あえる ヤれる アイドル『TRK26』まな板ショー 作:添牙いろは
人には表と裏の顔がある。私も世間的には、ただ女子相撲が好きなだけの善良な一市民にすぎない。しかし、ここだけの話……私は世界で唯一の女子
そんな中、私のもとに自ら廻しを締めている女子の情報が――もちろん、女子相撲という競技も確立している以上、珍しいことではない。ただし、女子相撲はレオタードの上から廻しを締める。これに対して噂の女のコは、全裸の上から――
最初は、誰もがアダルト企画の類だとあしらった。あしらいつつも、動画でヌいた。しかし、彼女は来る日も来る日も廻しを締め続けているという。全裸の上から。ここまでくると、単純な企画モノとは思えない。彼女自身からは確固たる意思を感じる。相撲に対する強いこだわりを。
私の廻し女子ネットワークを駆使すれば、彼女の情報を集めることなど造作もない。彼女の名は
私はすぐさま慧とコンタクトを取ってみた。すると――
『いつもお世話になっております』
廻し女子で検索すれば、私を避けて通ることはできない。慧もこちらのことは既知だったようだ。
その後も連絡を取り合っているうちに、私は彼女の相撲に対する真摯な思いを知ることとなる。真摯がゆえに――相撲ではなく、あくまで『おすもうプレイ』――実際の女子相撲とはきちんと切り分けているらしい。殊勝な心がけである。
慧の過去――幼少の頃にロリコン親方から稽古と称されて仕込まれたエロスの数々――初めての彼氏におすもうプレイを求めたところ、その場で破局したこと――というか、何なんだその彼氏。せっかく彼女が廻しになってくれたのに、それを拒むなど私には微塵も理解もできない。
慧とおすもうプレイの生き様を聞き、私は――廻し女子の専門家として、漫画という形で書き残すことにした。完成した力作は私のサイトにて公開されているので、是非ともその目に焼き付けて欲しい。廻し女子――そして、廻しアイドルとしての慧の姿を。
その功績によって、私は招待されたのである。ここ――新歌舞伎町のTRK劇場へ。
漫画の中では資料を元に描いたけれど、実物を見たのはさすがに初めてだった。一般的なステージを想像していたのに対して、舞台から客席を左右に分けるように通路が中央まで伸びており、その先には……土俵が……ッ! そこは『盆』と呼ばれる回転台座で、ストリッパーたちが全方位にサービスする晴れ舞台らしい。だが、どう見ても土俵である。きっと、ここが私の“戦場”となるはずだ。
私は、そのすぐ真下の椅子に陣取り……どうやら席の指定もなく、VIP席のようなものもないらしい。ただ、演目の後で慧と“取り組める”のは本来は高額な年会費を払っているファン会員のみ――しかも、その中でも抽選制。今回は特例中の特例とのことだ。しかし、私の正体を知れば誰もが納得してくれる……はず。廻し女子を推す者たちの間で、私の名を知らない者など……多分いないと思うし。慧も知ってたし。
開幕が近づくに連れて会場は埋まってゆき……最終的には満席となった。やはり慧の――おすもうアイドルの人気は凄まじい。……今日は彼女のソロライブ、ということでもないけど。あと、座席数が百少々しかないという都合もあるけど。
それでも――彼女は私の中で一番であり――出演順も当然一番。左右に開いていく幕の向こう側に――彼女はいた。
けれど、いまの彼女はアイドルである。ゆっくりと立ち上がり……そして告げる。
『ごっつぁんだよ。今日は、ボクたちのライブに来てくれてありがとう』
おすもうアイドル――可愛らしい帽子をかぶり、上半身はごく一般的なアイドル衣装。けれど、下半身は……腰の両側にはひらひらとパレオを翻しているが、それらに挟まれた中央――水着のパンツに当たる部分は……廻し……ッ!
やはり、廻しは良い。布面積としてはビキニのボトムと大差ないが、股に対する食い込み方がやはり違う。何より、ここまで続く長い歴史の中で植え付けられた『廻しは男のもの』という先入観――それを女子が着けることによって生じる違和感――そこがいい。いずれ、廻しが女子のファッションとしてスタンダードになる日も来るだろう。だが、いまの我々ほどの高揚感はないはずだ。そういう意味では、その過渡期に居合わせたことはある種の幸福だったのかもしれない。
そんな彼女が唄うのは、彼女のための――ソロの舞台でしか奏でられない一曲だ。
【おすもうスピリッツ】
作詞:このきのこ
さあボクと廻しを締めよう
おすもうさんの心を秘めた胸と胸
土俵の上で重ね合おう
子供の頃から遠くで見ていた
廻しひとつの男の世界
そこにボクが立つことはない
だってボクは女の子だから
だけど
ボクにはボクの戦いがある
水着を着こんだそれとも違う
ボクにはボクだけの戦いがある
女と男の裸のぶつかり合いが
さあボクと廻しを締めよう
男の子なら恥ずかしくない
だからボクも廻しを締めるよ
女の子だから恥ずかしい
ボクを抱いて もつれて
引きよせて
決まり手はいつだって
ふたりのもろだし
お互い稽古が足りないね
だからずっといつまでも
ボクたちだけの秘密の土俵で
ポップな曲調の中、唄い踊りながら一枚一枚脱いでいく――それが、彼女たちTRK26の売りであるとのこと。その振り付けも一般的なアイドルと比べても遜色ない。慧の髪は、下ろせばそれなりの長さがあるはずだ。それを襟元で一度結った後、後頭部まで持ち上げてもう一結――これは、力士の曲げをイメージしているらしい。そこから開いた残り髪が花びらのようだ。
そんな慧が腰布を解き、トップスのボタンを外していく――そのときくらいだろう、私の目が廻しから引き剥がされたのは。廻し女子の真髄は、やはり胸――上半裸にある。女のコの豊かな乳房――色鮮やかな乳輪とはっきりと現れた乳首――女のコの大切なところを曝け出した上での――廻し。やはり女子相撲のレオタードは廻しとは一線を画するといえよう。
実際の競技はさておき、私たちの愛する女子相撲の姿がここにあった。トップレス&Tバック&Tフロント――ここで、そんなつまらない見方をするべきではない。何重にも巻かれた腰帯――その重厚さが作り出す股布の安定感。薄っぺらいふんどしでは……あ、いや、ふんどしもふんどしでまた良いのだけど。男子特有のもっこりを包むことなくペタっと地肌の起伏に沿う生地は水着にはない色気がある。
だが、用途のはっきりしないふんどしに対して、廻しはその目的がブレない。だからこそ、その振り付け一つひとつに相撲が感じられる。まるで廻し姿の女のコたちが土俵の上で組んず解れつ取り組んでいるようだ。
ここはストリップ劇場だけに、最終的にはその廻しも解かなくてはならない。それが――私には実に残念だった。
***
その後、すべてのステージが済み、出演者揃ってのカーテンコール――踊り娘たちは揃って全裸だったが、慧だけは廻しを着け直していた。そこに私は、彼女の本気を感じる。拍手の鳴り響く客席の照明は未だ暗い。それは、これから行われる追加イベントのために。
『さて、今夜のお相手は――』
地響きのようなドラムロール――席を舐めるように行き来するスポットライトの終着点は――
『――この方です!』
慧のファンの皆々には申し訳ないけれど……これは定められた運命だったのだ。
私は席を立ち、係の女のコに導かれてホールを後にする。私たちの結びの大一番の土俵へと向けて。
さて、男子といえど、廻しを締める機会はなかなかない。自分で締めてみると……騒ぐほどではないが、若干の照れくささはある。
だが、小さな不安を吹き飛ばす絶大なる期待感――これから私は、女のコと相撲を取るのだ……ッ!
私はいま、閉じられた幕の中にいる。外――盆――土俵では慧が――廻しで――先程魅せてくれたあの姿で待ち構えているはずだ。
TRKとしてのステージはもう終わっている。ゆえに、再び幕が上がることはない。ここからは私たちの……相撲勝負である。
しかし――光の中に彼女がいる。その姿を見た瞬間……私は背中を押されたように足を踏み出していた。両側が絶壁となっている花道の危うささえ気にならない。私はただ、真っ直ぐに――ふたつの大きな胸を湛え、両膝を大きく開いた廻し姿の女のコに引き寄せられていく。
そして、私もまたそこに辿り着いた。
「……やぁ、ごっつぁんだよ。よく来たね。ボクからの挑戦を受けてもらえて嬉しいよ」
言いながら、慧は立ち上がる。ふたつの胸を隠すことなく。ここまでずっとその姿で観客たちと向き合い続けてきたのだろう。こちらの視線に対しても動じることはない。
「忘れてないと思うけど、キミが勝ったら――」
それは、ここへ招待された際の約束。
「――ボクを好きにしていいよ。だから……全力で向かってきてね」
女のコから改めて言われたことで、私の決意は固まった。
私は……勝つ!
そして、ヤる!!
だが――
「それじゃあ、ルールの説明だけど……まさか、普通に相撲を取りに来たつもりじゃあないよね?」
私は、静かに頷く。これは予想通りの展開だ。彼女は『相撲』と『おすもうプレイ』を切り分けており――男女の体格差を覆せるほど、慧に格闘技の素養はない。つまりこれは『おすもうプレイ』――文字通り、相手の土俵での勝負――最初からそのつもりで、私はやってきた。廻し女子と立ち会うために。
「はは、緊張しなくていいよ。単純な話だからさ。ボクがキミに対して一方的に攻めるから……二分間耐えきればキミの勝ち」
それはつまり……ここに立っているだけで二分後には慧を……好きにできる……!
「じゃ、位置につこうか。時間いっぱい待ったなし、だよ」
仕切り板の前で、慧はそのまま腰を落とす。前屈みに――ふたつの大きな胸を吊り下げて。私もまた、向かい合った仕切り板の前で、同じように。慧が左手を着けたのに合わせて私も手を置く。そして、視線は慧の右手に。両手が地に着いた瞬間が試合開始だ。不安定な立ち上がりを狙われては、男の私でもさすがに厳しい。だからこそ、そこさえ凌ぎれれば……!
ちょん――慧の左手の一瞬を見逃すことはない。すぐさま上体を起こし、私は飛び込んできた女のコをガッチリと受け止めた。そして、廻しを握り締める。これぞ、相撲の醍醐味……!
だが――
「うーん……うーん……」
私の廻しに力を込めて、右へ左へと揺すろうとする慧の両腕。それ自体はあまりに非力で、三分でも五分でも倒される気がしない。
だが、相手は裸の女のコであり――細い肩が、柔らかな頬が押し付けられると……つい……期待してしまう……っ!
男の身体は決して軽いものではない。だが、こうして懸命に引き上げようとされると、それに釣られて腰が上がってしまい……ピタリと重なった。私の硬い胸と、慧の柔らかい女のコの胸が。
しかも……グリグリと擦り付けるように……! 身体は細いが胸は豊かで力強く、乳首のコリっとした感触まではっきりと伝わってくる……っ!
試合時間は……もう一分は切ったはず……待ちきれない想いを廻しの中で爆ぜさせていたが――
「忘れてないよね? これが、おすもうプレイだってこと」
耳元に寄せられた慧の囁き。だが、次に押し寄せてきたのは言葉ではなかった。
「あむ、はむはむ……❤」
わ、私の耳たぶを……!? 相撲では反則になるが……これはあくまでおすもうプレイ。そもそも行司もいないし……そのまま取り組みは続行していく。
耳からレロレロと舌が首筋を下り、うなじに柔らかい唇が吸い付いてくる。
「んー……ちゅっ、ちゅぷ、ちゅぱぁ……♪」
キスマークが残るほど強烈に。これには私の膝もガクガク震えてくる。そんな私を、慧は真正面から見つめる。私の瞳の奥を見透かすように。
「それじゃあ……そろそろトドメ、刺しちゃおうかな」
慧の瞳がゆっくり閉じ――こちらに向けて近づいてくる。廻しはいまも掴まれており、私には逃げることもできない。
そして――唇に押し付けられるのは女のコの小さな唇。だが、その内側で暴れまわる舌は激しく、そこに一片の優しさもない。
「ん、ん、ん……はむ……ぁ、ぁ、む……」
だ……だめだ……もはや指先にも力が届かない。爆ぜる心臓が重く――そして――
慧は、私の廻しから指を放す。それと同時に――ガクン――私は土俵に膝を突いていた。
『
アナウンスによる勝ち名乗りを聞き……私はそのまま背中から倒れ込む。す……凄かった……。あんなの……耐えられるわけがない……。これが……おすもうプレイか……。
息も絶え絶えに、私はただ呆然としている。負けた……が、満足だ……。白くなった視界の中に、可愛らしい笑顔が割り込んでくる。
「それじゃ、約束通り……キミのこと、ボクが好きにさせてもらうよ」
まだ、意識がはっきりしない。そこに――今度は、軽く触れるだけの口付け――そして――私の廻しが緩められていくのを感じる。
「キミの精子……ボクがもらっちゃうからね♪」
ハッとして私は首をもたげる。すると――廻しは綻び、もはや腰回りまとわりついているだけ。私の……私の
「あ……はぅ……んっ❤」
喝采を浴びて私は思い出した。ここはステージの上で……客たちの前で、私は……!
「ふ、ん、ん……っ、いいよいいよぉ……キミの軍配……♪」
慧の太ももに絡まる廻しが、あの激戦の熱を思い出させる。おすもう少女がおすもうを解き、私の……私の上で……っ!
「ボクの
私が張っているわけではなく、慧の方が自身の
「さぁ……っ、赤ちゃんの土俵に塩を撒いて……っ、ボクの
私はもはや……土俵際……これ以上耐えることなどできず……ッ!
ビュパッ、ビュプッ、ピュプゥ……っ。
「あ、あ……っ、
ビクビクッ、ビクビクッ、と背筋を震わせながら慧もまた天井を仰ぐ。
そして。
「……ボクの方は、本気で好きにしてもらっても良かったんだけど?」
ニマっと笑われると……急に恥ずかしくなって、私はついその笑顔から視線を逸らす。
「次は普通に勝ってくれていいから、また来てね」
もちろん、そのつもりだ。慧が廻しを締め続ける限り。だが……私が廻し女子に勝てる日は来るのだろうか……?
ちなみに、帰り際に撮ったツーショット写真の際には、お互いちゃんと廻しを締め直した。
ウン、また来よう。