※この作品はR-18です。

貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】   作:たんばりん

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第肆拾肆話 狭間

 ソレがやってきた日。

 転生して5歳になった3月のある日。

 俺たちはいつものように食卓を本家・分家問わず囲んでいた。

 

 その場にいないのは、祖母と叔母の2人。

 彼女たちは討伐指令に出かけていた。

「匠、ピーマンを食べなさい」

「えんりょします!」

 母から差し出される緑色の物体を首を振って躱す。

 前世の影響もあるのか、俺はピーマンだけは食べることが出来ない。

 俺の反応に母は「仕方ない子ね」と苦笑いを浮かべてパクりと自分の口へ放った。

 

「タクミはお子ちゃまだもんねっ!」

 横に座る碧理がそう言ってはにかむので「碧理もグリンピース食べれないでしょ」と言葉を返す。

「うっ、た、食べれるもん」

 目を泳がせる彼女に「ふーん」と相槌を打って皿にもられたハンバーグにフォークを添える。

 

「巴は好き嫌いないよ」

 机を挟んで正面に座ったトモエとその横に座るカナエが「私も」と頷きを返す。

 彼女らはすでに8歳と10歳。

 俺はまだ5歳だと、精神年齢を伏せる謎の言い訳を返すと彼女たちがはにかんだ。

「好き嫌いする男の子はモテないよ?タクミくん」

 蒼佳の言葉に俺はピクリと眉を上げて声を震わせた。

「蒼佳姉は僕のこと嫌い?」

 得意の幼子ムーブで瞳を潤わせると彼女が焦ったようにかぶりを振った。

「じゃあ、大丈夫。みんなが愛してくれるなら僕はそれで十分だよ」

 

 俺がはにかむと周囲が釣られるように笑顔を浮かべる。

「女たらしねぇ。ほんとに」

 頬に手を添えながら微笑む母がそう言うとみんなが首を縦に振った。

 

 がちゃり。

 

 ふと玄関が開く音が部屋に響き皆が顔を見合わせる。

「やけに早いのぅ」

 首を傾げて曽祖母が漏らすと横に控えた家事手伝いの幸恵さんが「そうですね」と相槌を打った。

 スタスタと廊下を歩く音が響き、居間に繋がる扉が開かれる。

 

「あっ!おかえりなさい!ま、ま?」

 横に座る碧理が無垢な笑みを浮かべて今に入ってきた人物を見て声をあげるも、最後には疑問符を浮かべた。

 叔母のようで叔母ではないナニカ。

 姿はまさに見知った彼女であれど顔に生気はなく、どこか青白い。

 瞳は濁り亡者のようにソレがゆったりと手を前に突き出すと、刹那。

 目の前に五芒星が浮かび1匹の蛇が正面に座っていたトモエの胸を貫いた。

 

「え?」

 全員がその場で硬直し目を見開く。

 トモエが食卓に顔をぶつけて机を血で濡らした。

 

 

美紅(みく)!!!!、お前、なんのつもりじゃ!!!!!」

 まず最初に正気に戻ったのは曽祖母。

 叔母の名を叫び椅子から立ち上がり恫喝をあげる。

 

「……ウソ……う、うそ、うそよ、うそ、うそうそうそ、ウソッ!!!!」

 次に母が声をあげて机に顔を伏せたトモエに歩み寄り彼女の名を叫んだ。

「あぁっ!!!ともえッ!!ともえ!!ともえぇッ!!!!!」

 肩を揺さぶるも返答はなく、チラリと見える顔は未だ目を開いたままで正に人形のように事切れていることを物語っていた。

 

 

 

「え、おかあ……さま?」

 暴虐を行う叔母に蒼佳が声をかけると、ソレは光のない目つきをギョロリと動かして、一点で止まった。

 

『見ィ~つけタぁ』

 視界に俺を定めて、無表情だった顔がまるで口裂け女のごとくニィ~っと開き、再度五芒星を顕現させて俺にナニかを飛ばした。

「たっくんッ!」

 

 俺の名を叫び射線を遮るようにカナエが間に入るとドンっと音を響かせた後。

 彼女の胎に風穴が空いた。

 

「幸恵ぇ!!!!匠に結界じゃ!!!!」

 曾祖母の悲痛な叫び声とは対照的に「はい」と落ち着いた声音で返事を返した幸恵さんが俺に向けて印を組んで腕を振るった。

「防護結界 ”(けつ)”」

 俺を封じ込めるように四方からピンク色の結界が展開される。

 

「飛ばせ。(からす)

 曾祖母が指を()()に突き立てると、人差し指が関節と反対側に折れ曲がり、中空に五芒星が浮かび上がる。

 中央から巨大なカラスが顕現し翼をはためかすと、叔母はまるで大砲の球のように後方へと吹き飛ぶ。

 背を壁にぶつけようとも、柱にぶつけようと勢いは止まらず、バキバキと音を立てながら人型の穴を家に作りながら彼方へと吹き飛んだ。

 

 

「――ねえちゃんッ!!!!」

 カナエに手を伸ばそうするも結界に阻まれ、手のひらが壁で止まる。

 

「……た、た……っく……ん……」

叶はバタリと倒れ伏し顔をこちらに向いた。

 ドンドンと結界を叩き、俺は彼女の名を叫ぶ。

「……い……生、……きて……」

 最後にと 目を細めて笑顔を浮かべたまま彼女は目を閉じた。

 

「……あぁッ!!い、……いや……いや、いやいやいや……いッ――――――!!!!」

 トモエを抱きさめざめと泣いていた母がカナエにも気付いて彼女も抱き寄せる。

「カナエ!トモエ!待って!お願い!逝かないで!いやよ!イヤ!イヤッ――」

 

 パシン。

 曽祖母が母の頬を叩く音が部屋に響いた。

「呆けるな!敵はまたやってくる!」

 “敵“と呼称した瞬間に蒼佳と碧理が肩を震わせる。

「目を覚ませ。今戦えるのはワシとお前しかおらんのじゃ。お前が悲観する間に次は匠まで奴に殺されるぞ」

 肩を激しく揺するも、母は激しく首を横に振って現実を悲観した。

 

「聞くのじゃ。美香よ。

 奴の正体は分からぬ。

 分からぬが妖に取り込まれたのか、それとも何者かが変化(へんげ)しているのか、それは今は分からぬ。

 じゃが、奴の目的は匠じゃろう。

 お前は何者じゃ。

 賀茂に連ねる一族のものじゃろう。

 日本を守護する御三家の血筋じゃ。

 何より匠の、“日輪の子“の母親じゃろう!

 いい加減に目を覚ませッ!」

 最後にパシンと再度彼女の頬を叩くと母の震えが止まる。

 

 

「……叶……。痛かったよね……怖かったよね……ごめんね……頼りないお母さんで……」

 肩を震わせて母は叶の横に巴を寝かせた。

 

「解。」

 ふと幸恵おばあちゃんの声が聞こえた後、俺を守っていた結界が消失して母が俺を抱きとめる。

「匠。お母さん行ってくる。叶と巴の仇とらなくちゃ……。ごめんね。愛してるよ。」

 再び震え始めた彼女の背を抱いて思わず瞳から涙が溢れた。

 

 母は俺の額にキスをして「いってきます」と愛想笑いとわかる笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「幸恵。子らを頼む。どこかに避難させて結界で守護するのじゃ」

「畏まりました。ご隠居様」

 曽祖母が幸恵に指示を与える。

 2人はすでに80歳を超えた人たち。

 そんな彼女たちの背からはメラメラと覇気が漏れていた。

 

「美香。行くぞ。弔い合戦じゃ」

 母の背を叩いて、2人は家の大穴に向かって歩みを進めた。

 俺はそれをただ呆然と見ているだけだった。

 

 

 

 

「おい、そろそろいいだろう」

 スクリーンを見つめる妖狐に声をかけると彼女は首を横に振った。

「何故」

 もういいだろう。俺は腐るほどこの光景を夢想した。

 この先の展開に希望をしたことなど数えきれない。

 しかし現実は変わらない。

 トモエもカナエも生き返ることはなく、母の姿もこれが最後だった。

「何故じゃと?小僧。この空間の名を知っておるか」

 妖狐は地面を指差して眉を上げた。

「空間?この世界のことか?これは俺の記憶の世界だろう」

 俺の言葉に彼女は長い息を吐いて首を横に振った。

「分かっておらぬの。異端者よ」

 彼女の物言いに思わず胎から怒気が湧き上がる。

「ここは、“狭間“じゃ。空蝉と常闇の境。小僧はこれが自分の記憶じゃと言うたが正確には、ヒトや鳥。樹木。全ての御霊(記憶)が彷徨う場所よ」

 

「故に……」

 妖狐がプロジェクターを操作して景色を移し変える。

「は?」

 何故プロジェクターの操作方法を知っているのか。

 何故この場所を知っているのか。

 そんなことを差し置いて、俺はスクリーンの映像をそんな声を漏らした。

「これは、主がまだ胎の中におる時じゃろうな」

 映し出された映像には医師らしき女性に検診されてエコー画面を見つめる母の姿。

 知らない。見たことがない。

 当然だ。

 今まで俺が見ていたのは全て俺の視点の過去だ。

 この景色を俺は知らない。

 

「妾に過去を見せることとは、すなわち小僧が過去と向き合うことが同義よ。

 貴様は呪われておる。

 暫し付き合ってもらうぞ」

 

 初めて見る映像に映し出された母の顔。

 妖狐の話などほとんど聞こえず俺は食い入るようにスクリーンを見つめる。

 

「母さん……」

 彼女を呼び瞳が涙が溢れた。

 

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