貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
すれ違いざまに飛び掛かる
断末魔の声すらあげずに泡沫となり消えゆく。
「死にさらせ!」
一つ目鬼の眼前にたどり着き渾身の力で刀を振り下ろす。
氣を纏いし俺の腕はもはや鉄をも砕く力を有する。
一撃必殺の如く剛腕を振るうも寸前で一つ目は
「――野郎が……」
――ドンッ!
背後に気配を感じると同時に腰にトラックが衝突したような衝撃を感じ、俺はそのまま壁に叩きつけられる。
「ゴハッ!」
壁に人型を描くようのめりこみ、衝撃で息を漏らした。
”こちら、蒼佳。現状を報告して。どうぞ”
無線から彼女の声が響くもそれに返答させる猶予は与えてくれないらしい。
一つ目はそのままドシドシと地を鳴らしながら駆け込み腕を振り上げた。
「くそっ」
氣の出力をあげて全身に纏い腕をクロスに重ねて全身を硬化する。
爆弾を破裂させるような音と共に衝撃が俺を襲う。
壁を突き破り、アクセサリー店のガラスでできた陳列棚を砕いて、ゴロゴロと地面に転がり受け身をとった。
立ち上がりざまに足に力を込めてすぐさま店から飛び出ると一瞬遅れて一つ目が俺のいた場所に飛び込み爆発音が響いた。
”現在、交戦中。対象は切り結ぼうとするも
壁を横向きに疾走しながら俺は蒼佳に現状を報告し対策を聞く。
その間も一つ目は俺を目掛けて突進するのをなんとか飛んで
”応援は?”
”不要!”
彼女の無線を遮るように俺は返答を重ねた。
ヤツが使役する幼鬼の数はいまだ知れず、彼女が援護にくるとフードコートで避難している民間人はもはや無防備となる。
そのような愚を犯すことも出来ないし、そもそも氣だけで言えば俺一人で十分対処可能な相手だ。
ただし、攻撃が通用しないというだけで。
たらりと額にできた傷が垂れて目に入るのを腕で拭りながら彼女からの返答を待つ。
傷は多くとも全身を氣で守っているので大した傷ではない。
それこそ、サムライの俺からすればかすり傷でしかなかった。
”対象の種族はおそらく一つ目鬼。こちらが捉えようとすると靄になり、逆に俺を攻撃するときは実体となる。至急対策を!どうぞ”
焦る気持ちを抑えて再度無線を飛ばす。
尚も一つ目からの攻撃は止まない。
”カウンターね”
無線から蒼佳とは違う聞きなれた声音を感じて思わず俺は口角をあげた。
”こちら、碧理。まもなく現着。お姉ちゃんは私の
”了解”
”オーケー”
待ちに待った結界師の登場に思わず俺は破顔しながら飛び込む一つ目を躱すべく天井へと飛び立つ。
なるほど。確かにカウンターであればやつは靄にならない。
碧理の鋭い指摘に舌を巻きながら俺は肚を括った。
天井に引っ付くように逆さにぶら下がっていた俺の足の氣も、全身を守るべく纏っていた氣もすべてを
刀一点へと集約させる。
足元の氣が無くなったことでそのまま自由落下の原則で落ちる俺目掛けて一つ目が醜悪な顔で拳を振り上げて飛び込む。
「刺し違えたらぁあッ!!!」
恋人を招くように両手を広げてやつを迎え入れる。
ブォオン!
剛腕が風を作りながら俺の胸に飛び込むのを身をひねり寸前に躱してから俺は一つ目の腕を抱え込んだ。
「捕まえた」
ニヤリ。
口角をあげて右手に握った刀を、一つ目の首元、目掛けて横なぎに振るった。
「破魔の剣ッ!」
もうもうと陽炎のように湯気をたたせた白い刃がなんの抵抗もく一つ目の首を斬り落とした。
「――グ、がぁぁッ!」
離れる頭からそんな声を漏らしながら泡となり蒸発するようにヤツは消えていった。
――――――――
「もう大丈夫ですよ」
一つ目の食糧庫として固められていた女性たちの肩を叩きながら脅威が去ったことを告げる。
どうやら、彼女たちの多くは一つ目の咆哮により鼓膜を破っているらしく、声を掛けてもあまり容量を得なかったので、肩を叩いてサムズアップすることでなんとかそれを伝える。
「まもなく、俺の仲間が来ますから、一緒に避難しましょう」
一つ目が去っても幼鬼が去ることはなかった。
俺はこちらに走り寄る残りの小鬼にクナイを飛ばして頭に命中させながらあたりを見渡した。
「た、たっくんッ」
背後から蒼佳の声が聞こえるので、あの無線の後にすぐこちらに向かったのだろう。
「大丈夫だった?」
はぁ、はぁと息を乱しながら俺の様子を伺う彼女に「大丈夫」と言葉を返して、彼女たちの輸送を頼む。
「えぇ。わかったわ」
俺の傷に致命傷がないことを確認してこくんと彼女が頷いたとき、不意に頭上から声がかかった。
『ほぅ。果実が実ってきたのぅ』
不気味な声音に強烈な妖氣が合わさり、全身から泡立つように鳥肌を立てながら首をバッと頭上をむけた。
天井にコウモリの如く天井でぶら下がる三つの人影
”ヒトではない”
発せられる強大な妖氣にそいつらが怪異だと俺の心が告げる。
色鮮やかな花魁のような恰好したおしろいをした女性が二人。
そのの間に立つ、くすんだ肌色のような着物を着た子どもほどの大きさの老人。
後頭部は風船のように膨れあがり、手にした杖をコツンと天井を叩いた。
心が、頭がその存在だと理解することを拒否する。
その老人の姿に俺は、
奴は
「……ぬらりひょんッ!!」
横に立つ蒼佳が言葉を漏らした。
彼女の言葉に呼応するように心から憤怒の感情が沸き起こった。
コツン。
再度、手に持っていた杖を天井に着いてぬらりひょんは顔を歪めた。
「
醜悪にほほ笑みながら蒼佳に視線を送るぬらりひょんはそのままぎょろりと視線を俺に動かした。
「あぁ、久方ぶりに見る
カーカッカッカッカ。
快活に笑ったあと、急に真顔に戻り妖氣を噴出させる。
慌てて俺もヤツに釣られるように精氣噴出して相殺する。
「ほほ、そやつらを守るか。
妖氣を更に噴出し、出力をあげるぬらりひょんに俺も出し切れるばかりの氣をあてがった。
妖氣は人の命を蝕む。
低位の
しかしながら今、目の前に相対する化け物はもはや人の命を、
故に展開した俺の氣も、押し負けるようにじりじりと後退していく様を感じる。
足元に振るえるようにしゃがみこむ女性たちの何人かは気を失っているのか、その場で倒れ伏している。
「――殺す――」
横に立ち殺気を飛ばしていた蒼佳がそう呟き印を結ぶべく右手を構える。
「そぉれ」
ポキリ。
ぬらりひょんが指をひょいっと横にかざすと蒼佳の右手の肘が反対側へと折れ曲がった。
「――ッ!!!!」
顔を歪めて手を引き、今度は左手で印を結ぼうとする彼女を俺は手を出して制した。
「ちょっと!」
俺の行動に異を唱えるべく声を荒げる彼女に俺は首をよこにふった。
「
不協和音をだすような不気味な声音で顔をゆがめるぬらりひょんに俺は言葉を返した。
「ということは今日は我慢してくれるってことか。それで、目的は?」
俺の言葉にヤツの脇に立っていた女の一人が顔を般若に変えて叫ぶ。
「
こちらに飛び掛からんとする般若にぬらりひょんは「じゃかましい!」と声をあげて手を横に振るうと、般若はその場で身がねじ切れて泡沫へと変わる。
「なに、今日はただ果実の様子を見に来ただけじゃ。摘むのはまだ早い」
カッカッカと般若に叫んだ時とは真反対の柔和な笑みを浮かべてぬらりひょんと残された女は闇を浮かべてその場から消え去った。
「なんで止めたの!!!!!」
ガシャンッ。
珍しく感情を表に出した蒼佳が折れていない左手で俺の胸元を掴み壁に押し付ける。
ギリギリと食いしばる歯に眉間にしわがよっている。
「いまは無理だろう」
ぬらりひょんだけでない。そばに立っていた女でさえも見たことはなかったが情報としては知っている、
”産女”と呼ばれる高位階。それこそ9位階相当の上位妖怪である。
ヤツらとの実力差がわからない彼女ではない。それでもやりきれないのか彼女は俺の言葉にその場で腰を落として慟哭した。
「――あぁ、あぁあああああ!」
蒼佳の声が静寂のモールに響き渡った。