貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
窓から差し込む月明かり。
ベッドから半身を起こし外を眺める。
「愛……か」
空中に手を伸ばして握り拳を作るも、もちろん手の中は空気のみ。
隣で眠る美優はトレードマークのように今日に鼻提灯を浮かべながら大口を開けてイビキを描いていた。
「んんっ」
髪を撫でると眉を八の字に曲げて美優が寝返りを打ち俺の方に身を寄せる。
被っていた布団がはらりとはだけて、やや大きめな桜色の乳輪が現れる。
いつもならここで情欲を抱き眠る彼女を抱くのだが、不思議とそんな気分は起こらなかった。
前世では愛を欲した。
誰かに愛してもらえることを夢想し、愛に飢えていた。
今世では愛を家族から感じた。
5年という短い期間ではあったか一身に愛を受けたというし記憶が残っている。
しかし、それはもう無いモノだ。
家族を失った時に碧理が壊れた。
そして、その時に俺自身のナニカが壊れてしまったのだと今にして思う。
7歳の時にこの腐った世界を作り変えるという目標ができた。
そのために努力し、今は玉藻と契約するまでに至った。
それでも美咲に、美優に、タチバナの言葉が脳内を駆け巡り言い表せれない不安が津波となり俺を襲う。
「結局、俺は愛に振り回されているということか」
感じることが
心が曇るように脳内に靄がかかり俺はそのまま意識を手放す。
吹き抜けた風が不気味に生暖かく俺の頬を撫でた。
――――――――――
「おかあさんっ」
久方ぶりに見る
俺の目の前には絶望の表情を浮かべた母がこちらを見据えていた。
目には涙を蓄えて肩を震わせている。
「た、たくみ……」
次の瞬間、しゃがみこみ、母が俺の肩を揺する。
「やめて!まだ早いわっ!あなたは3歳なのよ!」
ブンブンと乱暴に幼児の身体を揺らす母。
お陰で視界が上下に激しく揺れ動き若干の気持ち悪さを覚えた。
「まだ、“ママ“って呼んでて!そんなに急に大人にならないで!!」
瞳から涙を溢れんばかりに流しながら彼女は叫んだ。
「お願い!私はまだママってタクミに呼ばれたいの!!!」
あぁ。懐かしい。
子離れするつもりが垣間見えない母の乱暴さ。
俺は彼女の手を払いのけて頷いた。
「わ、わかったよ、ママ。」
次の瞬間には彼女は満面の笑みを浮かべて「はいっ!ママです!」と挙手をした後、がばりと俺の肩を抱く。
「もう、急に“おかあさん“なんて呼ばれるとびっくりするじゃないっ」
後頭部を優しく撫でられ、何故か胸の中からポワポワとした温かみを覚える。
「ご、ごめんなさい、で、でもくるしいっ」
撫でる頭とは対照的にぎゅうぎゅうと締め付けられ息が詰まり彼女の肩をタップする。
「あっ、ご、ごめんなさいっ!」
ガバッと身体を離して、優しく背中を摩る母の温もり。
息苦しさは瞬時になくなり、俺は彼女に笑いかけた。
「いいよ、ゆるしてあげゆ」
未発達の舌のせいで最後に噛むと彼女は「かーわーいーいー!」と先のことを忘れたかのように力一杯俺を抱きしめて頬にキスをいくつも落とした。
「あ!!ママ!ずっこい!」
背後でそんな声が響いた後、ドシンと軽い衝撃が2度訪れる。
「たっくんただいまっ!」
幾分か大人びた声が後頭部から響きそれに応えるように俺は「おかえり。カナエねえとトモエねぇ」と振り向かずとも正体を告げる。
全方向からの締め付けに再度限界を告げるにはそこまで時間は掛からなかった。
「たっくん、聞いて!トモエね!好きな子出来たの!」
ある日、トモエと2人でおままごと遊びに興じている時、ふと彼女が笑みを浮かべて言った。
「どんな子なの?」
俺の言葉に彼女はえっとねーと指を立てて一つずつ折っていく。
「やさしくてぇ〜、かわいくてぇ〜、黒かみでさらさらしててぇ〜、身長はたっくんと同じくらいでぇ〜、名前もタクミって言うんだよっ」
はい。知ってます。
トモエもカナエも立派なブラコンに成長中だと言うことを。
「だから、はいっ!今日はばれんたいんでーだから。たっくんにあげるっ」
そう言ってお菓子の詰め合わせの小袋をどこからか取り出して俺に突き出す。
「ありがと。トモエねぇ」
俺が受け取ると彼女は満面の笑みで微笑んだ。
「どうしたの、カナエねえ」
場面が変わり目の前に長姉がすんすんと鼻を鳴らしてキッチンの前にしゃがみ込んで泣いている。
「……た、たっくん。トモエに、カナエのプリン食べれたぁ〜!」
鼻水や涙で顔がべちゃべちゃとなった彼女が俺の身体にしがみつき嗚咽を漏らす。
「た、楽しみにしてたのに゛っ」
俺の服で体液を拭うように顔を擦りつける彼女の頭を撫でて息を吐く。
「いいよ。僕のたべたら?」
甘いものはあまり好きではないのだ。
俺の言葉にカナエが顔を上げて「ほんとっ!?」と目を見開く。
「うん。カナエねぇにあげる」
俺が答えた瞬間、彼女は俺を抱き寄せ更に号泣した。
「あ゛りがどう゛ぅぅぅ!たっぐん大ずぎぃぃ」
ワンワンと泣く彼女。
俺のプリンにありつけると期待した彼女だったが、この数分後には彼女の分よろしく俺の分もトモエに食べられていて絶望に暮れるのは一笑モノだ。
「タクミ、5歳のお誕生日おめでとーう!!」
パァンっとクラッカーを鳴らされ紙屑が宙に舞い、キラキラとした雪が部屋に舞う。
「ハッピーバースデー!たっくん!」
カナエとトモエが並んで俺にマフラーを差し出す。
「2人で縫ったんだよ!」
トモエが胸を張って自信満々に言うが、カナエは「ボロボロだけどね……」とどこか不安そうに表情を浮かべている。
「ありがとう。大事に使うね」
彼女たちからマフラーを受け取り早速首に巻く。
「タクミ、私からはこれよっ!」
母が満面の笑みを浮かべて一冊の本を俺に差し出した。
「これは?」
首をこてりと傾げる俺に母は「タクミ用のアルバムだよ!」
ずっしりと思い、厚さ10cmほどの裏表が皮で作られたソレを見てトモエが声を荒げる。
「私の時はもっと薄かったよ!」
彼女の主張に母は「ギクっ!」とわざとらしく声を上げた後、「ほら、タクミはお、男の子だったから」と返して向こうを見つめて口笛を吹いた。
そういえば、彼女たちからもらったプレゼントは今はもう無いことを思い出す。
京都事変の時に焼かれたのか、何故今まで忘れていたのか、俺は首を傾げた。
「もぅ!ママはいっつもたっくんに甘いんだからっ!」
頬を膨らませぷりぷりと怒るトモエにカナエが「まあまあ」と彼女を宥めた。
「あ、じゃあ写真撮ろう」
中々機嫌が治らない彼女に俺が提案するとトモエはまるで花が咲いたように笑みを浮かべた。
「じゃあ、幸恵さん呼んで撮ってもらいましょう」
母がそう言って幸恵を呼び、俺を中心に母とカナエとトモエが背後に立って肩に手を置く。
「タクミ」
“お誕生日おめでとう!!“
ピースとかでない掛け声の後、彼女たちが一斉に俺の頬や頭にキスをし、幸恵が持ったカメラがカシャリと鳴った瞬間に目を覚ます。
瞼を開けてると映るのは朝日が差し込んだ天井。
久方ぶりに感じた胸の温もりの残滓を離さないように俺は身を丸めて胸に手を当てる。
少しだが、心の中に彼女達の存在を感じて俺は再び眠りについた。
もう一度、夢で逢えることを期待して。