カズマがクレアと結婚する話 作:てつろう
約1万字あります。過去最長です。そしてちょっとHなシーンもあります。
アイリス様とカズマの情事を目撃した次の日、私は国王様にアイリス様の護衛を辞める旨を書いた辞表を出しに行った。国王様は私が辞める事に大した関心も見せず、すんなりと了承してくれた。ただすぐに仕事を辞めることは出来なくて、今携わっている全ての公務が終わる一ヶ月間で仕事を終える事になった。
つまり、私はこの一ヶ月が終わったらアイリス様の面倒を見る事はなくなるということだ。それが少しだけ寂しかった。…………いや、正直に言うと、すごく寂しい。彼女と別れることを想像すると胸がキュッと締まってキツくなる。でも、私は相変わらず自分の感情に蓋をして過ごしている。ただ私に出来るのは一日一日を大切に過ごすことだけ。刻一刻と迫る別れの時に怯えながら過ごしていた。
そして遂に別れの日がやって来た。今日は辞表を出してから三十日目。私は全ての仕事を終え、城から出て行こうとする。そんな私をレイン殿やアイリス様が見送りに来てくれた。
「それでは私はこれで失礼します。レイン殿もアイリス様も今までありがとうございました」
私は二人に丁寧に頭を下げる。これからは滅多に会うことはなくなるだろうから最後くらいちゃんと別れようと思った。レイン殿は目に涙を浮かべて、
「これからアイリス様のことは私に任せてください。クレア殿もどうかお元気で……!」
彼女の目から涙の雫が垂れる。まさか彼女が泣いてくれるとは思わなかった。たまらずレイン殿に抱きつく。彼女には特にカズマの事で色々と助けてくれた。その感謝の気持ちも込めて私は抱擁する。レイン殿は涙が堪えきれなくなったのか声を上げて泣いていた。
「すいません……最後は笑顔で見送りたかったのですが……うぐっ……泣いてしまいました」
「レイン殿が私の為に泣いてくれて嬉しいぞ。これからも定期的に手紙を送るからな」
名残惜しいが抱きついていた彼女からそっと手を離す。あまり長居しすぎると帰りづらくなってしまうからだ。レイン殿もそれが分かっているのか目を赤くしながら離れた。
「アイリス様もどうかお元気で。たまには顔を見せに来ますので」
「ええ、私もクレアと会うのを楽しみにしていますよ」
アイリス様は笑顔で言う。本当は彼女とも抱擁したかったが、そんな事をしたら私まで泣いてしまいそうなので止めておいた。
「ここを辞めたら次にやる仕事は決まっているのですか?」
アイリス様が尋ねてくる。実際の所、次の仕事の予定は何も考えてなかった。
「そうですね……とりあえずカズマに会ってそれから二人で今後の予定を決めようかと思っています」
彼と一緒に冒険者をやってみるのもいいかもしれない。だが、私の返事を聞いたアイリス様から途端に喜色が失せる。
「お兄様に会うのですか……」
「ええ、それがどうかしましたか?」
私は毅然とした態度で彼女に接する。少しでも彼女に遠慮すれば簡単にカズマが奪われてしまう事は身に染みて分かっていた。だからもう彼女には容赦しない。
「……い、いえ何でもありません」
私の様子にたじろいだのかアイリス様は何も言わない。そんな彼女を見て私の中で少し罪悪感が芽生える。アイリス様に容赦しないと思っていたが、私はまだまだ彼女に甘いみたいだ。仕方ないので彼女の言葉を聞き出してあげる。
「言いたい事があるならハッキリと仰ってください。これからアイリス様とは滅多に会えなくなるでしょうから後悔がないようにしましょう」
私の言葉を聞いたアイリス様は逡巡した様子を見せる。そして迷った末、懐から一枚の封筒を取り出した。
「あの……これをお兄様に渡して貰えませんか?」
私はアイリス様からその封筒を受け取る。紙には折り跡一つないことから彼女がこれを大切にしている事が分かった。
「それは私からお兄様への恋心を
なるほど、つまりこの手紙はラブレターというやつだ。やはりアイリス様はまだカズマの事を諦めていなかったようだ。私は彼女のしつこさに辟易する。
「これは自分でお渡しになったら
なぜアイリス様が恋敵である私に頼むのか分からなかった。私がカズマを好きな事は彼女にバレているはずなのに。彼女は私が今でもアイリス様の味方だと思っているのだろうか。
「その事なのですが……、実はお兄様に何通も手紙を送っているのにずっと返事が返ってこないのです。ひょっとしたら私の手紙が届かないように誰かが邪魔をしているのかもしれません。だから信頼できるクレアに直接お兄様に届けて欲しいのです」
確かにカズマが住む屋敷にはめぐみん殿やダスティネス卿が居る。彼女達もカズマに恋心を抱いているので、アイリス様のアプローチを邪魔している可能性は高いだろう。
だが、それで私に手紙を渡していいのだろうか。私だってアイリス様の恋敵。勇気を出せば彼女の恋路を邪魔するかもしれない。そんな私の気持ちを知ってか知らずかアイリス様は口を開いた。
「クレアならきっとお兄様に届けてくれるでしょう」
彼女の言葉を聞いた瞬間、アイリス様は何も知らないのだなと思った。この前アイリス様がカズマを襲ったのを見て私は彼女にもう容赦しないと誓った事に気づいてない。これからも私がアイリス様に遠慮して生きていくと思っているのだろう。
「アイリス様、クレア殿にそういう事を頼むのはよくありません。これはちゃんと自分の手で渡してください」
私の善意につけ込むアイリス様をレイン殿が横から注意する。だが、私は彼女を止めてアイリス様の頼みを受ける事にした。
「いや、これは私が貰っておく。カズマに届ければいいのですね?分かりました、私に任せてください」
私は彼女から受け取った手紙を懐に入れる。アイリス様は私が大人しく頼みを聞いてくれた事に安堵したのかニッコリと微笑んだ。私はその視線に居た
「では、今度こそお別れです。アイリス様もレイン殿もどうかお元気で」
私は荷物が入ったカバンを背負って城門を出る。私に向かってアイリス様もレイン殿も手を振り続けていた。
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私が真っ先に向かったのはカズマの屋敷。事前に彼の住んでいる所を調べておいた。彼の家の門をくぐり私は屋敷のドアの前に立つ。そこで深呼吸した。彼とはプロポーズを断って以来、話していない。一ヶ月ぶりに会うことになるが彼は私の事を今でも愛してくれているだろうか。そんな不安が過ぎるくらいには私は弱っていた。だが、迷っていてもしょうがない。私は思い切って彼の家の呼び鈴を押す。
「はーい」
と中から間の抜けた声が聞こえた。カズマの声だ。胸が高鳴るのを感じる。ジッと扉が開くのを待った。やがてドタドタと人が走る音が聞こえてくる。そしてギイっとドアが開いた。
「いきなり訪ねてきてすまない、カズ……」
「何か用ですか?」
ドアから顔を出したのはカズマではなかった。めぐみん殿だった。てっきり彼が出るものだと思っていた私は少し怯む。その上何故か彼女は私を睨みつけていた。何かしてしまったのかと思うが思い当たる節がない。
「か、カズマはいるか?彼に会いに来たのだが……」
「カズマはリビングにいますけど……。それより誰の許可を取ってカズマを呼び捨てにしているのですか。その呼び方は無性にイラッとします」
「す、すまない……」
めぐみん殿の物言いに私はたじろぐ。いつもならアイリス様を守るという名目上、語気を強めて話せるのだが今日は一人だ。しかもめぐみん殿が喧嘩口調で喋るので萎縮した態度を取ってしまう。
「貴族の貴方には分からないでしょうが、人を名前だけで呼ぶ時はその人と最も仲のいい人に許可を取らないといけないのです。そしてカズマと最も仲がいいのはこの私。つまり、私の許可なしにカズマを呼び捨てするのは、この上なく失礼なのですよ」
めぐみん殿の話は初耳だった。自分で言うのもなんだが、私は貴族のお嬢様育ちなので庶民の事柄には疎いのだ。だから彼女の言ってる事も知らなかった。ここはしっかり筋を通しておかなければ。
「それは失礼しためぐみん殿。そのような慣習があるとは知らなかった。どうか私にもカズマ殿を名前で呼ばせて頂きたい」
私は貴族しか知らないであろう礼をしてきちんと頭を下げる。今回はこちらに非がある。しっかり謝罪しなくてはならない。私の真摯な態度を見れば恐らく許してくれるだろう。
「ダメです、カズマを名前で呼ぶのは断固として拒否します」
断られてしまった。
「なっ!?ひ、人がここまで頭を下げているのだぞ!そこは『そんなに
「遂に本性を現しましたね!やはり貴方はカズマに会わせる訳にはいきません。私の許可なしにカズマを呼ぶような人は帰って……」
人の誠意を何だと思っているのだと、この女に怒りたい。彼女と言い争っていると、後ろから影が差す。
「そんなルールはないからクレアも騙されるなよ」
カズマが助けに来てくれる。彼はめぐみん殿の言葉を訂正しながら彼女の頭をチョップした。
「あいたっ!?な、何をするのですか。私は今からクレアを追い返そうとしていただけなのに」
「お前がデタラメを言ってたから指摘しただけだ。それよりクレア、随分と久しぶりだな……」
彼はどこか気まずそうに言う。その顔は後ろめたい事を隠しているような顔だった。一か月前にアイリス様はエッチな事をしたのを後ろめたく思っているのだろうか。彼が今どんな気持ちでいるか私には分からない。
「まぁ、とりあえず中に入ってくれよ。立ち話も悪いし」
私はカズマの後ろをついて家の中に入る。大きな屋敷だったが中はきちんと清掃が行き届いていた。隣でめぐみん殿が私に張り合ってくる。
「一応言っておきますが、貴方にカズマを渡すつもりはありませんよ。二人がどこまで進んだのか分かりませんが、どうせまだキスで喜んでいる程度でしょう。いいですか?私はカズマと一緒にお風呂に入る仲で───」
隣で彼女が何か言っているが、どうでもよかった。今更、彼との恋仲を自慢する気にもなれない。私は好きな人を奪われる悔しさが嫌という程分かっていたからだ。
「あー……めぐみん、悪いがちょっと席を外して貰えないか?今日はクレアと二人で話がしたい」
彼の言葉に鼓動が早まるのを感じる。めぐみん殿がいると言いづらい事とはなんだろう。その事が気になって私も彼と二人きりになりたかった。だが、めぐみん殿は頑として譲らない。
「私が邪魔だと言うのですか。良いでしょう、こうなったらとことん邪魔してあげます。そして今日は貴方達を二人きりにするのを阻止するのです」
彼女はカズマの事になると周囲を顧みないようだ。その様子がアイリス様と重なる。私はまた他の女からカズマを奪おうとしているのだと感じてしまう。私は嫌な女になったのかもしれない。
「それ以上やるつもりならドレインタッチで今日の爆裂魔法に必要な魔力を奪うからな」
「ごめんなさい、どうぞ二人で仲良くしていてください」
カズマが爆裂魔法を人質にすると、めぐみん殿は手のひらを返して、さっさと立ち去っていく。めぐみん殿の弱点は爆裂魔法みたいだ。今後のために覚えておこう。
「とりあえず俺の部屋で話すか。ここならアクア達の邪魔も入らないだろう」
彼の部屋に案内される。私はドアを開けた彼に続いて部屋の中に入った。簡素な家具が置いてあるだけのシンプルな部屋だ。彼はベッドに腰かけて話し始める。
「さて……やっと二人きりになれたな」
"二人きり"という言葉に私の体が反応する。それは彼が何気なく言った訳ではなくて、特別な意味が込められているような気がした。
「俺はクレアにずっと言いたい事があったんだ」
カズマの真っ直ぐな目が私を射抜く。彼の目に囚われて私は動けなくなる。もしかして求婚されるんじゃないだろうか。私の中で期待がどんどん高まっていく。
「クレア、俺は───。」
彼が私の肩に手を置く。キスだ、彼はキスをするつもりだ。私の鼓動はドクドクと音を鳴らして、顔は朱を散らしたように紅くなって、彼の目を見つめ返す。そして、私はそっと目をつぶった。彼が私にキスしてくれると思って口を突き出した。
静寂が私達の空気を支配する。何の音も聞こえない。肩にある彼の手から温もりが伝わってくる。彼がキスしてくれるのを私は待った。だが、いくら待ち続けても唇には何も触れない。おかしいなと思い、薄らと目を開けると、
「……えっと、クレア?」
カズマが困り顔で私の事を見ていた。私はキョトンとした顔で彼の顔を見る。
「あ……え……、き、キスをしようとした訳じゃなかったのか……?」
「ああ……、す、すまん。紛らわしかったな」
「!?」
私は顔から火が吹き出そうだった。彼がキスをしてくれると勘違いしていた。私の頭は色ボケしてしまったようだ。穴があったら入りたい。
「あ!で、でも、クレアがキスしたいって言うなら今からしても……」
「や、やめろ!下手なフォローをするな!余計に惨めになるだろう!」
私は顔を両手で覆って赤くなった顔を隠す。キスをされると勘違いした事も恥ずかしいが、何よりキスを待っている時の顔をしっかりと見られた事のショックの方が大きかった。
「……それで、私に話とは何なのだ。キスじゃない事は分かっている」
私は半ばやけくそになる。いくら恥ずかしがっていてもしょうがない。もう先程の事は忘れて欲しくて彼に話を促した。
「えっと……実は一ヶ月くらい前に俺はアイリスの部屋に遊びに行ったんだ。そこで俺は人として最低な事をしてしまった」
彼の話から察するに、アイリス様がカズマを襲った時の話をしているのだろう。私はあの時隣の部屋から全部見てたので、分かりきっているのだが敢えて黙って彼の話を聞く事にした。
「今日はその事を謝りたいんだ。だからあの時の出来事をちゃんと話そうと思う。───」
それから彼はあの日の事を話し始めた。アイリス様の告白を断ろうと思って私に内緒で彼女の部屋に行った事。そこで彼女に誘惑されて魔が差した事。そのまま彼女の手で射精してしまった事。どれも私があの時見た光景と違わず、彼が真実を言っている事が分かった。
「───つまり俺はあの時アイリスに浮気してしまったんだ。本当はその事をずっと謝りたかった。今日、クレアが来てくれたから最初にこの事を伝えたかった」
そしてカズマはベッドから立ち上がると私の真正面に立つ。
「クレアがいるのにこんな事になってごめん。本当に申し訳ないと思っている」
彼は丁寧に頭を下げた。私はベッドの上でその様子をじっと見ている。普段はヘタレな彼がこういう事をちゃんと謝る人だと知って少し驚いていた。
「か、顔を上げてくれ。カズマがアイリス様に襲われたのは元々知っていたから」
「…………え?」
カズマは顔を上げて私の事を見てくる。私が何を言ったのか理解できてない顔だ。
「だから二人がイチャイチャしていた事も全て知っているのだ。隣の部屋からカズマがキスする所も見たし、その……え、エッチなことをするのも見た」
私の発言に目を白黒させるカズマ。
「そ、それは犯罪じゃないのか?覗き見なんてしたらダメだぞ」
「それは本当にその通りなのだが……」
あの時はレイン殿に言われて中を見ただけで私が自発的に見ようとした訳ではない。まぁ、結局覗いてしまったのだが……
「と、とにかくカズマがアイリス様に襲われた事はもう気にしなくていい。確かに少しショックだったが……。でも、それはもう過去の話だ」
私は立ち上がって彼にハグをする。弱っている彼を見ると母性本能なのか庇護欲が湧いてしまって慰めたくなってしまう。体中から彼の温もりが伝わってきた。
「カズマが私の元に戻ってきてくれた。それだけで私は充分だ。勿論浮気はいけない事だが、今回はカズマは悪くない。だからそんなに落ち込まないでくれ」
出来るだけ彼の不安を取り除いてあげられるように、私は耳障りのいい言葉を並べる。
「本当にごめんクレア」
「気にするな。……それに私だってお前に謝らないといけないことがある」
私は一度彼から離れ真っ直ぐに彼の顔を見た。
「私はこの前カズマのプロポーズを断ってしまっただろう。あの時の事を今でも後悔しているのだ。本当にすまない……」
私が彼の屋敷に来た一番の目的はあの日の事を謝る為だ。彼があの夜どんな気持ちで城から帰ったか私には分からない。でも、私が彼を傷つけてしまったのは間違いないだろう。
「いや、いいよ。クレアの心の準備が出来るまで俺は待っているからさ」
あの時の彼の落ち込んだ顔は今でもよく覚えている。それなのに彼は私の事を気遣ってくれた。そんな彼に少しでも恩を返したくて、今の気持ちを端的に言った。
「心の準備ならもう出来ている」
最初はキョトンとしていた彼だが、私の言葉の意味が次第に理解できたのかどんどん顔が赤くなっていく。恐らく私も顔が赤くなっている事だろう。少し……いや、かなり恥ずかしい。だが、ここは自分の気持ちを正直に言わなければならない。
「サトウカズマ、私はお前の事を愛している。心の底から愛している」
水臭い言葉だけど、これ以外にいい言葉が思いつかなかった。それにこれは私の本心だ。私は彼の手を取り両手で優しく包み込む。そして胸に渦巻く万感の想いをぶつけた。
「こんな私で良ければ結婚してくれませんか?」
遂に言ってしまった。もう言葉を取り消すことはできない。これで、アイリス様を裏切る事になるが私はもう自分に嘘をつきたくなかった。これは私なりのケジメなのだ。彼は私をじっと見つめている。やがてゆっくりとその口を開いた。
「……これは夢じゃないよな……?」
カズマは喜んでいるのかよく分からない。ただとても困惑しているようだ。私は彼の真意を探りながら返事を待つ。
「ずっと不安だったんだ、クレアが俺のプロポーズを断った日から本当は俺のことが好きじゃないんじゃないかって」
そして彼は私に抱きついてきた。それが彼の返事だったのだろう。
「でも……良かった……!俺も大好きだぞクレア!」
彼はプロポーズを了承してくれた。それが嬉しくて私も彼を抱きしめ返す。私の愛が伝わるように強く強く抱きしめた。彼の言葉、体の温もり、その全てが愛おしかった。
「私も大好きだ。好きで堪らない……!」
傍から見れば私達はバカップルに見えるだろう。でも、普段はヘタレな彼がいざという時はかっこいい事も、気が多いが私だけを一途に愛してくれる事も、そのゴツゴツした男らしい手も私は全て知ってしまった。彼の好きな所が次から次に溢れ出して止まらなかった。
「クレア、今度こそキス……するか?」
「!」
彼から願ってもない申し出。私はすぐさま彼に口付けした。最初は軽いキスだったが、徐々に気持ちが抑えられなくなり互いの唾液が混ざり合う。私は舌を突き出し彼の口の中を蹂躙する。彼も私に応えるように舌を絡める。
「じゅる……ちゅぱ……」
淫靡な水音が部屋に響く。もう誰も私達を止められなかった。私の下腹部がキュンキュン
「クレア……愛してる」
彼から愛の言葉が囁かれる。私はもう彼にメロメロだった。おへその下辺りに彼の硬いものが当たっているのにも気づいている。彼も興奮しているのだ。私達の情欲が抑えられなくなっていると、
「カズマさーん、昼ご飯が出来たわよ〜」
間延びしたアクア殿の声。足音がこちらに近づいてくる。彼女に醜態を晒す訳にもいかないので一度私達は唇を離す。
「はぁ……はぁ……クレア……」
彼はギリギリの所で理性を保っているようだ。少しでも彼を誘惑したら簡単に
「カズマ……!」
彼にもう一度ディープキスをすると共に、彼の手を取り私の胸を揉ませた。もうこのまま一線を越えたいと私はアピールしたのだ。辛うじて私を襲わなかった彼もタガが外れ、私の胸を一生懸命に揉む。
「可愛いぞクレア」
愛の言葉が囁かれ私は一層興奮してしまう。私は彼をベッドの上に押し倒してそのまま上に覆い被さった。彼と抱き合いながらキスをして、そして股を彼の膨れ上がった部分に擦り付けながら愛を深めた。
「かじゅま……!はむっ……かじゅま……!」
キスの合間に彼の名前を呼ぶ。彼も私に応えてズボンを脱ごうとしたその時だった。部屋のドアがギイっと開きアクア殿が顔を出す。
「お昼ご飯ができ……」
彼女は私達の様子を見て言葉を失う。私は胸がはだけてブラが露出している。カズマはズボンを脱いで下はパンツ一枚になった状態だ。そして私達の口元はお互いの唾液でびちゃびちゃになっていた。こんな姿を見たら誰が見てもエッチな事をしていると思うだろう。
「広めなきゃ広めなきゃ……カズマさんがエッチなことしてたって広めなきゃ……!」
ブツブツ唱えながらアクア殿は部屋から出て行った。私達の事を誰かに広める気だろう。カズマが慌てた様子で彼女の後を追いかける。
「あいつ……!わ、悪いクレア。続きはアクアを懲らしめた後でするから!」
カズマはズボンを急いで履いて部屋から出て行く。部屋には私一人がポツンと取り残される。肝心な所で邪魔しに来たアクア殿に少し腹が立っていた。
「この昂った気持ちはどうすればいいのだ……」
あのまま勢いに任せて一線を超える予定だったのに、直前でお預けを食らってしまった。性欲だけが私の中に残っている。多分私の股も大洪水になっているだろう。寸止めされて私は欲求不満になっていた。
「まぁ、続きはカズマが帰ってきてからにするか……」
私は性欲を満たすのは諦め、はだけた胸のボタンを一つずつ
「そうだ……!私はカズマと結婚するのだ……!」
彼とエッチな事を出来なかったのは残念だが、結婚できるだけでもとても嬉しい事だ。まずはこの幸せを噛み締めよう。彼と結婚したら結婚式を挙げよう。ウエディングドレスを着てみんなに祝福してもらうのだ。そしていつかは子供も欲しい。
「ふふっ……最初は男の子がいいな……」
頬に手を当ててイヤンイヤンと頭を振る。カズマとの幸せな未来を想像していると、視界の端にチラリとあるものが映った。それは彼の机の上に置いてある物だ。
「これは……手紙……?」
私は吸い込まれるように手紙を覗き込む。その手紙の差出人はアイリス様だった。そう言えば彼女はカズマに手紙を送ったがずっと返事が来ないと言っていた気がする。便箋の数は十枚を超えていて、何度も彼に手紙を送ったことが分かった。私は一番上に置かれている手紙を見ると、
『お兄様、私の何がダメでしたか。嫌いにならないでください。私が全部悪かったです。嫌いな所を全部直すので手紙を無視しないでください。お願いです、返事をください。私はお兄様のことがこんなに好きなのにどうしてお兄様は私の気持ちに応えてくれないのですか。───』
アイリス様が必死にカズマに懇願している手紙だった。彼女が何としてでもカズマと結婚しようとしているのが分かる。私は複雑な想いで彼女が綴った手紙を見ていた。
「アイリス様が可哀想だな……」
この手紙だけ見るとアイリス様がカズマにいかに執着しているか分かる。でも、彼は一度も返事を書いていないようだ。もうカズマがアイリス様の告白を承諾することはないだろう。その事を思うとアイリス様に同情してしまう。
「そういえば───」
私はアイリス様から貰った手紙を思い出す。今朝のラブレターだ。私は怖い気持ちを抱きながらも封筒の中から便箋を取り出した。そして、中の手紙を読み進めていく。
『私と結婚したらお兄様が一夫多妻になっても構いません。クレアと結婚してもめぐみんさんと結婚してもいいです。だから私と結婚しましょう。そうすれば皆と暮らせます。なぜ私じゃなくてクレアを選ぶのですか。私の方がクレアよりずっと前からお兄様のことが好きでした。私じゃダメですか。何でもしますから私を見捨てないでください。───』
アイリス様の悲痛な想いが手紙から伝わってくる。改めて彼女がカズマを好きだったことを思い知らされた。彼女の想いが全てこの手紙に詰まっている。だから、この手紙はカズマに渡すべきなのだろう。だが、───
「ごめんなさいアイリス様」
私はラブレターをビリビリに破く。耳障りな紙の音が部屋に響いた。細切れになった手紙は散り散りに部屋を舞う。これで彼女のラブレターがカズマに届く事はないだろう。最低な事をしてしまったと自分を嫌悪してしまう。でも、後悔はしていない。これは仕方ないことなのだ。
「ううっ……アイリス様……!」
それでも彼女を裏切るのは辛かった。私は彼の部屋で一人涙を流した。
完結が近いので次回作のアンケートを取ろうと思います。そろそろ一次創作をするつもりでしたが、この話を書いて自分はまだまだ実力不足だと痛感したので暫くは二次創作で経験を積むことにしました。
因みに次回が最終回になると思います。