あえる ヤれる アイドル『TRK26』まな板ショー 作:添牙いろは
我々は世にも珍しい四つ子――だからこそ、嗜好や趣味も似るのでしょう。ゆえに――最初、弟から探し人としてひとりの女のコの写真を見せられたとき――正直、迷いました。話してしまうべきか、教えてしまうべきか――彼女が、ストリップ・アイドルであると。
ここで自分は、昔のことを思い出していました。その歌声――熱唱っぷりに惚れ込んでファンとなり――いつしかセクシーパフォーマンスに流れて配信サイトからアカウント停止処分となり――それでもお色気路線を改めることなくアダルトサイトへ場を移し、本格的にアダルト活動を始め――落ち着いた先がストリップ・アイドル・ユニット『TRK26』――どうやらストリップ劇場は自分が生まれる前に一度滅亡の危機に瀕し、現在日本に残っているのはそこひとつなのだそうです。
幸い――というべきかはわかりませんが、弟が送ってきた写真の女のコは自分の推しではなく――それでも同じユニットのメンバーであったため、すぐにわかりました。ただ、弟は彼女を近所の定食屋の看板娘と呼んでおり――彼女がストリップ・アイドルになっていることを話してしまって良いものかと迷いましたが――自分の弟であればわかってくれると信じていました。歌い手からアダルト配信者を経てストリップ・アイドルとなった歌い手・まじかる☆えりりん――いまなお変わらず推し続けられる自分の弟なのですから。
すべてを話してしまった後、弟は当然戸惑っておりました。しかし、真実を確かめるべく劇場へと足を運び――部活の試合のために来ていたため、終わるとすぐに地元へと帰ってしまいましたが――また観に行きたい、と言っておりました。ただ、一緒に行こう、とは言われませんでした。やはり……気不味いものは否めません。顔見知り――それも兄弟に、その……男としてまぐわう姿を見られるというのは。
『まな板ショー』――一般的にストリップは踊り娘が踊りながら裸になるショーだと思われておりますが――実は、それだけではないのです。いえ、
さて。
TRK26はストリップ――アイドル・“ユニット”であります。全員集合することは滅多にありませんが、その中の数人が集まってユニット内ユニットが多数作られております。これについてえりりんは『めいんでぃっしゅ』に始まり『まいど・めいど・わいど』『キツネーズ』や『AB-solute』――様々なメンバーと組んで唄うことが多いようです。歌い手の時代は他の歌い手とのコラボさえ滅多になく孤高なイメージがあったのですが、この劇場に来てからはむしろソロでステージに立つことの方が少なくなりました。しかし、歌い手時代の――関西人特有のピリピリした雰囲気が丸くなり、むしろいまの方が活き活きしているようにも見えます。
ただ、その際にはユニット曲になってしまうため、えりりんの頃からのファンとしては少々寂しいものがありました。しかし、今日は――!
出演順が事前に公開されることは基本的にありません。というより、出演者自体が突如変更になることも茶飯事です。学生や兼業のメンバーが多かったり――そもそも気まぐれだったり――なので、聴ける曲は出たとこ勝負なところがありました。
しかし、ロビーとホールをつなぐ扉の脇に掲げられていた立て看板によると――今日は何と、えりりんがソロで――!
普段はドリンク片手に同志と交流を深めたりしていたものですが、今日は事情が異なります。久々のえりりんソロ――最もいい席で拝聴したい……!
こんなとき、このホールの構造は実に悩ましいものがあります。
と、迷う余地はなく、盆を取り囲む最前列はすでに埋まっているようです。そういえば、今日はルミノさんも出演されるようですし、その親衛隊が陣取っているのでしょう。自分たちもファンではありますが、ルミノさんのファンは一線を画したところがあるのは否めません。
ということで、自分は本舞台に近い最前列へ。これもこれで、楽しみではあります。
そして、ステージが始まりました。何人ものメンバーが代わる代わる唄い――代わる代わる脱いでゆき――普段なら、それはそれで楽しかったものです。けれども今日ばかりは……真打ちが控えている今日ばかりは……!
出演順を指折り数え、ついに次は……次は……! 果たして、今日は何の楽曲でしょう……! やはり、えりりんが最も得意としている『襲撃! マイトガイ』のテーマでしょうか。それとも、『バルカンタンク・G』か――心躍らせながら待っていると――こ、この曲は……!
【マーメイドウィッチ・るなるな】
るなるなるなるな マーメイド
るなるなるなるな ウィッチ・るなるな
海の魔法使い るなるな
清きすべての
叫べ雷鳴 飲み込め竜巻
秘術! 禁呪! ハイドラジェット・ストリーム
るなるなるなるな マーメイド
るなるなるなるな マーメイド
撃墜! 激震! マーメイドウィッチ・るなるな
こ……これは……! えりりんが歌い手として最も輝いていたときの曲……! その後、電波ソングのカバーの方がウケてそちらの割合が増えていきましたが、本来えりりんが好きだったのはこちらの曲調であると聞いています。
衣装もまたるなるなの――変身前の人魚フォームから始めるあたり、えりりんらしいといえましょう。腰から下を
しかし何より――さすがはストリップ劇場というべきか――アニメ原作では作画の妙で隠されていた両胸が、乳首の先まではっきりと――! サイズ感についていえば、るなるな本人はもっとありましたが、小さな胸であっても可愛らしさは変わりません。いえ、むしろより可愛らしいといえましょう。
一番は広々としたメイン舞台で。しかし、二番が始まると下半身の鯉のぼりの中へと身体ごとモゴモゴと潜り込み――出てきた姿は、やはりというべきか変身後の魔女っ子フォーム――! トップレスから逆に衣装を着直す流れはストリップとして前代未聞です。だからこそ――この型破りなところこそ、えりりんなのだと言わざるを得ません。
盆とをつなぐ花道の方へと歩きながら――両足が開放されたことで振り付けにも熱が入っているようです。自分のいる場所からは離れながら衣装を脱いでいき――その中はパンツこそ穿いていたものの、ブラは着けていませんでした。いずれにせよ、そのパンツさえも――大サビ――その頃にはえりりんはすべての衣装を脱ぎきって――
こういうのはナンですが、えりりんの裸については配信サイトの頃から――そしてこの劇場でも何度も拝んできました。ですが、この歌声――生えりりん――この場においては、そちらの方にこそ価値がある気がします。……位置的に、えりりんと席との距離が遠くなってしまった悔しさからかもしれませんが。
唄いきった後の『御開帳』のダンスも、ここからではやはり寂しいものがあります。それでも、自分は満足しておりました。歌い手時代は考えられないほど近くで、えりりんの歌声を聴くことができたのですから。あと、すべてが終わって元のステージに戻っていくときに、改めてえりりんのお姿を比較的近くで拝見することもできましたし。様々な衣装を魅せてくれたえりりんでしたが――全裸というのも、やはり可愛らしいものでした。
そして、すべての公演が終わってカーテンコール――TRKの慣わしとして、全員全裸で――もちろん、えりりんも。このときは本舞台にて横一列に並ぶので――偶然にも、えりりんの立ち位置は自分の席の間近に――! 一糸まとわぬえりりんは、歌い手であり、アダルト配信者であり、そして、ストリップ・アイドルであり――そのすべてに通ずる根源ともいえる姿なのだと思います。
そして、演者たちが下がった後はドラムロール――ファンであれば、ある意味ここからが本番であることは周知のこと。抽選一名にもたらされるまな板ショー――自分はただただ暗闇の中でじっと祈り――そして――光が差しました。自分とえりりんをつなぐ架け橋として。
他のメンバーの場合、カーテンコールのまま全裸で待機していることが多いようです。しかし、えりりんの場合はファンからの要望も多岐にわたり――自分もまた、お願いさせていただきました。まじかる☆えりりんとして、自分と相対してほしいと。
座席で待つこと少々――係の女性から声がかかり、自分は幕の閉じたステージへと案内されました。えりりんが待っているのはこの緞帳の向こう側――情けないことに、自分でも
「…………!」
盆の中央で仁王立ち――花びらをイメージしたスカートにすっきりしたノースリーブ――まるでひまわりのような華やかさ――清々しさ――動画配信者の頃は直に会う機会もほとんどなかったので――TRKとしてのサイン会には来たこともありますが――あの『まじかる☆えりりん』が画面越しではなく――自分の目の前に――!
胸を高鳴らせながら花道を渡りきり――緊張しきった自分に向けて小柄なえりりんがニカっと見上げてくれました。
そして。
「久しぶりだねっ。サイン会以来カナ?」
! これには……感無量です……! 自分のことを……覚えていていただけたなんて……! ならば……昔からのファンであることはサイン会の際に伝えておりますし、えりりんのことをお慕いしている前提で……!
「おっ、お願いがあります……!」
こんな機会は二度とないかもしれませんから――無茶は承知で――!
「そ、その……えりりんが、そのー……敵に敗北した……という感じのシチュエーションで……」
「……ふふっ、いいよ。男の人って好きだよね、そういうの」
マイクが入っているのはえりりんだけ。なので、会場に響くのは返答だけとなりました。けれども、何となく客席にも伝わったのでしょう。自分の要望がどんな内容だったのかが。
その期待に応えるべく――もちろん、観客たちが期待しているのはえりりんの反応ではありますが、そのためには男の方から進めなくてはなりません。自分が軽く掴みかかると――
「や、あ、あぁ~ん……♪」
わざとらしい声を上げながら、むしろこちらの腕を引き寄せるように後ろへと重心を倒してゆき――すっかりえりりんに覆いかぶさる形となっております。
「いっ、厭らしいことするんでしょうっ!? 薄い本みたいにっ!」
これには客席から笑いが起きました。使い古されたネタではありますが……これはいわゆるジョークではありません。これから本当に――薄い本のようなことをしてしまうのですから。
恐る恐る胸に手を伸ばし――すると、背中を反らして肩のあたりを浮かせてくれたのは、脱がしやすくするためでしょう。えりりんも――承知してくれている――だからこそ、自分は遠慮なく胸元に指をかけて――その肌は柔らかく、温かく――滑らかな胸をこちらへと引き寄せてゆくと――
「やぁ……あぁん……♡」
こ、これは……えりりんの……胸……乳首……綺麗な色をして、ちょんと突き出したところが……自分の目の前に……さ、触って……いい……の、ですよね……?
「やっ、あぁんっ、やめてぇ……♡」
身をくねらせながらも抵抗しないえりりんに、自分はさらに……!
胸こそ控えめなえりりんですが、腰はしっかりとくびれており、その下腹部も――割れ目がくっきりとわかるおとなしめな茂み――えりりんが――一糸まとわぬえりりんが、この手の中に――
しかし――
すべて脱がしてしまったところで――自分は迷っておりました。カーテンコールで見た裸のえりりん――けれど同時に、アダルト配信者でもあり、ストリップアイドルでもあり――改めて思い返してみると、それらの顔を隔てるのは衣装にあったのかもしれません。それを脱ぎきってしまっては――ならば、自分の目の前にいるのは――?
様々な顔を持つ彼女が脳裏を過り――思わず目を閉じて、彼女の胸にむしゃぶりついておりました。
「あぁんっ、やぁっ、はぁん……っ♡」
その喘ぎ声は紛れもなくえりりんのもの。なのに――アダルト配信をしていた頃が印象的だったからか、つい狐耳を着けた彼女の姿が思い浮かんでしまいます。えりりんは――えりりんとは――!? 自分の中のえりりん像を思い出すため、無我夢中で彼女を抱きしめていたのですが――
「いつまでビーチクしゃぶっとんねん」
その声にハッとして目を開けると――そこにいたのは、紛れもなく裸のえりりん――しかし、どことなく雰囲気が――?
「あんなぁ、他のメンバーも控えとんねんで。っちゅーこって、時間切れや。こっからは……」
――
そんな軽口をぶつけながら、こちらの顔に唇を近づけて――
「あん、ん……♪」
キ……キス……? これが……? 唇を合わせるだけでなく……舌まで……!? 話では聞いていましたが……これは……これは……まさか……口の中がこんなに……
ふにゃふにゃと脱力したまま、さっきとは逆に自分がえりりんにひっくり返されて――
「……ん、おにんにんは元気やんけ。せやったら……遠慮はいらんな?」
自分に跨って、ソコに指を添えて立たせて――その姿は最早えりりんではないようです。もちろん、地の彼女が関西弁を操ることも知っていました。けれど、えりりんのときは――そんな喋り方はしなかったので――だから、彼女は――彼女は――
「ほんじゃま、
えりりん――いえ、
「
そう宣言すると、糸織さんは……腰を上げ……自由落下のように
「あふっ、あはぁぅんっ、ええモン持っとる……やん……っ♡」
糸織さんが自分の上で――自ら乳首を指でくるくると回しながら……! すると――
「はっ、あぁんっ、どやっ、どやっ? ウチの……ウチの……おまんちょ……あはぁん……っ♡」
問われるまでもなく……気持ち良すぎて……ずっと味わっていたいのに……長くは耐えられそうになく……!
「はぁっ、あぁ……っ、
糸織さんが
びゅくるっ!!
「あっ、はぁぁぁっ♡♡♡」
自分の迸りを
「ふぅ……楽しかったで」
その眩しい笑顔は、これまで見たことのないものでした。
これまで自分はずっとまじかる☆えりりんばかりを追ってきましたが――その姿は仮初めだったのかもしれません。やはり彼女は丘薙糸織――その人だったのでしょう。
ですから、次のサイン会が楽しみです。今度の色紙には必ず――丘薙糸織――と。