貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
目を覚まし、身を起こす。
周囲を暗闇が支配するなか、一点、プロジェクターが光を放ちスクリーンに映像を映す。
「またか」
思わず俺はその場で舌打ちを漏らして下を向く。
「やはり、小僧は
ふと横に気配を感じ顔を上げると妖狐がその場に立ちスクリーンを見つめていた。
「なぜそれを知っている」
彼女の言葉の指す意味を瞬時に理解し彼女に問う。
「フン。あやつに見初められる存在なぞ、大体が異端者じゃ。そうか。転換の時が近いということかのう」
ふふふと笑い声をあげる彼女の顔が怒気に歪む。
「始まりは牛若丸。次に織田の吉法師、坂本
バチンと扇を自身の手のひらに叩きつける妖狐。
詳しくは聞けそうにない。
彼女から放つ怒気がそれを物語っていた。
「小僧。妾の試練は主の過去を見せてもらうことじゃ。付き合ってもらうぞ」
一瞬だけ俺を見下ろした妖狐がすぐさまスクリーンへと移されるとき、場面は一人の幼女を映していた。
「タクちゃん!これあげる!!!!」
俺とよく似た黒髪の幼女が真新しいランドセルを背に満面の笑みを浮かべ手にした泥団子を差し出す。
今世での次姉の
その言葉を拒否するように小さな手が振られた後に、言葉が響く。
「けっこうでしゅ」
大分記憶は薄れてしまったが、俺の声だろう。
舌ったらずの声音にトモエがその場で地団駄を踏んで叫んだ。
「なんでーー!!!!?」
ドンドンと飛び跳ねるように抗議する彼女。そこに響く別の女児の声
「巴、そんな形の悪い泥団子なんてたっくんは喜ばないよ。はい!たっくん私の泥団子の方が綺麗だよ。特別にどうぞ」
トモエよりだいぶ身体の大きい黒い髪を腰まで伸ばした少女。
背にはランドセルを背負っており、手にはトモエの泥団子よりかはいくらか綺麗なそれが置かれている。
長姉の
記憶をたどるにカナエが9歳、トモエが6歳ころだろうか。
俺は手を振ってトモエ同様に彼女に断りを告げた。
「あ、けっこうでしゅ」
「なんでよっ!?」
トモエと同じように地団太を踏んでから手にしていた泥団子を地面に投げつける彼女に俺は真顔で理由と伝える。
「ばっちいもん」
「ばっちくないもん!!!」
食い気味に叫ぶカナエをみてトモエが「ぷぷぷ」とわざとらしく噴き出すと、彼女は「なに笑ってるのよ!」と頬を膨らませて怒気を放つ。
俺たちの姉弟仲は良かった。
精神年齢が前世の影響もあり子どもじみてない俺を姉達は気味わるがることもなく、一つの個性として愛を注いでくれていた。
前世で嫌われ者を地でいき、親からも捨てられ愛を知らない俺の心が融雪するがごとく、溶けだしたころの記憶であり、映像を見る俺の瞳から自然と涙がこぼれた。
「あ、ママだ」
ふとトモエが家の正門をくぐる母の姿を見つけて声をあげる。
「ママぁ~~~~!!!」
精神年齢30歳オーバーのことも隠して、まるで本当の3歳児のような声音で母に突進する俺。
「ただいま。匠。それに叶と巴。お利口さんにお留守番出来たかしら?」
駆け寄る俺を抱き上げて柔和にほほ笑む黒髪の母性溢れる女性が俺たちの心の中心である、 母の
「ママッ!」
「ままっ」
俺に続くように姉たちも彼女に抱き着き、泥だらけの手を母の黒い狩衣へとベタベタと着ける。
「ねぇねぇ。今日はどんなお化けとたたかったの?」
トモエが俺たちを代表して問うと、母は「そうねぇ~」と言ってから本日のことをお伽話口調で幼児にもわかるように話してくれた。
俺はそんな母の話が
「匠。これあげる」
「わぁ~!ありがと!!!!」
その後、泥団子の話を彼女に伝えると、母は徐にしゃがみこみ、6歳の巴が作った泥団子より形の悪いそれを渡してきたので俺は満面の笑みを浮かべて受け取った。
「なんでよっ!!!!」
その様子を見ていた姉妹たちがそうツッコミを入れると母がフフフとほほ笑み、それにつられて俺たちは笑いあう。
いつも家には笑顔が溢れていた。
「いただきます」
「いただきます(しゅ)」
晩ごはんになると、離れに暮らす俺たち分家は本家へと出向き、一家全員で食卓を囲む。
分家である母と、姉二人に俺
本家である叔母に、蒼佳と碧理、祖母に
そして給仕係を務めるお手伝いの幸恵ばあちゃん。
総勢9名で囲む食卓はいつも賑やかだ……主にトモエと碧理の二人が……
「みどりがたっくんのとなりがいいのぉー!」
「ねんこーじょれつよっ!!」
3歳児の碧理と6歳児のトモエ。
毎日繰り広げられる争いが今日も目の前で行われている。
理由はまさに俺の席の横をめぐる骨肉の争いなのだが、先日、変わりばんこが決まり、昨日は碧理が座っていたのに、彼女はその順番を守らずに今日もということでトモエに直談判している状況である。
あまりにもぎゃーぎゃー騒ぐその様子に俺の横が完全に定位置になっている母が腰を上げた。
「えーっと、ならおばちゃんが退けるね」
そう言って俺の反対となりに座った母親が席を立とうとするのを俺は彼女の腕をつかんで止める。
「や!ママはぼくのよこ!」
俺の声に母はニマニマと表情を崩してから俺の頬に自らの頬を擦り付ける。
もはやそこには精神年齢などは関係なく、年相応に甘える俺がいたのだ。
そんな光景など気にせず取っ組み合いの喧嘩へと発展し始めた二人を見て俺はふぅと息を吐いた。
「ふたりともうるしゃい。なかよくできないなら、もうなかよくしないから」
俺の言葉にトモエはひゅっと息を短く吸い言葉を詰まらせ、碧理はぽかんとした表情をうかべた後、みるみる目に涙を貯めていく。
「今日はともえねえ、あしたはみどり。わかったらみどりはイスにもどってごはん食べる!そのかわり、今日はいっしょにおふろに入ってあげゆ!」
びしっと碧理の席を指さすと最初は泣き出さんとばかりに顔をしかめたが、その後”お風呂は一緒”とのフレーズに満面の笑顔へと戻り、てくてくと席へと戻った。
「たくちゃんは将来は”稀代の女たらし”とか言われそうねぇ」
俺たちの様子を見た祖母は肘をつきながらそう呟いて食卓は笑いに包まれた。
分家と本家。
母を筆頭にした黒髪の
碧理、蒼佳、叔母、祖母、曾祖母の銀髪の
表面上は仲睦まじい家庭環境の中でも俺たちはうまくやっていたのだ。
「あっ!匠、ピーマン食べなさい!」
皿の端に退けるピーマンを母が目敏くみつけて俺に唾を飛ばしながら口を出す。
それを俺は笑顔で母の顔を見上げて答えた。
「けっこうでしゅ」
家には”愛”が溢れていた。
そう、