喜多ちゃんに露出プレイを求められたぼっちちゃんの話 作:転寝ころね
秀華高校。後藤ひとりと喜多郁代が通う学校の中、その日に組まれていた時限の終わりを告げる最後のチャイムが響く。
立ち去っていく教師をよそに解放の喜びを分かち合うような音が至る所から聞こえだす。椅子を引く音、教科書やノートを片付ける音、それらに合わせて必ずと言っていいほど周囲のクラスメイトとの会話が生まれていく。
ひとりも帰路に着く準備こそすれ、そういった会話の相手は居ない。傍に居てくれるのは立て掛けていたギターケースだけだ。
だが、最近はそれ以外のイベントが起きるようになっていた。
「ひとりちゃん、今日はこの後予定ある?」
喜多が教室の後ろの扉から入ってきて、誰にも屈託のない明るい笑顔でひとりへと話しかけてくる。この行為は喜多が意識して交友の回数を増やそうとしている故の結果であったが、そもそもの対人関係に乏しいひとりには伝わらない。
「ない、けど……」
積極的で明るく社交的。ひとりは自分の正反対に位置しているこの行動力が羨ましくもあり、慣れていなかった。嫌な訳では無いが、人は急には変われないのだと心の中で免罪符を口にする。
「それなら丁度良かった♪」
ひとりの反応を聞いた喜多は嬉しそうに手のひらを合わせる。仕草まで眩しいのは太陽の光を溜め込む器官があるのではないかという考えがひとりの脳内へかなり真面目な説として浮かんでくる。
「図書室に付き合ってくれない?」
「どうしたの……?」
ひとりは喜多の言い放った珍しい提案に思わず顔をあげた。が、すぐに視線だけは顔よりも外側へと逃してしまう。だが、普段通りとも言える反応を喜多は気にした様子もなく言葉を続けた。
「この前から言ってるじゃない、色んな場所でエッチなことしてみましょ、って」
声量こそ抑えているものの、日常会話ではまず聞こえてくる筈のない単語が投下された事にひとりは慌てた。
そう、喜多がひとりを誘う中での割合に突如として発生した項目、『肉体的な関係』が増えているのだ。それも加速度的に。
「ぇ、それって学校の中も……」
「もちろん♪」
ひとりが視線で残っているクラスメイトの一人一人を追い、今の会話を聞かれていないかと早まる鼓動に急かされている間も喜多の態度は変わらない。
今までは学校を出た後の誘われた先で不意に提案されるというケースのみで、校内における二人の交流は大半がギターの練習へ充てられていた。
ひとたび校外へ繰り出せば人目のない公共施設――カラオケボックスやトイレ、試着室等で求められる事もあったが、それとこれは次元が違う。
(今までもキスとかはあったけれど、流石にそれは……)
ひとりが追いつけない勢いで要求の難度が上がっていくのを感じていく。止めなければと危機感すら覚えるほどに。
「で、でも学校のみんなが」
「みんながいるからこそ、ひとりちゃんのためになるのよ♪」
そう、喜多から返ってくる返事は決まってコレなのだ。
そしてその後に続く言葉も。
「ライブ中あんなに堂々としてるんだから、どこでも自信を持てるように、ね?」
ひとりには突発的に提案された廣井との路上ライブの経験があるが、喜多はそれを知らない。コミュニケーションとアピールの境界線がなく、想っての行動ともなればひとりに断るという選択肢はなく、つい流され――結果的には気持ちよくなってしまうのが常だった。
「なんて、私がエッチしたいだけですけどね?」
気を使ってか本心なのか、喜多が顔を赤らめながらいつものように締め括る。
「は、ぁ……」
私も気持ちいいから大丈夫、とひとりから返せるだけの潔さも度胸も無く、曖昧に零れ出た声を区切りにしてカバンへ物を詰め込むだけの僅かな時間に沈黙が生まれる。だが、ひとりがカバンをかけた瞬間に喜多の手が伸び、腕を掴む。
「それじゃ、早速行きましょ♪ お手洗いに寄ってから、ね?」
「ぁ、ちょ……っ」
返事を返すまでもなく喜多の中では答えが決まっていたようだ。
(何故トイレへ行く必要が?)
問いかける間もなくひとりの体は居場所のない教室の中から風のように消えていった。
――――――――――
顔を赤くしたひとりが図書室へと連れてこられたのはトイレを経由して暫くの時間が経過した後だった。
放課後だというのに利用者はそれなりに居た。ただ読書や勉学に励むといった姿は一部でしかなく、静かにしてはいるがスマホへ視線を落としていたりゲーム機のボタンが鳴らす小さな音がまばらに響く。図書室と言うよりは本の置かれた広い休憩所――ひとりはそう感じていた。
喜多が先導して行き着いた先は、扉からも、カウンターからも目の届かない壁際から一つ手前の本棚だった。テーブルスペースと区切るためか丁字に並べられた別の棚が視界を遮る擬似的な個室。加えて整頓こそされているものの、棚の隅に積もった埃が利用者の少なさを感じさせる歴史書のコーナー。
露骨に用意されたとしか思えない死角の存在を今まで知らなかったひとりであったが、狭さ、暗さ、埃っぽさ、どれを取っても居心地の良い場所だった。ホームグランドに立った気分は、この後に待っている行為の前に僅かながら落ち着きを取り戻す余裕をひとりへ与えた。
「本当に、こんなところで……?」
わかりきっている質問。このためだけに、ひとりはトイレの中で喜多からとある仕込みをされていた。
コードの付いていないローター。それを操作するスマホ用のアプリがある事などひとりの人生の中で知る機会が今まで訪れることは無かったが、今まさに体内へ収めたまま学校の廊下を歩いてここまで来たのだ。
ローターはまだ動いていない。だがその異物感からくるひとり自身の自覚と喜多の持つ主導権の両方が否応なく意識の片隅へこびりついて離れず、行く先々で挨拶を交わされる喜多の背後で俯いているしか無かった。
「うん♪ この辺りは滅多に人が来ないからよく使うんだって」
(だ、だれが……?)
喜多がまるで誰かに聞いたような事を小声で教えてくるも、まず他にもこういった目的で利用する人の自体が初めて聞く存在でひとりの理解を易々と飛び越えてくる。
「大丈夫、目印を出しといたから」
「め、目印って……?」
図書室内を歩いている最中に喜多が何度か立ち止まっているのは知っていたが、ローターへ気を取られていたひとりは実際に何をしていたかは知らない。
「使う時の合図があるみたいなの。ばったり出くわしちゃったらお互いに気まずいからって」
(何処で知ったんだろう……?)
喜多の言葉を信じるなら実際に利用した経験はないのだろう。秘め事向けのスポットや秘密の合言葉まで話し合うような友好関係が発生するまでの経緯自体、普通なのかすらひとりにはわからない。ただ、陽キャの仲間入りを果たすには越えられない壁が更に一枚増えただけである。
「大丈夫、私が本棚側の通路に立つから、ひとりちゃんは気にしないで?」
「喜多、ちゃん……」
さりげない仕草でひとりの体が本棚の柱へと押し付けられた。
「始めるから、声が出そうなときは我慢してね?」
開始の合図と共に、喜多の手によって肩へ掛けていた荷物が床へと降ろされていく。流れで始めるのではなく一言の宣言がひとりの意識を否応なく行為の前へと立たせ、呼吸を詰まらせる。
正面から真っ直ぐに視線を合わせてくる喜多から目を逸らした先には、重みで口を開いたカバン。その中には、先程トイレの中で脱がされたシャツとジャージのズボン、そして色気のない下着が丸められた姿で押し込まれていた。上はジャージで隠れていても、下はスカートのみというのが、ひとりの余裕をマッチ棒の芯と同じくらい細くしていた。
顔が熱くなっていくのをひとりは実感する。
「ふふっ、ひとりちゃん……恥ずかしい?」
ひとりは声に出さず頷く。今喋ったら、絶対と言い切ってもいいほど素っ頓狂な大声が出てしまいそうだったから。
ぎゅっと閉じた唇へ喜多の唇が触れる。一瞬だけの軽いキスだったが……その口で、先程秘部を弄ばれた記憶が蘇ってくる。その時も声を押し殺すので必死の中、楽しそうに笑っていた顔が、ひとりの目の前にある。
「恥ずかしいのに、頑張って偉いわ、ひとりちゃん……♪」
喜多の両手が首元へと伸びる。上まで閉じていたジッパーを摘んだ指が大きな音を立てないように、ジ、ジジ……と開いていく。
(やっぱり、こういうのは慣れない……っ)
ジッパーの音と心臓の音が勝手にセッションを始める。ちぐはぐで不規則なテンポの中、ひとりは自分の汗の匂いが立ち上ってくるのを感じた。自身の匂いに気づけるという事は、喜多にも届いているだろう。だが、願わずにはいられない。
(喜多ちゃんに、汗臭いとか思われないかな……)
それ以上の行為を直前に済ませていたとは言え、やはり年頃の一人の少女としては考えてしまう。締め付けから解放された胸の間を、雫が伝う感触が嫌になる。
だが、その雫は下へと流れていくことはなかった。
「ひぁ……っ!」
「ん、ほーら、我慢♪」
たった今、舌で汗を掬い上げたばかりの喜多は事もなげに言った。
(む、無理……こんな状況でそんな事されたらむりぃ……っ!)
突然の行動にひとりの心臓は痛いほど高鳴っていた。それこそ、胸元に顔を近づけている喜多には聞かれていてもおかしくないほどに。
ひとりは耐えかねて上を向く。体を見られることよりも、ここが学校の一部だとしても、恥ずかしいと思っている姿を喜多に見られていると意識している時間の方が辛い。気が狂いそうなのに体の至る所へ刻まれた快感の記憶が蘇ってきそうになってくる。
ヴヴヴヴッ
「~~~~っ!!?」
突然、ひとりの中で異物が震え出す。歩いている間に自然と降りてきてしまっていたのか、入口付近を一瞬だけ責めてきた刺激にジャージの袖を噛み締めて必死に声を飲み込んだ。
(見ちゃ駄目、見ちゃ駄目、見ちゃ駄目……っ!)
ひとりは自分へ言い聞かせる。今自分がどんな顔をしているのかわからない。喜多へ向けて良い状態ではないだろうと本能的な反応を羞恥が捻じ伏せる。
ヴヴヴヴッ
ヴヴヴヴッ
「は、ぁ――っ!」
断続的に響く音がひとりの体へと刻み込まれる。今にも抜け落ちそうな場所に収まっていた事を知り、ローターを締め付けていたせいで振動が一際強く響いて快感を生み出す。
パタ、と本棚の上で一冊の本が倒れる際の空気を孕んだ音がひとりの思考を現実へと引き戻した。
口元へあてがっているだけでは足らずに手首へ歯を立てる。ひとりは自分の声が僅かでも出ないようにしながら左右を見渡した。人の気配は――ない。
「大丈夫よ、誰も居ないから♪」
思わず下を向いて喜多の言葉へ救いを求めれば、いつも通りの優しい笑顔に冷えた心が暖められていく。
(喜多ちゃん……)
「思ったより、音が出ちゃった。ちゃーんと奥まで隠しておかなくちゃ☆」
喜多の次の行動は早かった。
(ぇ?――)
「ん……んんっ!」
秘部へと触れた二本の指先がローターを奥へと押し上げてくる。ひとりが締めた粘膜の中を、先程よりも大きく感じる異物が突き進み、犯してくる。襞を撫でていく滑らかな感触が止まった瞬間、仕事を終えた喜多の指がバラバラに動いて掻き回すだけで背筋に快感が駆け上ってくる。
「ひとりちゃん、さっきより濡れてる……興奮、してるのね?」
返事をする余裕がない。が、代わりに指で弄ばれている秘部がクチュクチュと勝手に水音で答えていた。
(死にたい……っ)
こんな場所でも濡らしてしまう自分へ自己嫌悪してしまう。
玩具だけでこんなにも感じてしまう淫乱さを知られてしまったのだ。きっと軽蔑されてるに違いない。
「ひとりちゃん……」
(言わないで)
続きの言葉はなんだろうか。変態? 淫乱? 牝犬? 学校に居ないほうが――
「私、嬉しい」
(え――?)
思わぬ言葉に思考が止まる。
「ひとりちゃんが気持ちよくなってくれてるのを見たら……もっとしてあげたくなっちゃうの♪」
ひとりが見下ろす先で、喜多は秘部から引き抜いて濡れたままの指でスマホの画面を操作しようとしていた。色んなゲージやメーターが表示された、さっき説明された時にも見たローターの遠隔操作アプリ。
(待って、今は本当に)
ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!
「ふぐ、っ、んん……っ!」
ひとりは再び暴れだしたローターに耐えきれず内股同士を合わせ、崩れ落ちそうになる体を必死に縫い止めた。
先程よりも音は小さいものの振動は格段に力を増していた。それだけではない。中でガチ、ガチ、と硬い者同士がぶつかり合うような音に合わせてローターが食い込んでくる。全く知らない快感に目を白黒させていると、喜多はずり落ちていくひとりの眼前にスマホを見せた。
「これね、一つで何個も同時に操作できるの。ひとりちゃんがこっちを見てくれなかったから、さっき一つ足したの、気付いてた?」
愛液で濡れた画面には、確かによく見れば操作パネルの横にローター1、ローター2とタブが並んでいた。それを知った所でひとりに流れ込んでくる快感は止まらない。止めてほしいが肝心の口はひとりが自分で塞いでいた。
「私としては、このままひとりちゃんが学校の中で初めてイッちゃう所を見たいけれど、止めてほしい?」
「んんっ、っ、ふっ、んっ!」
腕を噛んだ、ひとりはガクガクと何度も頭を縦に振った。今絶頂を迎えれば声を抑えていられる自信など微塵もない。
「わかったわ。それなら……はい、手使わないで止めてみて♪」
(どういう、こと……っ?)
ひとりは突然出された謎掛けのような言葉に困惑した。下腹部へ広がっていく気怠い鈍痛に似た快楽の熱が今にも爆発しそうなほどにグツグツと煮え滾っているのだから、考える余裕が無いのも無理はない。
「ん、ぉ……っ、ふ、ふっ、ぐ、んぐっ」
それを理解していたのだろう。喜多はスマホを挟んで向き合いながら、ひとりの愛液で濡れた指の前で舌を伸ばし、舐め取っていく仕草を見せつけていく。
(舌、と、舐める……っ、愛液は……スマホに、ついて……?)
喜多の仕草とスマホの操作画面を交互に見て、ひとりは理解した。
舌で操作しろ、と要求されているのだ、と。
(喜多ちゃん、無理……っ、そんな事したら、声が)
「む、むぃ……っ、ぉっ、あ……っ」
今ですら声の出口を塞いでも、鼻から漏れ出た声が止まらない状態のひとりは先程まで縦に振っていた頭を横へと振る。きっと図書室にいる利用者の中には明らかに変な生徒がいると思われているに違いない。そこで大声を出したとあれば、絶対に見つかってしまう。
わかっているはずなのに、ひとりの目の前へ翳されたスマホを止めるような素振りを見せない喜多へ視線を送る。
「無理?」
喜多からの問いにひとりは頷く。
「じゃあ、お願い聞いてもらえる?」
頷く。
「約束よ? ひとりちゃん」
念を押されている間もひとりへ注がれ続けている刺激は止まらない。迫ってくる導火線がいつ絶頂という爆弾へ届くかわからないせいでその一瞬すら惜しい。高校の中退を夢見ていても、人生の破滅は恐ろしいのかと笑えてすらきそうになっていた。
ようやくスマホの画面が本来の持ち主である喜多の元へと向き直り、ひとりの中で暴れていた二つのローターは大人しくなった。
「……っ、はっ、はぁっ、ぁ――」
力み続けていた膣の蠕動とぶつかり合っていた衝撃の影響か、責めから解放されたひとりが息を吐いた瞬間……コツ、コツ、と秘部から二つの塊がひり出された。
「あ……ふふっ、ひとりちゃん、可愛い……♪」
喜多も予想外だったのだろう。小さく声を漏らしてその光景を見届けてから、遅れてひとりの方へとスマホの背を向けて――
カシャッ
――現実のカメラへ似せたシャッター音が響いた。
後編へ続く。