※この作品はR-18です。

貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】   作:たんばりん

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肆拾弐話 妖狐

「あ、ここで結構です」

 

 討伐指令が終わり、運転手に告げる。

 現在、チームを組む蒼佳も碧理も不在のため。討伐に関する移動はもっぱら退魔庁より派遣された運転手と一緒に移動している。

「……しかし、ここは……」

 運転手の女性が不安気な声音で呟く。

 深夜の伏見稲荷神社付近。

 封印される妖狐が一際有名であり、深夜に訪れる人は居ない。

 紅い千本鳥居が有名で日中は観光客が絶えないこの場所も夜中になるとどこか薄気味悪い雰囲気を醸し出していた。

「大丈夫です。ちょっと用事があるので」

 待つことなく先に帰っていいと運転手に告げて俺は正門の階段に足をかけた。

 先の弁慶とは話し込んでしまった。

 今回も同様に時間がかかるだろう。

 左手には取り寄せた高級の油揚げが入った紙袋を掲げ登る。

 怪異を祀る場所は総じて広い。

 暗闇が支配する鳥居をくぐり、本殿に辿り着くころにはすでに30分はかかっていた。

「捧げ物です」

 賽銭箱に上に袋ごと油揚げを置いて手を合わせる。

 “臭い匂いを放つ奴じゃ“

 ふと背後から声が響き振り返った。

 金髪を地面に着けるほどの長髪。

 狐よろしくピンっとたった耳に着崩した赤い着物。

 着物と同じ色の瞳がジロリと俺を睨みつけていた。

「……九尾」

 ゆらゆらと揺れる九つの尻尾を生やした花魁のような美女が顔を歪めて立っていた。

(わらわ)になんぞ用か?」

 見目麗しい姿で憎々し気に顔を歪める九尾が言葉を吐いた。

「単刀直入に言えば契約をしたい」

 妖刀を突き出すと九尾の髪が逆立った。

 

「貴様のような小僧が妾に契れと。殺すぞ。餓鬼が」

 背後から火球が現れ轟轟と音を立てる。

 大気が震え、あたりの温度を上昇させるソレに俺は刀を構えて氣を纏う。

 

天逆毎(あまのざし)の臭いを漂わせる餓鬼風情が、この玉藻前(たまものまえ)によく姿を現したものじゃ。蒸発させて臭いごと消し飛ばしてやるわ」

 九尾が咆哮を上げて巨大な火球を放つ。

 どうやら、話は聞いてくれないらしい。

 刀に精氣を送り込み俺は飛来するそれを一刀両断に斬りつけた。

 

「朧火」

 九尾の声の後に同じようにいくつもの火球が飛来する。

 振り上げるように一つを両断するもそれはヌルりと刀を通り過ぎて俺の身を焼く。

 追撃をかわすべく燃える右腕を気にせず後ろに跳躍し、皮膚を精氣で覆うも、出量に比例するように付着する焔がメラメラと勢いをつけて肌を焦がした。

 炙れる痛みに顔を歪めながら氣を閉じるとソレは鎮火した。

「なるほど」

 氣に反応する火に頷く。

 もはや、右手は焼け爛れ今は使い物にならない。

 左手に刀を持ち換えて九尾を睨むと彼女が笑う。

「痛そうじゃのう」

 どこからか扇を取り出し口元を隠して笑う彼女が俺を追跡させるように火球を動かした。

 氣に反応するのであれば話が早い。

 精孔を閉じた右手で一つの火球は叩く。

「――クソっ」

 予想に反して叩いた火球が右手に纏わりつき、メラメラと焦がし思わず舌打ちを漏らし、氣で腕を覆う。

 二段構えだろう。

 瞬く間に鎮火する右手は完全に焼け爛れて皮膚が黒く染まっていた。

 

「クソ女狐が」

 見た目通りの性格の悪さにそう呟いて彼女へ距離を詰めた。

 

「踊ろうか。玉藻前」

 刀を振り上げる俺に彼女は妖しく目を細めて笑っていた。

 

 

 

 

 

 本殿、茂る木々、大気が妖狐の焔で燃え盛る。

 幾千の斬撃さえも彼女の持つ扇で止められ火花が飛び散るのも数度、戦況は完全に妖狐に傾いていた。

 彼女が顕現する火球は一目には氣に反応するタイプなのか、そうじゃないのかは皆目見当がつかず、もはや躱すしかなく、繰り出した斬撃も余裕綽々と止められる。

「なぜ攻撃しない」

 俺の言葉に彼女が嗤う。

 言葉通り、彼女は火の玉を出して襲うだけで、それ以上はせずにただ刀をいなすだけだ。

 見ようによっては攻撃していると言えなくもないが、相対する俺からすればただ観察しているような不気味さを感じた。

 

天逆毎(あまのざし)の臭いに混ざる天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)の匂い。小僧は不思議な餓鬼じゃのう」

 彼女の言葉に俺は眉を動かして刀を止めて離れる。

 

天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)なら知っている。

 最高神の一柱であり、俺の信託を賀茂家に残した神の名である。

 

(いま)いか?」

 こちらに視線を送る妖狐に首を振って刀を納刀した。

「それが貴女が殺意を飛ばさなくなった理由か」

 何度目かの攻撃の後より身を刺していた妖氣も殺意も無散しており、それを彼女に指摘すると妖狐が嗤った。

天逆毎(あまのざし)だけなら消し炭にしてやろうと思うたがの」

 そう言って火球を消滅させて扇を仰ぐ彼女に俺は首を傾げた。

「その天逆毎とやらはなんだ」

 俺の言葉に首を横に振る妖狐。

「お主に行っても聞こえぬじゃろう。●□※×○じゃ」

 彼女の声が途中でハウリングが掛かり頭に響いた。

「ほれ。聞こえぬじゃろう。まぁ、良いわ。気が変わった。契ってやろうぞ」

 こちらに歩みよる妖狐に思わず一歩後ろへ後ずさる。

「その代わり、小僧には”試練”を受けてもらうがの」

 妖狐が手を伸ばして俺を抱き寄せ唇を交わした。

 ”お前の過去、見せてもらうぞ”

 脳に直接響く声に俺は意識を刈り取られ、瞬間 景色が暗転したのだった。

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