カズマがクレアと結婚する話 作:てつろう
第二作目となる今回では最終話まで大まかなプロットを作ってから描き始めることにしました。既にプロットは出来てるので投稿頻度は高くなると思います。
この誘拐された王女様に救済を!
(カズマ目線)
俺はハーレムを作ろうとしていた。俺のことを好きな女が山ほどいるからだ。
この国で佐藤和真の名を知らない人はいない。なぜなら最弱職の冒険者でありながら魔王討伐という偉業を成し遂げた人だからだ。俺は名声を
「俺もすっかり勝ち組になってしまったな!金も腐るほどあるし一生ニート出来るぞ!」
俺は誰もいない屋敷のソファに行儀悪く寝転び、窓から入る日差しで日光浴している。この誰にも邪魔されない一人の時間がかけがえのないものなのだ。俺は大きな欠伸をしながら近くにあった新聞紙を手に取る。かつて魔王を討伐した際は、俺の偉業がデカデカと新聞に載ったものだ。魔王討伐から約一ヶ月が経った今日も俺のことが書いてないかと気になった。
「えーと、『今年で五人目の行方不明者。大人の女を狙う誘拐犯か。犯人は自身のことを”変態紳士”と名乗っており……』何だこの記事、俺のことが書かれてないじゃないか。」
新聞に書かれていたのは誰も興味のない誘拐事件の話だった。こんな記事を書くくらいなら俺の魔王討伐のエピソードを書いてくれた方がずっといいだろう。俺は新聞社に抗議の手紙を送る決意を固め、数時間ぶりにソファから起き上がる。確か俺の部屋に便箋が余っていたはずだ。俺が自分の部屋に向かおうとしたその時、
「サトウカズマ!サトウカズマはいるか!」
俺の名前を大音量で呼ぶ声。声から判断するに呼んでいるのは女の人だ。ファンが遂に俺の家を発見して突撃しに来たのだろうか。モテる男は辛いなと思いながら玄関へ向かう。俺が屋敷のドアを開けるまで、何度もドアを叩く音が響いていた。余程俺に会いたいらしい。辟易しながらもドアを開けると、そこにはクレアがいた。青いメッシュがかかった金髪といつもの白スーツだ。
「クレアじゃないか、お前も俺のハーレム要員に加わりたいのか?」
俺の言葉を聞いたクレアは声一つ発さず腰に着けていた剣を抜く。
「へ?」
彼女の急な行動に俺は間の抜けた声を出してしまう。クレアは怒り心頭な様子だ。
「アイリス様を返せえええ!!」
クレアは出会い頭に俺に剣を振り下ろしてきた。俺はスレスレでその斬撃を避ける。
「なな、何するんだよ!」
「アイリス様をどこにやった!貴様が誘拐したのは分かっている!」
一体何のことを話しているのだ。クレアが一方的に話してくるせいでイマイチ言おうとしていることが掴めない。だが、俺もこのままクレアにやられる訳にはいかない。右手を突き出しクレアに向かって伝家の宝刀を使う。
『スティール!』
途端に手が淡白い光に包まれる。俺の手に握られていたのはピンクの下着だ。クレアらしくない色っぽいパンツだった。
「きゃああああ!」
悲鳴をあげるクレアを横目に見ながら、人差し指にかけたパンツをクルクルと回す。これで一件落着だ。流石に下着を奪えば、彼女ももう襲ってこないだろう。だが、さっきまでモジモジしていたクレアは再び剣を取り俺に向かってきた。
「貴様ぁ!私はこれくらいで諦めないぞ!アイリス様を返せぇ!」
俺はクレアのパンツを前に掲げ彼女の斬撃をガードする。クレアの攻撃により下着は真っ二つに破れてしまう。破れたパンツを見てクレアは少し悔しそうな表情をしていた。だが、そんな呑気なことを考えてる暇は無い。クレアがまだ危害を加えるつもりなら俺も容赦はしない。
『スティール!』
俺は再びスティールを使う。今度は右手にブラが握られていた。先程の下着とセットだったのかこれまたピンク色だ。クレアは上も下も下着を取られ、力なくその場にへたり込んでしまう。
「ううっ……なぜ私がこんな目に……!」
彼女の話を聞きたい所だが、しゃくりあげながら泣いておりとても話せる状況じゃない。
「クレア、大丈夫か?下着は返すからさ。パンツは破れたけど……。」
俺の言葉を聞いて更にクレアが大声で泣く。泣いている女の子を慰めるなんて童貞の俺にはハードルが高すぎて無理な話だ。困ってしまって立ち往生していると門から誰かがこっそり俺達を見ていることに気づいた。目を凝らしてよく見るとアクアが俺達のことを覗いている。
「広めなきゃ、広めなきゃ……あのカズマさんが女の子の下着を剥ぎ取った上に泣かせてたって言わないと……!」
「ちょっと待てアクア!あの……駄女神……!」
俺はギルドに向かうアクアを急いで追いかけた。
+
その後、ギルドで俺の悪評を言いふらしていたアクアを無理やり屋敷に連れて帰り、クレアを慰めてもらうことにした。俺一人ではクレアを励ますことなどとても出来そうになかったからだ。
俺はクレアのいる部屋の外で待機して、彼女が泣き止むのを待った。そのまま待つこと十分。アクアがリビングのドアを開け俺を中に迎え入れる。ソファを見るとクレアが涙目で座っていた。
「ひっ!」
彼女は俺の姿を見ると小さく怯え上がる。下着を取ったことで余程怖がられているのだろうか。そんなクレアの隣にアクアは座り、背中を撫でながら諭した。
「ほら、まずはカズマさんに謝りましょう?いきなり斬りかかってごめんなさいするのよ。」
「さ、先程は悪かった……。だからどうかスティールだけは勘弁してください……!」
アクアが珍しく大人びて見える。クレアは子供のように俺のことを警戒しながら謝ってくれた。
「まあ謝るなら別に気にしないぞ。それよりなんで急に襲ってきたんだ?脳筋のお前でもいきなりそんな事しないだろ」
俺の”脳筋”という単語に反応してアクアがキッと俺を睨みつける。彼女を虐めるなと言っているのだろう。クレアはアクアに助けて貰いながら事の顛末を話し始めた。
「実は……アイリス様が誘拐されたのだ」
ゆ、誘拐だと。いきなりの物騒な話題に俺は身構える。王女様を攫うなんてどこの誰がそんな事をしたのだろう。
「ただ誘拐されたと断言できる訳では無い。ここ二、三日帰ってきてないだけで実はどこかで普通に過ごしている可能性だってある。」
「それならアイリスは多分大丈夫だろう。だってあんなに強いアイリスだぞ?簡単に誘拐されるわけないだろ」
「私には分かるのだ、アイリス様がきっと危ない目に遭っていると」
「なんでそんなことが分かるんだ?」
「勘だ、私の勘はよく当たるのだ」
どんな理由があるのかと思ってみれば何の根拠もなかった。それなのにクレアは真剣な目で俺の事を見つめていて、まるで私は何も間違っていないと言っているようなので俺は返答に困ってしまう。そんな彼女の様子を見ていると俺もまさか誘拐なのではないかと僅かな不安が心に灯る。ずっとアイリスの護衛を務めてきた彼女だからこそ分かることもあるのかもしれない。
「てっきりお前がアイリス様を誘拐したのかと思ったのだが……。まあ違うならいい、邪魔したな」
「あら、あの事は言わなくていいのかしら?」
あの事……?どういう事かとクレアを見ると慌てた素振りでアクアの口を押さえる。反応を見るにクレアは俺に何か隠し事をしているようだ。
「おい、一体何を隠して───」
俺はクレアに隠し事の詳細を聞こうとする。だが、
「言っておくが俺は面倒事に巻き込まれるのは御免だからな。いくら妹の為とはいえ、アイリスを探すなんて無理な話だ。」
「そ、そうか……お前の言葉を聞いて安心したぞ。アイリス様は私達王家が責任を持って探すからな。」
俺がこのままクレアを帰そうとした時、いつもの如く空気の読めない奴が口を挟んできた。
「王女様を見つけた人はアイリスと結婚できるそうよ」
「アイリスはどこだぁあああ!」
俺はアイリスを探すことになった。
+
その後中々アイリスとの結婚の話を教えてくれなかったクレアだが、俺がスティールを使う時のように手をうねうねと動かすとクレアは涙目になりながら話し始めた。
「……実は、我が国ベルゼルグの国王がアイリス様の行方不明に酷く心を乱していてな……。なんと、アイリス様を見つけた人には娘との結婚を許可すると仰っているのだ。」
ほうほう、あのアイリスと結婚できるのか。いつもお兄様と言って慕ってくれるあのアイリスと……!少し前の俺なら12歳のアイリスは守備範囲外と思っていた。だが、上手く行けば俺がアイリスと結婚できるかもしれない……!そう思うとアイリスを見つける前から心躍るというものだ。
「ああ……この事だけは知られたくなかったのだ。アイリス様とお前が結婚する事になってしまったら……!いや、絶対にそんな事はあってはならない。お前はアイリス様を探さなくて良い。今まで通りニートのような暮らしを送っていてくれ」
こいつは俺のことを何だと思っているのだ。しかも、ニート扱いしてるし……。俺だって魔王を倒す前はモンスターも倒してたし、アルバイトもしていた。今は来たるべき決戦の日に備えて英気を養っていだけだ。
「カズマさん、まさかロリコンになるつもり?」
「ろ、ロリコンじゃねえよ!」
……もしかして決戦の日というのは今日の事ではないだろうか。アイリスと結婚する為に今までの人生があったのではとすら思えてくる。未だかつてない程俺はやる気に満ち溢れていた。
「俺もその事件を捜査するぞ!そしてアイリスと結婚するんだ!」
「ダメだ!そもそも王家の兵士でもないお前が捜査に参加など出来るわけがないだろう!とにかくこの話はなかった事に……」
俺とクレアが押し問答を続けている時だった。
「ごめんくださーい。クレア殿はいらっしゃいますか?」
玄関からクレアを呼ぶ声がする。俺達が玄関に向かうとそこには修道服に身を包むレインがいた。レインは俺の姿を見ると怯えた様子で身震いする。
「か、カズマ殿!その……先日、城から追い出したことは謝りますからどうか穏便に……!」
レインの姿を見て思い出したが、俺は昔このレインに記憶消去のポーションを無理やり飲まされ強制送還されたことがある。その後、記憶は戻ったが是非そのお礼がしたいと手紙で書いたのだ。
「白スーツといいレインといい俺の事を何だと思っているんだ。闇雲に人に危害を与える訳ないだろ。」
「そ、そうですよね!」
レインは俺の言葉を聞いても警戒を緩めずにこちらをじっと見ている。ここまで怖がらせてしまうとは、少し自分の行いを反省しないといけないな。
「それでレイン殿、私に何か用か?」
「実は───」
それからレインは俺に聞き取れない声量でクレアと何やら話し合う。レインの話を聞いたクレアは「なっ!?」とか「まさか!?」とか驚きの声を発していた。何を話しているのか気になって俺が聞き耳を立てていると、
「で、では、私達はこれで失礼する。」
クレアが急に帰ろうとする。その行動を俺は不審に思い、手をうねうねと動かしながら彼女達に近づく。
「何か隠し事をしているのか?俺は真の男女平等主義者。俺のスティールが炸裂する前に正直に話した方が身のためだぞ。」
「ひいっ!だから私はカズマ殿に会いたくなかったのです!クレア、何とかしてください!」
「ま、待ってくれカズマ!本当のことを言うから!だからスティールだけは……!スティールだけはやめてくれ!」
このまま二人を怯えさせても埒が明かないので仕方なく俺は手を引っこめる。その行動に彼女達は安心したのかレインが説明し始めた。
「実は……国王様が是非ともカズマ殿に捜査に協力して欲しいと仰っていて……なんでも魔王を倒したカズマ殿ならきっと娘を見つけてくれるだろうと考えているようです。」
ほう、まさか王様にも直々に指名されるとは。俺の名も広まってしまったものだ。
「そうと決まったら早速アイリスを探しに行くぞ!」
俺の返事を聞いてレインは渋々ながらテレポートの詠唱を始めた。
「はぁ……もしカズマ殿とアイリス様が結婚することになったらどうしましょうか……。」
「何としてでも私達がカズマ殿より先にアイリス様を見つけるしかあるまい。レイン、必ず先にアイリス様を見つけるぞ!」
クレアとレインは何やら固い絆で結ばれているようだ。というか俺だけ除け者にされているような気がする……。
「スティー……」
「「ひいっ!」」
俺はスティールを使おうとして二人を怖がらせる。なんだか楽しくなってきたなと、俺の中の嗜虐心に火がつくのを感じる。
「はぁ……どうしてこんな事に。『テレポート!』」
俺達はレインの詠唱で王城へと向かったのだった。
若干カズマさんがクズマさんになっちゃいました。ごめーんね!