カズマがクレアと結婚する話 作:てつろう
約8000字あります。ちょっと長くなっちゃいました。
翌日。アクセルにいる占い師の元へ向かっていた俺とクレア。アクセルへ向かう道すがらもどことなく気まずい雰囲気が俺達の間には流れていた。だが、それを吹き飛ばすように俺は話し続ける。クレアも明るく喋っていたが、やはり心の中にある暗い感情を隠しきれないようで時折悲しそうに俯くのだった。そんな事をしているうちに目的の場所へ着く。
「おい……まさかアクセルの占い師って……」
「へいらっしゃい!ある時は魔道具店のバイト、またある時はギルドの相談屋。本日は占い師として汝らの相手をしてしんぜよう!」
俺達がやって来たのはバニルのいるウィズ魔道具店だった。いつもの如く冗長な挨拶をしてくるバニルが椅子に座って俺達を出迎える。カウンターの方に目を向けると、何があったのか黒焦げになっているウィズもいた。
「後ろの女性の方は大丈夫なのか?頭から黒炭が出ているが……」
「何も気にする事はない。
後ろのウィズが気になる様子だったが、クレアは勧められるままに椅子に座る。いつもの光景に見慣れている俺も彼女の隣に座った。
「既に新聞にも出ているので知っているであろうが、アイリス様が何者かに誘拐された。今日はアクセル随一の占い師と呼ばれる貴方にその事について尋ねに来たのだ。」
ふむ、とバニルは手を顎に当て考える素振りを見せる。暫く逡巡した後ニヤリと口元を歪めた。バニルは親指と人差し指で輪っかを作り、もう片方の手で手のひらを差し出す。
「吾輩ほどになれば事件の真相を知ることなど容易い。だが、勿論それ相応の対価を貰おう。王女様の誘拐となれば金額も高くなるが……」
お金を要求してくるバニル。悪魔として対価を貰うのは当然という口ぶりだ。だが、俺達もそう言われるのは見越していた。クレアはエリス金貨の入った重たい袋をドンとテーブルの上に置く。
「ここに一億エリスある。これだけあれば充分だろう。それでもまだ足りないと言うか?」
「毎度あり!この金は
クレアから受け取った金貨をバニルは大事そうに抱えたあと、ウィズに見つからないようにそっと裏の金庫へ隠しに行った。相変わらずウィズはお金を散財してしまうらしい。やがて戻ってきたバニルは水晶玉を片手に俺達に質問し始めた。
「それでは、どんな質問にでも答えてやろう。そこの自分が仕える王女に、素肌をぺろぺろしたい願望を持つ女よ。」
「なぁああっ!?」
いきなりクレアのとんでもない事実が暴露される。アイリスを溺愛しているのは知っているが邪な感情を持っていたとは……。俺はクレアを軽蔑した目で見る。
「ち、違う!そんな事は断じてない!私はアイリス様をお慕いしてるだけで、それ以上の感情などない!」
「ほう?白を切るつもりか。隠し撮りした王女の写真を部屋に飾り、毎晩毎晩危ない目つきで語りかけている女よ。」
「ぬわぁああ!!」
クレアは自分がずっと隠してきたことを一つ残らずバニルに見通されたからか、泣きながら机に突っ伏した。こいつをここまで再起不能にさせるとは恐ろしい……。
「フハハハ、悪感情ゴチである!」
「さっきから全然話が進まないじゃないか!俺達はアイリスを誘拐したっていう犯人のことを聞きに来たんだよ。そもそもアイリスは本当に誘拐されたのか?」
俺は話を本題に戻す為、クレアに代わりバニルに質問する。バニルはひとしきり笑った後ゆっくりと口を開いた。
「無論、その王女は誘拐されておる。犯人はとある男の貴族だな。今頃、王女は暗い地下の奥深くで監禁され、毎晩拷問を受けながらどうにか生きながらえて…………」
何だと、アイリスがそんな辱めを受けているのか。よくも俺の妹を……!俺が犯人に対する憎悪を滲ませながら話を聞いていると、
「───なんてことは無く、むしろ毎日犯人が持ってくる料理に
バニルの話に拍子抜けしてしまった。アイリスは誘拐されても楽しく過ごしているみたいだ。一生懸命捜索している俺達がバカらしくなってきた。
「なんじゃそりゃ!誘拐は遊びじゃないんだぞ!俺だって犯人にお世話されながら毎日過ごしたいわ!」
「そんなこと吾輩に言われても困る。そもそも犯人は大人の女性にしか興味がないのだ。未だ年端もいかない少女など取るに足るまいて。」
どうやらアイリスは無事みたいだ。悠々自適な生活を送っている彼女にあまり納得いかないものの、俺は渋々バニルに詳しい事情を聞く。
「じゃあ犯人の目的は何なんだよ。アイリスは幼くてまだ守備範囲外なんだろ?単純に身代金が目的なのか?」
「犯人の目的は女を着せ替え人形にして遊ぶことである。」
着せ替え人形……?一体何が言いたいのやら。未だに泣きべそをかくクレアを横目にバニルに話を催促させる。
「要するに、犯人は今まで捕まえた女に様々な仮装…………言わばコスプレをさせて楽しんでおるのだ。看護師やらメイドやら警察官やら……。王女の身代金も仮装の為の資金を集めただけであるな。」
犯人のニッチな趣味に眉をひそめる。アイリスも変なことに巻き込まれてしまったものだ。だが、コスプレの為の犯行なら今まで誘拐された人も大丈夫だろう。俺達の捜査次第では今までの被害者全員を助け出すことが出来るかもしれない。
「おい、仮面をつけた男め……。アイリス様はそう易々と誘拐されるようなお方ではない。今回の犯人は本当にタダの人間なのか。何か強大な力を持っているのではないか?」
まだ涙目ではあるものの少し回復してきたクレアがバニルに尋ねる。バニルは水晶を覗き込みながらチラリと彼女の方に目をやった。
「中々鋭いではないか、このまま護衛をしていれば、何かの手違いで王女と結婚出来るのではないかと思っていた女よ。」
クレアはバニルの発言を聞くとキッと睨みつける。お怒りの様子だ。だが、これ以上反抗しても返り討ちにあうと分かっているのか大人しく話を聞く。
「今回の事件には”ハンニバル”という悪魔が関わっている。」
ハンニバル、聞いた事のない名だ。だが、隣のクレアは驚いた様子で立ち上がる。この悪魔の事を知っていたのだろうか。
「どうした、クレア?」
「お前はハンニバルを知らないのか?一度狙われたら骨も残らないと言われる凶悪な悪魔だぞ。」
俺は元々日本人だからこの世界の常識に疎いのだ。クレアの話から察するにそれ程強い悪魔なのだろうか。怪しい雲行きに俺は固唾を飲む。
「ここ百年で奴も相当丸くなったのだがな。奴の能力は”視覚を無効化すること”。一度スキルにかかれば奴が魔法を解くまで一切のものを見ることが出来ない。その実力は、吾輩の見通す目すらも無効化する程だ。吾輩との相性は最悪と言えよう。」
あのバニルですら敵わない相手とは、ハンニバルという悪魔はかなりの強敵のようだ。そもそも視覚が使えないのなら戦いようがない。アイリスも恐らく突然視界が真っ暗になって誘拐されたのだろう。
「
「……!、極上の羞恥と言ったな。まさかアイリス様はその男に身ぐるみを剥がされて恥ずかしい思いをしているのか……!」
「いや、犯人は未成年には手を出さない事にしてるようだ。今はまだその王女は無事だな。」
「つまり今回は、女を着せ替え人形にして遊びたい犯人と、女が服を脱がされて極度に恥ずかしいと思う感情を手に入れたい悪魔とで利害が一致した、という訳だな。」
ふむ、話の筋は通っている。コスプレを見たい犯人とその羞恥を欲しがる悪魔。バカと天才は紙一重と言うがまさにその通りだろう。しかもアイリスの誘拐という最悪の形で相手がタッグを組んでしまった。事件はかなり厄介な事になりそうだ。
「それはそうと、そこの白スーツの女。汝には破滅の相が出ておるぞ」
白スーツの女とは勿論クレアのことだ。破滅の相が出ていると言われた本人はキョトンとした顔で話を聞いている。
「……何をバカなことを。何も心当たりがないぞ」
クレアはあまり気にしてない様子だったが、この光景には見覚えがある。かつてダクネスもバニルに破滅の相が出ていると宣告されたことがあったのだ。その時もバニルの予言通りにダクネスはアルダープと結婚することになった。
「……まさかクレア、誰かと結婚するのか?」
「私が結婚するのはアイリ……ち、違う!結婚の話などない!哀れんだ目で私を見るな!」
一瞬ヤバい顔になったクレア。アイリスと結婚する気があったというのは本当だったのか。彼女は俺達の顔を見て慌てて発言を訂正する。
「う、うむ…………おや?見える、見えるぞ!小僧がハーレムを作ってる様子が!」
「マジで!?」
思わぬ吉報に舞い上がる。俺もついにハーレムを作るのか。クレアはハーレムに喜ぶ俺を冷めた目で見つめていた。所詮女にはハーレムの素晴らしさなど分からないのだ。
「なぁ誰とハーレムを作るんだ。めぐみんか?ダクネスか?」
「おっと、それ以上の情報を望むならお金を払ってもらおう。最低でも十億エリスは必要だな。」
肝心な所をバニルは勿体ぶる。俺としては一番聞きたい内容だと言うのに。俺が屋敷に貯めているお金を使おうか悩んでるとぐいっとクレアが俺の事を引っ張り店から追い出そうとする。
「もう話は済んだ。さっさと帰るぞ。」
「ま、待ってくれ、まだ大事な情報が…………」
バニルの話を聞こうとする俺を無理やり連れて行くクレア。彼女にとってハーレムの話が不愉快だったのかむくれている。
「毎度あり!小僧よ、お前の頑張り次第ではそこの白スーツの女を救えるやもしれぬぞ。せいぜい頑張るのだな。」
クレアに引っ張られながら魔道具店を去る俺に、バニルが意味深な言葉を残していった。
+
バニルの占いから帰って来た俺とクレアは二人で王様に謁見していた。今回得た情報を王様に報告に来たのだ。
「───今回の事件には、悪魔のハンニバルが関わっているようです。奴は視覚を無効化出来ますからアイリス様もその力によって誘拐されたものと思われます。」
クレアの説明を黙って聞いていた王様。顎の無精ヒゲを撫でながら考え事をしているようだ。マッチョが無言でいる様子はそれだけで威圧感があり心臓に悪い。俺は怯えながら王様の言葉を待った。
「私が娘を愛しているのは知っているであろう、クレア。」
「勿論存じ上げております。」
ゆっくりと喋りながら立ち上がる王様。そして俺達の元へ近づいて来てクレアの顔を覗き込みながら言った。
「そもそもお前には娘の護衛を任せていたのに、なぜ誘拐されたのだ?」
「それは完全なる私のミスです。申し訳ありません。」
クレアは至近距離で王様に睨まれながらもハッキリと喋っていた。俺は怯えて声が出ないのに、彼女は肝が据わっているようだ。クレアに構うことなく王様は話を続ける。
「お前は既に一度ミスをしている。そのミスを私は一度許してやっているのだ。次にミスをしたらクビだ。何としてでも娘を救出したまえ。」
「分かりました」
「お前は下がりなさい。次にカズマくん、君に話がある。」
王様の命令を受けたクレアはキビキビした動きで部屋から出ていく。部屋には俺と王様の二人きりになった。次は俺の番か、怒られないかと少し怯えつつもちゃんと王様の顔を見つめる。
「君には娘を探す為に特別に捜査に参加させている。それなのにまだ娘を救う糸口すら見つけられてないそうじゃないか。」
「す、すいましぇん」
噛んだ。肝心な所だったのに。言い直そうかと思うが、王様が怖くてそれ所じゃない。
「もう既に娘との結婚の許可も出している。これは異例の事だよ。私は既に君に一つ恩を売っているわけだ。それならばその恩を返すのが義理というものではないかね。」
王様は筋肉隆々で脳筋かと思っていたが口も達者で論理的に俺の事を責め立ててくる。マッチョな見た目も相まって俺は泣きそうになっていた。
「私の予想だと、犯人はあと数回は接触してくるだろう。必ず犯人を捕まえてくれ。話は以上だ。」
「は、はい、失礼しましゅ。」
噛んだ。俺は最後までかっこ悪いまま部屋を出る。王様も俺の怯えっぷりに幻滅してるんじゃないだろうか。
「はぁ……情けないな」
俺はドアを閉めながら心の声を漏らす。ふと、隣に目を向けると何やら落ち込んだ様子のクレアが居た。さっき部屋を出てからずっとここに居たのだろうか。
「どうした、クレア。こんな所で立ち止まって」
「……いや、別に。お前に話しても仕方ない事だ。」
クレアは前見せたように悲しそうに俯くと、俺を置いて廊下を歩いていく。その顔が俺についてくるなと言っているようで彼女の後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
+
時刻は深夜。既に夕食もお風呂も済ませて俺は床に就いていた。ベッドに横になってから既に二時間近く経っている。だが、中々俺は眠りにつけなかった。
頭を反芻するのはクレアのことだ。犯人に一方的に身代金を奪われたことから始まりバディ解散の危機にも陥っている。いや、それ以前にもパンツをスティールしたことや、ハーレムを作ろうとしていることでも、関係にヒビが入ってしまった。このまま彼女との仲に亀裂が入ったままで、事件は無事解決するのだろうか。
寝ようとすればする程次々と悩みの種が舞い降りて来て
「暗いな……」
僅かな明かりを頼りに城の中を進む。夜の王城は真っ暗で誰一人いなかった。窓からは月明かりが差し込んでいる。俺は夜空を眺める為窓の外に出た。風がそよそよと俺の肌を優しくなぞる。心地いい夜の雰囲気だった。
「気持ちいい……」
暫く王城の眺めを堪能しながら
「うっ…………ひっ…………」
「?」
どこかから女の声が聞こえる。何の音だろうと疑問に思い、ベランダを伝って進んで行く。やがて柱越しにそっと、誰かがいるであろう場所を見た。そこに居たのはクレアだった。
「ううっ…………ぐずっ…………」
クレアは泣いていた。
普段は凛々しい彼女が泣いている。その姿が珍しくて俺は惹き込まれるように彼女を見つめてしまった。月明かりが涙を拭う彼女をそっと照らしている。夜の静寂に彼女の泣き声だけが響いていた。
俺は見てはいけないものを見てしまった気がして罪悪感が込み上げる。彼女に気づかれないようにそっと立ち去ろう。俺がゆっくりと離れようとした時、
「そこに誰かいるのか……?」
クレアが俺の方を振り向きバッチリ目が合う。帰ろうと思っていた俺も彼女に見られてしまったので、仕方なく柱から出てきた。クレアは俺の顔を見るなり、すぐに自分の泣き顔を隠そうと必死になる。だが、月明かりで照らされた彼女の顔は俺の目に鮮明に映っていた。
「や、やあクレア……眠れないのか?」
気まずい雰囲気の中、俺は声をかけた。一度出てきてしまった以上、もう後には引けない。俺は彼女の泣き顔を見ないようにしながら、クレアの横に腰を下ろした。
「…………」
沈黙が俺達を支配する。何を話せばいいのだろうか。泣いていることには触れていいのか。そもそもクレアはなぜ泣いているのか。彼女への言葉が何度も浮かんでは、それを言ったらダメだともう一人の自分が否定し、俺は何も喋れなかった。
「すまない、情けない所を見せたな。」
先に沈黙を破ったのはクレアだった。彼女は目は腫れているものの、先程のように声を上げることなく俯いている。
「……なんで泣いていたんだ?」
「別に……、お前には関係ない事だ。」
クレアは何も答えてくれない。俺に弱い所は見せたくないようだ。
…………。
でも……。
ここで彼女の涙の理由を聞かないと。俺は一生後悔してしまう。そんな気がした。
「お前はそうやっていつもいつも自分の弱味を隠すだろ。たまには他の人に悩みを打ち明けてみたらどうなんだ?」
「…………」
彼女に諭すように言うが、クレアはそれでも何も答えない。
「ははーん、分かったぞ。自分の本心をさらけ出すのが怖いんだな。クレアは臆病者だからな。」
「なんだと……?」
「だってそうだろ、泣くくらい辛いことがあるのにそれでも誰も頼らないなんて。お前は怖がりなんだよ。必死にカッコつけてるだけだ。」
敢えてクレアが怒るようなことを言ってみる。どうにかして彼女の涙の理由を聞き出す為だ。
「私は怖がりなのか……?ただ格好をつけてるだけなのか……?」
クレアは怒ることなく俺の意見を真正面から受け止めていた。彼女は自問を繰り返す。俺もそっと彼女の背中を押すことにした。
「俺に全部打ち明けてみろよ。そうすれば臆病者から脱却できるぞ。それに俺達はバディだろ?」
これでどうにか彼女が本心を言ってくれればいいのだが。ドキドキしながら彼女の返事を待つ。散々迷った様子を見せながらクレアは答えた。
「……笑わないか?」
「笑うわけないだろ。俺を何だと思ってるんだ。」
「……鬼畜でクズな奴だと。」
クレアの俺への評価はかなり低いようだ。薄々分かってはいたが、いざ面と向かって言われると傷つく。
「じゃあ言うからな……。引いたり笑ったりするなよ?」
「ああ」
クレアはぽつりぽつりと話し出した。
「自分でも何が辛いのかよく分からないのだ……。最初はアイリス様が居なくなったことがショックだった。ずっと心の拠り所にしていた人が突然いなくなったのだ……。」
「お前との仲が悪いのも嫌だった。バディも解散になるかもしれなかったし何よりこのままじゃ捜査もまともに出来ない気がした。でも、私はいつもお前に冷たく当たってしまうし……。そのせいで自分の事も嫌いになっていくのが嫌だった。」
「王様に護衛をクビにされそうになっているのも嫌だった。私はアイリス様にこの身を捧げてきたのだ。その護衛をクビになってしまったら一体何をすればいいのか分からない。多分、自分の中で色々な事が積み重なって泣いてしまったんだと思う……。本当の私はこんなにも脆いのだ。これでお前も私に幻滅してしまったな。」
クレアの話を黙って聞いていた。彼女がこんなに色々な事を考えていた事を初めて知った。クレアは勇気を持って本心を打ち明けてくれたのだ。次は、俺が彼女に寄り添ってあげないといけない。
「幻滅なんてする訳ないだろ。お前はよく頑張っているよ。」
何か気の利いた言葉でもかけてあげたかったが、俺にはそんな事は出来なかった。ありきたりな言葉で彼女を慰めようとする。
「私の話を聞いてくれて助かった。そのことは礼を言う。」
「お、おう、バディだからな。これくらい当然だ。」
それから暫く俺達は夜風に浸っていた。どれくらいの時間が経ったかは分からない。たださっきのような気まずい雰囲気ではなくて、どこか心地よい空気だった。
「……そろそろ寝るか。明日も早いだろう。」
俺は立ち上がり軽く伸びをする。夜も更け俺もそれなりに眠たくなっていた。横のクレアを見るともう泣き止んでいる。彼女も少し落ち着いただろう。
「カズマ殿」
戻ろうとした俺にクレアが声をかける。振り返ると俺の事を真正面から見据えたクレアがいた。
「ありがとう」
クレアは笑っていた。目は腫れているが、月明かりが彼女の顔を照らしてその顔は綺麗だ。彼女の笑っている姿を見るのは初めてだった。その初々しい態度に鼓動が早くなる。クレアにドキドキさせられるとは夢にも思っていなかった。
「さあ、もう部屋に戻ろう」
彼女は俯くことなく歩いていく。その顔はもう俺についてくるなとは言っていない。俺達は月明かりの注ぐ夜の城を進んで行くのだった。
なんだか恋愛というより友情みたいになっちゃいました。