、私のこだわりに通じるひたむきさ。とても素晴らしい出来だと存じます」

 

「ガラテアにそう言われると嬉しいよ! ただ、我ながらまだまだ粗が目立っているなって思うよ。一か所仕上げるのにも、時間がすごいかかっているし」

 

 立香は苦笑しながら、肩の力を抜いた。憧れの対象である彫像の乙女に褒められるのは、面痒くもあり、同時に誇らしくもあった。ガラテアは立香の謙遜を聞き、首を横に振って否定した。それこそが重要だと言うかのように。

 

「いいえ。その一手間こそが重要なのです。あなた様が彫刻に向き合う姿勢は、我がピグマリオン王をどこか彷彿させます。もちろん、私にとってあの方は唯一無二の存在であり、決して同一というわけではありませんが。ともあれ、今のままで良いと私は思いますよ」

 

「そっか。しかし、ピグマリオン王を彷彿とさせるかぁ。今のオレじゃ……いや。ピグマリオン王には、決して届かないだろうなぁ」

 

「むふー。彼の王は偉大であるのは当然です……が。マスターもあまり落ち込まないでください。先に言った通り、よく出来ていますよ。私のフィギュアを作りたいと言われた時は驚きましたが……不思議と、嬉しく感じています」

 

 ガラテアはそう言って、淡い青の色彩を宿した瞳で立香を見つめた。彼女にとって、女として愛を捧げるのは永遠にピグマリオン王ただ一人である。しかしこの平穏なマイルームで立香と共に過ごす時間は、彼女の冷たい象牙の肌を内側から温める心地よい充足感に満ちていた。それが自分のフィギュアを作るためとあらば、ガラテアの声も弾むのであった。

 

「いやぁ、気色悪いって言われなくて良かったよ。その、最近付きっ切りな気がするけどいいの? ガラテアもやりたいことあるんじゃ?」

 

「問題ありません。私もマスターが素材回収作業に赴いている間、バーヴァン・シー様やアンドロメダ様とシミュレーターを利用することがあります。それに、私はマスターと共にいたいのです。嫌、でしょうか?」

 

「ま、まさか! ガラテアが傍にいてくれるほど心強いことはないよ! あ、ごめん大声出しちゃって。ガラテアが嫌じゃないなら、これからも見ててほしいな」

 

「はい。私はあなた様をずっと見ていますよ」

 

 そう言ってガラテアは立香を暖かく見守るのであった。作業の最中、立香はガラテアを横目で見ながら、1/6スケールの彼女を造る作業を続ける。だが立香は、隣に座る彼女の存在を意識せずにはいられなかった。微かに漂う、キプロスの潮風や香油を思わせる高潔な香り。そして視線を交わさずとも伝わってくる、彼女の深い信頼の眼差し。それらが、立香の意識を彼女に引き寄せていた。

 

 召喚された時に、彼女は立香に対してピグマリオン王と同じ愛を持っていると口にしていた。確かに、立香はフィギュアに対して強く興味を持ってはいた。それを見抜いての発言だったのだが、今やその言葉は別の意味を持つようになっていた。立香もまた、ピグマリオン王と同系統の感情を彼女に抱いていた。叶わない、変えられないと分かりながらも、立香はガラテアに愛情を抱いていたのだ。

 

 ──────

 ────

 ──

 

 作業の合間。机の上に置かれた作りかけの人形を眺めながら、立香とガラテアは暫し穏やかな団欒を分かち合う。メカエリちゃんとの大がかりな制作物の話、バーヴァン・シーやアンドロメダに連れられてシミュレーターで靴や服を買いに行った話を聞き、マスターである自分すら知らない物語を紡いでいることに心が温かくなるのを感じていた。そんな時、ガラテアは作りかけのフィギュアをじっと見ると、紅茶を一口飲んでから語り出した。

 

「マスター、あなた様の技術は確かに向上しています。特に表情や服、武器の形成には目を見張ります。ですが、さらに高い次元を目指すのであれば……女体というものへの本質的な理解を深めることが、今のあなた様には必要かと存じます 」

 

「にょ、女体か……ううん」

 

「マスターは、カルデアの女性サーヴァントに大変好かれていると感じています。ですが、踏み込まれるのをやんわりと避け、距離を取るようにしていますね?」

 

「それは、まあ、否定出来ないな……」

 

 実際、立香はカルデアにおいて多くの女性サーヴァントから、並々ならぬ好意を寄せられていた。しかし、彼女たちの情熱的なアプローチを、無自覚にあるいは意識的に回避し続けていた。それゆえ年相応の異性への好奇心はあっても、生身の女性の身体が持つ質感や、その複雑な構造についての肉体的な知識は極めて乏しかった。

 

 ひとえに立香がカルデアの美女達に言い寄られても回避し続けたのは、目の前にいる彼女の存在が大きかったからだ。けれどもそれを、彼は口に出来なかった。彼女の霊基には深く偉大なる王の存在が刻まれており、それを変えることは出来ないと悟っていたからである。故に立香は初恋を胸に秘めたまま、他の女性サーヴァントの想いには応えられないと今に至っていた。ガラテアは押し黙る立香に口を開く。

 

「女性特有の肉の柔らかさ、皮膚の下に流れる熱、そして触れた際に生じる僅かな変化。これらを魂に刻まねば、真に命を宿した造形は生まれません。幸いにも、ここには私がいます。あなた様の研鑽のため、私を使ってください」

 

「──えっ!? いやいや、ちょ、ちょっと待ってガラテア! 今すごいこと言わなかった!?」

 

 ガラテアは淡々とした口調ながらも、どこか有無を言わせぬ迫力を持って距離を詰めた。ピグマリオン由来の狂気を身に宿す彼女は、生粋のバーサーカーである。一度決めた目的へと突き進むその意志は、岩をも通すほどに強固である。立香が手を前に出して落ち着かせようとした所、その腕を掴んでガラテアは立香を捕らえたのであった。

 

 彫像の性質を持つ彼女の身体は、意志一つで鉄をも凌ぐ硬度を得て戦いに赴くが、今は立香の指を優しく受け入れるかのように、驚くほどしなやかで柔らかかった。水着のような軽装から剥き出しになった肩や太腿の、非の打ち所がない白磁の肌が室内の明かりを反射して艶めかしく照り光っていた。

 

「何故拒まれるのですか? 瑕疵のない、最高のものを作るための一手間です。遠慮なさらなくて良いのですよ」

 

「いや遠慮するよっ! ガラテアは、オレなんかが汚していい人じゃ……!!」

 

「汚れ? あなた様に触れられて、汚れるなど思いもしません。マスター、これはあなた様が真実の愛に辿り着くための必要な工程なのです。さあ、私に触れてください」

 

 ふんわりと。彼女の吐息が立香の頬を掠めた。そこには彫像にはあるまじき、熱を帯びた生身の女としての香気が混じっている。立香は彼女を止めようと肩に手をかけたが、指先から伝わってくる、人間よりも僅かに重く、それでいて吸い付くような肌の感触に、言葉を失った。ガラテアの瞳は、揺らぐことのない純粋な親愛と、芸術への狂気にも似た探究心を宿し、至近距離から立香を射抜いていた。その迫りくる美貌と、逃れようのない肉体の重圧の前に、立香はただ息を呑むことしか出来なかった。

 

 そしてガラテアは立香の手首をその細い指先で拘束すると、抵抗を許さぬ力強さで、自身の肉体へと導いた。彼女は立香の掌を、自身の太腿へと押し当てた。水着のような薄い布地を越えて、直接触れ合う肌。彫像の性質を持つ彼女の肉体は、立香の体温を吸い上げるようにして、急速に柔らかさと熱を帯びていく。指が吸い付くようなしなやかな肉の弾力は、視覚的な白磁の硬質さを裏切り、豊かな生命の躍動を伝えてくる。

 

「まずは、私の土台となる部分を。脚とは、命を支える大黒柱。その肉付きを、しかと確かめてください」

 

「ッ……!! これが、ガラテアの太腿っ! スベスベしていて、柔らかい……」

 

 立香が太腿に指を震わせ、ガラテアは撫でまわすように手を動かした。立香の足腰はマスターとして様々な土地で行動するため鍛え抜かれていた。ある時はアメリカ大陸を横断することもあったし、日々トレーニングで足腰を鍛えていた。そんな己の鉄の如き肉体と違って、ガラテアのそれは元が象牙とは思えない柔らかさで包み込んだ。瑞々しく、強く押し込むほど反発するそれは、立香の指先から心に女体の素晴らしさを刻み込んだ。

 

「覚えましたか? では次にいきましょう……生命の源。中心となる部分です。目より先に手が肥えることはありません。しかと見て、触れてください。我がマスター……」

 

 ガラテアは逃がさないと言わんばかりにその手をさらに上へと滑らせた。導かれた手は、露わになった腹部へと辿り着く。引き締まった腹筋のライン、その中央に刻まれた臍の窪み。神話曰くピグマリオン王と数人の子宝に恵まれた彼女の腹部は、とても身ごもったことがあるとは思えなかった。立香の指先がその繊細な起伏をなぞるたび、ガラテアの腹部が微かに熱を帯び、呼吸が僅かに速まる。人間であればくすぐったさに身をよじるような愛撫であっても、彼女はそれを学習という名目のもとに、真っ向から受け止めていた。

 

(ガラテアのお腹……こ、これ以上は駄目だ!)

「も、もう十分だよ! 女性の体についてよく分かったよ……!」

 

「いいえ、まだ足りません。女体においてここは避けて通れません……私のはやや控えめですが、参考にはなるかと」

 

 立香の頭の中は混乱の最中であった。今までに経験したことのない濃厚な女体の香りと、掌から伝わる情報の奔流によって真っ白になろうとしていた。動揺を隠そうと立香はガラテアにもう十分だと口にしたが、彼女の瞳に宿る、冷徹な指導者としての眼光と熱い親愛がそれを遮る。ガラテアは立香の手を、そのまま自身の小ぶりな胸へと押し上げた。手のひら全体で包み込むようにして触れたその部位は、驚くほど柔らかく、そして暖かった。掌の中で形を変えるたおやかな双丘。立香の指先が、その中心にある僅かな突起の硬さを感じ取った瞬間、ガラテアの口元から、密やかな音が漏れた。

 

「っ……ふ、ぅ……どう、でしょうかマスター? これが女性の胸ですよ」

 

「が、ガラテア……っ!!」

 

 それは、普段の彼女からは想像もつかない、湿り気を帯びた熱い吐息だった。彼女の表情は、依然として彫像のように静謐なままである。しかし、その白い項や頬は、内側から滲み出る情動を隠しきれず、薄桃色へと染まっていた。アクアマリンの瞳が僅かに潤み、焦点を合わせようとして揺れている。指先から伝わる心臓の鼓動が、二人を繋ぐ熱の中で激しく共鳴していた。立香は、自身の理性がその肌の滑らかさに溶かされ、彼女という美しい彫像の中に、深く、深く沈み込んでいくのを自覚せざるを得なかった。溶けた理性によって立香の獣性が目覚め始め、ズボンを押し上げるのをガラテアは目に留めていた。隆起した股間部を見られていることに気付いた立香は、叫ぶようにガラテアへ謝り続ける。

 

「ご、ごめん……! 本当に、ごめん……!! ガラテアの献身を無下にしちゃって。邪な想いを抱いてしまって……ごめんっ」

 

「んぅ、ふっ……そんなに、謝る必要はないですよ。むしろ健全なことが確認出来て、私は嬉しく思っています。マスターはあまりに性的欲求が薄いと感じていたので」

 

 ガラテアは薄く微笑みながらそう言うと、空いている手を立香の股間に這わせる。ゆっくりと撫で上げられ、全身の産毛が立ち上がるような、えも言われぬ刺激を全身で感じた。そしてベルトに手をかけたので、刺激にどもりながらも立香はガラテアの真意を伺う。

 

「が、ガラテア!? 何を……!?」

 

「そのような状態では学ぶ所ではないでしょう。心身共に満たされてこそ創作活動に精が出せるというもの。マスターの性欲処理、私が手伝わせてもらいます」

 

「ちょ、待っ──ッ!!?」

 

 ガラテアによってずり降ろされたズボンと下着。飛び出すは肉で出来た太く厚い鑿だった。彼女の目は大きく見開かれ、頬に朱がより濃く差した。表情こそさして変わっていなかったが、長年の付き合い故に立香は、ガラテアがひどく驚嘆しているのに気が付く。だがガラテアは淡々とした様を崩さず手を伸ばし、立香の逸品たる肉棒を優しく掴んだ。ほどよい力加減に、あどけない少女のような姿をした彼女が人妻だということを思い出す立香。ゆっくりと手を動かすたびに立香は声を漏らしてしまった。

 

「ぐっ、あぁぁっ……!! ふぅ、ふぅ……ガラ、テアっ!」

 

「私は我が王のモノしか知りませんが、あなた様の男根も逞しく立派ですね。奥深くまで彫れる柄の長さたるや。雁首は深く鋭く、何より濃厚な種を生成するのが一目で分かる大きな陰嚢。これなら、どんな女性でも満足させられるでしょう。あなた様といずれ出会う真実の愛が、少しだけ羨ましく思います……」

 

「ッ~~~~!!!」

 

 ガラテアは立香の剛直をしごきながら、耳元で彼の性欲を煽るような口上を囁く。男心を擽る言の葉は普段の清廉なガラテアからは想像が出来ず、彼女の一言一句が立香の性欲を駆り立てる。また手コキの心地よさは言うまでもなく、これまで己が雑にしてきた自慰と比べるまでもなかった。彼女の彫刻にもいかされる優れた観察眼が立香の瞳孔の揺れ、息遣いの変化、肉体の震えを見逃さず、生かさず殺さずの快楽地獄を立香の肉棒へ与えていた。

 

 普段は鑿を振ることにいかされる十指が剛直を這いまわり、右の手は柔らかな快感で亀頭を擽り弄び、左の手は激しく上下し、時に陰嚢を揉みしだく。立香を題材に新たな作品を造り上げようとしているような手さばきに、立香は激しく呼吸を繰り返し快感に打ち震えていた。際限なく高まる快楽に立香は失神するかと思うほどの意識の跳躍を感じた所で、ガラテアはその限界を見極めていたかのように立香の精を一気に解放した。

 

「うっ、ガッ──あ゛ぁぁぁぁっっっ!!!」

 

「んっ。これは、凄まじいですね……」

 

 咆哮と共に発射された精液の奔流。ガラテアの頭上近くまで噴き上がり、彼女の身へと白濁の雨が降り注いだ。ガラテアは立香の精液の量に驚きこそすれど、頭上からぶっかけられたことには動揺を見せなかった。これまでの絶頂の記録を塗り替える最高の射精を享受しながら、立香は遠慮なく射精してしまったことで汚したガラテアを案じる。

 

「はぁ、はぁ……ごめん、ガラテアっ……!! 我慢しきれず出しちゃって、汚しちゃった。謝っても謝り切れないけど、と、とにかくシャワーを……!」

 

「構いませんよ、マスター。シャワーなどしなくても、霊体化すれば普段通りになりますから。もし、マスターが嫌でなければこのままで続けますが」

 

「え、えっと。オレは大丈夫だけど……続ける?」

 

「問題ないようですね……ちょうど、鳥達も戻ってきたようです」

 

 そう言ってガラテアの視線の先に立香も目を向けると、ガラテアが宝具を使用した際に飛び立つ鳥達が複数の箱を運んできていた。立香はその銀の箱を、かつてカルデアのスタッフに見せてもらったことがあった。カルデアという閉鎖空間ではこういう物も必要なんだとそのスタッフは語っていた。避妊具、所謂コンドームの箱が鳥達によって運ばれていたのだった。

 

「では続きをしましょう。まだまだ、元気が有り余っているようですから。ふ、出会って間もない頃の王を思い出します。女体のなんたるかを、私がしかと教授させていただきます」

 

「ぁっ!! ま、待って、ガラテアっ! これ以上先はマズイでしょ……!」

 

 ガラテアは立香を押し倒すと彼の上に躊躇なく跨った。小柄な彼女に冷ややかさと熱を孕んだ目で見下ろされ、彫像の性質故にずっしりと感じる彼女の重さを一身に感じる立香。運ばれてきた箱と体勢が、これから何をするのか言葉にするまでもなく、雄弁に立香へと語りかけていた。期待に逸る本能をねじ伏せ、立香はこれ以上は駄目だと声にする。だが立香の葛藤を受けても、ガラテアは涼しげな顔で首を傾げる。

 

「マズイ、でしょうか? ああ。もしや自分で動く方がよろしかったですか? それとも、初めては愛する人がいいということでしょうか。それでしたら、私も納得しますが」

 

「いっ──いや、そういう話じゃっ! ガラテアは、ピグマリオン王の妻だ。カルデアに来て、オレのサーヴァントになってくれたとしても、その事実は変わらない。お、オレなんかが、二人の間に割って入るような真似をしていいはずがないんだ」

 

 立香の言葉は、誠実さゆえの拒絶だった。彼は知っている。彼女がどれほどの愛によって命を授かり、どれほどの純潔を捧げてきたのかを。自分のような若輩者が、神話に刻まれた愛の結晶を汚すことは、冒涜に等しいのではないかという恐怖。そして立香自身、ガラテアへの淡い恋心を自覚してそれを望む醜い心を断じるための宣言だった。だが、ガラテアは表情一つ変えず、ただ首を左右に振った。

 

「あなた様は、やはり優しい人ですね。ですが、その懸念は不要です。私の存在の根幹にある、王への愛が揺らぐことは絶対にあり得ません。そして今の私はあなた様の呼びかけに応じ、この地に現界した一人のサーヴァントでもあります。未熟な私に腕を磨く場を与えてくださっていること、分不相応な願いを否定しないでくださっていること。あなた様と共に過ごし、造形を語り合った私だからこそ思うのです。自らの意志であなた様を教え、導きたいと」

 

「ガラテア……」

 

「私と同じく理想を造りたいと思うあなた様を、かのピグマリオン王と同じ至高の領域に少しでも近付けさせたい。この行為は、きっとあなたの糧になると私は信じています。ですから受け入れてください。我がマスター」

 

 ガラテアは、立香の手に自らの掌を重ね、ゆっくりとその拘束を解いていく。彼女の指が立香の指の間に滑り込み、深く絡み合った。象牙の如き白さと、陽に焼けた少年の肌色が、対照的な色彩を描いて重なる。そこにあるのは肉欲に支配された感情ではなく、深く信頼し合う友好を分かち合うような想いであった。彼女の言葉には、狂気にも似た一途な断定が含まれていた。彫像として生まれ、神の加護を受けた彼女にとって、愛とは多層的であり、同時に絶対的なものなのだろう。

 

 立香は彼女の瞳に宿る、圧倒的な意志の強さに言葉を失った。拒絶の言葉を紡ごうとした唇は、彼女の吐息を間近に感じて微かに震える。だが立香はついぞ話していなかった、本音が口から溢れ出したのだった。

 

「っ……!! が、ガラテア。その、今まで言えなかったんだけど……。オレはガラテアやピグマリオン王とは違うんだよ。理想を造りたいってわけじゃないんだよ」

 

「違う? それはどういう……」

 

「オレは自分の中にある理想じゃなくて、今ここにいるガラテアが……好きなんだ」

 

 立香はどこか後ろめたく思っていた、ガラテアへの想いを告白した。瞬間。彼女の目は大きく見開かれ、頬に朱がより濃く差した。表情こそさして変わっていなかったが、長年の付き合い故に立香は、ガラテアがひどく動揺しているのだろうと感じた。立香はガラテアの手が緩んだのもあり、手を引っ込めながら話し出した。

 

「確かにガラテアと会う以前はリアルじゃない、二次元の女の子に惹かれていたんだ。オレって男子校の出身だし、あんまり現実の女の子に慣れていなかったというか、惹かれなかったというか。けど、ガラテアが召喚されてから変わっていったんだ」

 

「私が、召喚されてから?」

 

「うん。最初は料理がきっかけだったな。今でこそカルデア食堂もたくさんの人がいるけど、最初期は少なかったからさ。ガラテアが料理を作ってくれて、すごい美味しかったのが印象に残ってる。王様関係者が料理上手って意外だなって。ブーディカさんとかも手慣れていたけど、ガラテアの料理が特に好きで、それから意識し始めたんだ」

 

 立香がカルデア最後のマスターとなってから、すぐに召喚されたガラテアとの思い出を想起した。今でこそ厨房に立つのは珍しいが、当時はタマモキャットやエミヤ等のカルデア食堂の常連がまだ召喚されていなかったのもあって、彼女が厨房に立つこともあったのだ。彼女はピグマリオン王の方針もあり、家臣に任せきりにならず、自ら家事スキルを身に付けていたので参加していたのだ。そうしてカルデアで披露した料理が、異性を苦手としていた立香の胃袋を掴み、彼から意識されるようになったのであった。

 

「ガラテアと特異点を修復したり、造形を教えてもらったりしていくうちに、ガラテアのことがどんどん気になっていた。この人と傍にいたい、もっと知りたいって思うようになってたんだ。ガラテアからすれば、迷惑な気持ちだろうから黙ってたんだけど……」

 

「迷惑とは感じていません…………ですが。マスターも知っての通り、私の夫はピグマリオン王です。あの方への想いが揺らぐことはあり得ません(・・・・・・)。ですから。マスターの想いには、応えられません」

 

「まあ……そうだよね。ごめんね、こんなこと聞かせちゃって、出来れば忘れて──っ!?」

 

 立香は確信していたことだが、熱のこもった告白をしてもガラテアの、ピグマリオン王への愛は揺るがなかった。ガラテアの言葉を聞いて立香は納得したような表情を浮かべ、ここで止まれたことに安堵する。立香は名残惜しいが二人きりのフィギュア制作はこれで終わりだろうなと思っていると、ガラテアが起き上がろうとする立香を再び押し倒したのであった。

 

「が、ガラテア!? な、なんで……?」

 

「? まだ終わってないからですが」

 

「終わってないって……ちょ、なんでコン──避妊具を出してるの!?」

 

「マスターの想いは分かりました。私はそれに応えることは出来ませんが、あなた様に女を教えるという事項に支障はないと判断しました」

 

 ガラテアは承諾の返事を待つことなく、用意した薄い膜を手に取っていた。ゆっくりとした動作で立香の熱を帯びた剛直へとそれを被せていく。彼女の指先が、隆起した血管の感触をなぞるように動き、先ほど放ったばかりだというのに再び猛々しく反り立つ肉棒を慈しむ。

 

「っ……! まって、本当に待ってっ! だから、これ以上は意味がないんだって! オレは、二人のように崇高な想いがあって彫刻をしていたんじゃないんだ! もう辞めに……!」

 

「ええ、しかと聞きました。あなた様が私と同じように理想を追い求めているわけではなかったのは、とても残念な気持ちです。しかし、それであなた様への好意がなくなったわけではありません。私があなた様の手解きをしたいという意思は、まだこの身に宿っています。ならば止まる理由はないでしょう」

 

 ガラテアは立香が自分と同じ、真実の愛に辿り着こうとしているわけではないことを残念がる。しかし。同じ理想を目的にしていなかったとしても、自分が立香の初めてとして彼を高みに導きたいと。ガラテアは静かに、けれども人の熱さを感じさせる息遣いで語った。そこにあるのは本当に親愛だけなのか、この場にいる二人にも確実なことは判別出来なかった。

 

「ふふ、これほどまでに熱く、硬く……。私の指を跳ね除けんばかりの力強さ。あなた様の肉体は、まさしく命の躍動そのもの。この造形美を、私の内側で直接、記録させていただきます。そしてマスターも、私という女で新たな境地を知ってください。私ではない、いずれ寄り添う人のために……」

 

「ぁ、ぁっ……!!」

 

 ピンク色のゴムに包まれた剛直を鷲掴みにされ、立香はガラテアに抗う気力を削がれ、彼女を見上げてしまっていた。ガラテアは自身を包んでいた僅かな布地を、無造作に横にずらした。露わになったのは、神が命を吹き込んだとしか思えない、完璧な曲線を備えた秘裂。彼女はゆっくりと腰を上げ、立香の腰の上に跨った。ずっしりとした、しかし不快ではない独特の重量感が立香の下腹部にのしかかる。それは彼女が人であると同時に、彫像であることを思い出させる確かな質感だった。

 

「では、失礼いたします。んぅ……あっ、ふぅ~~……!!」

 

「っ、は、入る……!! ガラテア、の……なかにっ!」

 

「あぁぁ……。ゆっくりと、奥までぇっ。んんぅ……あなた様の太い鑿が、私の、狭い通路を押し広げていくのが分かりますっ。どう、でしょうか? 私の……この肉の締まりは」

 

 彼女が重心を下ろすと、熱い先端が彼女の入り口に触れた。瑞々しい粘膜が、異物を迎え入れるために僅かに開き、熱を放つ。立香は、逃げ場のない快楽の予感に腰を震わせた。視界が揺れ、彼女の白い肌が、室内の照明を反射して真珠のような光沢を放っているのが見えていた。結合の瞬間、ガラテアの頬により濃い朱が走った。普段の彼女からは想像もつかない、苦悶と悦楽が混ざり合ったような溜息。彼女の内壁は、彼女が彫像であるのを忘れさせるほど、生きている女としての弾力と粘着に富んでいた。立香の逞しい剛直を、一分一厘の隙間もなく吸い付くように締め上げていく。

 

「くぅっ、あ、はぁ……っ! すごい……ものすごく、熱いよっ。それに、とても柔らかいっ。こんなに自慰とは違うなんてっ! 気持ちいいよ、ガラテア……!」

 

「ぁ……それは、良かったです。ん、んんぅっ! ふふ……今、あなた様を、根元まで飲み込みました。私の奥の、一番深いところっ。王の子を宿した、神秘が宿りし宮殿に……あなた様が、触れている。ええ、なんというか……この、侵略されるような感覚。ふっ……悪く、ありません」

 

 ガラテアは、立香の胸に手を突き、上半身を反らせた。小ぶりながらも形の良い双丘が、彼女の呼吸に合わせて激しく上下する。立香は、彼女の腰を両手でしっかりと掴んだ。指先が彼女の柔らかな肉に食い込み、その境界が曖昧になっていく。暫し二人は初めての快感と、久しぶりの快感を堪能していた。そしてガラテアはゆっくりと腰を動かし始めた。彫像の性質を併せ持つ彼女の身体は、人間の限界を超えたしなやかさと強固さを自在に操り、立香の感覚を執拗に攻め立てた。

 

 ガラテアは表情を崩さないように努めていたが、その瞳には隠しきれない熱情が宿り、アクアマリンの色彩が激しく明滅していた。 立香の鼻孔を突くのは、彼女の身体から立ち上がる花を思わせる香水と、生命の営みが混ざり合った芳醇な香りだった。 立香は、彼女の重みを腰で受け止めながら、自身の楔が彼女の深淵へと一寸ごとに刻まれていく感触に、気を失いそうなほどの充足感を覚えていた。

 

「ガラテア、すご……い。オレ、どうにかなっちゃいそう……っ」

 

「んっ、あぁぁっ! 恐れることは、ありませんっ。ぁっ! ここっ……ここを突かれると、私の芯が震えるのが分かりますか……っ?」

 

 ガラテアは、自身の肉体が最も激しく反応する場所を教えるように、腰の角度を微妙に調整しながら、立香の身体を導いていく。いずれ立香が巡り合うであろう理想との行為において、不備がないよう夫である王のように彼を強く、逞しく、優しい雄へと成長させたいと。彼女の手は立香の胸板に添えられ、その激しい鼓動と、彼の熱情を直に感じ取っていた。 立香は彼女の指導を深く聞き入れ、理解して腰を突き上げた。

 

「こう、かな……っ!」

 

「ンッ、あぁぁっ!! そうっ! そうです、マスター……! あ、はぁぁっ……! 完璧な、一撃です……っ!」

 

 立香が彼女の教え通りに深奥を突くと、ガラテアの喉から、これまで聞いたこともないような甲高い嬌声がこぼれた。彼女の白い項が反り、しなやかな身体が元は彫像とは思えぬ曲線を描く。しかし、彼女は立香の背に爪を立てるような真似はせず、ただその肩に腕を回し、慈しむように彼を抱きしめた。彼女の吐息は熱く、立香の耳元を灼く。立香は彼女を喜ばせたいという一心で、自身の限界を忘れて腰を動かし続けた。まだ夫のいる身である彼女と交わることに抵抗感はあったが、今は目の前の乙女を悦楽の頂へと押し上げることに心魂を注いでいた。

 

「ふっ、ふっ、ガラテア、ガラテア……っ!!」

 

「んっ、ふっ、ンンッ、はぁ、はぁ……マスター、我が理解者っ」

 

 立香の視界は、激しく上下に揺れる銀色の髪と、潤いを帯びたアクアマリンの瞳に占有されていた。重なり合った部位から伝わる熱量は、すでに平熱のそれを遥かに超え、密室の空気さえも焦がさんばかりに昂ぶっている。立香は自分を押し潰すように跨るガラテアの、彫像由来の重さを全身で受け止めていた。

 

 彼女の象牙を思わせる白い肌は、結合部から伝わる衝撃を吸収し、立香の剛直に合わせてしなやかに、そして貪欲にその形を変えていく。それは彫像の性質を持つ彼女ならではの、神秘的なまでの適応だった。立香が腰を突き上げるたび、彼女の内側は吸い付くような粘り気を持って彼を締め上げ、決して逃がさぬという強い意志を具現化している。

 

「あっ、あぁぁ……! マスターぁ、あなた様の、この……熱っ。私の奥を、まるで熱い鑿で直接彫り上げられているような、心地よい痛痒さを感じます……っ」

 

「オレ、気持ち良く出来ている……?」

 

「ええ、とてもっ。上手ですっ……! 初めてとは、思えません。あはぁンっ、こんなに、私の理性を容易く削るとは……っ!」

 

 ガラテアは無機質な表情を崩さなかったが、その頬は内側から沸き立つ情熱に焼かれ、濃い朱色に染まっている。彼女の脳裏には、かつて自分に命を与えたピグマリオン王との閨が脳裏をよぎった。王との愛はガラテアの存在そのもの。けれど、今こうして彼女を求め、不器用ながらも必死に悦ばせようとする立香の純粋な親愛もまた、ガラテアの伽藍洞だった秘所を温かな悦楽で満たしていった。

 

 一方で、腰を突き上げながら快楽で脳が蕩けてきた立香。彼の指先は、彼女の控えめながらも形の整った双丘へと無意識に伸びていた。手のひらで包み込むと、それは柔らかな果実のような弾力を持ち、指の間からこぼれ落ちそうになる。その中心に位置する、小さくも自己主張を始めた突起が、立香の指に硬い感触を伝えた。

 

「ん、ふぅ……っ! 私のは、小さいですが、気に入ってもらえましたか……っ?」

 

「ガラテアの胸好きだ、ずっと触ってたいよ……!」

 

「っ……❤️ 女性の胸部は繊細です……ぁ! 優しく、触ってくださいね……っ!」

 

 ガラテアの口から、湿り気を帯びた吐息が漏れる。彼女は自身の乳房を弄ぶ立香の手の上に、自らの手を重ねた。指先から伝わる彼の鼓動が、自分の肉体へと溶け込んでいく。彼女は腰の動きをさらに速め、容赦のない力強さで立香を自身の深淵へと叩きつけ始めた。それに呼応して立香もまた、彼女の激しい揺さぶりに翻弄されながらも、抗うことなくそのリズムに同調していく。

 

「ガラテア……っ、オレ……もっと、あなたを……っ!」

 

「はぁっ、はぁ、いっ。マスターぁ、もっと、強く……っ! 失敗など恐れず、あなた様のすべてを私に刻み込んで……くださいっ!!」

 

 彼女の言葉は、理性という名の防壁を容易に粉砕した。立香の楔は、彼女の熱い包容の中で、はち切れんばかりの硬度へと達している。腰がぶつかり合う鈍い音が室内に響き、跳ね上がる汗が二人の肌を濡らした。ガラテアの動きは次第に、理知的な指導から、本能的な渇望へと変質していく。彼女の腰はピストンのように深く沈み込み、立香の最も敏感な部分を執拗に、そして正確に削り取っていく。彼女の瞳は、快感の奔流に晒されながらも、まっすぐに立香を見つめ続けていた。そこには、王に向けられたものとはまた異なる、今この瞬間、目の前の男にだけ捧げられる深い慈愛が宿っている。

 

「ぐぅ、うぅぅ、う゛ぁぁぁっっ……!!」

 

「あ゛ぁぁ……っ、くる、来ます……っ! マスターの、命の、源が……! 私の奥、一番深い場所で……爆発する……っ!」

 

 立香の背筋に、電撃のような衝撃が走った。臨界点はすでに眼前にあり、あとは崩落を待つばかりの断崖絶壁に立たされているような感覚。彼は彼女の身体を力一杯引き寄せ、その白い首筋に顔を埋めた。そこから漂う、生命の躍動を象徴する芳醇な香りが、最後の引き金となった。二人の呼吸は一つに重なり、激しく上下する胸板が互いの熱を伝え合う。ガラテアの腰が、限界まで高く持ち上げられ、次の瞬間、立香の全てを飲み込むべく力強く振り下ろされた。

 

「あ……っ、ガラテア、もう、ダメだ……っ! 出る……っ!!」

 

「来て、ください……マスターぁぁああぁぁぁぁっっ……!!」

 

 立香の声は、喉の奥から絞り出されたような熱い吐息と共に漏れた。彼は彼女のしなやかな腰を、指が食い込むほど強く掴み、最後の突き上げを深奥へと叩きつける。その瞬間、彼の肉体の中で荒れ狂っていた生命の源が、堰を切ったように一気に解放された。

 

 薄い膜で隔てられた彼女の最奥で、立香の濃い精が爆発的な勢いで発射される。度重なる抽送で研鑽されたことによって、マスターとしての生命力が凝縮されたその奔流は、凄まじい量となって彼女の深淵を埋め尽くそうと暴れ回る。あまりの圧力に、ゴムの膜が今にも突き破られそうな錯覚に陥るが、それはギリギリのところで立香の情熱を繋ぎ止めた。

 

 ガラテアは自身の最奥を貫く熱い衝撃に、アクアマリンの瞳を大きく見開いた。彼女の表情は依然として彫刻のような静謐さを保っていたが、その頬は内側から燃え盛るような朱色に染まり、額には幾筋もの汗が真珠のように輝いている。彼女は立香の首筋に顔を埋め、荒い呼吸を繰り返しながら、彼から与えられる膨大な熱を、一滴たりとも逃さぬよう、全身全霊で受け止めていた。

 

「あ……ぁぁっ。はぁ、はぁ……っ。マスターの、雄々しき肉鑿が最奥に刺さってる……っ。あなた様の命、子胤が……ぁぁっ。私の中で、弾けて……っっ」

 

 二人は汗ばんだ肌を密着させ、激しく高鳴る鼓動を共有しながら、しばらくの間、余韻の波に身を任せた。立香は自分を包み込む彼女の重みが、今は何よりも愛おしく、そして離れ難く感じられた。彼女の髪から漂う清廉な香りと、結合部から伝わる熱い脈動が、二人の魂が一時的に溶け合ったことを証明していた。

 

 やがて荒かった二人の呼吸が少しずつ落ち着きを取り戻し始めると、ガラテアはゆっくりと腰を持ち上げた。彼女の身体が離れるたび、密着していた部分が外気に触れ、熱が肌を撫でる。彼女は自身の内側に残る余韻を噛みしめるように、慎重な手つきで立香の剛直を抜き去った。同時に空気が抜ける音を伴って、ガラテアの肌の色に等しい白濁の精液風船が抜き出て来た。

 

 あまりの量に二人して唖然としてしまう。しかしこんなに気持ちよくなった、なってくれたんだと両者は思うと、顔を見合わせて微笑んだ。そして立香の隣にガラテアは身体が横たる。白いシーツの上で彼女の銀髪が扇状に広がり、月明かりのような輝きを放った。ガラテアは上体を僅かに起こし、傍らで充足感に満ちた立香の顔を、慈しむような眼差しで見つめる。

 

「ふぅー……お疲れ様でした、マスター。初めての、男女の交わり。性交はいかがでしたか?」

 

「最高だったよ。あんなに、自分が自分じゃなくなるような感覚、初めてだった。それに……ガラテアが、オレにとっての初めてで、本当に良かった。オレを教え導こうとしてくれたこと、そのためにこんなに尽くしてくれたこと……本当に感謝してるんだ。ありがとう、ガラテア」

 

「……光栄です。ピグマリオン王から授かったこの愛を、あなた様に伝えることが出来て。私も……言葉では言い表せないほどの喜悦を感じています」

 

 彼女という特別な存在と、心も体も一つになれたという事実は、立香の心に深い充足感をもたらしていた。立香は自身の掌を、彼女の頬にそっと添えながら感謝を伝える。彫像の冷たさはどこにもなく、そこには一人の女としての、確かな熱と柔らかさがあった。

 

 立香の言葉を受けたガラテアは、彼の言葉を反芻するように一度だけ瞬きをした。そして、いつもの静かな表情の中に、春の陽だまりのような微かな微笑みを浮かべた。彼女は立香の手の上に自分の手を重ね、その温もりを吸い込むように目を閉じて答えたのであった。直後、ガラテアは視線を立香の顔から下に向ける。そこには射精後であるにも関わらず、天を穿たんとする肉の槍が立っていたのだ。

 

「なんと……あなた様のは、まだまだ元気が有り余っているようで。ふむ。我が王とは違う……若さ、でしょうか」

 

「これはその……ごめん、ガラテア」

 

「謝る必要はないですよマスター。避妊具はまだまだあります。マスターが満足するまでお付き合いしましょう。そうですね、今度はマスターから動いてみますか?」

 

「ッ!! ガラテア、オレ、は…………あ、あと一回だけっ。付き合って、くれる……?」

 

「一回と言わず、避妊具がある限り付きあいますよ。あなた様が満足するまで、お好きなように……」

 

 そう言ってガラテアは横になったまま秘所を指で広げた。彼女からは少ない蜜液が溢れており、内心はともかく、彼女の肉体は今か今かと立香を待ちかねているようだった。立香は喉を鳴らし、コンドームを装着する。一回だけ。ガラテアにも、ピグマリオン王にも悪いからと、立香は負い目を感じながらガラテアに覆い被さる。だがその思考はそう長くは続かなかった。ガラテアの慈悲深く、穏やかで、熱っぽい視線を向けられた立香は、滾る本能に動かされ再び性交を始めようとしたのであった。

 

 二度目の性交では正常位が選択する。立香は初めての自発的な挿入なのもあって手こずるが、そんな場面でもガラテアは慈悲深く導いた。互いに顔を見ながらの性行為に、立香は顔を逸らしそうになる。しかし交錯するガラテアの青い瞳を断ち切ることは出来ず、見つめ合いながらゆっくりと突き上げ始めた。

 

「こう、かな……? 痛くない? ガラテア」

 

「ええ、問題ありませんよ。もっと強くしてもいいくらいです」

 

「そっか……ふっ!!」

 

 ガラテアからもっと激しくしても構わないと言われても、立香の腰使いはどこか遠慮がちだった。相手はサーヴァントであり、頑強な彫像の性質を持つと頭では理解していても、目の前の少女の肌があまりにも白く、美しすぎるが故に、傷つけてしまうことを恐れていたのだ。だが、ガラテアはそれを良しとはしなかった。彼女は立香の背中に回した腕に力を込め、自身の胸元へと彼を引き寄せる。

 

「遠慮は無用です。もっと深く……鑿を振るう時のように、迷いなく打ち込んでください」

 

「わ、分かった……っ!」

 

「っ──あ゛ぁっ!!?」

 

 彼女の言葉に背中を押され、立香は意を決して腰を引いた。そして、バネのようにしなやかな筋肉を使い、一気に深奥へと突き入れる。その一撃が、彼女の中の未知の引き金弾いたのである。偶然か、あるいは本能か。立香の亀頭が、彼女の膣内にある最も敏感な一点──女神の祝福を受けた聖なる核を、強く擦り上げたのだ。ガラテアの喉から、声にならない悲鳴が漏れる。ビクリと背中が反り、無表情だった仮面の下から、隠しきれない快楽の波紋が広がっていく。

 

「ガラテア……っ! すごい、中が……うねっている……!」

 

「ひぅっ!? そ、そこ……っ! もっと……激しく……っ!」

 

 立香の腰が止まることはなかった。むしろ、彼女の劇的な反応が、彼の奥底に眠る雄としての征服欲に火を点けた。ここを攻めれば、彼女は乱れる。いつも冷静な彼女が、自分の腰使い一つで、こんなにも甘い声を上げる。その事実は、若きマスターに強烈な自信と高揚感を与えた。

 

 遠慮がちだった動きは、いつしか貪欲なピストン運動へと変貌していた。立香は彼女のくびれた腰を両手でしっかりと掴み固定すると、狙いを定めた一点を目掛け、執拗に、そして激しく腰を打ち付け始めた。肉と肉がぶつかり合う音が、リズムよく室内に響く。ゴム越しの摩擦が熱を帯び、二人の結合部は白濁した泡で塗れていく。

 

「はぁ、はぁ、っ! 気持ちいい……? ガラテアっ!」

 

「い、いいっ! 良い、ですっ! その角度……っ! 深くて、鋭い……っ! 私の思考回路が……焼き切れてしまいそうです……ッ!」

 

 ガラテアの淡い青色の瞳が、焦点が合わずに揺れている。彼女は立香の肩に爪を立てないよう必死にシーツを握りしめていたが、その指関節は白く浮き出るほどに力が入っていた。立香は今だけピグマリオン王への遠慮を忘却して、ただひたすらに目の前の乙女を啼かせることだけに没頭しようとしていた。その激しい交わりこそが、ガラテアにとっては何よりも得難い、鮮烈な刺激となったのであった。

 

 この日。立香は神が祝福したキュプロスの王妃であり、王が創り上げた最愛の彫像である人物と交わりを尽くした。二人の主戦場であるベッドの周辺には、使い捨てられたコンドームが散乱しており、二人の行為が濃厚且ついかに激しかったかを物語っていた。挿入の際に手こずるような初々しかった青年は、今や彼女を抱き抱え突き上げまくるほどに進化を遂げており、ガラテアは先程までの余裕は皆無であった。

 

「ぉっ! ぅっ! ぁっ!! はぁ、んんッッッ〜〜〜っっ!!」

 

「ふぅ、ふぅ! ぬゥ、くっ〜〜!! どう、かなっ! ガラテア、この体勢気持ちいいっ!?」

 

「い゛ぃっ!! んぅ! あ゛っ! お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛……っっ!! い゛っ、良い……ですっ──あ゛っ!!?」

 

 ガラテアにとって抱え上げての交わりは、生前の夫ともしたことのない初めてのやり方であった。ガラテアは彫像だった頃の名残から、成人女性の平均的なそれより体重は重かった。故に生命を生み出したと言える偉大なピグマリオン王といえど、身体能力そのものはごく普通であるため、ガラテアを持ち上げるのは容易ではなかった。性交の時にわざわざ持ち上げるようなことはしたことがなかったのだ。だがこれまでの旅路で鍛え抜かれた彼は、愛しい相手との最後かもしれない行為にアドレナリンが全開となっていた。藤丸立香はガラテアを抱きかかえて、己の慕情を刻み込まんと突き上げていた。

 

「っ! なら、もっと頑張るからっ! ガラテア、ガラテア……っっ!!」

 

「ぁっぁっ、ぉ゛っ、ぉ゛ぉぉぉっっっ!! ふぅ、ふぅ~~っっっ!!」

 

 立香はガラテアの思わず零した言葉をこれ幸いと、さらに腰の突き上げを加速させる。ガラテアも立香の体を強く抱きしめ、その首筋に顔をうずめて喘ぎを押し殺そうとする。だが震えた喘ぎ声は、ガラテアの艶の良い唇から溢れて止まらない。むしろ突き上げるごとに高く大きくなっていた。ガラテアの変化は声だけに留まらず、彼女の秘所たる媚肉は立香のものに適応し、膣壁は絡み付き蜜液は大量に分泌される。もはや彼女の肉体が立香に屈していることに、異論を挟む余地はなかった。二人はほぼ同時に幾度めかの絶頂へと到達する。

 

「っ~~~~あァッッ!!」

 

「あ゛ァァ……っ! あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ~~~!!」

 

 立香の渾身の一突きと共に怒涛の如き射精が迸る。今回もゴム越しのため、ガラテアの最奥は立香の精液に侵されることはなかった。だが彼女のピグマリオン王への絶対的な愛情とは裏腹に、膣内全ては蠢動して立香の剛直を強く締め付けており、子宮は立香の子胤を望んで亀頭に吸い付いていた。その強烈な快感に立香は一度精を吐き切った後も、再び精を発射するのであった。

 

 抱き合ったまま絶頂を堪能していた二人だったが、立香は持ち上げる力の限界を感じガラテアをベッドに寝かすと、立香自身も彼女の横に寝転がった。その際に膣肉を振り切って引き抜かれた肉棒の先には、ガラテアの蜜液でコーティングされた艶やかなゴム風船。十回を超えて尚、陰りを見せない絶倫の精によって膨らんだものがぶら下がっていたのだ。ガラテアは絶頂によって潤んだ瞳をゴム風船と立香の顔を交互に見つめていた。立香は同様の状態ながら、ガラテアの全身を見回していた。そんな中、ガラテアが口火を切った。

 

「はぁはぁ……お疲れ様ですマスター。最後の方は、私も気をやってしまいました。あんなに激しくするとは……マスターの意外な顔を見た気がします」

 

「いやほんとっ、ごめん。やり過ぎちゃったよね?」

 

「そう、ですね。この上ない充足感はありましたが、私以外(・・・)にはしない方がよろしいかと。とはいえ、これでマスターは女性との交わり方を会得しました。もう私が教えられることはないですね」

 

「あ。う、うん……」

 

 ガラテアは行為の最中に見せた、あられもない顔をしていたことなど、どこ吹く風でそう締めくくった。彼女にとって今しがた行っていたことは、立香の成長を促すためのであり、快楽を追及したり、愛を分かち合うためではないからだ。彼女が愛するのはピグマリオン王だけで、目的なく体を重ね合うのは王への裏切りに他ならない。故に身体がどれほど立香を求めようと、立香とこれ以降することはない。それがガラテアの結論だったと立香は感じ取った。けれども。決して交わることがないと思っていた想いが満たされてしまったら、普通の青少年が我慢など出来るはずもなかった。

 

「そのガラテア」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「……また、お願い出来ないかな?」

 

「──」

 

 立香の言葉にガラテアは停止する。冷静さを取り戻していたガラテアの頬が、再び熱を灯すのを立香は目にする。ガラテアは何か言おうと口を開き、再び閉じるのを数度繰り返す。視線は行き場を失ったように泳いでおり、ガラテアの細くしなやかな手はわなわなと震えていたので、立香は自分の手でガラテアの手を包んだ。ガラテアの膂力ならそれを振り解くのは容易なことである。だが彼女はその手を振り解かず、言葉で立香を遠ざけようとする。

 

「それは……それは駄目です。これ以上は、浮気になってしまいます。私は、あなた様を愛することは出来ません。私の愛はピグマリオン王にのみ捧げられるものですから……」

 

「ガラテアがピグマリオン王を愛しているのは嫌というほど分かってる……それでも。彼の王がカルデアに来るまでの間、その間だけでも傍に寄り添うことは駄目かな? ガラテア、大好きだ。あなたを愛しています」

 

「っ──マスター…………あなた様は、本当に仕方のない方ですね。あの方以外の男性に、これほど心を揺さぶられる日が来るとは思いもしませんでした。ええ、嬉しいのです。あなた様のその熱烈な想いが、私には心地よく響いています」

 

「じゃあ……!」

 

「……条件があります」

 

 ガラテアは人差し指を立て、立香の唇にそっと押し当てた。その指先はひんやりとしていて、立香の高ぶりを物理的に押し留めた。ガラテアは頬を赤く染めながらも、その宝石のような水色の瞳で立香を見つめながら口を開く。

 

「ピグマリオン王がカルデアに召喚されるまでの間、という期間限定。その条件であなた様の性欲処理、および造形の参考モデルとしての役割を引き受けましょう。ですが……接吻は禁じます。あれは、誓いの証ですから」

 

「分かった。キスはしない」

 

「それと、避妊具なしの行為も禁止です。私の胎内は、あの方との愛の結晶を宿すための聖域。あなた様の欲を受け止めるのは構いませんが、直接注がれることは許容出来ません。あのような大量の精を、直に受けるわけにはいきませんから。いいですね?」

 

 淡々とした口調で告げられた条件に、立香は頬を熱くしながらも深く頷いた。キスも中出しも出来ない。それは恋人としての決定的な欠落かもしれない。それでも彼女に触れることが許された事実に、立香の心は歓喜に震えていた。ガラテアは立香の承諾を確認すると、満足げに目を細めた。

 

「ここに新たな契約は結ばれました。ピグマリオン王が来るまでの間、許せる範囲で私をあなた様に捧げましょう。末永くかは分かりませんが、よろしくお願いします」

 

「ありがとう、ガラテア。オレのお願いを聞いてくれて」

 

「私も、あなた様のことは好ましくは思っていますから……マスター業に支障をきたさないようであれば、いつでもお声がけください」

 

「うん……改めてよろしく、ガラテア」

 

 こうして、立香とガラテアの間に秘密の背徳契約が結ばれた。表向きはフィギュア制作の師弟という穏やかな生活を送りながら、その裏側では濃密な淫靡さに彩られていくこととなる。ガラテアがピグマリオン王と巡り合うその日まで、艶やかで刺激的な日常が始まろうとしていたのだった。

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