貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
刀と爪がかちあい火花を散らす。
振り下ろされる爪を避け、その腕を切りつけるようと振り下ろす。
ガキリと金属音を立て、手応えの感じない攻防に思わず舌打ちを漏らした。
「ある程度期待しておりましたがこの程度でしたか」
奴がニィと口角を上げると、瞬間さらに動きが早くなり爪の連弾が俺の皮膚を切り裂いていく。
「ふざけやがって」
誰だ。鼠小僧の位階を七とした阿保は。
今まで対応したどの化け物より素早く、頭が回る。
地の身体能力といい、切り付けられる度に霧散するように消失していく俺の氣に思わず舌打ちを放つ。
海坊主など目ではない。
ソレこそ、ぬらりひょんや玉藻クラスの化け物に思わず笑みが溢れた。
食卓に置かれたナイフをいくつか掴み鼠小僧に投げつける。
難なく全てを叩き落とされるももちろん期待などしていない。
「玉藻。寿命5年だ」
握る叢雲に声をかけると刀がカタリと震えた。
“生命の献上“
契約者の器を超える妖氣を借りるに必要な贄。
それだけ、目の前に立つ鼠小僧のえも言えぬ不気味さに俺は即決で贄を捧げる。
「早く寄越せ」
カタカタと震える刀に再度言葉告げると瞬間叢雲が紫色の光を放つ。
「あの方ってのはお前もぬらりひょんの使いか?」
光が靄へと変わり全身を包む。
腰から玉藻のような尾が4つ。
小麦色の耳が頭部に二つ現れる。
「あの方をハゲ坊などと一緒にするでないわ」
飄々と笑みを浮かべていた鼠小僧の顔つきが憤怒に変わり、ピクピクと頬を引き攣る。
「まあ、いい。待たせたな。第二形態といこう」
“半人半妖“
混ざってならない。本来相反する精氣と妖氣が体内で完全に混ざり合い、俺は獰猛に笑って脚に力を込める。
「ぶっ殺してやるよ」
精氣のみの運用とは訳が違う莫大なエネルギーから生み出す刹那の跳躍。
まるで瞬間移動するように奴との距離を詰めて、その右頬に拳を放つ。
「ほぅ……」
感嘆の声を上げながら、鼠小僧はその一撃を避けることなく頬で受ける。
轟音を響かせ壁へと激突した奴が瓦礫を退けながら快活に笑った。
「いいですね。実に素晴らしい素質」
ぱちぱちぱちと拍手を打ちながらこともなげに悠然と立つ鼠小僧。
「そりゃ、どーもっ」
即座に追撃に移るため再び地を蹴り奴へ迫る。
紫色に光る叢雲を振り下ろすとガキンと爪と刃が交錯する。
弾かれる勢いをそのままに二撃、三撃と互いに撃ち合う。
骨が軋み、反動で肉が裂かせながら、互いの身体に切り傷を付け合う。
「そんなもんか」
お陰でスピードはやや俺の方が優勢になり、一太刀浴びるとニ太刀斬りつけ、ついには奴の片腕を切り裂いた。
「調子にのるなよ」
衝撃で腕を引いた鼠小僧が切断された切り口を抑えた。
「復活はさせない」
朧火を傷口に飛ばし、焼き切る。
妖怪に対してある種天敵な、氣のみを燃やす火の玉。
着弾した瞬間ぶわっと火の手が上がり鼠小僧は舌打ちをついて、自らの腕を肩から切り裂いた。
「だから調子にのるなと言っているだろう!!!」
跳躍し距離をとった鼠小僧が怒髪天をつくように叫び声を上げて氣を吹き出す。
切り裂かれた肩口がぎゅもぎゅもと不愉快な音を立てると中心から腕が再生された。
「人間風情が!」
咆哮を放つ奴の身体を四足のモンスターへと姿を変える。
突き出た前歯鋭利に尖り、全身紫色の鱗が身体を包む。
「コチラガ下手に出れバ調子ヅキヤガッテ!」
獰猛に唸り声を上げるクリーチャーの頭上から尻尾にかけて伸びるトサカ。爬虫類のようか眼球がギョロりとこちらを睨んだ。
「そっちの方が化け物らしくて俺は好きだぞ」
刀の峰で肩を叩き、挑発するように手で招く。
「無理に人語なんて話すなよ。
化け物は化け物らしく叫んでな」
俺の言葉に怒り狂う怪物が鋭い爪で襲いかかってきた。
「玉藻、もう1年分だ。出し惜しみすんなよ」
そう言って、振り下ろされる爪を受け止めると刀で弾き返す。
刀身が更に輝きを放ち、形を太刀へと変化させる。
「化け物に変わっても大してスピード上がってねぇなぁッ!!」
ジリジリと押し合う中、俺が嗤う。奴の攻撃を刀でいなしながら、空いた脇腹に蹴りをぶち込む。
「グガッ!?」
鈍い音が響き、吹き飛んだ奴の口から血が吐き出され、壁に激突する。
「ほら。もう1発」
朧火、現火、2種の火の玉を空中に作り出し壁にめり込む化け物へと射出する。
連続的な爆音が響き壁を壊し、更に奥へとめり込んだ。
「いっぺん死んどけ」
大穴を開けるソレに、刀を槍投げの如く後ろに掲げ渾身の力で投げ飛ばす。
ビュっ!!
光の如く射出された刃が穴の中心を通り鼠小僧の心臓へと突き立った。
「ギィヤァアァアッ!!!」
断末魔の悲鳴と共に爆発が巻き起こり、辺り一面を炎で包みこむ。
大気を燃やし、周囲の温度が跳ね上がるような灼熱の空間。
「これで終わりじゃねーよな?」
爆煙を睨みつけながらぼそりと呟く独り言にまるで返事をするように煙の中で跳ね上がる妖氣。
「まあ、そうだよな」
やはりというか何と言うか。
アレくらいでは殺せないらしい。
「全く。少しは大人しくして死んで欲しいものだな」
ゆらり。陽炎のように揺らめく影。
そこから現れた鼠小僧の姿を見て、思わず苦笑いを浮かべる。
胸に突き刺さった叢雲をそのままゆらり、ゆらりと歩み寄る足取りは力強い。
「辞めダ。オマエはコロス」
殺意に満ちた視線を向ける鼠小僧に俺は呆れたように溜息を漏らした。
「殺せんのか?そんなナリで」
腕を横に払うと呼応するように突き刺さった叢雲が火の手を上げる。
「退魔の火炎の一種だ。煉獄の焔に焼かれて消え失せろ」
「ニンゲンガァァァァア!!!!!」
怒声を上げる怪物を包む焔が肥大し、瞬く間に全身を包み燃え焦がす。
一瞬にして天を着くほど火柱を上げて、瞬く間に小さくなる炎。
気がつけ空間には未だ紫色に輝きを放つ叢雲だけが残されていた。
「逃げたか」
手応えはない。
地に落ちた叢雲を取り上げてぼそりとその場で呟いてから瓦礫転がる床に仰向けに倒れ伏した。
「鼠小僧、やっばいわ。あれぬらりひょんレベルじゃん」
口元に手を当ててクツクツと嗤う俺は、そのまま、まどろみへと意識を手放した。