※この作品はR-18です。

カズマがクレアと結婚する話   作:てつろう

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この護衛と事件の捜査を!

 

 

 

おじ様の聞き込みを終え、俺達は二件目の屋敷に来ていた。二件目の家もまたもや貴族で外観は豪華なものだった。

 

 

「ここの貴族は何が怪しいんだ?」

 

「ああ、アルダープという男を知っているだろう?ここはアイツのいとこの家なのだ。アルダープの不正の一件で王家に諍いが出来たからな。王家に恨みを持っていてもおかしくない。」

 

 

げっ……よりによってアルダープのいとこか。アイツにはいいイメージがないんだよな。いとこもアルダープと性格が似ていそうで嫌だ。俺達は使用人に案内され応接室に入る。そこには、アルダープと瓜二つな男が座っていた。

 

 

「よくぞいらっしゃいました、シンフォニア卿。」

 

 

アルダープもどきはぺこりと頭を下げる。俺にではなく隣のクレアに。クレアにだけ挨拶するあたり、このオッサンは女にしか興味がないのではと思いながら俺は席に着く。

 

 

「今日は誘拐されたアイリス様について伺いに来たのだ。何か知っている情報はないか?」

 

 

単刀直入にクレアがおっさんに聞く。もう少し前置きとかないのかよと思い俺は顔をしかめた。アルダープもどきは驚いた顔をしたものの、ニヤリと顔を歪めて答える。

 

 

「いえ、何も知りませんな。失敬、少しお手洗いに行ってきます。」

 

 

まだ聞き込みを始めたばかりだというのに、アルダープのいとこが部屋を出ていく。相手がいない今のうちに俺はクレアと話すことにした。

 

 

「ここの人も何も知らないみたいだな。もう諦めて次の聞き込みに行くか?」

 

「……そうだな、もう少し話を聞いても良かっ…………」

 

 

突然クレアが黙り込んでしまう。どうしたのだろうと彼女の方を見ると何やら真剣な様子で虚空を見つめていた。

 

 

「…………なんだと!」

 

「?」

 

 

今度はクレアが怒り心頭な様子で立ち上がる。さっきからこいつはどうしてしまったのだろう。急に情緒不安定にでもなったのだろうか。

 

 

「どうした、クレア?」

 

「お前は今の声が聞こえなかったのか?」

 

 

声……?勿論何も聞こえなかった。俺が怪訝な様子でクレアを見ていると彼女が説明する。

 

 

「今、アルダープが『あの王女が居なくなったとはせいせいするぞ!』と言ったのだ。確かにこの耳で聞いたぞ」

 

 

本当だろうか。アルダープは隣の部屋に行って何か喋る音は聞こえたがその内容までは聞き取れなかった。でも、クレアの様子からとても嘘を言っているようには見えない。彼女の聴覚は俺よりずっと鋭いから、聞こえたのだろうか。そうこうしているうちにアルダープもどきが帰ってくる。

 

 

「いやはや、お待たせしました!アイリス様のことは誠に気の毒で……」

 

 

下卑た薄ら笑いを浮かべたままこちらに来るアルダープもどき。俺が何気なく相手を見ているとヒュン、と音がした。風を斬る音。横を見ればクレアが抜剣している。この状況で剣を抜いたのか。いや、待て。問題はそこじゃない。一体何を切ったのかだ。視線を前にやると、そこには頭がカッパみたいになったアルダープもどきがいた。クレアがアルダープもどきの髪の毛を剣で切ったのだ。

 

 

「あっ……あっ……ワシの髪が……髪が……!」

 

 

頭頂部の髪の毛だけが綺麗にハゲており、クマのような見た目も相まって中々に醜悪な姿だ。その見た目に思わず笑いが込み上げそうになるが、堪えて謝罪する。

 

 

「も、申し訳ございません!ほら、白スーツも謝れ!」

 

「ふん、アイリス様を愚弄する奴にはこれくらい当然の仕打ちだ。」

 

 

クレアの言い分から察するに、アルダープもどきがアイリスの誘拐を喜んだことに腹を立て、髪の毛を切って仕返ししたという所だろう。アルダープは一時呆然としていたが、やがて我に返ったのか顔を赤色に染め、大声で怒鳴った。

 

 

「ええい!許さんぞ貴様ら!今すぐ出ていけ!この事は苦情を入れてやるからな!二度と顔を見せるな!」

 

 

俺とクレアはアルダープもどきに無理やり屋敷を追い出される。二件目の聞き込みもまた厄介事を起こして帰ることになった。

 

 

 

+

 

 

 

聞き込みを終えたその日の夜、俺とクレアはレインに説教されていた。

 

 

「全く!初対面の方の、髪の毛を切るなんて言語道断ですよ!ちゃんと反省してください!」

 

「……はい」

 

 

クレアはレインの言葉に落ち込んだのか元気がなさそうに返事する。弱っているクレアを見るのは新鮮で中々ないことだった。

 

 

「あのアルダープもどきは印象悪かったし頭がハゲているくらいが丁度いいと思うけどな」

 

「カズマ殿!そういう事を言うからクレア殿が羽目を外すのです。いいですか、そもそも貴方という人は常識が足りてないのです。普通の人ならパンツを奪ったり奥さんを沢山作ろうとしたりなんかしません。」

 

 

レインの怒りの矛先が俺へとすり替わる。個人的には今回の件は全てクレアの責任で俺は悪くないと思っている。だが、反抗してもレインに更に怒られそうなので黙っておこう。

 

 

「貴方達二人はバディなんですから、お互いに支え合わないといけません。犬猿の仲であるのは分かっていますが、アイリス様を救出するという共通の目標がある以上、協力してください。」

 

 

ぐうの音も出ない正論を次々と並べ立てられる。彼女の話を聞いていて耳が痛かった。

 

 

「失礼致します、クレア様、お時間よろしいでしょうか」

 

 

俺とクレアが説教を受けていると兵士の一人が部屋の中に入ってくる。丁度説教が中断されて俺達にとっては都合がいい。

 

 

「今、二人を叱っているので後にしてもらませんか?」

 

「いえ、とても重大な用件でして。アイリス様を誘拐したという犯人から手紙が来たのです」

 

 

なんと、犯人から連絡が来たのか。俺達は説教なんかすぐにやめ、兵士が持っている一通の手紙に見入る。

 

『王女様は預かった。返して欲しければ明日の〇〇時に以下の場所に一億円置いていけ。場所はベルゼルグの……』

 

手紙には身代金を要求する脅迫文が書いてあった。お金を置いておく日時と場所も記されている。

 

 

「この手紙がイタズラという可能性は?」

 

「ないな。アイリス様の誘拐を知ってる者は今日聞き込みをした一部の貴族だけだ。イタズラなら手紙が来るのが早すぎる。」

 

 

ということはこの手紙は本物で、犯人が送ってきたものだ。つまり、相手の指定する場所にお金を置いていけばそこには必ず犯人がやって来る。犯人を捕まえるまたとないチャンスだ。

 

 

「このまま犯人の指示に従って身代金を用意していいものだろうか……。偽物のお金を用意して、犯人だけをおびき寄せるというのも手だろう。」

 

 

クレアは相手の言う通りにするか迷っているらしい。彼女は今回のアイリス救出作戦のリーダーだから慎重になっているのだろう。

 

 

「いや、ここは本物のお金を用意した方がいい。もし、お金を用意してないことが犯人にバレたらアイリスに何をされるか分からないからな。」

 

「……そうか、お前がそう言うならお金を用意しておこう。」

 

 

クレアは俺の意見に納得してない様子だったが、アイリスの名前を出されると途端に分が悪いと思ったのか素直に従った。彼女のアイリスへの愛の深さが身に染みて分かる機会だった。

 

 

+

 

 

 

その後、身代金の話を兵士達に伝えて今日は解散となった。俺は自室へ向かいながらクレアと話している。

 

 

「明日にはアイリス様が誘拐されたことが記事になるだろう。」

 

 

彼女の話によるとこれ以上アイリスが居なくなったことを隠しきれないとのこと。薄々バレるくらいなら堂々と記事にしてしまうようだ。

 

 

「そんな事を記事にして国としては大丈夫なのか?不安に思う国民もいるだろ」

 

「そのくらい分かっている。だが、事実というものは必ずどこかから漏れるものなのだ。このまま隠し続けるよりマシだ。」

 

 

クレアも仕事に追われていて大変なんだな。俺は彼女にいくつか労いの言葉をかけてやる。クレアは相変わらず無愛想だったが、俺の気持ちは嬉しいようだった。そのまま歩いていると俺の部屋の前に着く。

 

 

「では、私は部屋に戻るぞ。あまり夜更かしするなよ。」

 

「へいへい」

 

 

クレアと別れて自室に入り、俺は大きく伸びをする。今日は疲れた。まだ一日しか事件の捜査をしてないが。クレアがいきなり相手を犯人扱いしたり、アルダープもどきの頭をハゲさせたりと色々あった。……俺が疲れた原因ってほとんどクレアのせいじゃないか。そんな事を考えていると、

コンコン、とノックの音が聞こえる。クレアがまた来たのかと思ってドアを開ける。だがそこに居たのはクレアではなくめぐみんだった。彼女は急いで来たのか肩で息をしたまま立っている。

 

 

「やっと会えましたねカズマ。」

 

 

まずお城にめぐみん一人で入れたこと、そしてこんな夜遅くに城に来たこと。どちらにも驚いたが、立ち話も悪いので一度部屋の中に入れる。

 

 

「めぐみん、一体どうやってここまで来たんだ?」

 

「大したことはしてないですよ。私を通さなければ爆裂魔法を使うと宣言しただけです。」

 

 

相変わらずこいつは厄介事を起こさないと気が済まないらしい。明日朝イチで俺がみんなに謝りに行くか。

 

 

「アクアから聞きましたよ。下っ端の為にカズマが四苦八苦しているそうじゃないですか。」

 

「まあな。可愛い妹の為だからこれくらいするさ。」

 

 

めぐみんは俺の返事を聞くと不満げに頬を膨らませた。その仕草一つ一つが可愛くて俺をドギマギさせているのが分かる。

 

 

「なんだ、めぐみん。アイリスに嫉妬しているのか?」

 

「ええ、嫉妬してますよ」

 

「……お、おう。そうか。」

 

 

めぐみんの直球な物言いは心臓に悪い。魔性のめぐみんは未だ健在のようだ。めぐみんは俺の反応を見てニヤリと笑った後、俺をそっと抱きしめながら耳元で囁いた。

 

 

「貴方が他の人の為に必死になっているのを見ると妬けてくるんですよ。少しは私の事も頼ってください。」

 

 

めぐみんの甘い声は俺の理性を弾け飛ばそうとする。これはめぐみんからも誘っているのだろうか。それならば俺が理性を保つ必要はないよな。

 

 

「捜査には私も協力しますよ。だから今夜は……」

 

「めぐみーん!」

 

「きゃっ!?」

 

 

俺はめぐみんを押し倒し貧相な胸に顔を埋めスゥハァと深く息を吸う。柔軟剤のいい香りが俺の鼻を刺激する。めぐみんは突然の事に驚いたのか身をよじらせながら抵抗した。

 

 

「ちょ、ちょっとカズマ、やめてください!今はそういう気分じゃないのです!こ、この……」

 

 

暴れるめぐみんを体で押さえつける。そのまま俺はズボンのベルトを外し臨戦態勢になってる愚息を取り出そうとした。めぐみんの裸体も見てみたいと彼女の服も脱がそうとする。

 

 

「や、やめろぉおおお!!!」

 

 

彼女の逆鱗に触れたのかめぐみんが一際大きな声で叫ぶ。と、同時に俺の頭に強い衝撃が加わった。めぐみんが近くにあった杖で俺の頭をぶん殴ったのだろう。それを機に俺の意識は薄れていき、最後には何も見えなくなった────。

 

 

+

 

 

 

「──マ殿!カズ──!───ッ!」

 

誰かが俺を呼ぶ声がする。そうだ、俺はめぐみんと一線を超える所だったのだ。早く起きなければいけない。俺の意識は泥沼から這い上がるように目覚めていく。

 

 

「……クレア?」

 

 

目を覚ますとクレアが俺の顔を覗き込んでいる。心配そうな顔だ。

 

 

「やっと目を覚ましたか。今日は犯人に身代金を持っていく日だぞ。寝坊などするな。」

 

 

クレアは寝ていた俺の事などまるでお構いなしだ。そもそも昨日は何をしていたんだっけ。確かめぐみんが城にやって来て……あっ。そうだ、俺は昨日めぐみんを襲おうとしたのだ。彼女はそれを拒み無理やり犯そうとする俺を気絶させた。

 

 

「はぁ……最悪だ」

 

 

改めて周囲を見渡しても、もうめぐみんの姿はなかった。恐らく俺に襲われそうになったのが怖くてそのまま逃げてしまったのだろう。

 

 

「起きて早々ため息か?幸運値が下がるぞ。」

 

 

クレアはそう言うが、こんな事があると流石に気分が下がる。今度めぐみんに会うときにどんな顔をして会いに行けば良いだろうか。

 

 

「なぁクレア、もし俺に襲われそうになったらどうする?」

 

 

俺の質問を聞いたクレアは何を言っているんだという顔で俺の事を見る。

 

 

「質問の意味が分からないのだが……。まぁ私なら剣でお前を切るかもしれないな。」

 

 

分かってはいたがクレアの意見は参考にならなかった。もっと俺への好感度が高くて魔性の女みたいな人でないといけない。

 

 

「昨日めぐみん殿が城に来ていたと聞いたが、まさかお前……襲ったのか?」

 

 

彼女の鋭い指摘に黙り込んでしまう俺。その態度を見て肯定と受け取ったのか彼女は怒りを露にする。

 

 

「お前はアイリス様を選ぶか他の女を選ぶかいい加減ハッキリしろ!」

 

「はぁ……本当に最悪だ。めぐみんに会わせる顔がないな……」

 

 

俺のどんよりした気持ちは海よりも深く、クレアの説教も相まって少し泣きそうになっていた。そんな俺の顔を見てクレアは不味いと思ったのかフォローを入れる。

 

 

「ま、まぁめぐみん殿に謝りに行く際には私も同行してやる。お前一人では大変だろう。」

 

「なんだ珍しく優しいじゃないか。何か裏でもあるのか?」

 

「裏などない!ただ昨日の聞き込みの時はお前に色々迷惑をかけたからな……。少しはその恩を返そうと思っただけだ。」

 

 

ほう、クレアなりに昨日の事は反省していたらしい。彼女も捜査の中でいつの間にか成長しているようだ。

 

 

「ありがとな、今日こそ必ず犯人を捕まえよう。」

 

「ふん、言われなくてもそのつもりだ。」

 

 

クレアは俺に対して冷たいままだが、少し心を開いてくれた、そんな気がした。

 

 

 

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