貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
暑い日差しがさし、沖縄の青い海を照らす昼下がり。
「ちょっと、たくみん、手つきがエッチだよぉ」
バーベキューを終えて、俺と美優の二人は浮き輪に捕まり波に身を任せていた。
彼女が溺れないように浸かる水面の中で彼女の臀部に手を回していたが、無意識にむにむにと大福のように柔らかい彼女の肌を堪能してしまう。
俺の顔を覗き、頬を膨らませる彼女の頭を撫でると猫のように目を細める美優。
「さすがに、海の中ではボクはちょっとどうかと思うなぁ~」
そう言って浮き輪から手を離した彼女が振り返り、俺の首に両手を回した。
「午前中にあんなにみんなとエッチしたのに、また大きくなってるね」
足を絡みつかせると、自然と張りつめた肉棒が彼女に当たり、美優は笑った。
「海は危ないから、せめて砂浜にあがろう?」
首を傾げる彼女に俺も頷き離れようとしている浮き輪へ手を伸ばした。
現在の沖縄の海は本来遊泳は自己責任とされている。
いつ海坊主が現れるか分からない関係上、夏と言えどもビーチ全体には閑古鳥が鳴いている始末だ。
そこまで思い当たり「これはフラグか」と呟いた時、美優が沖の一部を見据えて声を震わせた。
「た、たくみん。あの、あれってなに?」
もこもこと沖の一部が盛り上がり大きな波紋を打ち上げる。
「すみません。完全にフラグでした」
舌打ちを一つ。彼女を力強く抱き、脚に精氣を込めて水を蹴りつける。
「あ、ちょっ!あぁ」
彼女の言葉を無視するように水面に上がり、地面を走るように走り抜け、皆がくつろいでいた砂浜へと駆け寄った。
「避難してください」
シートに美優を優しくおいて、立て掛けておいた叢雲を手にする。
あたり一面を漂う醜悪な妖氣の臭いに思わず顔がこわばった。
「え?急にどうしたの?」
サングラスを掛けてベンチに寝そべり日焼けに興じていたクルミに「怪異です」と短く告げると周りの連中の息を呑む音が響いた。
「ルルさん、ホテルに戻ってタチバナさんに退魔庁へ連絡するように伝えてください。その後は、安全が確認できるまで待機を」
鯉口を切り、鞘を抜いて刀身を表へと出す俺に「あなたは?」と美咲から声が掛かった。
「一応、サムライだからね。なんとか食い止めるよ」
沖からこちらを見据える二つの眼。
全身を黒々とした肌に水面からあがった顔のサイズはあまりにも大きかった。
「う、海坊主」
近くにいた従業員が怪異の名を呼んだあと、その場から飛び跳ねるように背を向けて逃走を始める。
「さあ!早く行って!」
声をあげると皆が力強く頷き、足早にホテルへ踵を返した。
「せっかくの合宿を台無しにしやがって」
ザブン、ザブンと音を立てて、水面から上半身を出したソレを睨みつけながら俺は嗤った。
先鋒隊か。
いまだ沖からこちらを見据える巨躯とは別に、数十体のキムジナーと、全身ずぶぬれとなり頭髪がワカメのように濡れた女型の怪異が2匹。
「磯女……」
メジャーなヒトガタの怪異である。
位階は七相当の妖怪である。
“燃やし尽くせ 玉藻前“
叢雲を抜刀し鞘を後方に放り投げる。
“喰え。不知火“
刀を振り下ろし顕現させる焔を纏った狐の使いが二匹。
クォンと遠吠えをあげて磯女へと喰らいつく。
「朧火」
目の前に立つキムジナーの数、およそ50か。
同数程の火の玉を背後から顕現させて、ライフルの弾丸の如く射出する。
着撃の瞬間、じゅぼっと音を立てて瞬く間に消滅する怪異。
断末魔の声を上げることなく一瞬で燃やし尽くす業火だ。
「
俺はその場で膝を地につけてクラウチングスタートの体制をとる。
磯女は不知火に任せて問題ない。
もし、
つま先に力を込めるのと同時に精氣を送り込む。
ビキビキと筋肉が膨張するようにふくらはぎの血管が痙攣を起こし始めるのを無視してその場から沖へと駆け込んだ。
「邪魔ァっ!」
水面を駆ける俺を引きずり込もうと顔を出したキムジナーの頭を踏み潰し、蹴飛ばしながら海坊主との距離を詰める。
人間のサイズを遥かに凌駕する巨体。
海面から出ている上半身だけで優に50mを超える。
大気が震える雄叫びを上げ、近寄る俺に巨躯が腕を振り上げて風を切る轟音をあげて下される。
ふくらはぎに力を込めて、跳躍し攻撃を交わすと爆音と一緒に水柱は天を突いた。
海水が泡立ち高波が浜辺に迫る。
“碧理が居てくれれば“
津波のように流れるそれを見て思わず彼女のことを夢想する。
舌打ちをついて踵を返し、高波を切りつけ、分断された水を“現火“で蒸発させて俺はため息をついた。
“朧火“と“現火“
俺自身が玉藻に難儀した火の玉の術式。
氣を喰らう焔と現実を燃やす焔。
それでも撃ち漏らした高波が砂浜を飲み込み浜辺にたつホテルを襲うのに、思わず顔つきが険しくなってしまった。
長期戦をこの場所で行うのは厳しいと言わざるを得ない。
海坊主が動くたびに水面は揺れて波を上げる。
奴を睨みながら暫し思案して一つの妙案が浮かびスマートフォンを手に俺は目的の人物へと電話を繋いだ。
「どうしたのよ」
どこかつっけんどんな対応に思わず苦笑いが浮かんだ。
「あ、もしかしてオナってた?」
俺の言葉を聞くや否や、ブチリと電話を切られしまい、乾いた笑いが漏れた。
「ごめん、ごめん。冗談。ちょっと護符使うから、陽氣消費に気をつけて」
再度掛け直すと、碧理は暫く沈黙した後「どんな怪異と戦っているのか」と問う。
「海坊主」
そう一言だけ呟いて、電話を切り空中に手を伸ばして亀裂を意識すると次元が割れるように暗闇が目の前に現れた。
「便利なものだ」
東司の能力の一部である収納空間にそんな感想を漏らして手を差し込み目的のブツを取り出した。
ポケットに仕舞い込んだスマートフォンが震えるのを無視して、掴んだ護符を海坊主に突きつける。
「怪物決戦といこう」
特級結界師に教えを乞う碧理が新たに作成した結界護符。
護符に込められた彼女の氣は短い間にも関わらずより緻密に濃厚に込められた気配を感じて思わず感心してしまった。
“空蝉の世に迫りし不浄、玄武の力を借りて常闇を照らせ“
「防護結界 “結“」
祝詞を終えると護符が燃え尽き四方500mを囲うように結界が展開される。
「本当に成長したな」
俺と海坊主を囲うように展開される結界の広さに東京で怒り狂ってるであろう碧理に讃美歌を送った。
「土産にちんすこうでも買っていこう」
ぼそりとそう呟いて全身の精孔を開き氣を噴出させる。
結界に自らも閉じ込める形にしたのでもはや背後に憂いは無い。
全身から白い湯気を立て、四肢が白く染まる。
刀を構え、睨む目は赤く充血し、視界が狭まった。
「燃やせよ。玉藻」
叢雲に声をかけると対話に答えるように刀身から白い炎を突き出しカタカタと震えた。
思わず嗤いかけ、その場で弾丸のように海坊主目掛けて弾け飛ぶ。
視界を映る景色が一瞬で奴の眼前へと変わり横凪に目玉を切りつけ、顔に足をついて空を舞う。
“神樂“
氣を再現なく噴出した身体を駆使して攻勢をする俺を見て玉藻が前にそう言った。
“まるで舞っているようじゃ。さしずめ神樂かのう“
言い得て妙な彼女のセリフを思い出しながら後頭部を切りつけて、飛んできた掌底を躱し、ついでとばかりに指を切り落とす。
無理な肉体の反動からか、左膝がパキリと音を立てるのを無視して耳を削ぎ落とし、顎の腱を斬りつける。
身体を自由落下に任せて回転しながら顔から胎に目掛けて切り付ける頃には海坊主は叫び声を上げて天を仰いだ。
“おい、そろそろケリをつけてやれ“
ふと、玉藻の声が脳内に響くのを残滓し、思わず「はいはい」と返事を返す。
悪い癖だ。
“呑まれるな“
いつぞや聞いた曽祖母の言葉を思い出す。
彼女は次に“復讐“という単語をつけていたが。
“退魔を滅す破魔の
手にした叢雲を天に突き出すと刀身を紅白の靄が包み込む。
“今こそ我が苦行より解き放とう!“
ムクムクと包む靄が天へと伸びてやがて凝固して一本の長い刀身が空に伸びた。
「喰らえよ。玉藻」
“滅却せし、退火の刀“
刀を振り下ろすとブワンと、遅れて音を立てる。
斬撃が空を向く海坊主の脳天に突き刺さり、サクリと具材を包丁で切るような感触を経て左右に別れる。
「朧火」
別れた半身を火の玉で燃やすと轟音を立てて焔が包みこんだ。
“やり過ぎじゃ。阿呆めが“
再度玉藻の声が脳内に響くのを無視して俺は刀を担いで嗤った。
「討伐完了」
浜辺に落ちた鞘を拾い納刀する頃には海坊主の身体は完全に泡となり、やがて蒸発する。
“阿呆め“
玉藻の声が再度響いた気がした。