たとえ誰が銃を撃っても、弾さえ当たれば人は死ぬ。
だから誰が引き金を引いたのかは問題ではない。
それが口癖だったQの体の下に安全靴の先を引っかけて、テニスタは仰向けの体をうつ伏せにさせる。
体位変換、非人道的な。
「クソ重いな。」
重いのは安全靴なのか、それともQの体なのか、どっちなのかと私が聞くと、テニスタは口の端だけで酷薄に笑った。
「どっちだったらいいんだ?」
人体はそれなりに重い。
意識を失った状態の体は特にそうだ。
意識がある人間なら、インナーマッスルを動かして、それなりに運ばれたり、動かされたりするのに備える。
意識がないと人間はぐったりする。
重力に引っ張られて、ずるりとだらしなく、床に当たるまで崩れ落ちていくだけだ。
「後始末は?」
「おまえがするか?」
私の質問に、テニスタは質問で返す。
私は首を横に振って、そんなことは聞いていないと意思表示をした。
「なら、いつもの連中に連絡しておけ。
上手くやってくれるだろう。」
テニスタは後ろを向き、用は済んだとでも言いたげにその場を離れる。
私はQの体を見る。
うつ伏せになった体が来ているのは白いカットソーだ。
服の隙間から血は流れてきていない。
誰がこんな服を着せたのだろうかと私は考え、それを選んだのは私だったと思いなおした。
「あんたは、今からどうするんだ?」
私はテニスタに聞いたが、彼から返事はなかった。
彼の姿ももうそこにはなく、ただ遠ざかっていく足音だけがしていた。
私はしばらく耳を澄ませていたが、音が聞こえなくなったところで、スマートフォンを取り出して連絡を入れた。
テニスタが言うように、これですべては上手くいくのだろう。
Qもきっと、それでいいと言ってくれるに違いない。
事後処理、人道的な。
これは、環境に優しくしていたら犯罪者になってしまった幼馴染の彼の話である。
この世界の誰よりも環境を愛した結果、人間がこの世界を滅ぼすと気づき、世界の前に人間を滅ぼすことに人生をかけた彼の、どこにでもあるような、ありふれた話だ。
たとえ誰が銃を撃っても、弾さえ当たれば人は死ぬ。
だから誰が引き金を引いたのかは問題ではない。
SSPシナリオの5-8.5と、人格がおかしくなった元大国の独裁者、それに大量破壊兵器の違いみたいな、些細な話だ。
どっちだったらいい?
どんな風に終わりを迎えたい?
その後の始末は?
誰がする?
何でこんなことに?
私は誰なら上手くやってくれたのかと考える。
うつ伏せのまま、床に横たわっているQがそれを知ったら、間違っていると、これ以上なくはっきりと否定してくれただろう。