※この作品はR-18です。

貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】   作:たんばりん

50 / 70
第肆拾玖話 匠

「ギャアアアアア゛!!」

 夜中、碧理の叫び声にビクリと身体が震えて飛び起きる。

 

 夜驚症(よがくしょう)である。

 泣き喚き、身体を暴れさせて、叫び声をあげる。

 京都事変を境に賀茂の家は壊れてしまった。

 碧理は幼児退行し、夜な夜な叫ぶ。

 曽祖母は未だ入院から帰らず、蒼佳が俺たちの面倒を見る。

「寝てていいのよ。()()()()

 蒼佳の言葉に俺は首を横に振って碧理の背中を摩る。

 あの日から蒼佳もまた変わってしまった。

 俺の名をタクミくんから、カナエのように“たっくん“と呼ぶようになり、いつしか俺も蒼佳()とカナエや、トモエを呼ぶような呼び名へと変わる。

 

「蒼佳姉こそ寝てていいよ。あまり無理しないで」

 俺の言葉に「そう?ありがとう」と答えて彼女は寝転び俺に背を向ける。

 彼女は甲斐甲斐しくも俺の面倒まで見るが時折見せる、睨むような冷たい目線に思わず恨んでいるのだろうと当たりをつけるが、5歳児の俺にはどうすることも出来なかった。

 

 

 

 翌朝、京都事変以降、日課となった庭先でのトレーニング。

 その瞬間だけは余計なことを考えずに済んだ。

 何故、自分が転生したのかを。

 何故、家族を奪われなければならなかったのかを。

 何故、自分には力がないのかを。

 そんな考えに囚われる日常から解放される為に俺は刀を振るう。

「1999……2000っ」

 素振りを止める頃には全身より噴き出す大粒の汗。

 上着は水気を吸って重く、息を短く吐いて呼吸を整える。

 トレーニングによりこの身体の特性が自ずと理解できた。

 頑丈なのだ。外側だけは。

 5歳児が日に、2000も3000も素振りをしてからの町内を一周するぐらいで倒れることはなかった。

「タクミーあちょぼー!」

 汗を拭っている最中に縁側から声がかかり俺は振り向く。

 夜中に飛び起きて泣き叫ぶ症状で昨夜も苦しんだ筈の彼女は自身がそれに犯されていることなど知らない。

 以前に何度か朝になりきいてみるも決まって彼女は首を傾げて「アタシ、寝てたよ?」と無垢な顔で答える。

「だっこ!」

 ぴょんぴょんと跳ねる彼女に近づいて俺は抱きしめる。

 “あぁ。クソッタレな今世だ“

 彼女を抱く手が震えるのを、碧理は不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 2年。

 年齢が7歳となった俺にはすでに幼な子らしさは消えていた。

 小学校の先生、クラスメイトには極力敬語で接して一定の距離を取る。

 大人連中はそんな俺をどこか不思議そうな目で見つめていた。

 

「ビデオレター?」

 曽祖母の言葉に俺は首を傾げた。

「あぁ……。匠も7歳。立派な男児に育ったものよ。美香からお前に今日届くように退魔庁に預けていたみたいでの」

 今世でも七五三という概念はあるが意味合いは少し違う。

 七五三とは()()の誕生、成長を祝う日とされ、

 3歳、5歳を経て7歳となれば末長く健やかに育つだろうという呪い(まじない)の一種であり、曽祖母は俺に一枚のDVDを渡す。

「……匠、復讐に囚われるではないぞ」

 曽祖母が恐る恐ると言った表情で口を吐いた。

 まただ。

 彼女もまた、他の連中と同じようにあの日から変わってしまった。

 以前までの覇気は消え失せ、日に日に痩せ細りまさに老婆らしく急激に年老いていく。

「大丈夫だよ」

 何故か湧き上がる怒気を隠すように愛想笑い(鉄仮面)を被ると曽祖母が言葉を詰まらせた。

「見てみるよ」

 ひらひらと手にもつDVDを掲げて踵を返して自室に篭り、早速それを再生した。

 

 

「タクミ、見てますかー?」

 映る母の顔に俺の顔が強張った。

 2年。たかだか2年。されど2年か。

 久方ぶりに聞く彼女の肉声に瞳が潤んだ。

「……母さん」

 母よ。俺を愛してくれた母よ。

 やっとのことで掴み始めた愛という得体の知れないナニカ。

 それはもはや今世には残っていない。

 

 ――タクミが7歳でこれを見ているということは私は指令に失敗して死んだのかも知れません――

 

 冒頭に何故こんなものを遺したのか母は語った。

 退魔師とは常に死と隣り合わせ。

 人によっては月に一度遺書を書くほどだと。

 映像の母が言うには今俺が見ている映像は京都事変の半年前に撮ったモノだと推察できた。

 

「7歳の誕生日おめでとう!匠もこれで立派な男の子1人だね!」

 すでに誕生日は半年ほど過ぎている。

 それでも久方ぶりにみる動く母に肩が震えた。

「今日は匠の名前の由来を伝えようと思います。私一生懸命考えたんだよー」

 母はそう言って胸を張る。

 

 “元々は三人目の子どもは葵か渚を考えてたんだけど、匠が男の子だと分かったから私の計画は全てパァになりました“

 画面の前で両手を広げる仕草をする母。

 そのひょうきんさを今はもう見ることは出来ない。

 

 “だから、私困っちゃって寝る間も惜しんで1時間ほど考えました!“

 どこが『寝る間を惜しんで』だろうか。

 

 “大工さんって分かるよね。匠のことだもん。賢いからもっと他にいっぱい知ってることあるだろうから大丈夫だと思う“

 

 “大工さんって、モノを作ったり、壊して作り替えたり、いろんな仕事があるの。あなたには未来を創るそんな意味を込めて“大工“と名付けようかと叶に聞いたらあの子、目を吊り上げて断るのよ”

 そりゃあそうだろう。

 叶と巴、大工など一人だけなぜ二文字なのかと考えてします。

 賀茂 ダイク

 口ずさんでみると読みとして幾分か悪くないような気がしてきた。

 ”だから匠。大工の匠からあなたの名前を匠にしたの”

 

 ”未来を創って”

 

 彼女はそう言って満面の笑みを浮かべる。

 

 ”あ、あと、お姉ちゃんたちとは仲良くするのよ。喧嘩してもいいけど最後は仲直りしなさい。これママとの約束”

 小指を突き出し、指切りげんまんを口ずさむ。

 ”匠は優しいからきっと将来はいろんな女の子と結婚するだろうなぁ。子どもってすごいんだよ。パワーが沸いてくるの”

 まぁ、匠は男の子だからあまり子育てすることはないだろうけどね。

 そう言って彼女がはにかんだ。

 ”蒼佳ちゃんや碧理ちゃんも大事にしてね”

 なぜか涙を流す母に思わず頬が緩んだ。

 

 ”愛してる”

 

 ビデオレターが終わりを告げてTVの画面が暗転した。

「創るよ。未来」

 拳を握る手を震わせて呟いた。

 

「このくそったれな世界を俺が壊して創り変えるよ。母さん」

 画面に反射する俺の顔は嗤っていた。

 

 

 

 

「なんと言うか、貴様はほんに天邪鬼よのぅ」

 スクリーンを見つめていた妖狐が俺に振り向き目を細めた。

「悪いか?」

 剣呑な目つきで返すと彼女は首を横に振るう。

「悪しきこととは思わぬが、好いこととも思わんの」

 彼女が俺に歩みより、肩に手を載せる。

「まぁ、良いわ。小僧の過去、しかと見せてもろうた。妾と(ちぎ)るかや?」

 答えは決まっている。

 俺は無言で頷きで返すと彼女が目を細めた。

(あやかし)と契約するということは死後、貴様の御霊は妾に喰らわれるということじゃ。ほんに良いのか」

 ”輪廻転生出来ぬぞ”

 背から覇気を漂わせる彼女に俺は「くどい」と告げる。

 御霊を献上することは初耳なれど、もはや決意している。求めている。彼女の力を。

 妖狐は「はぁ」とため息を吐いてから、「良かろう」と笑みを浮かべた。

 

「では契ってやろう。小僧。マラを出せ」

「は?」

 不意に言われた単語に思わず聞き返してしまう。

 

「マラじゃ、マラ。貴様の男根を出せというておるのじゃ」

 どうやら聞き間違いではないらしい。

「男根をだして妾と交われと言うておるのじゃ。当たり前じゃろう」

 言われてもいないし、当たり前でもない。

 まぁ、そうと言われれば脱ぐしかあるまい。

 俺はため息を吐いてから服を脱ぎ捨て彼女の前にチンポをさらけだした。

 

「よい、マラを持っているではないか」

 妖狐の耳がピンと立ち、彼女は妖艶にほほ笑んだ。

 この際、肉体でも魂でも好きに持っていけ。

 すべては世界を創り変えるため。

 

 チンポに添えられた妖狐の手は恐ろしく冷たかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。