あえる ヤれる アイドル『TRK26』まな板ショー 作:添牙いろは
どうにも、自分には自分の意志がないように感じております。義務教育を終えての進学先選び――次々と決めていく兄たちを前にして、そのうちの誰かに追随するようなことをしては特定の兄を特別視していると勘繰られるのでは……と消去法で選んだのは東北の――こんなことをいうのも失礼ではありますが……まさか、ここまで何もないとは。いえ、我々が生まれ育った街もそこまで栄えていたわけではありません。が、車無しでは生活できないとはこのようなことか、と実感している次第です。
かといって免許を取得する気にもなれず――移動は学校と自宅の往復だけ――スーパーは学校の前にあるので生活に必要な品々はそこで調達し――あとはだらだらとオンラインゲームに時間を費やす日々で。
これまでは兄たちに揉まれながら賑やかな生活を送っていたというのに、そこから一転して淡白な独り暮らし――自分の学生生活は本当にこれでいいのか――少なからず不安になりつつも結局何も変えられず――
そんな折に――そのオンラインゲームにて『トレード依頼』――しかし……うーん……? 条件は申し分ありません。けれど、良すぎるのです。本来ならもう一ランク上の素材を要求してくるものなのですが。
嫌な予感がしたので、相手のユーザー名『shiki69』を調べてみると……ああ、やっぱり。チートで生成したアイテムをトレードに出しており、もし取引に応じていたらこちらの方がBAN対象となるようです。……ふぅ、危ういところでした。
しかし。
どうやらこの『shiki69』というユーザーは様々なゲームで悪行を働いている……とのことだったのですが、中のプレイヤーは同一人物ではないようなのです。
そのユーザー名の源流はむしろ優良プレイヤー――でもないようで……どうやら様々な男性プレイヤーと痴情のもつれを起こしており、その腹いせに男側が同じユーザー名をつけて悪行を働いている……というのが実情とのことです。
そして、数多の男性プレイヤーからの恨みを買っている女性の名は――『
最初は、男としての興味に過ぎなかったのかもしれません。しかし、彼女の――紫希さんの動画やお仕事――『桃色魔王と無気力勇者』という作品ではエロチックな悪役を演じ――こんな可愛くてエッチな女性がオンラインゲームに――まあ、自分にトレードを持ち掛けてきたのは偽物のようですが。
紫希さんは様々なゲームに手を出している、とのことなので――本物と偽物のリストは当然出回っています。……ふむ、『ファンタジック・アカデミー』なら自分もプレイしております。紫希さんはギルドも運営しており……しかし……うーむ、やはり満員のようですね。けれど、時折誰かが抜けることはあるようですし、タイミングさえ合えば……!
それから自分はクレリックとしてレベルを上げて――もちろん、プレイングの腕前も上げて――これまで惰性でプレイしていたゲームに張り合いもできて、妙な方向で生活も充実してきました。
何か月か粘っていたところ、運良くギルドに加入することもでき、メンバーの回復に努めておりましたところ、紫希さんの方からまさかのフレンド申請が……!
あまりにも嬉しすぎて、緊張のあまり何を話したらいいのかもわからず――何かお声をおかけいただいても、こちらからの返信は『もちろんです』『ありがとうございます』ばかり。
なので――『今度、劇場にも観に来てね』――これに対する自分からの返事は『もちろんです』――片道何万円かかるかわからないというのに。
***
もちろん、自分の言葉に偽りの気持ちはありません。紫希さんの舞台はすぐにでも観に行きたい――
けれど――
スケジュール表を見ても、その名前はほとんど入っていないのです。月に一度か二度……多くても三日。懸命に申し込みはしてみたものの、なかなか当たってくれません。
しかし、今月に入って出演予定が急増し――おそらく、二月の雑談メンバーに選ばれたからでしょう。……あ、『雑談メンバー』とは、TRKのメンバーが出演している雑談コンテンツ『お風呂行進曲』の担当のことで、これに選ばれるとその雑談だけでなく、様々なお仕事にプッシュされるのです。劇場への出演もその一環といえます。
その恩恵を受けて自分にも幸運が巡り――いざ、東京へ――!
――しかし――
「……え?」
劇場のロビーで改めてスマホで今日の出演予定を確認しました。確かに、『姫方紫希』の名はそこに連ねられています。
ですが――場内の掲示板の出演プログラムは――紫希さんが出るはずの三番手には四番手の『
しかし――当日とはいえ、開幕前に欠場を告知していてくれた劇場の心遣いには感謝します。もし、紫希さんの出番になって別の方――次の方へと飛ばされてしまったら、我々紫希さんファンは――『ああ、やっぱりか』と諦観するかもしれませんが――せっかくのライブ中にガッカリすることは免れませんでしたから。
もちろん、いまもガッカリはしています。けれども、気分を一新して臨むことができます。けれども……まあ、何というか、最前列はちゃんと出演する女のコのファンに譲り、自分は端の方へ。皆様の邪魔にならないように。思うところはありますが、劇場でしか買えないグッズもありますので、遠方からはるばるやってきた意味はあったのでしょう。
それに何より、これ以上へしょげていてはこれから出演する女のコたちに失礼です。主な応援はそれぞれのファンたちに任せるとして、自分も自分なりに、やんわりと見守らせていただきましょう。
TRKの舞台は、歌や振り付けにも手を抜かないことで知られています。グループ自体が最近できたばかりということでスキルが追いついていないところは否めませんが、それでもしっかりと――衣装もしっかりと着込んでスタートし、曲の進行に合わせて脱いでいく――そして最後は『盆』と呼ばれる客席中央まで張り出した円形舞台で全裸に――ここまでしっかりと流れを作っているからこそ、ヌードモデルがアイドルに扮しているのではなく、アイドルがヌードになっている、と感じられるのでしょう。
開演直前の告知通りにステージは進んでゆき、大トリの『みにマクっ』の三名が締めて――結局自分は紫希さんには会えませんでした。しかし、他のメンバーのステージは満喫できたと思います。今回は、素敵なステージが観れたということで納得することにしましょう。
そんなカーテンコール――全員全裸で勢揃いですが、そこにも紫希さんの姿はありません。もちろん、皆々美しいお姿ではありますが――やはりそこに一抹の寂しさを感じてしまうのは仕方のないことなのです。やはり自分は――紫希さんのファンなのですから。
女のコたちが並んで一礼して――あとは幕が閉まるだけ――というところで――
――この曲は――!?
【電脳Fxxker】
作詞:姫方紫希
終わらない夢 ここにあるから
望むすべてが 望まなくても
寝ても覚めても みんなとろける
奥のオクまで 気持ちイイこと
うれし恥ずかし 甘い誘惑
過去も未来も 全部忘れて
ここでフニフニ ナニもムニムニ
触れて見せてよ ももいろ世界
Don't be shy! Don't be shy, my dear!
Don't hesitate, my baby!
Don't tease me, I'm so horny!
Come on fuck me! Come on fuck me!
Touch me! Touch tits! OK?
Kiss tits! Suck tits! Oh Yah!
Fuck me, fuck my pussy!
Come inside me deeper!
It's amazing, we make crazy!
Coming soon, coming soon, OK!
Never outside! Cumshot must inside!
More harder! More harder!
Endless while your life!
Breakdown hearts and something!
Give you over ecstasy!
Because I'm the CYBER-FxxKER!
難しいこと考えないで
いまが気持ちよければいーじゃん
ここでのふたりは特別な時間
甘えてイチャイチャイチャしよーよ
ガマンも遠慮も何にもいらない
スキなとこにスキなことしてよ
イキたいとこまでイカせてくれたら
どんなことだってシてあげちゃうから
外は悲しいことばかりの世界
嘘と裏切りであふれてる
もういいよ 泣かないで
目を閉じてよ この胸の中で…
今日は本来紫希さんの出演予定日であり、一定数のファンもいるはずなので――客席のところどころでざわめき始めたのを自分も感じました。何故なら、これは紫希さんのために――『桃色魔王と無気力勇者』に出演した際の紫希さんのシーンをイメージして作られた曲なのですから。
メンバーたちが並んでいる後ろ――袖から小走りで出てきた紫希さんは、作中さながらの全裸でした。全員全裸なので一瞬違和感が遅れましたが――紫希さんが、全裸で我々の前に――! カメラを通しては何度も観てきましたが、直接相対するのは初めてで――! そんな紫希さんは通常の段取りを無視してすぐさま花道を駆け抜けて盆の中央へ――メイン舞台の方はカーテンコール終了といわんばかりに幕が閉じていきます。まるで退路を断たれたような雰囲気ですが、紫希さんに動じる様子はありません。
急に始まったライブパフォーマンスは――まさに規格外といえましょう。他のメンバーがステージ衣装を脱いでいくからこそアイドルだと実感させられたのに対して、紫希さんは最初から全裸で――にも関わらず、そこらのAV女優のようには見えません。かといって、歌も踊りも一級品、とまではいい難く――
――それで気づいたのです。アイドルとは、歌と踊りだけにあらず――ステージに立ち、場を盛り上げてこそアイドル――我々信者たるファンを引き連れていく偶像――それがアイドルなのだと。
最初は戸惑っていた他のメンバーを推している観客たちも紫希さんに釣られて盛り上がり――まさにお祭り騒ぎの様相です。きっとこれが――平然と無断欠場を繰り返しながらもこの劇場に籍を置き続けられる理由なのでしょう。
この出演は本当に急だったようで、楽曲自体もワンコーラスだけ。アウトロの中でポーズを決めていた紫希さんでしたが――その視線の先にいるのは、自分――いえ、誇張なく、紫希さんは間違いなく自分の方を見てくれています。数いる中から、自分が紫希さんを推していることを感じ取ってくれたのかもしれません。何と光栄なことでありましょうか……ッ!
ホールの端から推しの視線に応えていると、楽曲の束縛から解かれた紫希さんは
「紫希、あのちんぽにする!」
これには会場中がどよめき、それだけではなく――
『ステイッ!』
閉じたステージの間から顔を出したのは
そんな理々さんが顔だけでなく身体も――どうやら次の準備に移っていたのか、バスローブのようなものを羽織っておりました。まさに舞台裏、という雰囲気です。そんな理々さんがパタパタと紫希さんのところまで駆け寄って、一言。
『客席に下りるのはナシですっ! お客さんの方をステージに上げますのでっ』
「えー、紫希、下でもいーけど」
理々さんはピンマイクを通していますが、紫希さんは肉声なのでちょっとバランスが悪いような。
『それじゃお客さんから見えづらいですからっ。ショーにならないんですっ』
軽いお説教の雰囲気の中で紫希さんは平然と――理々さんのローブを脱がしにかかっており――そんな胸元を逐一戻す理々さんがちょっと笑いを誘います。
紫希さんは納得した表情で理々さんに性的悪戯を続けていますが、理々さんの方はあまり納得――いや、安心していないようです。
『
理々さんもまた自分の方を注視しておりましたが――背後から大きな気配を感じて、自分は――
「急で申し訳ないのですが、すぐにステージまでご同行いただけますか」
その圧はまるで兄がやってきたかのように錯覚しそうでしたが、彼女は
***
カーテンコールから怒涛の展開ではありましたが――いや、まさかバスローブの理々さんとお話しする機会に恵まれようとは。
「ごめんなさいね、あのコ、無茶苦茶だから」
さすがは理々さんというべきか……全裸の男を前にしてもまったく動じる様子がありません。
さて、僕とてまな板ショーの仕組みは知っています。本来はあのカーテンコールの後で抽選が行われて、ここ、幕の閉じたステージを通って、盆で待つアイドルと対面し、そして、そのー……性行為を。
しかし、今回はとにかく予定外の連続だったようです。少し時間は遡りまして――先ほど、急ぎ足で客席から廊下へ出たところで、立ち止まることなく説明がありました。
「申し訳ありませんが、ステージに着きましたら、すぐに裸になっていただきたく」
先ほどから申し訳ないと口にしながらも、まったく申し訳なさを感じさせないのはある意味すごい――もしくは強い、と表現すべきでしょうか。ただ、自分としては――多少混乱しておりましたが、紫希さんとのまな板ショー――性行為の権利を得られたのですから、劇場側から申し訳なく思われるどころか感謝しかありません。
そして、幕の裏へと到着して、ここで脱ぎながら――
『あーはいはい別腹とかありませんからー』
『つまみ食いとかダメでしょー』
リリさんのマイクの声と、客席からの笑い声だけが聞こえていました。どうやら、理々さんが紫希さんの相手をしていたようです。退屈しないようあの場に留めていたといっても良いでしょう。テレビは観ない、と公言していた紫希さんですが、理々さんのステージスキルもまた本物のようです。
そして先ほど。
『では、待望のおちんぽの準備ができたようなので……ステイ、ステイですよー?』
まるで犬を躾けるような口調で宥めながら、理々さんがここへ入ってきたのでした。
「ということで、すぐにお願いします。あのコ、放っておくとナニするかわからないし」 そんな理々さんの言葉通りに。
「ちんぽ来てんのー?」
最初、理々さんがステイと叫びながらホールを覗き込んできたのとは逆向きに、今度は紫希さんがホールからこちらの方へと覗き込んできて……! 推しを目の前に、こちらは全裸で……!? 少なからず驚愕して、我が息子も猛って良いのか萎えそうなのかわからなくなっておりますが――
「来てますよっ! はいっ、お願いしますっ!」
と理々さんに腰を叩かれて――これはもう、緊張してる余裕さえもありません。ここでまごついていては紫希さんが舞台裏の方へと来てしまいそうなので、自分から紫希さんの方へ――いまは頭しか見えませんが、その向こう側は――
「やーっとちんぽ来たー!」
出会い頭に強く抱きしめられて――自分の身長も低い方ではありませんが、紫希さんは女子にしては大きく――胸も大きく――力強く――
「あん、ん、ん、んむ……♪」
紫希さんはTRKでも随一のテクニックの持ち主だと定評がありますが――キスひとつとっても――これは――!
股間にまで手が伸びてきて、うねうねと細い指先で同時に攻められては――
しかし、そのとき――
――ゴンゴンゴンゴン――
この劇場のステージにはリフトというか動く床というか――花道を通って盆とメインステージを行き来する丸い台座のようなものがありまして――ストリップとは、座ったまま足を広げるシーンも多いので、その姿勢のまま移動するための手段として用いられていますが――それが、幕の間を通って――自分の背後から現れたため、そのままその上に仰向け寝かされるような塩梅となり――
「おっ、いいの来たじゃんー」
紫希さんもひょいと乗り上げたため――ここで行うのだろうと察し、自分は円の真ん中へズリズリと。そんな自分の上に、紫希さんはヌルヌルと這い寄ってきて――
「あむ、はむ、あむぅん……♪」
お、お、お……こ、これは……! 天と地による制約がなくなったことで、紫希さんの狙いどころにも容赦がなくなり――今度交わしているのは唇同士ではなく――し、紫希さんの――テラテラと光っている割れ目が――自分の眼前につきつけられて――
「はむぅ、ん、ん、ん、ん……♪」
こ、これは……とんでもないことであります……ッ! 唇同士でも相当な破壊力を有していた舌先が、自分の最も敏感なところを攻め立てているのですから――自分も、紫希さんの敏感なところを労ってあげたい――けれど――この快感の中では抵抗する力さえ奪われて――
けれど、そんな温もりが急に離れてゆき――
「……っぷふぅ……そんじゃー本番イコっか」
自分の上で身を起こした紫希さん――身体の向きを変え、そんな紫希さんを応用に自分がピンと差し示すのは――男の上に跨っている紫希さんの――紫希さんの――ッ!
「んふふ、さっきからずっと
掬い取るような紫希さんの腰つき――先端が温かく柔らかい女のコに触れたと思えばつるりと滑り――するすると、さらなる深部へと――
「……ぁっ、はぁん……っ♪」
どこまでも吸い込まれそうな感覚ではありましたが――初めて突き当りを
「うんうん……ふふふ……♡」
紫希さんの身体が上下に弾み始め――大きな胸がユッサユッサと揺れ始めたあたりで――こ、これが――セックス――ずっと半ば茫然自失ともいえる状態で、こうして相対していても――あまりにも目まぐるしい事態だったので――欠席と思われた紫希さんが――今日は会えないと思っていたのに、まさか――自分の上で――
「ん、ん……おおー……『ノース』くんかー」
「!?」
な、何故自分のユーザーネームを……!?
「ふふ……うん、うん……紫希のこと、いっぱい応援してくれてありがとーねー」
最初は何のことかわかりませんでしたが……だんだん受け入れられてきました。これが、紫希さんがインタビューやトーク記事で話していた――ちんぽとの会話――紫希さんはセックスすると相手のことが何でもわかる、と豪語していましたが――確かに――その真偽を疑う必要はありません。自分はただ――紫希さんに身を委ねていれば良いのですから。
「あはっ、あはぁん……っ♡ えへへ……うん、紫希も……うん、いいよぉ……っ」
時々頷き、笑い、本当に会話をしているような――そんな紫希さんを見ているだけで――裸の紫希さんを下から見上げてるだけで――豊かなおっぱいを――綺麗な乳首を――自分の男をぬるりぬるりと出し
この幸福感をずっと求めていたくて、自分は無意識に
「ふふ……いいよ……っ♪ 紫希も……
どうやらすべてお見通しだったようで――紫希さんに促されるままに――!
ビュクッ! ドクッ! ビュルッ! ビュクルッ!!
「あはっ、あはぁんっ、やはぁぁぁぁぁんっ♡♡♡」
自分の射精を味わってくれているのか、紫希さんは腰を止め――
「……ま、なかなか来れないだろうけど……来てくれたら優先して相手してあげるからさー」
本当に、すべてお見通しのようです。これはもう――どうにかしてこの劇場に通うしかないだろうな、と――
***
舞台の上では一方的に語りかけられるばかりでしたが、いまでは自分の方からも話せるようになりました。
『すいません、今日はバイトがありまして』
インが少し遅くなる――しかし。
『オッケー。頑張ってね』
紫希さんから励ましの言葉をいただけるのならこれ以上心強いことはありません。
ただ学校に通うだけならば仕送りだけで何とかなります。けれど、自分の生活――いえ、生きる意味はそれだけではありません。東京との交通費を稼いで、紫希さんのライブに――もちろん学業も――卒業後は東京に――!
この地に移り住み、ゲームに傾倒していたからこその出会い――けれど、いまはゲームの世界だけでなく――
これまで兄たちに流されるように生きてきましたが、自分はいま、初めて自分の意志で道を選んでいる気がします。