※この作品はR-18です。

カズマがクレアと結婚する話   作:てつろう

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風邪ひきました。それでも二次創作がやめられない


この二人組に仲裁を!

 

 

 

俺達はお城に来ていた。アイリスの誘拐事件の捜査を王様に頼まれたため、冒険者の俺は挨拶に来たのだ。

 

 

「いいか?決して国王様に向かって無礼な態度を取るな。お前の態度次第では首が飛ぶ可能性だってある。」

 

 

王様がいるとされる部屋の前で、俺はクレアから確認を受ける。この事を言われるのもこれで三回目だ。

 

 

「だから分かってるよ。軽く挨拶してアイリスと結婚する約束をするだけだろ。失礼な態度なんて取らないって。」

 

「なぜ貴様がアイリス様と結婚することになっているのだ!とにかく国王様はとても強い。レベルは百を超えていて、つい最近もドラゴンを一撃で葬ったという噂だ。」

 

「クレア殿の言う通りです。カズマ殿の態度次第では握手の時に手を粉砕してもおかしくありません。」

 

 

王様、強すぎじゃないか?そんな相手にこれから挨拶に行くのが怖くなってきた。やっぱりアイリスの捜査なんて止めて屋敷に引きこもった方がいいだろうか。

 

 

「貴様も怖くなってきたんじゃないか?ちょうどいい機会だ。国王様に会って怯え上がるお前を見るのも悪くないかもしれない。」

 

 

後ずさりして逃げようとする俺の腕をクレアがガッシリ掴み離さない。既にレインが扉を開けようとしていた。

 

 

「お、俺を帰らせてくれ!めぐみんやダクネスと最近いい感じになっているのにこんな所で死にたくな……」

 

 

俺がクレアに半ば強引に部屋に入れられると中には、マッチョがいた。筋肉隆々で血管は浮き出ており二の腕には大きなコブがあった。普通ならこの人に会っただけで恐怖を感じるだろう。だが、俺は怖いとは思わなかった。マッチョが泣いていたからだ。

 

 

「愛しのアイリスよ……!私を置いていかないでくれ……!ああアイリス様エリス様アクア様!どうか娘を!」

 

 

マッチョはエリス教徒なのかアクシズ教徒なのか分からないが、あらゆる宗派の神頼みをしている。その様子からアイリスを溺愛しているのが見て取れた。

 

 

「なぁもしかしてだけどこの人が……?」

 

「はい、我が国の国王ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・マグノス様です。」

 

 

クレア達からの話を聞いていた俺は拍子抜けしてしまった。いかにも親バカな感じの人だ。だが、その体は鍛えられており血管も浮き出ている。その内面の弱さと外見の男らしさが妙にミスマッチで不思議と怖いとは思わなかった。

 

 

「ああ、君がカズマくんか!」

 

 

俺を見るなり物凄い勢いでこちらに向かってくる。マッチョがこんなスピードで俺に向かってくるというのは心臓に悪い。

 

 

「うちの娘のことを探してくれないかい?もう三日も娘に会っていないんだ!このままでは私はおかしくなってしまう。」

 

 

王様は俺の手を握りしめたまま何度も手を上下に降っていた。その握りしめる力が強いせいで少し手が痛い。俺は王様の手を振りほどきながら苦笑いする。

 

 

「しかし、国王様、この者はただの冒険者です。魔王を倒したとはいえ、何か役に立てるようなことはないかと思われます。」

 

 

クレアが余計なことを言って俺を捜査から外そうとしている。

 

 

「だが、聞くところによると娘はカズマくんのことを慕っているそうではないか。娘を連れてきた者に結婚の許可を与えているしカズマくんが娘を見つけてくれると色々都合がいいのだが。」

 

「この男はとてもアイリス様と釣り合うような者ではありません。国王様もどうかお考え直してください。」

 

「しかしカズマくんは数多の魔王軍幹部を倒し戦績も申し分ない。やはり娘の婚約相手はカズマくんが適任ではないか。」

 

「そんな事ありません!お言葉を返すようですが、この者にアイリス様の捜査を任せるなど言語道断です。」

 

 

 

 

 

 

「……ほう」

 

 

 

 

 

その時、時が静止した。

 

王様が相槌を打った。それだけなのに一瞬で雰囲気が変わり、その場が凍りつく。さっきまでただの親バカでしかなかった王様がとてつもないオーラを放っていた。

 

 

「……私に刃向かうつもりかね?クレア」

 

 

この王様、間違いなく強い。王様は野太い声で俺達を威圧しているようだった。俺は本能的に恐怖を感じて王様から目を離せなくなる。クレアは眠っていた虎を起こしてしまったのだ。

 

 

「い、いえ!滅相もございません。国王様の命令に従います。」

 

 

クレアは慌てて発言を撤回する。彼女も王様を前にしては何も出来ないのかただ頭を下げるだけだった。

 

 

「カズマくんを娘の捜査に協力させなさい。これは命令だ。クレアもレインも良いか?」

 

 

二人は勿論刃向かうことなく王様の指示に従う。彼女達を見て王様は満足した様子だ。

 

 

「ではカズマくん、期待しているよ。必ず娘を見つけてくれたまえ。」

 

 

先程まで怒っていた王様が笑顔で俺の方を見る。この時の王様の笑顔が頭に張り付いて離れなかった。

 

 

 

+

 

 

 

その後、俺は城にしばらく滞在することになった。今後アイリスの捜査に参加する為だ。来客用の部屋を一部屋割り当てられ自由に使っていいことになっていた。

 

 

「ハイデル!ハイデール!」

 

「お呼びでしょうかサトウ様、食後のコーヒーでしょうか。お口直しのデザートでしょうか。デザートにはサトウ様ご要望のプリュレをご用意致しました。」

 

 

今回俺の世話をしてくれるのは前回の城の滞在でもお世話になったハイデルだ。この男は俺の嗜好をよく理解してくれて大変心地いい。

 

 

「コーヒーだけ頼む。それとクレアは今何をしている?」

 

「クレア様なら現在アイリス様の救出作戦に関する会議に参加しておられます。」

 

「よし、ならクレアのいる会議室に今朝俺が奪った下着を送り付けてくれ。」

 

「かしこまりました。折角のプレゼントですので綺麗に包装しておきましょう。」

 

 

流石、エリートの執事だ。主の指示にさりげなくアドバイスを入れてくれる。クレアもきっと喜んでくれるだろう。

 

 

「そういえば今朝から肩が凝ってるんだよな。ここにマッサージしてくれる人とか居ないのか?」

 

「それでしたらメイドのメアリーを呼びましょう。マッサージという名目で、セクハラする絶好の機会になります。」

 

 

本当に、なんて仕事の出来るやつなんだ。俺は満足気に頷く。ハイデルはコーヒーを一杯入れた後、恭しく頭を下げて部屋から出ていった。

 

 

「ふぅ……」

 

 

俺はコーヒをを飲みながら一息つく。これからアイリスを探すことになる。その場の流れで城にまでやって来てしまったが、大丈夫だろうか。特に王様に直々に命令されたことが怖い。もし、アイリスを見つけられなかったら俺の首が飛ぶかもしれない。

そんな風に思考が負の連鎖を重ねているとコンコン、と控えめなノックの音が聞こえた。早速メイドのメアリーが来たのだろうか。一度ネガティブな感情を捨て目の前の快楽に溺れよう。

 

 

「メアリー、ちょうどマッサージしてもらいたかったんだよ。特に下半身が凝ってるからそこを重点的に解(ほぐ)してほし……」

 

 

ギイッ、とドアが開けられそこに居たのはメアリーではなくダクネスだった。

 

 

「ほう?セクハラ紛いの事をしているようだなカズマ。」

 

「だ、ダクネス……。こ、これは違うんだ。本当に体を解(ほぐ)してもらおうと思ってただけで……。」

 

 

俺は冷や汗を垂らしながら必死に弁明する。我ながら苦しい言い訳だがただマッサージしてもらうつもりだったと乗り切ろう。

 

 

「……まあいい。それよりお前に聞きたいことがあるのだ。」

 

 

ダクネスは俺のことを折檻するかと思いきや、真剣な顔で俺の顔を見据えた。

 

 

「実はアクアからアイリス様が誘拐されたと聞いてな。話を聞いてすぐにここへ来たのだ。」

 

 

改めてダクネスの姿を見るとクエストを受ける時と同じ格好で、城に来るのに相応しい服装とは言えない。急いでいたからだろう。

 

 

「アイリス様は見つかりそうか?私は領主としての仕事があるからこちらには来れないが何か出来ることがあるなら何でも言って欲しい。」

 

「明日からアイリスを探すことになってるよ。まぁそんなに心配しなくてもすぐに見つかるさ。」

 

「そ、そうか……」

 

 

俺の言葉を聞いてもダクネスはどこか不安そうな様子だ。……というより、さっきから俺の顔色をチラチラと伺っていて何か言いたい事を我慢しているような……。

 

 

「今から夜這いでもするのか?俺はいつでも準備出来てるぞ」

 

「なっ!?そ、そんな訳ないだろう!ただ私は……その……確認したいことがあるというか……」

 

 

ダクネスはどうも煮え切らない反応だ。仕方ないので俺は彼女を部屋の中に招き入れ、ベッドに座らせる。彼女に話しやすくさせる為だ。俺はそんなダクネスの隣に座り話を聞くことにした。

 

 

「ちゃんと言ってもらわないと分からないだろ?今更どんなことを言われても大丈夫だからさ。例えば、ダクネスが夜な夜なエッチなことをしてても……」

 

「ち、違う!私はアイリス様との結婚について聞きたかったのだ!」

 

 

俺の言葉を食い気味に否定してくるダクネス。

 

 

「アイリスとの結婚って何の話だ?」

 

「だから……アイリス様を見つけてしまうと……その……お前はアイリス様と結婚してしまうのだろう?」

 

「……アクアから聞いたのか。」

 

 

核心を突く質問に俺は少し動揺してしまう。彼女も俺の事を慕ってくれているのでアイリスを見つけることは即ちダクネスの告白を断ることになってしまう。

 

 

「ああ、お前に振られた手前、こんな事を言いたくはないのだが……私はやはりお前が諦めきれない。本当にアイリス様を選んでしまうのか?」

 

 

ダクネスは上目遣いで俺のことを見つめる。その目は少し潤んでおり女らしさにドキッとしてしまう。昔は頭が固かったダクネスも姑息な手を使うようになったものだ。

 

 

「ならダクネスを選んでやるよ。」

 

 

俺は彼女が今一番欲している言葉を選んでやった。彼女は俺の言葉を聞いて一瞬嬉しそうな表情をしたが、すぐに怪訝な様子で俺の真意を確かめてきた。

 

 

「それは本気で言っているのか……?アイリス様もめぐみんもいるのに私を選ぶのか?」

 

「ああ、ダクネスが一番だ。めぐみんよりもアイリスよりも好きだぞ。」

 

「〜〜っ!!そ、そうか。その言葉を聞けてとても嬉しいぞ……!」

 

 

ダクネスは俺を力強く抱きしめる。彼女の耳は赤く染まり顔は蕩けていて喜色満面だった。俺も抱擁を受け入れダクネスの頭を撫でてやる。

 

 

「アイリスを見つけてもお前への気持ちは変わらない。これからもよろしく頼むな。」

 

 

俺はダクネスに都合のいい言葉を並べてひたすら彼女を甘やかすのだった。

 

 

 

+

 

 

 

翌朝。今日からアイリスの捜査が始まるそうで、俺は珍しく早起きしていた。朝食を済ませ広間へ行くとレインが紅茶を飲んで座っていた。

 

 

「あらカズマ殿、早起きなんですね。」

 

「まぁ今日からアイリスの捜索が始まるからな。気合いも入ってるんだよ。」

 

 

俺はレインの向かい側に座り、ポットの紅茶をコップに注ぐ。香ばしい匂いが俺の鼻腔をくすぐった。

 

 

「本当は事件の捜査に関わらないでほしいのですが……。そういえば昨日はダスティネス殿がお城に来ていましたが、何かあったのですか?」

 

「ああ、ダクネスと付き合うことになったんだ。」

 

 

俺の返答にレインは暫く固まる。もしかして俺の声が聞こえなかったのだろうか。

 

 

「えーと、アイリス様と結婚したいのではなかったのですか?」

 

「ああ、ダクネスは第二夫人でアイリスは第一夫人かな。」

 

「……はい?」

 

 

レインは俺の言葉が信じられないようで聞き返す。俺は丁寧にも何度も同じ説明を繰り返してやった。

 

 

「だからダクネスともアイリスとも結婚しようと思ってるんだ」

 

 

レインは紅茶の入ったカップをわなわなと震わせ我慢できないとばかりに勢いよく紅茶を置いた。その勢いで中身の液体が溢れ出る。レインは立ち上がり怒った様子で言った。

 

 

「最低ですよ!浮気なんて絶対ダメです!貴方にはアイリス様と結婚なんてさせません!」

 

 

ハーレムを作るのは男の夢なのだ。女のレインには分からないことだろう。彼女の説教を適当に聞き流していると広間のドアが開けられ中からクレアが顔を出した。彼女は俺の姿を見るなりズカズカと俺に近寄ってくる。

 

 

「サトウカズマぁ!」

 

 

出会い頭に、クレアが俺の胸元を掴み顔を近づける。

 

 

「な、なんだよ急に」

 

 

彼女と至近距離で見つめ合う。普通ならドキドキする展開なのだが、相手がクレアだからそんな甘酸っぱい展開にはならなかった。

 

 

「昨日会議中に私の下着を送り付けてきたのはお前だろう!おかげで大恥をかいたではないか!」

 

 

そういえばそんな事もあったな。俺としては取ったものを返しただけのつもりだったが。

 

 

「クレア殿、聞いてください!カズマ殿がダスティネス殿やアイリス様と二股すると言っているのです。」

 

「なんだと……!貴様、どこまでアイリス様を愚弄すれば気が済むのだ……!」

 

「待て待て、アイリスを見つけたらダクネスから乗り換えるつもりだから!二股はしないって!」

 

 

元々俺はハーレムを作るつもりだったが、彼女達があまりに怒るので口から出任せを言ってみる。だが、レイン達は更に怒った様子で俺を睨みつけた。

 

 

「レイン、こいつをこの部屋に閉じ込めておけ。捜査は私一人で行ってくる。」

 

「そんな事したら王様に言いつけてやるからな!はっはっは、権力はこうやって使うんだよ。」

 

 

我ながらクズの発言だと思うが、アイリスと結婚するためにも仕方ないことだ。クレアは凄く悔しそうな表情をしながら俺の意見を呑んだ。

 

 

「チッ……!まぁいい。まずは聞き込みからするぞ。お前は私とバディを組んでもらう。足を引っ張るなよ。」

 

 

よりによってクレアと二人で捜査するのか……。俺と白スーツとでは相性が悪い気がしてならない。仕方なく俺は了承するのだった。

 

 

 

+

 

 

 

俺とクレアは一緒に捜査をする事になった。俺達は手始めに王都の貴族の屋敷に来ている。門番に俺達の名前を名乗ったらすぐに通してくれた。

 

 

「でっけえ……」

 

 

一言で言えば大豪邸だった。外から見ても、俺が普段暮らしている屋敷よりも大きい。豪邸の中に入るとメイドさんが俺達を出迎えてくれて屋敷を案内してくれた。俺はメイドさんに聞こえないようにそっとクレアに耳打ちする。

 

 

「ここの人は何か怪しい点でもあったのか?」

 

「アイリス様が居なくなった時に丁度アクセルの街にいたのだ。可能性は低いが念の為聞き込みに来ただけだ。」

 

 

クレアの話を聞きながら俺達は廊下を進んでいく。左右にはいかにも高そうな壺や絵画が飾ってあった。裕福な家らしい。そのまま俺達は応接室のような部屋に通される。中には金髪の男が座っていた。見た目からして四十代くらいだろうか。貴族らしく余裕のありそうな笑みにピンと張った姿勢、一見すると好印象なおじ様という感じの人だった。おじ様は俺達を見つけると、すぐに立ち上がり丁寧にお辞儀する。

 

 

「お初にお目にかかります、シンフォニア卿。わたくし、この家系の当主を務めているアレクサと申します。」

 

 

貴族しか知らない丁寧な挨拶にクレアも丁寧に挨拶する。こう見えてもクレアはダスティネス家と並ぶ大貴族の出身だ。礼儀正しい振る舞いもお手の物だろう。

 

 

「とりあえず紅茶でも飲んでいってください。大したもてなしは出来ませんが誠意を持って対応しましょう。」

 

「いや、長居する気はない。今日は誘拐事件の事について話を聞きに来たのだ。」

 

「誘拐……ですか、物騒な話ですね。良いでしょう、私に答えられることなら何でも言いますよ。」

 

 

それからクレアが一通り事件の概要について説明する。アイリスが突然いなくなった事を説明し、彼女が居なくなった日時にどこで何をしていたか、アイリスを見かけなかったか、他にもアイリスを誘拐する動機を持つ人間なども聞くことになった。

 

 

「……残念ですが、私はアイリス様については詳しく存じ上げません。お力になれず申し訳ありません。」

 

 

色々な事をおじ様に聞いてみたが知らない、分からないの一辺倒で一向に情報は得られなかった。俺達は出された紅茶をとっくに飲み終えている。ここに来てから一時間は経っているだろう。

 

 

「それにしても豪華な屋敷ですね。」

 

 

俺は世間話をして、お茶を濁す。多分これ以上進展はないだろうし少し話してから帰ろう。

 

 

「この屋敷の大半は私の父の持ち物ですけどね。父とは血も繋がっていないのです。親が子に恵まれなかった為、私を代わりの子供として育てられただけですよ。」

 

 

この人は養子として貴族の息子に迎え入れられたという事だろうか。おじ様の顔をよく見ると目は黒色で、貴族の特徴である碧眼とは異なっている。彼の言うことは本当なのだろう。俺が何気なく周囲を見渡すと歴代当主の肖像画が描かれている横にこじんまりと写真立てが置いてあった。中にはおじ様と一緒に二十代の娘が写っている。

 

 

「綺麗な娘さんですね」

 

「ええ、そうでしょう。自慢の娘です。」

 

 

自分の娘を褒められたからかおじ様は嬉しそうにしていた。その笑顔に初めて親としての姿が垣間見える。

 

 

「良ければ娘さんにも話を聞かせて貰えませんか?何といってもあまり手がかりがないものですから」

 

「それは無理ですね。娘は居なくなってしまいましたから」

 

 

え、と小さな声を上げてしまう。娘が居ないというのは死んでしまったという事だろうか。失言してしまったと後悔する。

 

 

「すみません、ご冥福をお祈りします。」

 

「いえ、死んではいませんよ。去年、誘拐されただけです。犯人は”変態紳士”と名乗っているそうですが。」

 

 

”変態紳士”。その名前なら俺も聞いたことがある。新聞で見たが、確か大人の女性を狙う誘拐犯だったはずだ。

 

 

「あの事件の被害者だったんですね。失礼しました。」

 

 

俺の予想だとこの人はアイリスの誘拐に関係ないだろう。娘を持つ人で娘を奪われる悲しみを知っている。そんな人が王女様を誘拐するとは思えないからだ。俺がクレアに目で帰ることを伝える。この人からはもう情報を得られないだろう。だが、クレアは俺の指示を無視して貴族に言った。

 

 

「貴様がアイリス様を誘拐したのだな?」

 

 

突然、クレアが言う。いきなりこいつは何を言っているのだろう。

 

 

「ははっ、何を言っているのですか。証拠でもあるのですか?」

 

「ない、勘だ。」

 

 

クレアの発言に俺も貴族の人も固まってしまう。あまりに適当な物言いに言葉を失う。それなのにこいつは顔だけは真剣だ。悪意なくこれをやっているのが一番タチが悪い。

 

 

「す、すいません!うちのクレアが失礼なことを……」

 

「面白い!」

 

「え?」

 

 

怒られるかと思って俺が謝ろうとすると貴族は何を思ったのか手を叩いて笑い出した。呆気に取られている俺を他所におじさんが話し出す。

 

 

「クレア殿、貴方のような破天荒な兵士は中々居ないでしょう。それに見目麗しい美貌の持ち主だ。どうですか、今度一緒にお食事でもしませんか。」

 

「ふん、私はアイリス様にこの身を捧げると誓った兵士。結婚など興味はない。」

 

 

意外にもおじ様にとってはクレアの態度は好感触だったようだ。それどころかクレアを褒め称えている。

 

 

「貴様がアイリス様を誘拐したのだろう。動機は……分からないがその妙に紳士的な態度が怪しいのだ。」

 

「し、失礼しました!俺達はもう帰るので!」

 

 

未だに文句をつけるクレアの腕を引っ張り強引に連れていく。俺の慌てた様子を見てもおじ様はニコニコと笑っていた。そのまま部屋を抜け廊下に出てすぐにクレアに説教することにした。

 

 

「お前はバカか!あんな失礼な態度取っておいて話を聞けるわけないだろ!」

 

「誰がバカだ。あの人が犯人かもしれないではないか。」

 

「いいや、あの人は善人だ。僅かな所作振る舞いからもいい人の雰囲気が滲み出ていただろ。とにかく次の聞き込みに行くぞ。スティールを使われたくなければ付いてこい」

 

「ぐぬぬ……卑怯だぞ貴様……!」

 

 

結局俺とクレアは反発し合いながら一件目の聞き込みを終えた。このままだとそのうちバディは解散になるだろうなと諦念の心境を抱きながら豪邸を後にするのだった。

 

 

 

 

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