貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
「そもそも童は怪異がどうやって生まれるか知っておるか?」
天狗の言葉に俺は答える。
「人の邪な気から生み出されるのだろう」
機関でも習うし、陰陽師と結界師は親から教わる内容である。
俺の言葉に天狗は首を横に振って「それ
「その考えも間違ってはおらん。ただ、付け加えるなら無から生み出される存在もおれば、ワシのように怪異となり果てる存在もおる。それが”ヒトガタ”じゃ」
喉がゴクリとなった。
弁慶の話の内容は、怪異についての理を真っ向から覆すソレだ。
しかし、その言葉には説得力がある。
ヒトガタと呼ばれる人語を操り思考する知能もある存在。
ふと、肚の中にストンと落ちる得体のしれないなにかに思わず嗤った。
「ほぅ……童はそのような反応をするか」
天狗、否。弁慶は俺の顔を興味深げに覗きこんで同じように嗤う。
「もっとも、怪異になる前の記憶を残せるのは稀じゃがな」
天狗はそう言って話を続ける。
曰く、妖氣に飲まれて怪異になるにはある種の才能が必要であること。
曰く、怪異になり果てた際は強烈な殺意が身を支配し殺戮しか考えられないこと。
曰く、先の戦闘では封印が緩み強烈な怒りを覚えていたこと。
曰く、封印され祀られると徐々に殺人衝動が薄れ、元の記憶がよみがえるということ。
最後については、祀られることで半ば神格化される影響だからだろうか。
彼は最後に「特に退魔師が怪異になれば厄介じゃな」と告げる。
それはそうだろう。
氣を操ることに長けた存在が妖氣を操る人外にかわるのだ。
天狗の妖氣の鋭さに、俺の動きについてきた身のこなし。
そこでふと俺はぬらりひょんについても元は人間かと尋ねる。
「あやつは元からの妖怪じゃ。まさに邪気の結晶よ」
弁慶が言うには邪気から生まれた妖怪も幾千、幾万の人を喰らうことで人語を理解し知能をつける存在もいるということらしい。
頭に槌を振るわれるような衝撃の数々。
それでも混乱しないのは前世の影響だろうか。
荒唐無稽な内容にも「なるほどな」と勝手に納得をしてしまう。
ちなみに弁慶は自身のことを”元特級サムライ”だったと語り、誇らしげに胸を張る。
「それで、妖刀とはどんな関係が?」
納得できてしまえば話が早い。俺の言葉に天狗は手を俺に突き出し「急くな」と答える。
「その為には封印について今しばらく説明が必要だろうの」
ぽつり、ぽつりと日本全国で祀られる妖怪の名を上げる天狗。
彼らは元は退魔師の中で傑出した者であり、人に祀られ、畏れられ、怪異の中でも特異な存在になったそれらは、時として地場神となり、サムライに力を貸す。
彼はそれを”契約”と呼んだ。
怪異の力を閉じ込め、使用できるが故に”妖刀”。
ただの切れ味の鋭い刀ではないと弁慶が告げた。
「童とは契約は出来んがのぅ」
俺の顔を見て呟く彼に「なぜ」と冷たく尋ねる。
「臭うのじゃ。お主どこかの神に見初められておるであろう。気づかぬか?」
弁慶の言葉に首を傾げる。
神などに会ったことは今の一度もない。
それこそ、転生する際に俺自身になにかしらの啓示があったわけではないのだ。
気が付いたら、この世界で生を受けていたにすぎない。
「神……ねぇ……」
存在を夢想し思わず漏らす。
「ワシではお主との契約に足る格が足りぬ。それこそ伏見の妖狐であればと思うが、
そう言って俺と同じように首を傾げる天狗の顔色は青色へと戻っていた。
「なんにせよ。この臭いはまともな神ではないぞ。
カカカカと笑い声をあげる弁慶がふと真顔に戻る。
「伏見に行くのなら油揚げを持参せぃ。あと、今後ここに訪れるときは酒のひとつでも持ってこい。
機嫌がよければ組手の指南でもしてやるわい」
そういって彼は霧となり無散して姿を消した。
最後に「女狐には気を付けることだ。女難の相が出ておるぞ。童」
そう言葉を残して。
疑問が一つ晴れた後に違う疑問が沸きあがる。
俺は祠に頭を下げて山を下りた。
”伏見の妖狐”
弁慶が言う、大天狗の
妖刀を握る手が興奮で震えるままに嗤う。
気が付けば空は赤みが挿して夕暮れを告げる鐘が鳴っていた。