あえる ヤれる アイドル『TRK26』まな板ショー 作:添牙いろは
小学生最後の夏休み、南の島への家族旅行――あくまで国内ではありますが――その物珍しい環境に、自分たち兄弟はもれなくはしゃいだものです。
ただ、あまりにもはしゃぎすぎたため――不覚にもスマホを浜辺に忘れていたことに気づいたのは午後一〇時。いくら南国の夏の夜が短いとはいえ、この時間ともなれば陽も暮れています。
子供が出歩くには少々危険な暗さではありましたが、そこがホテルのプライベートビーチだったということもあり――一〇分後、兄から音声通話を発信してもらう、という手筈で、自分は懐中電灯を片手に深夜の砂浜へと赴いたのでした。なお、懐中電灯はホテルの備品です。
ライトで足元を照らしながら浜に下りてみると、そこは真っ暗ではありましたが、ホテル本館の窓明かりもぼんやりとありましたし――目印となるデッキチェアもそのままでした。なお、デッキチェアもホテルの備品です。目当ての場所へと到着すると、約束の着信を待っておりました。
するとすぐに――
~~~♪ ~~~♪
あとは音を頼りにスマホを見つけるだけです。ちょっとした宝探しのような気分で、自分は音のする方へ懐中電灯をひょいと向けました。すると、そこに映し出されたのは――
「オウッ!?」
まさかこんなところに人がいるとは! しかも、女子――しかも――海辺だから水着……であればまだ理解できます。けれど、彼女は――見るからに同い年くらいでしたが――うっすらとはいえ胸の下には影を落としており――けれど、毛の方はまだ産毛のようで、女のコの割れ目がすらりと自分の目に飛び込んできて――
とっさのことでしたので、自分は驚きのあまり固まってしまいました。裸の女のコに鋭い光を当てたままで。
しかし、女のコの方もまた驚きのあまり固まっていて――というわけではなさそうでした。眩しそうに目を細めて――それでも、両手は身体を隠すことなくゆったりと自然に下ろして――少しだけ、小首を傾げて――少なくとも、怖がっている様子はありません。先に暗闇の中にいた彼女とは逆に、自分は明るい方から――それも、懐中電灯による
女のコは目が慣れたのか、自分の方へとゆったり歩み寄ってきました。そして、鳴り止まない音楽も一緒に自分の方へと。それで、彼女が自分のスマホを持っていることにようやく気づきました。
彼女は何ひとつ物怖じすることなく――ニカっと歯を見せて自分に笑いかけました。裸のまま、女のコの裸をジロジロと凝視している男子を前にして。そして、こちらへとスマホを差し出すと――
「コレ、オマエのカ?」
懐中電灯を持ってこのような場所へ来たのですから、そう察するのも当然ではありますが――それよりも何よりも、裸の異性の前でこんなにも堂々と――!
それに引き換え、自分は何と矮小なのでしょう。
「は、はい……まぁ……」
目を見て話すのが礼儀だったのかもしれませんが……当時の自分は……彼女の胸に――まだ小学生でしたので成人女性のようなふくよかさはありませんでしたが、それでも着実に膨らんでいることは目視でもわかり、乳首もまた――これが女子の乳首か――と男のものよりふた周り以上大きくなっていることもわかりました。
そんな男子からの視線を受けながらも、彼女はまったく動じることはありません。
「ン」
差し出したスマホを受け取ってもらえたのを確認すると、彼女はくるりと身を翻しました。尻は男も女も変わらない――これまではそのように思ってきましたが――少し成長仕掛けていたのかもしれません――たゆんと柔らかそうで――そのお尻を自分は忘れることなどできないでしょう。
けれど、やはり少しだけ女のコの正面に未練があったのを見透かしたように――最後に、彼女はこちらに振り返り――ふたつの乳首と、一本の割れ目を自分へと魅せながら――
「ホテルのみんなには、内緒だゾ!」
自分は骨が外れるほど激しく上下していたようで、首を痛めてしまったことをいまでも覚えています。家族には寝違えた、と言って誤魔化しましたが、それはまったくの誤りです。前の晩、寝ようとしていた時点ですでに痛かったのですから。
***
“ホテルのみんなには”――そこにヒントはあったのかもしれません。彼女との再会は思ったよりあっけなく訪れました。翌日、昨晩の熱が冷めることなく悶々としながら廊下を歩いていると――彼女とすれ違ったのです。ただし、同じ旅行客、としてではありません。少し大きめのホテルの制服を着た彼女はタオルやシーツなどをまとめたランドリーボックスをカートで運んでおりました。
目は合ったと思います。けれど、自分には何も言えず――そして、女のコから声をかけてくることなど当然なく――昨日、あのようなことがあったのです。言葉など交わしようがありません。女のコはまるで、こちらのことなど何も覚えていないような素っ気ない会釈――昨夜の事件など何も気に留めていないような――だからこそ思い出されます。昨日あった胸や割れ目――ではなく――だけでなく――太陽のような笑顔を。内心怒っていたからだとしても――これではまるで別人です。
それで、ダメ元で――ホテルのフロントの人に尋ねてみました。ここでは自分と同じくらいのコが働いているのか、と。
「そいつはー……あー……うちの
失礼だなんてとんでもない! と自分は首をさらに痛めるほど激しく顔を横に振り――その人の胸の名札を何度も何度も見直していました。『くさなべ』――家族で泊まっていたのは『ホテルくさなべ』――彼女は、このホテルの支配人の娘さんだったのです。
***
その裸があまりにも可愛らしかったから――そんな淫らな動機で恋に落ち――いまでも忘れたことは一日たりともありません。義務教育を終え、高校進学の際に、このような離島を選んだ自分を、家族たちは奇異の目で見ておりました。けれども、その理由を話すことなどできようもありません。一目惚れした女のコと少しでも近づきたいから――などとは。
その島に高校はひとつしかありません。ですから、もし彼女が地元で進学していたら――もし島外に出てしまったとしても、何らかの手がかりはあるはず――そう考えていたのですが――
ホテルくさなべにてバイトでも募集してくれればすぐにでも応募したでしょう。けれどもそのようなことはなく――日帰りプランでプライベートビーチにも何度か足を運びましたが、蘭さんと出会うことはありませんでした。子供の頃、偶然出会えたのが嘘のようです。
ただ、この島で暮らしていくうちに素朴な疑問が生じてきました。やはりこのような南の地域だけに日差しは強く、誰しも陽に焼けています。自分にも半袖の跡がこんなにもくっきりと。
しかし、蘭さんには――その姿はいまでもはっきりと思い描くことができます。こんがりと焼けた胸に乗った丸く可愛らしい乳輪――つるりとした割れ目に、ぽよんと揺れていたお尻のふたつの山――そのどこにも、何の境界線もなかったことを。
つまり、彼女は――? 考え難いことですが、もしそうであれば、あの場所にあの格好でいたこと――自分に対する平然していた胆力にも頷けます。けれど一方で、このような狭い島です。そのような奇行があれば、あっという間に島中に広まってもおかしくありません。
結局、島での生活の中で――少なくとも蘭さんが自分と同じ学校に通っているようなことはなく、かといってどこでどのように暮らしているかという情報もなく――ただただ、ホテルくさなぎのプライベートビーチに通うだけの生活が続いておりました。
しかし、その噂はあまりにも唐突で――
草那辺さんとこの娘さんが街でストリッパーに――
***
ただの観光であれば、東京に住む兄を頼っても良かったかもしれません。けれど、自分の目的はストリップ劇場――AV女優も一般的な職業として認知されて久しい二十一世紀末の今日ですが、まさか本名で活動していようとは。どうやら本人に隠すつもりはないようです。己の裸体同様に。
プロフィールの写真を見て、自分は安心しました。見本のようなカットなので胸などはうまく隠されていましたが――見えるところはすべて褐色――未だ全裸で日々を送っているようです。東京という巨大な街で、どのようにしているのかはわからないのですが。
都会に来るのも初めてではないので――とはいえ、地元ではあり得ないような迷宮の数々の前にやや面食らいながらも――自分は到着することができたのです――TRK劇場に。
ホールの中はファンクラブ会員特典であるステージ動画でよく知っていました。狭いながらも中央舞台があり、そこはグルグルと回転するため、座りながら脱いでも全方位に向くことができるのです。
ならばやはり、自分が座るべきは中央舞台近辺――席指定もないため、自分は早めに椅子を確保させていただきました。……いずれにせよ、外にはブロマイドや酒類の販売しかありませんでしたので。
はるばる来たのですから、事前準備も万端です。TRK26とはストリッパー二六人によるアイドルグループであり、基本は数人ごとのグループで唄うことが多いようです。ただ、ソロ曲も用意されており――当日の出演者だけは決まっておりますが出演順は本番まで不確定で、誰と誰が組むかもわかりません。ただ、よく組む相手は決まっており――蘭さんは
期待に胸を踊らせながら……ついにステージが始まりました。
そして、三番目の出演者――それは――!
――蘭さんが――ひとりで――!
普段組んでいる杏佳さんがスクハイの方に参加していたので、もしかしたら――ファンとして、推しのソロステージほど喜ばしいものはありません。
ですが――テクテクと歩いてくるその表情は乏しく、本当にただ歩いているだけ――中央の回転舞台に着くと、音楽に合わせて何となく身体を揺らしているだけ――脱ぎ始めても、音楽に合わせることなく淡々と。それはまさに、あの日の翌日――ホテルの廊下ですれ違ったときのようです。
しかし、ファンたちは知っています。これは、前奏に過ぎないことを。だとしても、自分にはその姿を一瞬たりとも見逃せません。それは、やましい気持ちだけではなく――自分の記憶と目の前の現実を照らし合わせるために。
蘭さんはアイドルらしいジャケットをよいしょと脱ぎ、スカートを下ろし、トップスまで脱いだとき――白い下着姿は小麦色の肌にとても映えていました。
しかし、自分が知りたいのはその先――軽い手つきで外されるブラジャー――両乳房を露わにしているにも関わらず、そこには恥じらいのかけらもなく――そして、水着の跡もなく乳輪から乳首の先まで一様にこんがりと――!
それで、自分は安心できました。きっとこれから下ろそうとしているパンツの中も、間違いなく――
【マッパ de サンバ】
作詞:このきのこ
裸になろうよ 男のコ
恥ずかしがらずに 女のコ
アダムとイブの気分で
南の島・ま・マッパ de サンバ
ヤシの木の上に 広がる青空
たくましく
白波漂う 潮騒の器
しなやかに
みんな手を取り合い 抱き合って
男だとか 女だとか 丸投げて
裸になろうよ いますぐ
恥ずかしがらずに どこでも
余計なものは 脱ぎ捨てて
生まれたまま・ま・マッパ de サンバ
最後の一枚をぽーんと蹴り飛ばすと――まるで子供に戻ったかのように元気になる蘭さん――その歌声も踊りも子供のようにハツラツとして――けれど、しっかりと成人していて――自分の中に、子供の頃の姿がはっきりと残っているからこそ違いがわかります。胸の膨らみはここからでもしっかりと見て取れ、一本筋だった割れ目はちゃんと毛で覆われており――けれども、面影だけは残しており、いまでもあの蘭さんであることはわかります。
長年の時を超えて――あの蘭さんと再会できたのだと自分は感激に浸っておりました。
そして、カーテンコール――出演者の面々が、全裸で勢揃い――ここではイチイチ脱いでいくことはありません。最初から何も着ずに――蘭さんの笑顔を曇らせるものはなく、両胸を弾けさせて――やはり、観に来て良かったです。モニタを通じてではなく、生の蘭さん――やはり、蘭さんは裸になることで輝くのでしょう。
幕が再び閉じ、心地よいドラムロールの中で、自分は瞳を閉じて思いに耽っていました。次来れるのはいつになるのか――こんなことなら、東京の高校に通っておくべきだったか、などとぼんやりと。
しかし――ふと熱を感じて目を開けると――視界は真っ白になっておりました――
***
確かに開場前――むしろ、前日までは、もし自分が選ばれたら――そんなことを考える余裕もあったような気がします。ですが、現地に到着してからは、本番が楽しみすぎて――またあの蘭さんに会えるのだと思うと、そのことで頭がいっぱいで――そして、いまのその姿に出会えたことで満足してしまい――
けれども、自分の気持ちは固まっています。係の女性に連れてこられたのは幕の閉ざされた薄暗いメインステージ――ひとり残された自分は、ここで服を脱ぎました。下着まで一枚も残さず、すべて。あの日、蘭さんが見せてくれたあの姿を思い出すと
自分は意を決して――カーテンの向こう側へ――!
……当然、拍手喝采で迎えられるようなことはなく――それでも、自分を照らす光だけは、地元の太陽を彷彿とさせます。
そんな白い視界の先に――
「オゥ!」
先程まで遠くで見ていた――成長した姿の蘭さんが――こんな近くに――!
あの日、自分は完全に飲み込まれていました。けれども、今日は違います。一歩一歩、確かな足取りで歩み寄り、そして――彼女の前に立ちました。初めて出会ったあの日のように。
そして、彼女もまた、あの日のように。まさに、スマホが手渡せるくらいの距離まで。
しかし、次の瞬間――!
「アムッ!」
蘭さんの唇が――自分の唇に――!? 胸には胸が押し付けられ、自分の股間は――息子は――蘭さんによって握り込まれ――
「ハムムムっ、アムムムっ♪」
こ、これは……まるで大きな犬にじゃれつかれているような――いえ、もはや捕食――何も言えないよう唇で口を塞いだ上で、男の敏感なところを的確に狙い撃つように――
「ハムっ、ハムッ、アムンッ♡」
そそそ……そんなに引っ張られては……女のコの細い指が、傘の裏側をひっくり返すように……! それに、口の中も……舌も……こんなに、掻き回されては――胸に当たる柔らかさも心地よく……蘭さんは自分の乳房に手をあてがうと、その先端を操って――女のコの乳首で、男の乳首をクリクリと撫で回し――
こ、こんなのは――初めてです――! 自慰のような雑なものではなく、全身を――外から、中から――押し寄せる官能に耐えきれず――自分は――
――グラリ。ペタン。
まさか、男の自分が腰を砕かれてしまうとは。自分が尻餅を搗くと、その上から蘭さんは狙いすましたように男の股間へと乱暴に座り込み――股の下に手を伸ばして、男の尖ったところを――その角度を、女性自身に合わせると――
「オオオオ……ッ♡」
え……? こんな……簡単に……? ずっと憧れ、思いをひきずっていた相手が――相手の
感慨深さを打ち砕くような、ニヤリとした蘭さんの笑み。そして――
「いいモノ持ってるナ。これは楽しみだゾ」
そう言ってこちらの肩を掴むと、そこを支えとして腰を上下に……!
「オッ、オッ、オオオオ……っ」
ズンッ、ズンッ、ズンッ、と蘭さんの重さが――男を軸にして、そこから抜けることなく――ぬるぬると締めつけながら、男の
「いいゾ! いいゾっ! オマエ、オマエ……オオオオ……っ」
何とか上体は両腕で支えてはいますが――こんなに激しく愛されては――けれど、耐えています。可愛らしく踊る蘭さんを眺めていたくて。水着の跡のない美しい小麦色の両胸と、真夏の太陽のような明るい笑顔を。
「早く……
求められるまでもなく、自分の
「オオオオオオオオッ♡♡♡」
「オォ……オォ……オォ」
蘭さんはくたりと脱力しました。男からの迸りには満足してもらえたようです。
しかし、すぐに蘭さんは活力を取り戻して。
「ウン、やっぱり、良かったゾ!」
ギュッと抱きしめ熱い口づけを――しかし、こんなことをされてはこのまま二回戦にもつれ込みたくなってしまいます……!
とはいえ、それはタイムテーブル的に認められず、係の人の気配を感じると、蘭さんはまるで発射台から打ち上げられたロケットのような勢いで――幕の方ではなく、そのまま客席へ飛び降り、さらには滑るようにロビーへの扉を押し開くと――同時に響き渡る係の人の怒声。
「草那辺さんを止めて! 社長は入口を!」
この慌ただしさ――その切れ端くらいはアーカイブでも観たことがありましたが、そのあたりで動画は切られてしまうので――あれは舞台演出ではなく、本当に――蘭さんの暴走だったようです。
何故ならば――彼女の肌はこの街でも褐色一色なのですから。
***
当然、劇場でのことは誰にも話すことなく――秘密の旅行を終えて、自分は島へと戻ってきました。
連休をすべて使った小旅行ではありましたが、所詮は三連休です。滞在時間のほとんどない弾丸のような旅程に、クラスメイトからは何をしに行ってきたんだ、と根掘り葉掘り聞かれてしまいました。ファンのアイドルのライブがあった、と同日あった別のイベントを挙げて誤魔化しておきましたが……次は学校の長期休みに赴きたいものです。ただ、その際には東京に住む兄の世話になりそうで……そこでも同じように根掘り葉掘り聞かれるのでは、と心配にもなるのですが。
さて、そうはいってもこの程度の話題はすぐに飽きられ、週末の休みになると――特に予定のなかった自分は、とりあえず朝カーテンを開けてみました。まだ和らぐことのない刺すような陽射しが部屋の中へと流れ込み――自分は、蘭さんのことを思い出していました。東京にありながら、あの肌の色を保っている蘭さん――それは、きっと――
蘭さんのことを思い出し、自分は服を脱いでいました。パンツまで一枚も残すことなく。そして、ベランダに仰向けになり――
きっと蘭さんは、こんな姑息な――ここなら誰にも覗かれないから――そんな場所で裸になっているわけではないのでしょう。誰がいようと、誰に見られようと怯まずに――それでも、この小さく狭い島で噂にならなかったのが不思議で仕方がないのですが――けれども、はっきりと思い浮かべることができるのです。都会の淡い日差しの下、裸のまま素肌を晒している蘭さんの姿が。
自分がこうして肌を焼くことに意味はありません。ただ、もし今度蘭さんと出会うことができたなら――恥ずかしくない姿でありたい――そう思ったのです。