※この作品はR-18です。

カズマがクレアと結婚する話   作:てつろう

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この誘拐犯に追求を!

 

 

 

クレアと話した翌日。

 

 

「カズマ殿、もう朝だぞ。起きてくれ。」

 

 

うっすら目を開けるとクレアが俺を起こしに来ている。昨日まで腫れていた彼女の目も今では元通りになっていた。俺は微睡む意識の中、彼女を抱きしめる。

 

 

「きゃっ!」

 

 

クレアは俺に無理やりベッドの中に引きずり込まれた。俺は眠たいからな。これは事故だ。決して意図的にしたわけではない。

 

 

「うーん……もう食べられないよぉ……」

 

「貴様、絶対起きているだろ!こ、こら離せ!」

 

 

クレアは俺の腕の中でじたばたと暴れている。だが、俺は彼女が逃げられないように力強く抱きしめた。そのまま俺は彼女の貧相な胸に頬ずりする。

 

 

「ぐへへ……柔らかいぞ」

 

「きゃああああっ!」

 

「ふごぉっ!」

 

 

次の瞬間、クレアの強力なパンチが俺の頬に炸裂した。勢いそのままに俺はベッドの外へ吹っ飛ばされる。

 

 

「貴様、許さんぞ!これはセクハラだろう!」

 

 

腹を立てたクレアは剣を抜き俺に構える。彼女のその行動に俺は一気に目が覚めた。寝ぼけてる場合じゃない。

 

 

「ま、待ってくれ!さっきのは事故だから!昨日だって相談に乗ってやっただろ。」

 

「それとこれとは話は別だ!今すぐ選べ。私に斬り殺されるか、土下座して命乞いするか。」

 

 

クレアは本気の目だ。そのままジリジリと俺の方へ近寄ってくる。彼女なら本気で斬り殺してしまうかもしれない。ここは戦うしかないか。俺の伝家の宝刀スティールを使えば……。

 

 

「もしスティールを使ったらその瞬間にお前の首をはねるからな。」

 

「申し訳ありませんでした!」

 

 

俺はすぐさま土下座した。

 

 

「わ、私が言うのも何だが、そんなに躊躇いもなく土下座するのだな……。まあいい、今回は大目に見てやる。」

 

 

俺の綺麗な土下座を見てクレアは拍子抜けしたようだ。鞘に剣を収めるのを見て、俺は安堵する。

 

 

「そうだ、犯人の変態紳士と名乗る者から第二の要求が来たぞ。さっきはそれを伝えに来たのだ。」

 

 

クレアは興奮で少し顔を赤くしながらも、俺に手紙を差し出す。俺は渡されるままに手紙の中を見た。

 

『王女様は預かった。返して欲しければ別紙の設計図通りの物を完成させろ。三日後にベルゼルグ王国の〇〇に完成した物を置いていけ。さもなければ王女様の命は無い。』

『追伸:王女様がワガママ過ぎて手を焼いているのだが、お宅は一体どういう教育をしているのだ?誘拐されたのに、もっと庶民の料理を教えてくれだの、娯楽がないから私を楽しませなさいだの、好き勝手言っておるぞ。もっと王女様はお淑やかな人だと思ってたのに……。』

 

俺は一通り犯人の要求を読み終えそっと手紙を閉じる。顔を上げるとクレアが深刻そうな顔で俺の事を見ていた。

 

 

「どうだ?このままではアイリス様の身が危ない。一刻も早く犯人の指示に従わなければ……」

 

「ああ、そうだな。アイリスの事が心配だなぁ……」

 

 

俺は手紙を思いっきり床に投げつけた。

 

 

「って、そんな訳あるか!多分アイリスは楽しく過ごしているぞ!なんで俺達が頑張って捜索しているのに、アイリスはワガママばかり言ってるんだよ!」

 

 

王女様が誘拐されたと言うのに緊張感がまるでない。まぁ、アイリスが無事な事は嬉しい、嬉しいのだが……。自堕落な生活をしているアイリスにどうしても納得がいかない。ここは、アイリスが犯人に酷い目に遭わされていて、それを俺達が助けに行く所だろう。

 

 

「ま、まぁ気持ちは分かるが……。手紙はもう一枚あるぞ。と言ってもこれは設計図だが。」

 

 

アイリスの一件で忘れていたが、犯人は何か作ってもらいたい物があるらしい。俺は何気なく二枚目の手紙を見て、息を飲んだ。

 

 

「これって……ミシンだよな。」

 

 

設計図という形ではあるが、糸を通す穴やボビン(巻いた糸のこと)を装着する棒、かつて日本で見たミシンにそっくりだった。

 

 

「この設計図を知っているのか?」

 

「ああ、一応俺の故郷では有名な物なんだけど……。」

 

 

どうして日本のミシンがこの世界に伝わっているのか。犯人は、ミシンの事を知っている……?つまり、犯人は日本人という事で……、あっ。

 

 

「俺、犯人が分かったぞ」

 

 

確信を持って答えた俺をクレアは不思議そうに見つめるのだった。

 

 

 

+

 

 

 

場所は変わってアクセルの冒険者ギルド。

 

 

「ミツルギはどこだぁああ!!!」

 

 

昼間だというのに酒を飲んだくれてる人で溢れる酒場に俺の声が響いた。中にいた人はみな一斉に俺の方を見る。シン、と静まり返るギルド。そんな中で一人の男が気まずそうに手を挙げた。

 

 

「ミツルギは僕だけど……」

 

 

俺はズンズンとミツルギの元へ歩く。肝心の本人は、自分が何かしてしまったのだろうかと怯えてる様子だ。俺は彼の正面の椅子に座って言う。

 

 

「お前がアイリスを誘拐したんだな?」

 

「…………は?」

 

 

キョトンとした顔で答えるミツルギ。

 

 

「証拠は上がっているんだよ。犯人はミシンの事を知っている。つまり、日本人だ!そして日本人と言えばお前、カツラギだろ!」

 

「僕はミツルギだ!そんなカツラみたいな名前じゃない!ちょっと待ってくれ……何の話をしているのか理解が追いついてないんだけど。」

 

「詳しい話は署で聞こう。ほら両手を前に出して。」

 

「え?」

 

「ほら、手を出す!」

 

 

いきなりの展開に戸惑っている様子のミツルギが、俺に言われて両手を前に伸ばす。俺は、予めクレアから貰っていた手錠を取りだした。ミツルギはギョッとした表情で手錠を見つめる。俺は犯人の両手に手錠をはめた。

 

 

「よし、犯人逮捕だな。今から警察署に行くぞ。」

 

「え?ど、どういう事?僕は何もしてないんだけど……」

 

 

俺は未だに理解の追いついてないミツルギを引っ張るように警察署へと連れて行く。アイリスの誘拐犯は、俺の手により無事に逮捕された。俺達を苦しめた誘拐事件は遂に解決するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後、ミツルギは犯人じゃないと分かった。

 

 

「やっぱりお前は犯人じゃなかったな。俺の目に狂いはなかった。無事に釈放だ、おめでとう。」

 

 

先程警察署にミツルギを連れて行って、嘘をつくとチンチンなる魔道具の傍で取り調べを受けさせたのだが、全くと言っていいほどベルは鳴らなかった。晴れてミツルギの潔白が証明されたのだ。

 

 

「いや、君の目には狂いしかないよ。それより、酷いじゃないか!いきなり僕を犯人扱いするなんて!」

 

 

ミツルギは俺が付けた手錠をはめたまま怒る。俺だって好きでミツルギを疑っている訳ではない。これも仕事の一つなのだ。

 

 

「まあ過ぎた事はお互い水に流そうぜ。昨日の敵は今日の友だろ。それより、アイリスの誘拐事件について何か知らないか?」

 

「僕が一方的に被害を受けただけなんだけど……。でも、アイリス様について知ってることはないな。新聞で誘拐事件の事は知ってるよ。まだ行方不明のままなんだってね。」

 

 

分かってはいたが、ミツルギは何も知らなかった。日本人が犯人だというから絶対ミツルギだと思っていたのに。捜査はまた振り出しに戻る。

 

 

「代わりと言ってはなんだけど、君から聞いた情報からいくつか分かる事があったから、それを教えてあげようか。」

 

 

分かる事……?まさかミツルギが名探偵のように推理でもするのだろうか。俺は期待半分で彼の話を聞く。

 

 

「まず、現代にいる日本人はとても少ないこと。これは分かるよね?犯人が日本人なら、それだけ容疑者も絞られるという訳だ。」

 

 

ミツルギが言っている事は俺も薄々分かっていた事だ。かつてアクアの送り込んだ日本人と言えば、紅魔族を作り出したおっさんとミツルギくらいで、他の日本人には会ったことがない。

 

 

「つまり日本人を探せば犯人に辿り着けるという事か?」

 

「ああ、黒髪黒目の日本人は珍しいからそれだけ探しやすいだろう。」

 

 

ふむ、意外とミツルギはまともな事を言う。確かにその方法なら簡単に犯人が見つかるかもしれない。

 

 

「二つ目は、犯人の賢さについてだよ。そもそも日本人だからと言ってミシンの作り方が分かる人なんてそうそう居ない。設計図まで書けるなら尚更だ。」

 

「……つまり、ミシンの作り方を知っているということは、頭が良くてそれだけ狡猾な犯人である可能性が高いという事か?」

 

「そうだね」

 

 

ミツルギの言う通り犯人が賢いとなると中々厄介だ。犯人のことについて頭を巡らしていると、

 

 

「あと、いい加減手錠を外して欲しいんだけど……」

 

 

そういえばミツルギに手錠をはめたままだった。俺は鍵を探す為にポケットに手を入れる。

 

 

「……どうかしたかい?」

 

「……ない。」

 

「え?」

 

 

俺はズボンのポケットや胸ポケット等に手を突っ込むが何も入っていない。そもそも手錠はクレアから貰ったものだ。その鍵はクレアが持っていることだろう。

 

 

「よし、情報提供してくれてありがとうな!それじゃあな!」

 

「ま、待ってくれ!手錠を外してから…………」

 

 

俺を追ってくるミツルギから逃げながら、王都行きのテレポート屋へ急ぐのだった。

 

 

+

 

 

 

その後、俺の解錠スキルでどうにかミツルギの手錠を外し、俺は城へ戻っていた。

 

 

「───なるほど、つまり犯人は日本人だということだな?」

 

 

俺はクレアに、犯人について分かった事を話す。ミシンの事を知っているのは日本に関係がある人だけ。この情報だけでも値千金だ。

 

 

「ああ、日本人の特徴は黒髪黒目。それとバニルの情報によると犯人は男の貴族らしいから、きっと容疑者も絞れると思うぞ。」

 

 

俺の話を聞いていたクレアはすぐに近くの兵士を呼び寄せ、指示を出す。

 

 

「分かった、ベルゼルグ王国にとどまらずあらゆる国の日本人を調べさせよう。よくやったカズマ殿」

 

 

俺が日本人ということが意外な形で捜査の役に立ったようだ。その事を嬉しく思いながら何気なくクレアの手元を見る。そこには犯人から渡された設計図があった。

 

 

「手に持ってるそれって設計図だろ?犯人の言う通りにミシンを作るのか?」

 

 

クレアは一瞬悔しそうな表情を浮かべた後、答える。

 

 

「ああ、もし犯人の要求に従わなければ、アイリス様が殺されるかもしれない……。それだけは絶対にあってはならないからな。」

 

 

そう言うクレアは少し震えていた。彼女はアイリスを溺愛していたからそれだけ不安が大きいのだろう。

 

 

「そ、そうだ。ミシンが出来るまでの間、お前は捜査から外れてもいいぞ。ココ最近働き詰めだったからお前も疲れているだろう。日本人の捜査は私達でやっておく。」

 

 

クレアは俺に心配をかけさせまいと思ったのか話題を変える。しかも俺に暫く休暇を与えてくれるそうだ。ヒキニートの俺としては非常に嬉しい。

 

 

「いいのか!?じゃあお言葉に甘えてバカンスにでも行ってくるよ」

 

「あまり羽目を外しすぎるなよ。それと休みに入る前に一つだけ仕事を頼んでおく。今回の犯人である変態紳士の被害者に捜査の進捗を報告に行くのだ。」

 

 

ふむ、それくらいならしてもいいだろう。俺は久方ぶりの休みを前に昂った気持ちのまま、被害者の元へ向かうのだった。

 

 

+

 

 

 

俺がやって来たのは、以前聞き込みに来た貴族のおじ様の屋敷だった。部屋の中は相変わらず豪華絢爛で、高そうな美術品があちらこちらに置いてある。俺はその光景に萎縮しながらも、廊下を進みメイドに部屋の中へ案内された。

 

 

「おや、サトウカズマ様ではないですか。お久しぶりです。」

 

 

応接室に入るなり頭を下げるおじ様。その挨拶は貴族だけが知る挨拶ではなく、庶民の俺でも分かるような頭の下げ方だった。俺の身分に合わせて気を使ってくれたのだろう。やはりこの人の態度は紳士のようだ。

 

 

「こんにちはアレクサさん。今日は捜査の進捗について報告に来ました。」

 

 

貴族のおじ様はカップに紅茶を注ぎ俺に渡してくる。俺は出された飲み物には手をつけず、事件の概要を説明した。おじ様は時折紅茶を飲むものの、綺麗な黒目をこちらに向けたまま話を聞く。

 

 

「ふむ、犯人はニホン……という国の出身なのですか。」

 

 

一通り話を終えた後、俺は紅茶に手をつけた。既に温(ぬる)くなっていたが、香ばしい香りが俺の鼻をくすぐった。

 

 

「はい、日本人が犯人だと分かっているので、すぐにでも犯人は捕まりますよ。」

 

 

貴族のおじ様は俺の話を聞いてもどこか不安そうな顔をしている。何か心配事でもあるのだろうか。

 

 

「あの……アレクサさんは犯人の変態紳士に娘を誘拐されたんですよね。きっと娘さんももうすぐ救出されます。だから心配しなくても大丈夫ですよ。」

 

「そうか……それは良かった」

 

 

励ましてみたが、おじ様は益々(ますます)顔色が悪くなる一方だった。彼の為にも早く犯人を捕まえてあげたい。そんな事を考えていると、どこからか音が聞こえているのに気づく。

 

「?」

 

ドンドンドン、とどこかで壁を叩く音だ。別の部屋で誰かが暴れているのだろうか。そんな俺の怪訝な様子をおじ様は察したのか、疑問に答えてくれた。

 

 

「この音が気になるのですか?実は……私はこの屋敷の地下でモンスターを飼っていましてね。彼らが暴れている音がここまで響いているのでしょう。」

 

 

貴族の中でも物好きな人はモンスターを飼うことがある。俺も昔、悪魔で貴族をしているというゼーレシルト伯のモンスターを見た事があるし、モンスターを飼うのは、それ程珍しくもないのだろう。

 

 

「では、俺はそろそろ帰りますね。娘さんも必ず救出しますから心配しなくて大丈夫ですよ。」

 

 

色々と世間話をした後、俺は席を立つ。既にここに来てから一時間近くが経過していた。窓の外を見ると空が紅く染まっている。

 

 

「ええ、期待していますよ。シンフォニア卿にも宜しくお伝えください。」

 

 

おじ様は俺に恭しく頭を下げる。おじ様は相変わらず紳士的な態度だ。俺が部屋を出る時もずっとドンドン、と壁を叩く音が響いていた。

 

 

 




今回はあまり出来が良くない気がします。もう少しピンチとか意外性を入れないといけなかったですね。次回からはもう少し面白く出来るように頑張ります。
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