※この作品はR-18です。

(仮題)サ終から始まる人間関係   作:御代川辰

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No.00-1.6A 余韻

 カヤメと眞穹(まそら)がたった二人で、濃厚かつ淫(みだ)らな時間を過ごした結果、時刻は午後1時57分を示(しめ)している。二人は汗と精液と愛液にまみれたまま、裸(はだか)で寄り添(そ)い合うようにベッドに寝転がり、未(いま)だに荒(あら)い息を整(ととの)えていた。

 

(セックスってこんなに疲れるんだ……)

 

 体力がある程度戻ったところで、装備画面を操作して衣服を着替え、カヤメにも装備を着直すように促(うなが)す。しかし疲労感と倦怠感は未(いま)だに残(のこ)っており、服を着た後も暫(しばら)くは動けそうにない。

 

 瞼(まぶた)を閉(と)じてほんの十数分前の情景を思い出す。人並み以上に大きな性器で自分と体格がほぼ同じ少女の小さな女陰(ほと)を犯(おか)し、仮想体(アバター)であることをいいことに子宮の中に欲望の産物を何度も放出していたのだから、興奮しないわけがない。

 

 これ以上記憶に浸(ひた)っているとすぐに欲望が蘇(よみがえ)りそうで、今日はもう行(おこな)うまいと目を開(ひら)き、イメージを消す。

 

(それにしても……本当によく頑張ったなあ)

 

 眞穹(まそら)はふと顔を横に倒し、隣に寝そべる少女を見遣(みや)る。彼女はこちらを向(む)く横向きの体勢で、少し恥(は)ずかしそうな表情を浮かべており、視線も合わせようとしない。

 

 先ほどまで性行為をしていたことによる疲労もあるのだろうが、女陰(ほと)に男の性器が侵入することで生(しょう)じた痛みも残(のこ)っているらしく、ときおり股間部分を撫でて何かを確(たし)かめている。

 

「あの……初めてなのに無理させちゃって……ごめんね」

 

 そんな愛らしいカヤメの頭を優(やさ)しく撫で、何度目かも分からない謝罪の言葉を述(の)べる。対するカヤメは目線を眞穹(まそら)の顔に向(む)け直すと、自身の頭を撫で擦(さす)るの手を握って自(みずか)らの頬(ほほ)に触(ふ)れさせる。

 

 更(さら)に眞穹(まそら)の手を持っていないもう片方の腕を伸ばし、彼の唇(くちびる)を人指(ひとさ)し指で触(ふ)れて次の言葉を止(とど)める。

 

 良く見ればその表情(かお)には、何かを察(さっ)しているかのように哀愁(あいしゅう)を宿(やど)している。

 

「日嗣(ひつぎ)さん」

 

 彼の名を呼んだ時、カヤメの顔は普段の態度からは想像がつかないほどに真面目(まじめ)で、普段はなかなか見られない凛々(りり)しさを感じさせるものに変わっていた。

 

 そしてぐいっという擬音が聞こえそうな動きで己(おのれ)の顔を眞穹(まそら)の顔に近付け、同じく全(すべ)てを悟(さと)った目で自分を見つめる彼に告(つ)げる。

 

「今日皆さんに何回謝(あやま)ったのか、ちゃんと数(かぞ)えていますか?」

 

 二人の真剣(しんけん)な視線が交差(こうさ)し、先ほどまでの穏(おだ)やかながら淫靡な気配を纏(まと)った雰囲気が一変する。神経が張り詰めるような感覚が全身を覆(おお)い、体温が下がって冷静になりつつある眞穹(まそら)に、もう一度問いかける。

 

「わたしとしていた時、何度好きって言ったのか、思い出せますか?」

 

 無論一つの言葉を繰り返した回数など、いちいち数えるようなことはしない。首を横に振って「分からない」と答(こた)えれば、彼女の手が頬(ほほ)に触(ふ)れ、少しつねって引っ張られる。

 

 怒り半分呆(あき)れ半分のその目は、カヤメのまっすぐで素直な心境を想起させ、眞穹(まそら)も自(みずか)らの目線を彼女から外(はず)そうとはしない。

 

「…………そういう素直なところ、本当に好きです……」

 

 何を言われるのかと思いきや、真面目(まじめ)な話(はなし)が一変して惚気話(のろけばなし)になっていた。カヤメは羞恥心(しゅうちしん)をごまかすように視線をずらすが、朱色に染まった頬(ほほ)は全(まった)く隠(かく)れていないためまるで意味がない。

 

 これには眞穹(まそら)も拍子抜けし、意図せず笑い声を漏(も)らしてしまうが、恥(は)ずかしさが増(ま)して更(さら)に萎縮する彼女の頭を撫でて落ち着かせる。

 

「ありがとう」

 

 一言感謝を告げ、二人で笑いあい、談笑に耽(ふけ)る。

 大人の女二人からけしかけられた少女に告白されたことから始まった、暫(しば)しの恋人同士の時間は瞬(またた)く間(ま)に過ぎていき、二人が気付いてログアウトする頃には2時を回っていた。

 

 

 

 

 

「リンク・オフ、ゲームオーバー。ログアウト完了……」

 

 手袋を脱ぎながら終了指令を呟(つぶや)くと、ゲーム機の機械音声がゆっくりと答(こた)える。

 

『利用者名磐櫻(いわざくら)日嗣(ひつぎ)様、プレイヤー名聖宮(ひじりのみや)眞穹日嗣(まそらのひつぎ)様、ゲーム終了を確認しました。お疲れ様でした』

 

 茅芽(かやめ)と別れ、EVSON-THWOEからログアウトした日嗣(ひつぎ)が目覚めた時、胎場(やどりば)の時計が示(しめ)す時刻は午後2時30分となっていた。

 

 胎場(やどりば)の蓋(ふた)を開(あ)ける前に、腰周りの固定具を外(はず)そうと手を動かすと、股間部分に違和感を覚える。頭を蓋(ふた)にぶつけないように持ち上げてそこを見れば、下着は愚かズボンにさえもべったり精液が染み込んでしまっている。

 

 どうやらゲーム中での茅芽(かやめ)との行為を、脳が実際の行為と錯覚し、無意識の内(うち)に夢精(むしょう)を起こしたらしい。

 日嗣(ひつぎ)は思わぬ形で問題が起こってしまったことに溜め息を吐(つ)き、風呂の準備をしようと固定具を外(はず)した。

 

 

 

 

 

 一方、ちょうど同じ頃の新笠(にいがさ)家の自宅アパートのベランダ。

 

「ママ……ちゃんと茅芽(かやめ)ちゃんに謝(あやま)ってるじゃない……」

 

 この家の住人である新笠(にいがさ)家長女新笠(にいがさ)奏女(かなめ)は、母である新笠(にいがさ)出南(いずな)から親の仇(かたき)を睨(にら)みつけているかのような、凄(すさ)まじいという言葉そのものな圧と殺気を込めた目を向(む)けられながら涙目(なみだめ)で布団のシーツを洗濯している。

 

 洗濯しているとは言っても、大型の洗濯機を使っているはずはない。中で子供が横になれるほどの大きさの桶に張(は)った湯(ゆ)と、今(いま)となってはなかなか見られない洗濯板を使う手揉(ても)み・擦(こす)り洗いという、手指に大変な負担がかかる洗い方である。

 

「茅芽(かやめ)を唆(そそのか)して恥(は)ずかしい思いをさせたのはあなたでしょう?」

 

 奏女(かなめ)が少し振り向(む)けば、出南(いずな)の頭には角(つの)が生え、小脇には特大の金棒を抱えているかのように錯覚するほどに強い気迫を放っている。

 二人は顔立ちこそ良く似ている美人母娘(おやこ)ではあるが、体格は全(まった)くと言っていいほどに違う。

 

 出南(いずな)は肩から腰にかけての直径が細い、いわゆるモデル体型である。加(くわ)えて、襖(ふすま)から額(ひたい)が見えるほどの高身長を持つ。対して、奏女(かなめ)は平均的な身長かつ肉感的な体型で、逆に腹周りには適度な括(くび)れがある。

 

 どちらが鬼女(きじょ)と呼ばれるに相応(ふさわ)しい体格をしているかは一目瞭然で、特に出南(いずな)は眦(まなじり)がつり上がっていて厳(きび)しそうな印象であるが故(ゆえ)、事実近所の子供からも若干距離を置かれている。

 

「お母さん、もうさすがに許してあげたら……」

 

 汗と愛液にまみれた体を拭き、着替えを終えた茅芽(かやめ)が、出南(いずな)の後ろから声をかける。しかし、振り返った彼女の表情はやはり鬼のような怒(おこ)り顔だ。

 これも無理もない。自分の娘がどこの馬の骨とも知れぬ異性(おとこ)と性交渉をしたと言うのだから。それも家族による

入れ知恵が原因ともなればなおさら、怒りはより激しいものになるのは当然の道理。

 

「茅芽(かやめ)、黙ってなさい。この子は欲しいものばっかりなんだから」

 

 覇気の塊(かたまり)とでも例(たと)えるべき声で、厳しい言葉が放(はな)たれる。奏女(かなめ)は少しでも怯(おび)えの感情を遠ざけるべく、終わりそうにない茅芽(かやめ)の体液で汚(よご)れたシーツを洗う作業に没頭している。

 

「あなたも同罪ですからね。その日嗣(ひつぎ)さんとか言う人にはしっかり謝(あやま)っておきなさい」

 

 その後ろ姿を見ただけでも敵(かな)わないと理解できると言うのに、声にまで威圧が含まれているのだから恐ろしい。母の怒りは天の怒りにも劣(おと)らないと改(あらた)めて悟(さと)り、二人はしゅんと萎縮して答えた。

 

「……はい……」

 

 今日(きょう)は11月24日。一つの仮想世界が終わりを迎(むか)えつつある午後の日本。

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