「はいっ……はい!」
カヤメは嬉しそうに抱き返し、自分の体温の高さを伝えるかの如く全身を擦り付けてアピールしている。
尖った耳もぴくぴくと上下に動いており、眞穹も改めて愛らしさ、あるいは庇護欲を煽られる。
「……じゃあ、服脱ごうか」
すぐにでももう一度唇を奪ってしまいたい衝動に駆られつつもカヤメを膝から下ろし、自分の着る服のボタンに手を掛けて一つずつ外していく。
上着も白い肌着も脱ぎ去れば、腹に薄く筋を張る日焼けも体毛もない象牙色の肌が姿を現し、カヤメも思わず釘付けになってしまう。
(うそ!?……日嗣さんって、こんなに……こんなに綺麗な体してるの……!?)
眞穹が現役であった頃から、彼のアバターの最大の特徴である女顔は見慣れていたし、成人男性にしては声が少し高いのもキャラ付けのための設定だと勘違いしていた事実がある。
ところが、その日嗣という男が現実でもアバターと全く同じ顔と声調を持つ人間であることを知ったのは昨日の夜で、しかも顔合わせをしていた時には気付いておらず家に帰ってから気付いたため、ある種の恐ろしさを禁じ得ない。
増して自分のアバターには全く手を加えていないと言うのだから、今仮想のアバターを介してカヤメが見ているのは、眞穹の紛れもないありのままの姿。
何を問われても嘘を吐かない彼が言うのだから、現実でも恵まれた容姿の持ち主であることは疑いの余地もない。
「分かるかな?僕、顔も……体も、女の子みたいで……」
全身から吹き出す汗で湿りきった滑らかでハリのあるその肌は、部屋と二人を照らす照明の色の効果で更に艶かしさを顕著なものとし、カヤメの心に宿る女の情欲を掻き立てる。
肌から視線を遠ざけて肩から腰にかけての胸と胴の辺りをよく見れば、下手な半裸より扇情的な印象に満たされる。腰幅と肩幅も同年代の男性より小さく、特に腰の部分には格好つけのための長いベルトをコルセットのようにきつく繋ぎ、腰の部分が広い長ズボンがずり落ちないようにしている。
腹も全体的に細く痩せ型で、手足も小枝のあだ名を持つ某女性モデルに似て線の細さが目立つものの、適度な脂肪と筋肉のおかげで骨が浮き出ているということはないためか、とても本人の弁である“不健康”には見えない。
「素敵……」
少し細身すぎるのが難点だが、恐らく多くの女性たちが憧れているであろう外観の中でも、ある意味最も理想的な体型の一例と言える。そして、その一例を自分の容姿として持っている異性が目の前にいるのだから、興奮を隠せないのは否めない。
今呟いた言葉も自然と漏れ出た感想で、嘘偽りなど欠片もない。言葉の通り、見たままの印象を素直に口にしただけだ。そしてその言葉が聞こえた瞬間、眞穹の顔全体に火でも点いたかの如く再び赤く染まり、羞恥のあまり脱いだ服で体を隠し、顔を背けてしまう。
「……本当?」
しかし、褒められたこと自体に関しては恥ずかしさより嬉しさの度合いが大きいらしく、視線をちらりとカヤメに向けて様子を窺いつつ、彼女に問いを返す。
「僕の…………こんなにやせっぽちで……貧弱な体が……?」
今度は眞穹が目元に涙を溜めており、ぴったりと閉じた唇もシナジーを起こし、より愛らしい表情に見える。その男らしくない女性的美しさと、顔全体を真っ赤に染め汗と涙に濡れながら恥じらう姿に、カヤメは惚けたように見とれてしまっていた。
「はい……すごく…………本当に綺麗で……あの……ごめんなさいっ!もう我慢できないです!」
カヤメはもう辛抱堪らないとばかりに眞穹に飛び付き、そのままの勢いで押し倒す。
そして互いの性器を触れ合わせつつ、腰を太ももで挟んで馬乗りになると、上半身を覆い隠すように未だに手に持っている上着を取り上げ、再び胸と腹を露にする。
いくつかの布を介して性器どうしが擦れた時、二人の体が少し跳ねる。
「……んっ……!」
女陰から全身に快感が走り、小さく嬌声が漏れ出る。既に身が焼けるほどに体温が高くなっているというのに、性器の感覚は少し触れるだけで意識が朦朧とするほどに鋭敏になっている。
水を差すようだが、二人は恋人でもなければ両想いでもない。方や片想いをしつつ性的な要求をする少女と、方や少女の願いにぎこちなく応じる男という、とても純粋とは言い難い歪んだ関係となった。
その歪みを自覚しているからであろうか、カヤメの目にも、眞穹の目にも、少し怯えの色が見える。
「ふふ……」
カヤメは自分と眞穹の体を倒して裸の胸に頬を擦り付け、少し意地悪そうな表情を浮かべる。対して押し倒された眞穹は大きな動きができず、されるがままに悦楽に耐える。
(日嗣さん……すごく大きい……)
上に乗る自らの女陰と真下に寝そべる彼の性器を衣服越しに擦り合わせながら、体を起こして装備画面を開きローブとローブの下に纏う装備を取り除いてしまう。
そして、彼女が身に着けている衣服がポリゴンと化して消失する演出と共に、シミ一つない綺麗な柔肌と肌の色に近いベージュ色の肌着が露となる。
「恥ずかしいけど……わたしの体、見てください……!」
カヤメの体も細身の見た目ではあるが、脂肪の比率が少ない眞穹と比較すれば遥かに多く肉が付いた健康的な体格であり、特に乳房の膨らみは体格相応と言う印象である。
(ダメだこれ……もっと……茅芽ちゃんのもっとかわいい姿を見たい……!)
思わず仰向けのまま両腕を伸ばし、掌で乳房を包み込むように触った。
「ひゃうっ!?」
突然胸を触られたことに驚き、大きく声をあげるカヤメ。しかし、不思議と嫌悪感は微塵たりともなく、ますます体が上気して興奮が増していく。
「ひつぎさん……わたしたち……」
カヤメは、自分の乳房に手を伸ばしたままの眞穹を見下ろしながら、静かに呟いた。
「……恋人じゃないのに……恋人同士みたいですね……」
眞穹は彼女の胸から手を離すと、体を起こして再び目線を合わせ、額と額を触れ合わせる。
離れていた顔がまた近付いたことで、恥ずかしさが増して心音が高鳴っている。
「もう、恋人だよ」
そう答えると、どちらともなく二度目のキスをし、そしてまた顔を離す。眞穹がカヤメの背中に手を伸ばしてブラジャーを外せば、あまり大きくはないものの柔らかく滑らかな乳房、そして微かに上を向くようにつんと尖った薄桃色の乳頭が露出した。
だがカヤメは先ほど彼がしたように羞恥で顔を背け、彼の傍らから再び上着を奪って上半身を隠してしまう。
「ごめんなさい……!」
そして、申し訳なさそうに俯いて続ける。
「……あんまり……見ないでください……」
彼女の謝罪と懇願に答えないまま、今度は下着を脱がせようとゆっくりと腰に手を伸ばす。指先が腰に触れた瞬間、ぴくりと反応して体を硬くしたが、特に妨げるような動きは見せない。
眞穹の上着を抱き締めたまま彼を見返す素振りも見せないため、そのままパンティの端に指をかけて脱がせようとする。が、しかし、彼女が脚で自分の腰を挟む姿勢のまま座っていれば、当然ながら穿き物を脱がせることはできないので、彼女が自ずから動くしかない。
「……うう……」
ここまでくると羞恥を大きく通り越して恥辱にも似た感覚なのだろう。先ほどまで逸らしていた視線をこちらへと向け、やめて欲しいと言いたそうな表情で震えている。
あまりにも可愛らしい上目遣い、上気して朱色に染まった頬、そして長く美しい銀髪。その全てが情欲を煽る。理性が限界に近付きつつある眞穹の声は低くなっており、焦りを含んだ声色で告げる。
「……茅芽ちゃん、腰を上げて」
カヤメはいやいやと顔を横に振って眞穹の要求を拒否するが、布数枚を隔てて性器どうしが触れ合っている事実は更なる興奮を刺激する。
「ほら、下着が汚れちゃうから」
なおも黙り込む様子に仕方がないと溜め息を吐き、彼女の背中を支えて優しく押し倒すと、パンティの両端に指をかけてゆっくりと脱がせる。
全身の肌を被う衣服の最後の一枚を脱がされたことで、遂に女陰を隠すものがなくなって一糸纏わぬ姿となってしまったカヤメは、ぽろぽろと涙を溢しながら眞穹の上着で肩から股を被い隠した。
「……ひつぎさぁん……」
上着の裾で隠れて見えないが、毛孔と黒ずみが全くなくぴったりとした縦の筋を描く、それこそ幼女のそれのような女陰は今までに溢れた愛液で充分過ぎるほどに潤っている。
だが眞穹の男根は手首より太く、加えてへそまで届く長さを誇るため、行為の相手が仮想体であることを加味しても不安が残るのが本心だろう。
(……もう少し解さなきゃ……)
少し体を動かせば、隆起しきった性器がズボンと下着を押し上げ、露出した亀頭の粘膜が布と擦れ合って痛みが走る。ベルトを外してファスナーを下ろすと、今まで圧迫されていた眞穹の雄の部分が姿を現す。
当然眞穹の性器はカヤメからも見えており、それは股間で触れ合う感覚でしか分からなかったが、彼女はそのあまりの大きさに目を丸くしている。
(……っ!?……本当におっきい……!)
いかに現実世界でアダルトビデオ専門の女優兼監督・脚本家として多方面に人脈を持つかななでも、恐らく出会った事など数えるほどしかないであろう立派な逸物。
それをただのゲーマーで自分たち《やまとまほろば》のリーダーある眞穹が有しているとは思いもよらず、ただただ驚くほかになかった。
「……ぐすっ……」
彼の性器が自分の性器に侵入する情景を思い浮かべると、今更になって胸中を恐怖が満たし、顔から血の気が引いて嗚咽してしまう。
しかも彼女は処女であり、現実世界ではないとはいえどこのEVSON-THWOEはアダルトゲームとしての側面を有している。
コンピューターのプログラムを介して再現され、アバターを通じて神経もたらされる彼女の破瓜に伴う痛みは、とても辛いものとなるであろうことは容易に想像できる。
「わっ!……えっと、泣かないで!」
泣き出してしまったカヤメに覆い被さるように体を倒し、そのまま手を背中に回して抱きしめた。
「大丈夫!えっと……初めてだけど、痛くならないようにがんばるから!落ち着いて!」
抱きしめたまま、宥めの言葉を投げ掛ける。初体験まではもう少し時間がかかるようだった。