※この作品はR-18です。

あえる ヤれる アイドル『TRK26』まな板ショー   作:添牙いろは

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園内晴恵

 家庭教師を雇う理由は大きく分けてふたつある。ひとつは、独学では届かない難関校を目指すため。もうひとつは、欠点を補うため。大学生の頃から様々な生徒を受け持ってきたが、 園内(そのうち) 晴恵(はるえ)ちゃんは後者であり、そして――そもそも個性として勉強に不向きだった、と言わざるをえない。

 晴恵ちゃんはベンチャー企業の社長の娘であり、両親は我が子に跡を継がせることを望んでいたようだが――一向に上がらない成績――講師として成果を残せなかった僕を、ご両親が激しく罵倒することはなかった。さもありなん――それほどまでに、彼女は特(・)殊(・)だった。

 決して、やる気がないわけではない。学習態度はむしろ真面目である。だが、とにかく記憶力がない――反面、体育の授業の成績だけはいいという。おそらく、身(・)体(・)を(・)使(・)っ(・)て(・)表(・)現(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)得(・)意(・)だが、机(・)上(・)で(・)表(・)現(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)不(・)得(・)意(・)ということなのだろう。ちなみに、絵については非(・)常(・)に(・)独(・)特(・)な(・)感(・)性(・)を持っており、過去に一度、都から特別賞をいただいたことがあるとのこと。だが、高度な風景画が並ぶ中、ご両親は娘の受賞を嫌がらせの類と受け止めている節がある。

 晴恵ちゃんは特(・)殊(・)な人格の持ち主であったにも関わらず、ご両親が望んでいたのは真っ当な価値観を有する経営者――これは、不幸なすれ違い以外の何物でもない。

 僕が晴恵ちゃんを見てきたのは十年以上昔のことではある。けれど、ずっと心の隅に残ってきた。卒業までおつき合いいただいただけでもありがたい――大変お疲れ様でした――僕に頭を下げるご両親の目に、娘の姿は映っていなかったような気がする。

 そして、先日偶然目にしたビジネス誌――ことの発端は先に公開されていた『娘側が受けたインタビュー記事』だったようだ。

 ――ところで、娘さんに継がせるつもりはなかったのでしょうか。

 話の流れを断ち切るような突拍子もない質問――最近、ネット上で話題にはなっていたらしい。『そのうちバッテリー』の社長の娘がストリッパーをやっている――娘自身がそのように回答していたことが、一部界隈をざわつかせていた。

 それに対する社長の回答は――娘もすでに成人しており、その生き方に口を出すつもりはない――風俗業は国に認められた合法的な職業だ。これをのびのびと育てた結果と読み取ることはできる。だが、僕は父親の目を実際に見た。娘に対して完全に失望していたあの目を。

 

 それで僕は――あんなものは問い合わせとさえ呼べない。ただ、劇場に対して一方的に、何かあれば力になるから連絡してほしい――と園内晴恵さんにお伝え下さい――それでも返信がなければ直接現地に足を運ぶつもりだった。何ができるかはわからないけれど。

 だが意外なことに――僕からのメッセージは本人に届いていたらしい。家庭教師の事務所の方に、僕個人宛ての封書が郵送されてきた。

 しかし、その中身は――写真――しかも、胸と股間を露出させた裸の――それに、晴恵ちゃんのサイン――! うっかり職場で開いてしまったため、誰かに見られたら大変なことになっていたところだ。

 元気でやっている、という返事なのかとも思ったが――裏面には、これを持って劇場に来て下さい。お待ちしております――その意図はよくわからないが、彼女をそのままにしておくことはできそうになかった。

 

       ***

 

 劇場公式サイトによると、出演告知はあくまで予定であるため、当日変更になることもあります――確定情報は劇場ロビーの掲示板にて――一応事前に調べてきたが、これで当日急変していたら目も当てられない。だが、どうやら晴恵ちゃんは予定通り出演してくれるようだ。

 いざ始まってみると――単独ライブということはなく、同じ劇場のメンバーたちが代わる代わる脱いでいく。だが、意外というべきか――ただ脱ぐだけでなく、歌や踊りまでしっかりしていた。しっかりしている上で――振り付けの一環として脱いでいる、という印象である。変な劇場で酷いことをさせられているのでは、という心配は杞憂だったのかもしれない。

 そして、ついに晴恵ちゃんの番がやってきた。しかし――!?

 

【特訓マーチ】

作詞:このきのこ

 

特訓 特訓 特訓!

特訓 特訓 特訓!

特訓 特訓 特訓!

人生 特訓です!

 

特訓 特訓 日々特訓

恥ずかしがらず

 

特訓 特訓 誰にも負けぬ

強き精神力(ココロ)を

 

特訓 特訓 脱ぎ捨てろ

その身ひとつで

 

けれど だけど まだ届かない

覆面だけは

 

見せよ その素顔

脱げよ その衣装

 

特訓 特訓 それが人生

日々特訓です!

 

 勇ましい歩調とともに現れた晴恵ちゃんは――覆面――!? 他の踊り娘たちはみな素顔だったが、何故か彼女はプロレスラーのようなマスクを着けている。しかし、仰々しいものではなく、ウサギの鼻口にヒゲまで描かれており、側頭部からはピョンピョンと長い耳が――しかもリボンまで着けて可愛らしくあしらわれ――けれど、その衣装は次々と脱いでゆき――やはり、他の出演者と同様の全裸に――

 ご両親の意向は重々承知していただけに、自分としてはやや複雑なところはある。教育者の端くれとしても。だが、それと同時に――授業中に見せていた自らを鼓舞するような作り物ではなく本物の笑顔――このような形であっても、晴恵ちゃんは楽しそうだった。いや、晴恵ちゃんだけでなく、出演していた他のお友達も。だから、これで良かったのだろう、と僕は納得することにした。晴恵ちゃんが納得しているのだから、僕が納得しないわけにはいかない。このステージは言葉では伝わらないから――晴恵ちゃんが僕を招待してくれたのは、そういうことだったのだろう。

 すべての演目が終了し、会場も明るく……なるのかと思っていたが、暗いままドラムロールが始まる。最後に何か重大発表でもあるのだろうか。

 そんなことを考えていると――

 ――カッ

 自分の席に向けて眩いばかりのスポットライトが打ち下ろされる。目も眩むような真っ白な光の中で――

「お久しぶりですっ、先生!」

 教え子の声が聞こえてくる。

 そして。

 人影によって熱い光が遮られたことで、僕はようやく目を開けることができた。そこに立っていたのは――

「突然で申し訳ないのですが……私とおセックスをしていただけないでしょうかっ」

 先程までステージにいたはずの晴恵ちゃんが――僕の目の前に――そのままの姿で――

 

       ***

 

 あまりにも突然だったので、僕としても少し混乱している。ステージの上で踊る裸の晴恵ちゃんはとても可愛らしかったけれど――間近で相対すると、熱さというか、迫力のようなものを感じてしまう。

 手を取られて――手をつないだまま席を立たされ、そのまま関係者用の扉をくぐって舞台袖へ。様々な大道具小道具が並んでいるその先は暗い。おそらく緞帳の下りたステージなのだろう。

 そこで、晴恵ちゃんは元気よく僕に説明を始める。

「先生は『まな板ショー』というものをご存知でしょうかっ!?」

「い、いや……不勉強で……申し訳ない」

 ストリップショーといってもダンスショーのひとつ――その程度の認識で会場に来ていた。だが、席に座って観るだけではなく、特別な何かがあるようだ。

 僕の返事を聞いても、晴恵ちゃんがガッカリする様子はない。晴恵ちゃんは――いつだって真っ直ぐで――それでいて、最短距離で――

「まな板ショーとはですね、ステージの上でおセックスを披露するショーなのですっ」

 ……どうやら、先程座席で耳にしたのは聞き間違いではなかったようだ。おセックス――『お』を付けたところで行為そのものは変わらない。僕が、晴恵ちゃんと――セックスを――?

「どうして……僕と……?」

 晴恵ちゃんには、きちんと一から十まで説明しないと曲解されてしまう可能性が高い。だが、僕の中でもまだ考えがまとまっておらず、つい中途半端な問いになってしまった。

 だから、的確な答えが返ってきたのは幸運だったのかもしれない。

「それはですねっ、私が先生を指名したからです! ……あ、皆さんには内緒にしていてくださいねっ」

 どうやら、本来は厳選なる抽選によるものらしい。とはいえ、このような劇場だけに、踊り娘さんの意向でどうとでもなるようだ。

「ステージ上から先生がいらっしゃっていることに気づいて……先生とでしたら、最高難易度の特訓に挑戦できると思いましてっ」

 まな板ショーというものが行われることは、彼女の中では――この劇場では当然のことであり――そのうえで、僕が選ばれたのは彼女の意思であり――『最高難易度の特訓』――その説明を受けたところで、僕に拒む理由はなかった。良心の呵責はある。けれども――僕たちはすでに大人同士の関係であり――あとは、僕の気持ちを整理するだけ、ということだ。

 

 僕たちがホール側に出る際にも幕が上がることはない。左右から閉ざされた緞帳の隙間をひとりずつくぐり抜けていく。そのため、我らの登場は華々しさよりもやや控えめな雰囲気となった。

 ストリップ劇場特有の特殊舞台――客席中央の円形舞台へと向かう通路は狭いけれど、ふたり並んで歩くことは十分できる。裸の女のコと手をつないで――風俗に行ったことはないが、こういう感じなのだろうか。

 そして、その先端へと到着。そこで晴恵ちゃんは僕の足元に跪いた。

「では、拝見させていただきますっ」

 そう言って、僕のズボンをカチャカチャと外し始める晴恵ちゃん。このときになって、僕はしまった――もう少し詳しく段取りを聞いておくべきだった、と慌てる。全裸であっても晴恵ちゃんは晴恵ちゃん――教え子の頃の印象が拭えておらず――

 ――でろん。

 晴恵ちゃんが上から下まで素っ裸である以上、股間ひとつで僕が狼狽えるわけにはいかない。だが――ならば、せめてち(・)ゃ(・)ん(・)と(・)したかった。が、人間の気分は急に切り替えることなどできず――きっと、会場の皆々様はこの『まな板ショー』についてきちんと理解しており――ゆえに、期待する形(・)状(・)というものがあったはずだ。僕は、それに応えられていない。これには晴恵ちゃんもガッカリしただろう。全裸で寄り添っているのに異性が無反応なのだから。

 だとしても、そんなところを見せないのが彼女の美徳である。

「ではっ、ご準備させていただきますねっ」

 僕の弱々しいところを軽く指で持ち上げ、大きく口を開くと――

「……あむっ♪」

 男の敏感なところが艶めかしい温かさに包まれた。そして、圧迫させるために口をしっかりと窄めて――それでいて、舌は裏側からくすぐりながら――

「じゅるるる……じゅっ、じゅるる……っ」

 その行為に迷いはまったくない。どうやら、晴恵ちゃんはこの道にすっかり足をつけているようだ。重ね重ね、教育者として思うところはある。だが、思うところの外側で、生理的な現象は引き起こされて――

 ドクン、ドクン――

 血流が集まり、晴恵ちゃんの口の中で膨張を始める。それで彼女は、満足そうに僕を吐き出した。そして、立ち上がる。

「では……“アレ”をお願いします……ッ!」

“アレ”とは当然セックス――ではない。その前段階として、僕が幕の裏で頼まれたこと――長年関係が離れていたので“アレ”が何を意味するのかわからない。だが、ふるふると震える緊張した彼女の様子から見ても、余程の決意なのだろう。それは、セックスそのものよりも。

“マスクを取る”――

 ここまで、他の演者たちは普通に素顔を出していた。というか、ホームページの紹介では晴恵ちゃんも普通に出していた。けれど、人前では――ということなのかもしれない。

 晴恵ちゃんはまだ、自分でマスクを外す勇気はないと言う。だからこそ僕が成さなくてはならない。真っ直ぐ気(・)を(・)つ(・)け(・)の姿勢で待つ晴恵ちゃんのマスクに僕は指を掛ける。そして、ゆっくり――ゆっくり持ち上げてゆき――

 間近で見るその顔は――懐かしくもあり、それでも成長した晴恵ちゃんは――綺麗になったね、と声を掛けてあげたいところだ。が、しかし――

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 悲鳴ともいえない気の抜けた息を吐くと、晴恵ちゃんは――ぐにゃり――再び僕の足元に跪く。というより、崩れ落ちる。顔を両手で覆っているあたり、やはりそのあたりを恥じらっているのだろう。

 だが――

 晴恵ちゃんは言っていた。まな板ショーとは、セックスを披露する場であると。本来は踊り娘が上になるからこそ――まな板とは、男の方を指す。しかし、これでは――

 ゆえに、晴恵ちゃんは僕に託した。自分が倒れて動けなくなってしまったときは――

 それは、僕だからこそ託せるという。僕を信用して――務めを――仕事の完遂を――正直、手放しで同意できたわけではない。それでも、ここで僕が逃げては、晴恵ちゃんを裏切ることになる――!

 動けなくなった彼女に代わり、僕が――僕の方から続きを――

 晴恵ちゃんの身体は細くて軽く、両足首を持ち上げると簡単にコロリと仰向けになった。僕の 男根(カラダ)も、未だ力を残している。ならば――後ろめたさに圧し潰される前に――彼女の 性器(カラダ)に向けて――僕は――

「あはぁぁぁぁぁっ!?」

 僕が侵入していくにつれ、晴恵ちゃんの背が反り返っていく。足首から持ち替えた太腿もビクビクと痙攣しているようだ。それでも、 腟内(ナカ)はしっかりと僕を締めつけて――! その力強さを 性感(カン)じながら僕は――必死に――!

「はぁぁぁっ! やはぁぁぁぁっ♡」

 僕を 射精(イカ)せないと、晴恵ちゃんも困るらしい。ストリッパー――踊り娘として。だから、僕は懸命に腰を振る。彼女の目元を押さえる様子は頭を抱えているようでもあり、苦悶しているようにも見えてしまう。それでも僕が続けていられるのは――その声だけは、とても柔らかかったから。

「やっ♡ あっ♡ あぁんっ♡ はぁぁっ♡」

 その両手の向こう側でどんな表情をしているのか――僕には想像することしかできない。ただ、ぐにゃりぐにゃりと 捩(よじ)られる胸は――まな板の上の鮮魚のようでもある。

 まな板ショー――

 晴恵ちゃん、キミは立派にやり遂げているんだ。その様子は――一段低い客席からではよく見えないかもしれない。けれど、全身で伝えようとするその官能は、ホール内すべてに届いているはずだ。

 だから、僕も届けよう。晴恵ちゃんのファンたちの視線が集まるその場所へ。

 

 ビュルっ! ビュルっ! ビュクゥ……ッ!

「はぁぁぁぁぁぁぁん♡♡♡」

 

 すでに避妊という言葉さえも失われたこの時代――このような仕事に就いている晴恵ちゃんが薬を服用していないはずはない。だが、それでも――晴恵ちゃんを思うからこそ。僕は直前で彼女から引き抜き――理性的な葛藤はあったものの、本能的には晴恵ちゃんを求めていたらしい。信じられないような勢いで――お腹から胸の向こう側までしっかりと――身体を汚してしまったことは申し訳ないが、ここでゴソゴソと拭き取っている時間はない。

 ともかく、僕は愚息を仕舞い――ここから先の指示はなかったが、ぐったりしている女のコをそのままにしていくことはできない。なので、小さな背中と細い腿の裏を抱えて。

 それでも、晴恵ちゃんは未だ両手で顔を覆ったままだった。けれど――

「ありがとう……ございました……っ」

 俯いたまま僕の背に両手を回し、胸に顔を埋めながら感謝の言葉を口にする。唇の動きが感じられるほど、ピッタリさせて。

 

       ***

 

 あれからもう一度連絡を取り、僕らは――今度は喫茶店で落ちあうことになった。そこでなら普通に話すこともできるだろう。

 と、思っていたのだが――

「お待たせしましたっ」

 こ、ここは喫茶店だぞ……!? そこに晴恵ちゃんはまた……あの全裸マスクで……! なのに僕以外の客も店員さえも動じることなく――いや、客の方は少しソワソワしているようだが――ともかく、店員の方が何も言わないのだから、僕が何を言うこともないのだろう。

 だが、驚きは顔に出ていたらしい。

「ご心配なくっ。新歌舞伎町ではスマホ決済が基本ですからっ」

 肩から斜めにストラップを通した携帯端末――財布を持っていないことを危惧されたのかと思ったらしい。そちらに発想がいくほど、これは彼女の日常のようだ。裸のまま外出して、この喫茶店まで――その格好を除けば、その立ち振舞いに不自然な点は何もない。

「先日はありがとうございましたっ」

 席に着くなり、晴恵ちゃんは机に突っ伏す勢いで頭を下げる。これに僕は――内容が内容だけに言葉には迷ったが。

「僕も……晴恵ちゃんの特(・)訓(・)を手伝えて良かったよ」

 一先ず、これが最も無難な表現だろう。晴恵ちゃんとしてもそこに異存はなく――だが、思うところはあるようだ。

「どちらかというと、後始末をお願いした形になってしまい……申し訳ありませんでした」

 あれだけのことをして謝られるのはこちらの気が引ける。なので――話題を変えるためにも、僕は本題に触れることにした。

「結局あれは……何の特訓?」

 ここまで予想外の連続であり……何が何だかわからなかった、というのが本音である。だが、こうして再びこの姿で現れたということは、何らかの意図があり――だからこそ尋ねたい。晴恵ちゃんの生きている世界のことを。

「それはもちろん、人前で素顔になるため、です!」

 どうやら晴恵ちゃんは自分の身体――か細い体格を恥じているらしい。他人がどう思おうと自分の価値基準がそうなのだから、それが覆ることはないのだろう。そしてそれは、一般的な量販店の衣服では誤魔化せないほどに。それで、しばらくは不便な生活を送っていたという。

 だが、彼女はあるとき気づいたようだ。細い身体に対して、その顔を見られることが恥ずかしいのだと。ゆえに、顔か身体か、どちらかを隠せば――その結果が、これである。

 本人曰く、マスクは徐々に小さくしているのだそうだ。そして、いずれは素顔で――それほどまでにいまの仕事に賭けているのであれば、僕から言うことは何もない。

「できれば、また特訓をお願いしたいのですが……あ、よろしければここでも……っ!」

 ガタッと立ち上がる晴恵ちゃんに、僕は手を振って着席を促す。この店……いや、この街(・)か? ともかく、どこまでどのような行為が許されるのか――見逃されるのか――僕はそれを知らない。だとしても、晴恵ちゃんの望みは人前でのこと――ならば――

「いや、今度はちゃんとお金を払って、ファンのひとりとして劇場に行くよ」

 あれからきちんと調べてみたところ、まな板ショーは月額会員特典――前回は特別招待か何かだったのだろう。

「ですが、特訓につき合っていただくのですから、むしろ私の方が――」

 そんな弱気な言葉を僕は遮る。やはり、晴恵ちゃんは特(・)殊(・)だった。特(・)殊(・)な生き方しかできない 女性(ひと)だった。ならば――

「キミはもう、プロなのだろう?」

 それを聞いて――晴恵ちゃんは目を丸くする。そして。

「……はいっ!」

 その瞳に曇りはない。だから、僕は彼女を応援しよう。彼女自身が、この道を信じている間は。

 けれど、いつの日か迷うときが来るかもしれない。そんなとき力になれるよう――僕は、晴恵ちゃんのファンであり続けることにした。

 

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