※この作品はR-18です。

(仮題)サ終から始まる人間関係   作:御代川辰

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No.00-0B Private

『…………は?』

 

 GUN.D(ガン・ディー)は眞穹(まそら)からの伝言が理解できず呆気(あっけ)に取られてしまい、答(こた)えを返すことが儘(まま)ならないまま状況の整理をする事で頭(あたま)がいっぱいで、完全に混乱している様子なのが画面越(ご)しでも容易(ようい)に感じ取ることができる。

 GUN.D(ガン・ディー)が問(と)い質(ただ)すべきことはまず、彼が今(いま)何と言ったのかである。「長期活動停止をしたい」とは言ったが、何があって、何を理由に活動休止を申し入れたのかなどとんと見当がつかない。

 

『急に活動休止っちゅうても、全体何があったんじゃ?』

 

 気を取り直してテレビつきの通話画面に話しかけ、画面の向こう側にいる眞穹(まそら)に言葉を届ける。対する眞穹(まそら)は悲(かな)しげに目を閉(と)じ、少し息を吐(は)く。

 

(こういう時下手な表情(かお)を見せられないんだよね……特にGUN.D(ガン・ディー)さんには……)

 

 EVSON-THWOEのチャット機能はオプションで自由に設定を変更できるが、通話中のシステムは相手方(あいてかた)の設定に依存する。声に出さず内心で吐露(とろ)した通り、現実世界での職業柄(しょくぎょうがら)はゲーム中でも十全に発揮されるため、GUN.D(ガン・ディー)は眞穹(まそら)の態度に敏感に反応してしまう。

 

『ギルマス。お前さんまさか……』

 

 念話である以上声の変化を誤魔化(ごまか)すことはできず、相手はテレビ機能を使っているため表情も丸見えで、心(こころ)の内に抱える不安は当たり前ながらすぐにばれた。

 相手は現実世界(リアル)では心理学の権威として知られる大学教授で、しかも精神科医としても優(すぐ)れた人物。そのような人間の手にかかれば、最早(もはや)嘘(うそ)も虚勢(きょせい)も通用しない。

 自分で呼び出してしかも活動休止を申し出てしまった以上、GUN.D(ガン・ディー)を煙(けむ)に巻(ま)くのは無駄だと理解し、観念して現在の心境(しんきょう)を洗(あら)い浚(ざら)い打ち明けた。

 

『なるほどのお……そりゃあ災難じゃな』

 

 眞穹(まそら)の愚痴の一切(いっさい)を一言一句残(あま)さず聞き取り、口惜(くや)しげに歯を食(く)い縛(しば)って顔を歪(ゆが)める。企業の経営とは無関係な大学教授である己(おのれ)にはどうしようもない案件であり、できることと言えば同情することとせめてもの心(こころ)の支(ささ)えとして助言することぐらいである。

 

「もうね……全部に疲れちゃった……」

 

 ベッドから降(お)りることもせず、力(ちから)なく体を丸めて呟(つぶや)く。すると寝返りで乱(みだ)れていた掛け布団を、掃除のために部屋に入って来た召使い(ボーイ)型NPCが整(ととの)え、そのまま眞穹(まそら)に掛けて掃除を続ける。

 GUN.D(ガン・ディー)は体を覆(おお)う布団を抱き締めるようにし、更(さら)に背中を丸めて縮(ちぢ)こまる眞穹(まそら)の表情を見て彼の真意を理解した。

 

『分かった。自分の口から伝えたくないなら、メンバーには儂(わし)が明日(あす)報告する。ギルドホームの管理も全員で引き継ぐ。それでいいな?』

 

 全員に自分の意思を伝える勇気のない彼に代わり、自分が連絡を代行し、ギルドメンバー全員でギルドホームの管理を遂行すると宣言する。仮想(ゲーム)の世界に逃げてもなお精神的に追い詰められ、もはや声を返す元気すら残(のこ)っていない眞穹(まそら)は、目元から涙(なみだ)の筋(すじ)を作りながらこくこくと頷(うなず)き、ゆっくり目を閉(と)じて寝息(ねいき)を立て始める。

 

『…………切るぞ』

 

 眞穹(まそら)が完全に眠(ねむ)りに就(つ)いたのを見届けると、GUN.D(ガン・ディー)は通話画面の[終了]をタップして画面を変える。

 同時に、眞穹(まそら)の目の前に浮かんだままだった通話画面の表示もフレンドリストに戻り、この日の二人の念話は終わった。

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