(14年前の三月だったっけ、初めてログインしたの)
遊びとは、人類が誕生して以来否定されることはあれど絶えることのなかった文化の一つである。遊び、あるいは遊戯と呼ばれるそれらは、同じく人類が繰り広げて来た戦争の歴史と時を同じくして発展し、そして長い時間をかけて変容して来た。
一言に遊びと言っても道具も何も使わない手遊びに言葉遊び、身体能力を試すスポーツ、建設的思考を
「ゴーグル……と、ヘッドセット」
同じ遊びでも地域によって内容に差異が生じ、複雑にも簡素にもなることさえある不安定なもの。不安定ゆえに人の心を惹き付けて止まないのだ。そして現代の文明社会を生きる現代人も、遊びが全くの無縁ということはありえない。
「手袋とソックス……うん、間違ってない」
ただし生活様式から文化に至るまでが大きく変容した現代の遊びと言えば、
そして21世紀が終わりに近付きつつあるこの時代、コンピューターゲームの大多数は意識と五感を限りなく現実世界に似せた仮想空間に落とし込む、いわゆる
「チョーカーの電源は……」
このフルダイブ技術を完成にまで漕ぎ着けたのは2038年頃の日本である。多数の有名プログラマーたちが15年にも渡る歳月をかけて試行錯誤を繰り返し、挑み続けた末に実を結んだまさに技術と努力と執念の結晶と呼ぶべきものであり、その用途は何もコンピューターゲームのみに
「パルス・ペースチェッカーも……ついた」
例えば長期に渡って仮死状態を維持する必要のある医療手術での麻酔や、脳に何らかの障害を抱えた患者の脳機能改善訓練、あるいは倫理的に問題視される研究の仮想実験場、果ては犠牲も賠償も存在しない代理戦争など、およそ現実では実行不可能な事象を実現できる技術として、そして人類の夢により近付くためのツールとしても利用されている。
「次は間接感覚器を……」
さて、意識を仮想空間に没入させ、さらには五感までをも忠実に再現できるフルダイブ技術が転期となり、成長著しいゲーム業界に多大かつ劇的な革新をもたらしたことは記憶に新しい。これまでリリースされたゲームの総数は2万以上にものぼり、数多くあるジャンルの中でも特に人気があるものを挙げれば、その傾向には大きく六種類に片寄っていた。
「あ、
まず最初に開発が進んだのは、多数のプレイヤーが広大な仮想空間に集まりゲームを進めるMMORPG。次いでVRMMORPGの開発から派生し、より広大な空間を冒険することに特化したオープンワールド。
仮想空間で自分の体を動かし、映画さながらの体験を得ることを目的とするアクションゲーム。自ら武器を持って戦場を駆け回り、人間対人間の戦闘を繰り出すFPS。
「会社にいる時より緊張する……」
組織や国家など様々な視点からの活動とその影響を、第三者の視点から模擬実験的に観察するシミュレーションゲーム。架空のキャラクターや建造物を三次元的に作り上げ、完成度や美しさなどを探求する3Dクリエイティブゲーム。そして、人間が生物である以上決して避けられない三大欲求の一つ、性欲を満たすことを目的とするアダルトゲーム。
「後は
VRゲームにフルダイブシステムが導入された最初期に発売・配信されていたゲームだが、もちろん逆境が全くない順風満帆のスタートを切ることができた訳ではない。フルダイブ黎明期に提起された技術的倫理・利用者倫理の問題はもとより、上記の六種類のジャンルがタイトルの大多数を占めていたこともあり、多くのユーザーや第三者からの評価は芳しくなく、発売元や運営元へのバッシングが絶えず発展と普及はなかなか進まなかった。
それでもゲームをこよなく愛し、より良いゲームを作ろうと努めるクリエイターと、同じくゲームを愛しゲームを通じて人生をより良いものにしようと努めるユーザーの存在は、後年の技術の発展に大きく貢献した事実も特筆すべきであろう。
「内部施錠、ベルト固定、問題なし」
時代が
それは今や世界中のゲーム業界に普及しつつあるFull Dive Virtual Reality All Genre Game 、通称FDVR-AGGと略される多数の機能と内容を有するゲームの総称であり、オールジャンルと銘打つ通り、あらゆるジャンルの内容を一つのゲームに組み込むという
「ゴーグルとヘッドセット装着完了」
FDVR-AGGの最大の特徴は、旧来のビデオゲームの機能を踏襲したオンラインモード・オフラインモードの使い分けを、一切の無理なく実現したこと。サーバーへの負荷問題が原因で、これまでオンラインとオフラインのどちらか二種類の一方しか開発できなかったFDVRゲームの進化は、今回のAGGという新たなジャンルの誕生を期に一気に加速することになる。
「使用者認証開始。ユーザーネーム、
こうしてFDCR-AGGの完成から一年が経過した頃に、これまでに開発・リリースされて来たFDVR-MMORPGの集大成、そして今後のFDVR-AGGを牽引することを期待され、日本でサービスを開始したタイトルがある。
そのゲームのタイトルは、〖
『ユーザーネームとユーザーID、プレイヤーネームとアバター番号、登録生体情報の一致を確認しました。利用者名
電子音声が脳内に響くと、真っ白な空間に[LOG IN]のアイコンが出現する。
「リンク・オン。ゲームスタート」
一人のプレイヤーとして、その意識と全身の感覚が仮想世界へと
そこは、仲間との思い出に満ちる場所であり、