貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
「禁術か……」
スクリーンをみて妖狐が呟く。
知らなかった母の想い。
映像は母が金色の龍となり、ぬらりひょんに向けて火焔の
「
ふと妖狐が哀愁を漂わせてながら一言漏らした。
ぬらりひょんが杖を振るい、
「おかあ様っ!」
瓦礫にできた空間から一人の少女が飛び出し、地面に倒れ伏す叔母に駆け寄った。
蒼佳だ。
それに触発されるように碧理も彼女へと駆け、幸恵が二人の名を叫んで止めようとするも、間に合わない。
先の衝撃で結界は崩れてしまったのだ。
もう一度構築するには、再度、氣を整えて印を組む必要があると、
二人を追うように俺たちも叔母へ駆け寄ると、幸恵が印を組み再度、結界を構築した。
「おかあさん!!」
うつ伏せで倒れる叔母の肩を抱いて仰向けにして叫び声をあげる二人。
すると、叔母が一瞬苦しそうに呻いた後、ゆっくりと瞼を開けた。
「……囚われていたのね」
視界をぐるりと見渡した後にボソリと彼女が呟いた。
「ご当主様……」
幸恵が叔母をそう呼び、蒼佳と碧理が叔母の胸元に泣きつく。
「私が、殺したのね」
”カナエもトモエも”
空を見上げる瞳から涙が流れる。
「蒼佳、碧理、起してくれないかしら」
泣き叫ぶ二人の頭を撫でる叔母に彼女たちは頷き肩を支えて叔母の身を起こした。
「……
それを見上げ、龍を見つめる叔母の表情はどこか儚げであり、彼女の言葉に反応するように幸恵が頷いた。
「タクミ。ごめんなさい」
ふと視線を下げて俺に移して叔母が頭を下げる。
なんの謝罪かは察しがついている。
それでも俺は彼女に怒りを感じずにいられない。
拳を強く握り、肩が震え、涙が決壊したダムのようにとめどなく溢れていく。
許すとは口が裂けても言えなかった。
前世から嫌われてひねくれながらやっと甘受できた幸せを。
愛を、唐突に彼女に奪われた。
「助けて……」
母をだろうか。自分自身をだろうか。
俺の口から出た言葉に叔母はコクリと頷いてから娘たちの額にキスをした。
「二人で協力してタクミと生きなさい」
唇を離していつもとは違う、慈愛に満ちた顔つきで叔母が娘に言葉を掛ける。
「いや!ママもここにいて!」
碧理が彼女の腕を抱くと蒼佳も同じように彼女を抱いた。
「私ね。仲直り出来てないのよ」
二人の頭を交互に撫でて空を見上げた。
「昔はあなた達みたいにすごく仲の良かった姉妹だった。それがいつしか私から彼女を避けるようになって、話すこともできなくなって、それで5年前、タクミ達を連れてここに戻って来た」
普段の鉄仮面のように表情を出さない叔母がくしゃくしゃに顔を歪めながら涙を流す。
「嬉しかった。仲直りできるチャンスを神様がくれたと思ってた。でも……素直になれなくて、意固地になって結局、今の今まで仲直り出来てないのよ」
”蒼佳”
優しい声音で娘の名を呼ぶ。
「貴方もお姉ちゃんだから分かるでしょう?碧理と喧嘩したとき、時間がたてばきゅっと胸を締め付けるように痛いわよね」
”碧理”
「もし貴方がお姉ちゃんと何年も離せなくなったら悲しいでしょう?寂しいでしょう?」
二人を抱き寄せて肩を震わせる。
「
叔母の言葉に蒼佳が首を横に振って抱く力を強めた。
「行かないで。おかあさん!お願い、おねがいだからぁっ……」
”退魔師とは人の世を護る存在なり。御三家とは国を、子らの未来を護る象徴なり”
「おばあ様がよく言い聞かせることよ。知ってるわよね。
私はあなた達を護りたい。子どもたちが生きるこの世界に天下泰平の世にしたいの。貴方たちを愛してるからこそ」
『わかってくれる?』
叔母の声にそれでも尚、泣きすがり蒼佳が首を横に振った。
「……わからないよ!」
強める声音とは対照的に叔母の声は優しい。
「今はわからなくても、いつかきっと貴方にも分かるわ。愛してる。」
抱き着く二人を無理やり剥がして、その場から立ち上がり幸恵に視線をむけた。
「子どもたちの避難を」
叔母の言葉に幸恵は首を横にふった。
「ここから離れれば、奴が追ってくる可能性がありますので、ここに結界を張りましょう。”天”を使います」
幸恵の言葉に叔母が口角を上げた。
「さすが、特級の結界師ね」
「……一か月だけでございますが」
幸恵の言葉に頷いた叔母がふと俺に視線を向けてほほ笑んだ。
「許してとは言わないわ。私が貴方の姉を殺めてしまったのはすべて私の心の弱さよ。
それでも言わせて頂戴。ごめんなさい。
貴方に業を背負わせてしまって。貴方の家族を奪ってしまって」
彼女の瞳を見つめながらも俺の目つきは厳しいままだ。
「こんな不甲斐ないおばちゃんの頼みを聞くのは癪でしょうけど。聞いてちょうだい」
”世界を救って。救世の男子様”
叔母の言葉を皮切りに、幸恵が一旦結界を解いて俺たちを残して二人が外へと出る。
「ママっ!」
碧理がすがろうと手を伸ばすと叔母が振り返り手を突き出した。
「愛してるわ……バイバイ」
涙を流しながら笑った彼女が印を組み、詠唱を唱える。
幸恵も同行するように俺たちに向けて結界を構築した。
”東西守りし両の武よ
南北守りて両の文よ
捌方より迫る不浄には
「天陣結界 ”天”」
俺たちを中心に半円球の結界が展開される。
『――
叔母が詠唱と唱えると、母と同じように姿を龍へと変えて空を駆けていく。
「皆様」
結界の外で幸恵が俺らの前で跪いた。
「ご隠居様にお伝えください。仕えて60年余り。お慕い申しておりましたと」
普段と相も変わらずその笑顔。しかしながら瞳だけはキラキラと光を放っている。
「タクミ様。世を。人の世を。どうかお頼み致します」
目を細めて笑ってから彼女は踵を返して駆けていく。
それを俺たちはただ叫び声をあげて見送ることしかできなかった。