あえる ヤれる アイドル『TRK26』まな板ショー 作:添牙いろは
彼女が無愛想なのは、アイドルとしてのキャラ付けだと思っていたのだが。
「――ああ、そういうサービスは劇場に来てくれないと。
そのサイトを見かけたとき、最初は普通にAVブランドかと思った。アイドルモノを取り扱っている類の。
しかし、それは――
演技や脚本ではない――実在するアイドル・ユニット。
ただし、ストリップ・アイドル・ユニット。
ストリッパーがアイドルをやっているのか。
アイドルを脱がしているのか――
ともかく、現役アイドルがデリヘルで働いているという世紀末な状況がここにある。しかも、別に秘匿しているわけでもないらしい。本人のブログに出勤予定が書いてあったから。
しかし……予約は大変だったぞ。あまりシフトに入っていないということもあり、大学の講義のないタイミングと合わせたら一ヶ月もかかっちまった。
とはいえ、せっかくのメイドデリヘルだが――俺は別段メイドに興味などない。そして、優さんもメイドに興味はなさそうだ。本人曰く、オタク相手ならチョロいと思って――だが、実際はそう上手くいくこともなく、稼ぎが低迷していたところをTRK劇場に拾ってもらった、とのこと。つまり、デリヘルの方が先だったということだ。
ともあれ、お互いメイドに興味はないけれど――とりあえず、ジャブとして。TRKは二六人もいるだけに、ユニット内ユニットというのも存在する。その中のひとつ、メイド三人組による『
「悪いけど、デリヘルの方はプレイサンプルみたいなものでね」
優さんはそれ以上詳しい説明をしない。しなくてもわかってるでしょう? と言いたげに。むしろ、そこから先を自分で調べないような男が『ファンクラブ』に入るはずがない――そういうことなのだろう。もちろん、俺もそのあたりの事情は承知している。何故なら――俺は優さんのファンなのだから。
***
TRKにはメンバーごとに個人ファンクラブが設けられている。それに入会すると、対象のアイドルが登場する回のアーカイブ動画が見放題とかチケットの抽選で優遇されるとか、そういう特典はあるけれど――やはり、最たるものは『まな板ショー』の抽選権だろう。
『まな板ショー』とは、音楽ライブの後でファンの中からひとりステージに招待され、そこでアイドルと本番行為を行えるというもの。ファンクラブ会員のほとんどは、これを目当てに入会しているといっても過言ではない。
俺は優さんのファンではあるのだが――正直、デリヘルでセックスできるのにわざわざ劇場に足を運ぶ必要があるのか? と考えるとやはり食指が動かない。そもそも、ステージだけなら他のアイドルと一緒だ。……いや、普通のアイドルはステージ上で脱いだりしないけど。ただ、同じ脱いでもらうなら遠い壇上より目の前で裸になってもらった方がいいに決まっている。そう考えると……ステージやまな板ショーはデリヘルの下位互換のような印象しかない。
しかし、唄ったり踊ったり――『アイドルとしての渋長優』を求めるのなら劇場で――そういうところは本当にしっかりしている。そして、劇場に赴く以上、観るだけ終わり――などと欲望を中途半端にしておきたくはない。たとえ、その先が抽選だったとしても。
ということで……チッ、結局俺は高額なファンクラブに入会するしかなかった。クソっ、もしまな板に当選したら、すぐさま解約してやるッ!
そんな恨めしい想いを抱えながら、俺は劇場へとやってきたわけだが――
【無為なる遊興】
作詞:このきのこ
白い時間集めて
黒い不安束ねて
すべてこの手の中で
光となり果てる
天に祈り仰げよ
無駄な弁解(ことば)閉ざして
煉獄(ほのお)に捨て去る
愛のラルゲット
神の光は届かない
罪の傷だけ濡れる
氷却(ひ)えた霧の先は刃
踏み躙る慟哭
その柩 誰が抱擁(いだ)くのか
この牙つき立て 御霊を喰らおう
赤い未来掴んで
青い嘆き重ねて
何もかもを包んで
闇の中へ還す
甘い希望(のぞみ)忘れよ
無駄な現実(とき)を砕いて
氷河に鎮魂(ねむ)れる
夢のアニマート
平等(ひと)しい時間(とき) 取り戻して
穢れなき 安息を
――実際に優さんのステージを前にして――何故、あの場でプライベートライブを魅せてくれなかったのか、その理由がわかった気がする。脱ぐだけならデリヘルで呼んで脱いでもらった。しかし――この歌も踊りも、このステージのために積み重ねてきたものである。それを、ステージの外で披露してもらおうなどというのが甘かった。そして、動画ごときで満足したつもりになっていたことも。この音響、この照明――この舞台で唄い、踊り、そして――脱いでいく優さん――衣装だって、デリヘル用の簡単なメイド服ではなく、しっかりとしたステージ映えする黒のゴスロリである。
そして、俺はいまさら思い出した。俺がファンになったのは――この姿の優さんだったのだと。
そして、すべての出演者が唄い終わり――カーテンコール。全裸の女のコがずらりと並ぶのはさすがに壮観だ。その中でも、優さんは目立たない。他のみんなが手を振ったりして客席にアピールしている中、ただただ棒立ちである。
しかし、それでこそ優さんだ。皆が動いている中での『静』――だからこそ際立つし、観る人は観る。それは、俺のように。
そして、幕が下りて――ドラムロール――抽選――ファンの中からステージに選ばれるための――それに――それに――!
――スポットライトに照らされながら、俺は――これが夢か現かわからなくなりそうな心持ちだった。
***
噂では聞いていたけれど、優さんは……ぶっちゃけメンバー内での人気はイマイチらしい。まあ、当然だろう……と言えるのは、俺が揺るぎない優さんのファンだからだが。他のコを推してる連中に言われたら、さすがにイラっとするぞ。
ともかく。
優さんの、あの――良くいえばクール、悪くいえば仏頂面――あまりにもアイドルらしくないがゆえに、ニッチな層にしか刺さらないのは仕方がない。だが、おかげで競争率も低く、俺は幸運にも選ばれたということだ。今度こそ、アイドルとしての優さんと……アレコレできる相手に。
俺の推しは優さんではあるが、他のメンバーのまな板ショーを観ていないこともない。幕の中から一緒に出てくるパターンもあるが……優さんがソロでそんな丁寧な対応をすることもないだろう。俺が案内されたステージはただ薄暗く、無人。ここで脱いで行っても良い、と脱衣籠は用意されている。まあ、人前で下着を脱いでいくのは恥ずかしいものがあるからな。
しかし、俺くらいになれば、そんなものは余裕である。むしろ、女のコから淡々と脱がしてもらえるところまで含めてプレイであるといいたい。ということで、この場でできることは特になく、俺はそのまま――左右から閉ざされた幕の間を通って外へ出る。
しかし――
――うをぅっ!? こ、これは……風俗には慣れた俺でも、ステージには慣れてねーぞ。幸い、みんな花道の向こうの盆――客席中央の張り出し舞台に立っている優さんに注目してくれているから、それほど緊張もせずにも済みそうだが。
さほど豊かでもない胸の下で腕を組み、俺を待ち構えている優さんは――カーテンコールのままの全裸だ。正確には、眼鏡はかけている。それと、袖袋やブーツなども。ただ、胸や股間には何も着けず――メイドデリヘルでもタイツは残してもらったが、あのときのような作り物感はない。それは、優さんのまとっているのはアイドルとしての残滓であり、ここがステージの上――お芝居や演出などではなく本物のアイドルとしての活動場所だからだろう。
音楽の中で脱いでいっている間ならともかく、ステージが終わってしまったら、それはもはや――などと懸念していたものの、アイドルって脱いでも意外とアイドルなんだな。直前まで衣装を着たり脱いだり唄ったり踊ったりしていたイメージが脳裏に焼き付いているからかもしれない。ともかく、前にホテルで会ったファッションメイドとは違うとひしひしと感じている。そこにいるのは、アイドルとしての優さんなのだと。
『……フッ、来たわね』
言い回しが台詞っぽいこともあり、マイクを通した大音量で話しかけられると、すべてが台本通りのような気もしてくる。だから、俺のことを覚えていてくれたのか、それともファンのひとりとしての対応なのか――いずれにせよ、優さんに迎え入れてもらえたことはとても嬉しい。
だが、続きはマイクオフで淡々と。
「じゃあ、そこに寝てくれる?」
一応マットは敷いてあるが、緩衝材というより目印という意味合いの方が強そうだ。ともかく俺は、そこに寝る。すると、優さんもすぐさま俺に続いた。いや、寝はしないけど。寄り添うように俺の隣に座り込んだという意味で。
こうしてズボンを緩めて、パンツを下げて――愚息に触れてもらうのはこれで二度目だ。
『ん、ん、ん……あんん……』
深く咥えながらも足に胸を押し付け――マイクは再び入ってるため、この吐息は客席にも伝わっている。が、女のコの柔らかさ、ズボンを通した温かさは俺だけのものだ。
『……ふぅ、それじゃ、そろそろ私も楽しませてもらおうかしらね』
前戯もそこそこに、顔を上げた優さんはそのまま身を起こすと――ゆらりと俺の上へと乗り上げる。そういえば、デリヘルのときには普通にホテルということもあり、普通にベッドだったから、普通に俺が上になってたっけ。普通の流れで。他のデリヘルでもそんな感じだったし。なので、下になるのは珍しいかも。
だが、こうして――推しを見上げて思う。楽しそうだと。基本的に優さんは表情を作らない。風俗嬢としての仕事中であっても、アイドルとしてステージに立っているときでさえも。
しかしいまは、優さんから確かな熱を
『ふっ、く……ん……♪』
こ……れは……! 我ながらものすごいシチュエーションだと思う。何故なら、相手はアイドルなのだから。アイドルに――犯されている――いや、これはむしろ、襲われている、というべきか。相手がメイドや風俗嬢ならサービスっぽい雰囲気にもなるだろう。だが、これはまるでアイドルに喰われているような――思えば、それが優さんの魅力である。アイドルとして笑顔を振り撒くようなタイプではなく、我々ファンがアイドルに従う――この身を差し出して――!
『ふふ……ふふ……そんなモジモジして……
焦らしてくる優さんではあるが、決して女王様というわけではない。こちらに懇願を求めるようなことはなく――ただ、己が欲するままに欲するだけのこと。
『はぁ……うぅん……♪』
その動きは控えめというべきか。激しい上下ではなく、どちらかというと
『はぁ……あはぁ……ん……ん……いい……いいわよ……っ』
それは、優さん自身が
『
男に快楽を貪れということでもなく――
ビュル……ッ!
下から見上げる優さんは可愛らしく、美しく――そして、その局所的な抱擁は力強く、温かく――俺はあっという間に果ててしまった。それでも。
『ふっ、くぅん……っ、
それを承知の上で、優さんに止めるつもりはない。むしろ、気分が昂ぶってきたのか、自ら乳首を――つながりっているところは、その割れ目の中を――
『あはっ、あぁんっ、まだ……もっと……!』
こっちはすっかり
『あっ、あっ、あぁっ、あはぁ……♡』
自らを慰める指つきは激しく、呆然とした男を見下ろす視線は邪に――それもまた、艶めかしく――だから、俺の
ビクビクビクビク……ッ!
『くっ、んっ、ん……あん……っ♡♡♡』
優さんの動きが止まった。けれど、それは外から見えるところだけ。俺だけがわかる優さんの
***
ともかく、俺の目標は達成された。アイドルとしての優さんとセックスする――もちろん、二度三度と相手をしてもらえるのならそれに越したことはないが、そのための出費としてファンクラブの会費はあまりにも大きすぎる。
ということで速やかに退会し――その翌月、今度はメイドデリヘル嬢としての優さんと。相変わらずあまり出勤してくれないが、幸いこっちの大学も休みに入っているため時間指定の融通はわりと利いた。
が、いざ会ってみると――
「……あら、今日は元気ないわね」
以前のことを覚えていてくれたのは嬉しいが――いや、会う前までは元気だったのに。だが、いざこうして再会して、いざ合体というところで――どうしたというのだ、俺のムスコは……!
風俗嬢の方としても、客が
それで、優さんも仕方なく。
「~~~♪」
おおお……っ! 軽く口ずさみながら踊ってくれているのはあの日聴いた優さんの持ち歌……!
前は頼んでも魅せてくれなかったプライベートライブを……! これにはムスコも大喜び!
だが。
「……はい、無料サンプルはここまでよ」
やはり優さんは甘くない。アイドルモードが終了すると、ムスコもヤる気をなくしてしまう。
あぁ……やはり俺は、アイドル・渋長優のファンなのだ。一度の交わりで満足するどころか、本物の優さんを知ってしまったことで、俺の煩悩はすっかり贅沢になってしまったのだろう。
そして、そんな客に対して優さんは……とことん甘くない。
「どうする? 口や手でならご奉仕してあげるけど、
ここではあくまでメイドデリヘルのメイドとして。その範疇でしかサービスはしてくれないらしい。
と、いうことで。
この場では劇場から配信されている優さんの動画を観ながらどうにかヌいてもらったが……やはり、ファンクラブに再入会するしかないのだろう。何故なら、俺は優さんのファンなのだから。