※この作品はR-18です。

貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】   作:たんばりん

34 / 70
第参拾参話 共同戦線

「いらっしゃいませー!」

 ゴールデンウィークの連休、俺はクルミ先輩の実家が営む居酒屋でアルバイトに精を出していた。

「生ビール4つ追加です」

「あいよー!!!」

 どこか、クルミの面影を残す女性が合いの手を返す。

「あ、お客さん、お触りは禁止でーす」

 注文とりの際に背後からニョキっと手が伸びて寸前で躱し、手を伸ばした女性に注意を促す。

 

「いやぁ、タクミくんが良ければ卒業したらうちの看板息子として働いてほしいよ」

 先の店主もとい、クルミの母親がキッチンから顔を出して俺に告げた。

「すいません。一応本業はサムライなので」

 手をあげてぺこりと頭を下げる俺に「そうだよね。御勤めいつもご苦労様」とクルミとよく似た笑顔を浮かべて頭を下げる彼女に

「まあ、こうした暇な時ぐらいはいつでも手伝うので声かけてください」

 と伝え、そのまま注文とりに汗を流した。

 

「ありがとうございましたー」

 最後のお客さんを見送り店内へと戻ると従業員が拍手を交えて俺を迎えた。

「タクミくん。過去最高の売り上げだって」

 汗を流しながらはにかむクルミに「そうですか。やっぱり異常でしたよね。忙しさ」

 と苦笑いを浮かべて汗を拭った。

「一旦ここらで休憩して賄いでも食べようか」

 パンパンと手を叩き皆に告げる彼女の母親が「今日はタクミくんが手伝ってくれた記念だ。ぱっと豪勢な賄い作るよ!」と声を張り上げると全員がガッツポーズをして喜びを表す。

 その一体感に、俺は思わず笑みを溢した。

 

 

「タクミ君はゴールデンウィークは本業はお休み?」

 

 賄いの海鮮丼にいつぞや食べた唐揚げ。

 それらを頬張りながら、ふとクルミが尋ねる。

「うーん。今んとこ討伐指令は直近でないんですけどね。でもそれってフラグですよ。先輩」

 唐揚げに箸を伸ばして、そのまま口へと放る。

 じゅわりと肉汁が口内で弾けて思わず頬が緩んだ。

「あ、ごめん」

 ピピピピピピ

 

 ほら言わんこっちゃない。

 俺の私物のスマートフォンとは違う。退魔庁から貸与されたスマートフォンが音を発し、思わずその場でため息をついた。

「どした。碧理」

 電話音を鳴らすスマートフォンを気だるそうに取り上げて受信のボタンを押して受話器越しの彼女の声に耳を傾けた。

 

「出たわよ。緊急司令」

 まさに予想通りのフラグの回収に再度息を吐いてから「どこに?」と返すと碧理は「鞍馬よ。天狗(テング)を祀っているお寺」と短く返した。

「……じゃあ、討伐対象の怪異はテングか?」

 俺の言葉に「ええ」と返した後、

 “第八位階相当ね“

 と言葉を続けた後、「いつ戻れる?」と更に言葉を重ねた。

「すぐ家に戻るよ」

「了解。準備しておくわ」

 電話のやりとりを終えて、一同がこちらに真剣な眼差しを送るのを笑みを浮かべて返した。

「というわけですので、俺はここら辺で失礼します。あっ、唐揚げもう一個もらっていきますね」

 無作法にも手掴みで唐揚げを掴み再度口へと運ぶ。

「じゃあ、お疲れ様でした」

 ぺこりとその場で頭を下げると「お待ちを」と接客中の時とは違う、重っ苦しい声音でクルミの母が言葉を発した。

「せめてもの、気持ちだけど切り火を打たしてくれないかい」

「じゃあお願いします」と返すとドタドタと厨房に戻ってすぐさまこちらにやって来た彼女の手には火打ち石を持っていた。

 

「お気を付けて。おサムライ様」

 お辞儀する俺の頭上でカチカチと音がなる。

 古くから伝わる魔除けの一種である。

「ありがとうございます。じゃあ、行って来ます」

 顔をあげて礼を告げてから踵を返し俺は家へと走った。

 背後で「ご無事で」と短くクルミの声が聞こえるのであった。

 

 

 

 

「被害は?」

 家に着くなり私服を脱ぎ捨て、全裸も気にせず戦闘服に着替えながら横に立つ碧理に声をかける。

「今のところはないそうよ。施していた封印が急に解けて鞍馬寺に境内に顕現しただけで、

寺の境界線の結界までは壊されてないみたい」

 

 全国各地に怪異を祀る寺社仏閣は多い。

 秋田であればナマハゲ。

 四国には人魚を祀る寺も存在している。

 中でも有名なのは鞍馬寺のテングと、伏見稲荷の妖狐だろう。

 彼らは寺社に石や、墓に妖怪を封印し祀る始末で、今回も討伐とは名ばかりであくまで最終的なゴールは“封印“であると碧理が告げる。

「それにしても鞍馬寺は俺らの担当エリアでもないだろ。おまけに俺らは下級で本来は第八位階以上は中級数名もしくは上級が目安だろう」

 俺の言葉に彼女は頷いてから言葉を返す。

「なんでも一つ目鬼の実績も考慮して選ばれたそうよ。

 “下級にして下級ならず“ってさ。

 後、今回の指令が完遂した暁にはアタシもあなたも中級に昇格するってさ」

 “よかったじゃない。2ヶ月で出世よ。アンタ“

 言葉を続ける彼女の表情は硬い。

 

 怪異の位階にはそれぞれ目安が決められており、退魔師が派遣される主な位階は四位階以上指す。

 第一〜第三は結界師を派遣し封印し支部へと提出。

 第四〜第五は下級サムライを筆頭としたチームを送りこむ。

 第六〜第八が基本的に中級、もしくは上級のチームが受け持つが通例なのだ。

 そんな括りをぶっ飛ばしての俺たちの指名に思わず首を傾げざるを得ない。

 もっとも鵺が第五位階、一つ目鬼が第七位階で河童も恐らく同程度だろう。

 もはやそんな枠組みから外れてしまった討伐実績も加味されているのだろうが、それはそれである。

 

「あと、アタシ達の他にも退魔師のチームが3組、任務に当たるそうよ」

「……仲良くお手手繋いで討伐でもなく討伐ね。上手くいかないだろ」

 思わず口をへの字に曲げて顰めっ面を浮かべる。

 退魔師のチームは常に自身が所属する“組“を重視し、動くのだ。

 そんな奴らを集めて、急に「仲良く討伐して下さい」など言われても無理である。

「討伐じゃないわ。今回の指令は封(・)印(・)よ」

 首を傾げる俺をよそに彼女が続けた。

「……それと、他のチームは下級が2組に中級が1組だそうよ」

 トドメを刺そうとばかりに告げる碧理の言葉に俺は口を開けて間抜け面を浮かべた。

 どうやら、上(・)は指令ではなく、遠足を命令しているのだろう。

「まるで遠足ね」

 どうやら俺の顔に文字が書かれていたらしい。

 彼女が代弁して言葉を吐いた。

「まあ、なるようになるか。一応、俺らと同じ指令が下されるくらいには優秀ということだろう?」

 俺の言葉に「一応、そうみたいね。アタシも詳しくは知らないけど」と碧理が言葉を返した。

 彼女の言葉に「ふーん」と間抜けな返事を返しながら腰に斬魔刀を佩く。

 

「まあ、行ってみないと始まらないわな」

 車庫に止めてある黒バイに跨り、後部座席へ腰を下ろした彼女にヘルメットを渡す。

「あ、髪の毛が焼き鳥?のような匂いがするわね」

 鼻をクンクンと鳴らして髪の匂いを嗅いだ碧理がそんなことを言った後、「焼き鳥食べたいわね」と続けた。

「賛成。これが終わったら行きますか」

 アクセルをぶん回し、排気音を響かせる。

「肝が食べたいわね。一杯精をつけましょう」

 

 どこか締まらないことを言う彼女に俺は愛想笑いを浮かべて車体を走らせる。

 深夜に赤色灯が煌めき、サイレンが鳴り響かせながら俺たちは鞍馬寺へと向かった。

 

 

 鞍馬寺最寄りの鞍馬駅。

 大きなテングのお面のモニュメントが置かれる場所で俺は合流した退魔師たちに頭を下げる。

「京都退魔庁 第参地区所属 下級サムライの賀茂匠です」

「同じく下級結界師の賀茂碧理と申します」

 退魔師同士で挨拶する時にはめんどくさいルールが存在する。

 その一つが、サムライが先に名乗り、その後に女(・)性(・)の陰陽師と結界師が続いてサムライに頭を垂れるのだ。

「ふんっ。第四地区の担当のコムロだ」

「同じく、中級陰陽師の安部(あべの)晴希(ハルキ)と申します」

「同じく、下級結界師の安部明里(アカリ)と申します」

 年齢的には陰陽師のハルキは蒼佳と、アカリは碧理と同年代だろう。

 2人は黒髪のロングヘアであり、顔もどこか似通っている。

 二人とも顔つきはキレイだが、胸部が平坦としており、俺の食指は動かない。

 しかしその苗字に覚えがあり、後ろに控える碧理へと視線を送る。

 コクン。

 どうやら間違いないようだ。

 彼女の顔が是とし、“あべの“と読む彼女らはまさに賀茂家を含む御三家の一つ。

 先祖にかの有名な“安倍晴明“を排出した名家だ。

「おっぱい結界師も元気そうね」

 碧理と同年代だろう結界師のアカリが俺の背後に隠れる碧理へと声をかけた。

「誰がおっぱい結界師よ、貧乳結界師」

 そして彼女たちは仲が悪いらしい。

バチバチと火花を散らすように睨むあう碧理に俺は思わず苦笑いを浮かべる。

「お、確かに良く見ると中々に美形じゃねぇか。女。俺が抱いてやろうか」

 コムロと名乗った蒼佳と男が下卑た顔を浮かべて口を開いた。

「結構でございます。私に心に決めた相手がおりますので」

 睨み合いを終わらして、コムロに頭を垂れて瞬時に言葉を返すと、彼の額にピクピクと青筋が浮かび上がった。

「おい、この俺様が抱いてやるって言ってるんだぞ」

 この世界の男の中の男らしい不遜な物言いに今度は俺の額にも青筋が浮かぶ。

返事をすることなくただ頭を垂れる碧理へと一歩踏み出す彼に俺は氣を当てつける。

「やんのか?」

 流石は安倍家と退魔師とパーティーを組むだけはあり、俺の氣に反抗するように自身の氣を当たるコムロ。

 他のサムライと違い濃密な氣に思わず関心してしまう。

 もちろん俺の全力には遠く及ばないのだが。

 

「はいはい。そこまで」

 手をパチパチと叩き間に割り込む妙齢の男性。

 サムライの戦闘服を着る彼もまたサムライだろう。

 

 「俺は今回お前たちを率いる中級のオガワだ。お前たちの任務は正確には封印ではない。後詰の退魔師の為にテングの力を削ることだ」

 彼が作戦についての詳細を述べ始める。

「気に食わないな」

「気に食わないわね」

 俺と碧理の声が重なり思わず見つめ合う。

 きっと、それは俺ら以外の退魔師も同じだろう。

 元々、我が強い連中の塊である。

 さも使い捨てのような扱いにハラワタが沸々と煮え上がる。

 

「と言うわけで、各組でそれぞれがテングの力を削ぐように尽力するように。では着いて来い」

 そう言って俺たちから踵を返し、背後を気にすることなく歩むオガワに俺は、はぁっとため息を吐いた。

 「めんどくさ」

 思わずそんな言葉が漏れ、碧理に尻を叩かれる。

「油断しないようにね」

 めんどくさくとも、補欠的な扱いにヘソを曲げようとも、これから相対するのはテングである。

 彼女に「分かってるよ」と言葉を返して刀を柄を握りしめる。

 

 

「ここから先が結界の中だ」

 先頭に立つオガワが脚を止めて紅色の仁王門を睨む。

 門の手前で入り口を守るように左右に鎮座するのは狛犬では無い。

 2匹の虎の像。

 入り口より先は、結界のせいでピンク色をさし、伺い知ることは出来ない。

 

「ここから、先は各組(チーム)に分かれて、テングの捜索を行ってもらう。

 もし見つけたら“竹笛“を吹け」

 オガワがそう言って俺たちに向かって笛を投げ渡す。

「どうせ、協力しろと言っても無理な話だ。各自で対応し、テングの力を削ぐぞ」

 彼はそう言って我先へと仁王門を潜った。

「おい、行くぞ、メス共」

 次にコムロが仲間の安倍姉妹を顎で使い、門を潜る。

「お先に、おっぱい結界師」

「死んで行きなさい、貧乳結界師」

 

 アカネの軽口に碧理が悪口を乗せて返す。

 それに続いて、もうひと組が門を潜った。

「いいの?奴ら先に行ったわよ」

 碧理の言葉に俺は頷く。

「順番は関係ないさ。見つかる時には見つかるし、見つからない時は見つからない。

 気楽にいこう」

 先程からビシビシと感じる妖氣。

 他の組が対応出来るとは考えていない。

 

「碧理、いつでも結界を張れる準備だけしておいて」

 こう言った時の俺の予感はよく当たるのはすでに彼女も知っている。

 碧理はコクリと真剣な顔で頷く。

「いくぞ」

 

 門を潜ると、すでに他のチームはおらず、眼前にとてつもなく長い石段が目に入る。

 足元を照らすように門と同じ紅色の行燈が左右に等間隔で設置されている。

 鞍馬寺は仁王門を潜ってから本堂へ行くには、やや急勾配な石段をいくつも超えなければならない。

 人によってはまるで登山をする気持ちだろう。

「……見られてるわね」

 彼女の言葉に「あぁ」と短く言葉を返して辺りを伺う。

 四方から視線とともに妖氣を当てられるのだ。

 気が付かないはずがない。

 加えて、身体を刺す氣は以前感じたぬらりひょんや、産女と同程度に濃厚で鋭い。

 

 俺の顔が自然と口(・)角(・)を(・)上(・)げ(・)る(・)。

 それなりに楽しめる相手なようだ。

 刀の鯉口を切り、柄に手を添えて俺たちは石段を駆け上がる。

 瞬間、竹笛が鳴り響く音がこだました。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。