貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
朝方。
セミの鳴き声で目を覚ました俺は水川姉妹の部屋を出て、自室に戻り水着に着替える。
日課のトレーニングのために競技用プールに向かうとすでに先客がいた。
「あ、おはようございます」
プールサイドの監視台に座りあくびをする美優に近づき頭を下げると彼女は口に手を当てたまま微笑んだ。
「おはよ〜。たくみん。早いねぇ」
いつもより眠そうな声音の美優がそう言って自身の背中をポリポリと掻く。
「付き添いですか?」
俺の言葉に彼女はコクンと頷きを返した。
バシャ、バシャとプールでは美咲がバタフライで泳ぎ、華麗なターンを決めて折り返していた。
「昨日も一昨日もお盛んだったみたいだねぇ〜」
目を細めてこちらに視線を映しながら彼女が意地悪く笑った。
「今日は美優先輩の番ですよ」
別に順番を予め決めていたわけではない。
しかし俺の言葉に彼女は「ちょうど生理明けたしねぇ」と返事を返してまたあくびを放つ。
時刻は朝の5時。
普段の美優なら絶対に寝ているだろう時間帯に付き添っている彼女と美咲の関係。
美優と美咲は中学からの付き合いらしく、いつも2年生を『三馬鹿』と揶揄する美咲も、美優単体に対しては比較的懐いている。
なんでも、最近は美優と同じバイト先で働くようになったらしい。
「頑張り屋さんだよねぇ〜」
頬に手をついてプールを眺める美優がぼそりと言った。
「みさきんはね、馬鹿正直なの」
彼女の言葉に「そうですね」と短く返して泳ぐ美咲を見つめる。
すでに俺が来てから200mは泳いでるだろう。
尤も水泳部連中はウォーミングアップで1kmほどをノンストップで泳ぐ連中だ。
三馬鹿と揶揄される2年生も担当する種目が違えどトップクラスのスイマーらしく、その体力は驚嘆の域に入っている。
「たくみんはさ、ミサミサとエッチできた?」
ほら、一昨日の夜、一緒にご飯食べてたでしょ?
そう言葉を繋げる美優に俺は首を横に振った。
「残念だねぇ。彼女、馬鹿正直な上に馬鹿真面目だからねぇ〜」
そう言った美優の顔はどこか優しげだ。
「あの子はね、家族がいないんだ」
ぼそりとした美優の告白にピクリと眉が上がった。
「弟さんを亡くしたまでは聞いておりました……」
俺が答えると美優は少しだけ寂しそうな表情を浮かべて口を開いた。
「本当はね、お母さんもその時に死んじゃったの。元々親子仲は悪くてあの子は認めてないけどね。
だからかなぁ~。あの子やけに真面目になっちゃって、昔はもっと元気いっぱいの子だったんだよ」
美優の話を聞きながら美咲の方を見ると丁度泳ぎを終えたところだった。
プールから上がった美咲は肩で息をしながら俺たちのいる監視台へと近づく。
「おはよう……。タクミくん」
スイムキャップを外し、黒髪を掻きむしりながら彼女が言葉を吐いた。
「はい。お疲れ様。ドリンクあげるよぉ」
監視台の足下に置いてあったスポーツ飲料を美咲へと投げ渡す美優に彼女が「ありがとうございます」と受け取って頭を下げた。
「たくみんもどうぞ」
別に疲れてはいない。
美優に渡されたペットボトルを受け取り礼を言う。
「もう終わり?」
俺が尋ねると美咲は「うん」と小さく答えた。
「折角だし、一回競争してみようかぁ。たくみんとミサミサ」
ふと意地の悪い笑みをニタニタと浮かべながら美優が提案する。
「俺は別にいいよ」
「……私もたくみ君がいいなら」
二人で顔を見合わせてお互いが首を傾げる。
「じゃあ私が審判やるねぇ」
監視台で俺たちを見下ろす美優が笑みを浮かべた。
「どうせやるなら勝った方が負けた方の言うことを一つ聞くっていうことにしようかぁ」
彼女の言葉に美咲が目を見開き、俺は思わずうなずいてしまう。
「面白いですね」
「いやよ……」
しかし共感したのはどうやら俺だけであり美咲は首を横に振った。
「どうせ、碌なお願いじゃないもの」
どうやらバレているらしい。
「ふぅ~ん。じゃあミサミサはたくみんに負ける前提?」
美優の言葉に彼女がジロリと睨みを返した。
「そんなことは言ってない」
「じゃあ、問題ないよね。勝てばいいんだから」
美優がそう言うと彼女はため息を吐いて「わかったわよ」と不詳不詳と準備運動を始める。
「ほら。たくみんも準備運動して」
美優の言葉に返事を返して、関節を伸ばす。
「種目はフリー。距離は100m。準備はいいですかぁ?」
監視台からプールの飛び込み台に立つ俺たちへと声がかかった。
「審判はボク!それでは位置についてぇ~」
彼女の声に従い、俺は前傾姿勢となり飛び込みを体勢をとる。
「よーい、ドン!」
パチンっと手を叩く合図と同時に台を蹴り、頭からプールへと飛び込んだ。
流線状を意識するように飛び込み、勢いそのまま両脚で水をイルカのように蹴り進む。
(はやいな)
水中ではグングンと俺の前を泳ぐ美咲の後ろ姿が視界に移った。
氣を使えば容易く追い抜けはするだろう。
しかし、この勝負にズルをするのは違うだろうと考えついて俺はがむしゃらに前へ進むべく水を掻き分け、前進する。
「たくみーーん、がんばってぇ~」
息継ぎの瞬間、ふと美優の声が聞こえる。
息継ぎを繰り返しながら、壁が迫りターンを決める。
既に美咲は俺のだいぶ先を泳いでいる。
ここまで差があるのならハンデをもらえばよかった。
もはや後の祭りである。
最終的に泳ぎ切るころには美咲はプールから上がり俺のコースの飛び込み台で待っていた。
「……。ハンデもらえばよかったよ」
勝負にすらならなかった。
俺は苦笑いを浮かべて彼女を見上げる。
「……でも綺麗な泳ぎだったわ」
どこか満足げな表情を浮かべながら彼女は腕を差し出した。
「約束、忘れちゃダメよ」
「わかっているよ」
彼女の手を取り、俺はプールから上がる。
「お疲れ様ぁ」
監視台に座っていた美優がこちらに歩み寄り、タオルを投げ渡した。
「はい。ミサミサも」
美咲にも投げ渡す美優はニコニコと笑みを浮かべて俺を見つめていた。
「なんですか?」
「いやぁ~、たくみんのあんな必死な姿、初めて見たなぁと思ってさぁ~」
そう言いながら美優がケラケラと笑う。
「別に……」
美咲は少しだけ恥ずかしそうに頬を掻いた。
「いやぁ~、たくみんはカッコいいなぁ~。惚れ直したよぉ~」
美優がそう言うと美咲が少しだけ驚いたような顔をして美優を見つめる。
「なに?ミサミサ」
「いえ……」
美優の問いかけに美咲が首を横に振った。
「そっかぁ~。じゃあ、たくみん。ボクとミサミサはもう上がるからね」
嬉しそうにはにかみながら美優が美咲の腕をつかみ「お先~」と更衣室へと向かう。
残された俺は笑みを浮かべながら彼女らの背中を見送る。
どこか似ている二人の後ろ姿に見た後、再度プールへ飛び込み、トレーニングを行うのであった。